読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

「工場萌え」ブームで日本の工場地帯が観光地に

2011-01-30 10:11:40 | Weblog

【四日市】高価で高機能なカメラを抱え、意気揚々と貸し切りバスから降りてくる観光客--典型的な団体旅行を思わせる光景だが、彼らのお目当てはこの地の呼び物である陶芸体験や茶室の訪問などではない。煙をたなびかせる巨大な発電所なのだ。

 これは日本国内の工場地帯をめぐる工場マニア向けツアーの様子。かつては景観を損なうと嫌われた発電所、石油精製所など重工業の工場の美しさを堪能するツアーが人気を呼んでいると言う。

四日市市の工場巡りをするこのバスツアーの車内では、天然ガスタンクの球体が見えてくると、乗客から拍手がわき起こった。

 「青い空に映えて感動的ですよね」と電子部品メーカーの営業担当者(39歳、女性)は興奮気味に話す。彼女は、少なくとも月に一度はこのような工場鑑賞ツアーに出かけるという。
(彼女はかつて、これらの工場が公害を出し人々を苦しめたと言う事を知っているのだろか)
 ほどなくバスは踏み切りで停車した。セメントくずを運ぶ貨物列車が通り過ぎると、乗客はバスから身を乗り出して工場を背景に列車の写真を撮影した。

 サブカルチャーとして始まった「工場萌え」は、全国で広がりを見せており、工場地帯を観光地へと変えようとしている。

 工場萌えの人々は、工場の内部に関心はない。製鉄所の周りに張りめぐらされたパイプや煙を吐き出す煙突に「萌える」のだ。(今尚、喘息に苦しむ人たちのこれらの煙を見た思いはどうなのか)

 戦後の高度経済成長を支えた製造業は、長年「ものづくり」としてもてはやされてきた。だが長引く景気低迷と他業種や低コストのアジア製造拠点の台頭によって空洞化が進んだことで、製造業のこれまでのあり方を見直す動きが出てきた。

 経済産業省によると、日本企業による工場の海外移転を背景に、従業員十数人規模の国内工場は1999年から2009年にかけて21%減少し、約12万6500カ所になった。

 国内の工業都市が観光業に進出することはめずらしい。川崎市は昨年から「川崎工場夜景バスツアー」の定期運行を開始している。一部のツアーは1日で売り切れてしまうほどの人気だという。「みんな、びっくりしますね。本当に工場、こんなきれいな所なんだ。耳から鼻から感じてもらう。当然、目もにおいも感じてもらう」。川崎市商業観光課の小沢正勝さんはそう語る。

 元パナソニックの社員、大山顕さんの工場フォト&ガイドブック『工場萌え』は、07年の出版以来、3万部を売り上げている。

 「工場・コンビナートにぐっとくる全ての人へ ここに仲間がいますよ」――こう訴えるこの本の裏表紙には、”工場萌え度”のチェック項目がまとめてある。(工場群のオープニングが印象的な映画)『ブレードランナー』が好き、好きな工場なら1日中でも見ていられる、かっこいい配管を見るときゅんとする、フレアスタックを見ると興奮する、などだ。

 千葉・船橋出身の大山さんは工場や倉庫の風景の中で育った。「僕はこれ、当たり前にかっこいいと思ってたけど、みんながそう思ってないって初めて気づいてびっくりした」という。

 ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でも工場萌えのコミュニティは大人気だ。

 この勢いに、ついに政府も動き出した。議員らは、工場を世界遺産に推奨して観光客を集めようと法改正を提案している。蓮舫行政刷新担当相も昨年末、現役産業施設の文化財指定に向け、文化財保護法の関連規定改正に取り組むことを表明した。