読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

己と已と巳

2010-01-21 10:45:55 | 漢字

息子の嫁さんの妹に長男が生まれ、その内祝いを頂いた。
そこに書かれてあった名が「将己」君と有った。
以前からこの字に似た漢字が、己と已と巳の三種が有って
それぞれの漢字の意味をはっきり区別が出来ないままになっていた。
改めて調べてみた。
己=音は「キ」、「コ」、意味は「おのれ」、「じぶん」、
   「つちのと」干支(エト)の「み」、「へび」。
已=音は「イ」、意味は「やめる」、「おわる」、「すむ」、「すでに」、
    「はなはだ」、「のみ」「さる(去る)」など。
巳=音は「シ」、訓は「み」、意味は干支の「み」
     これが誤解を生んでいるらしい。

今年の漢字

2009-12-12 10:16:44 | 漢字
今年の漢字に「新」という文字が選ばれた。政権も新しくなったし、裁判員制度など色々な事が他にも新しくなった。今年の漢字を募集した日本漢字能力検定協会も不正が有り、理事なども新しくなったと言うおまけも有った。その協会が募集した応募が16万1千通有り「新」が一位だっと言う。海外メディアからも取材に来たそうだ。
ところで「新」と言う漢字を甲骨文字にまで遡って見ると
この文字は辛と木と斤から出来ている。辛は取っ手の有る大きな針を表したもので、それを位牌を作るとき木に向かって投げ、その針が刺さった木を神木として選び、それを斤(おの)で切り出した。「新」はその神事を表した文字である。図はその甲骨文字である。白川静著「常用字解」平凡社から

「休」と言う漢字

2009-10-20 10:37:02 | 漢字

女子高生が新聞に投稿していた。「休」と言う漢字は人が木の下で休むことから来ていて漢字の成り立ちが解って面白いと言う内容のもので有った。私の記憶ではその漢字の成り立ちはそれほど単純ではなかった筈だと思っていたので調べてみた。
この漢字は人と木とを組み合わせた会意の文字であることは問題はない。木は古い字形では禾(か)の形に書かれ、横木のついた柱の意味である。軍隊が駐在する軍営の門の両脇に目印として立てられ、軍門となった。ここで軍事的な誓約や和平交渉などが行われた。
禾のそばで講和することを和と言う。この字の口はサイと言う誓約や祝詞の文を入れる容器である。この軍門を示す木のそばで戦功の有った者を表彰したのである。それを表した文字が「休」である。白川静著「常用字解」平凡社によれば「休」の漢字の成り立ちを人が木の下で休む意と解するのは誤りであるとしている。

漢字「年」

2009-10-14 10:54:57 | 漢字

漢字の「年」は禾(か)と人を組み合わせた文字である。
禾は稲の形をした被り物で、稲の魂の象徴であるらしい。
人(男)がそれを被って豊作を祈って踊ったのである。それが
「年」と言う漢字になった。図の金文がそれを表している。
禾は一年に一度実るので「とし」の意味となった。
甲骨文に「年(みのり)を授けられんか」と占う例が多くある
そうである。またこの禾を頭に被り、低い姿勢でしなやかに
舞う女の姿をあらわすのが「委」であると言う。
白川静著 「常用辞解」 平凡社から

「歌」と言う漢字

2009-09-30 09:32:33 | 漢字
白川静さんの出演するNHKの番組をビデオに撮っておいた。随分と時間が経ってからそのビデオを見た。「可」と「欠」とに依る「歌」と言う漢字の成り立ちについての説明が有った。
「可」は、「口」と言う漢字が有り、これはものを喋ったり、食べたりする口の事ではなく「サイ」と言う祝詞(のりと)を入れる入れ物を意味している。「丁」の部分は木の枝を表わす。「可」は、このサイと言う入れ物を木の枝で叩いている様子を表す文字である。つまり、その入れ物の中の祝辞(のりと)の願い事の実現を神に強制する事を意味する文字なのである。この願い事を聞き容れる可し、と願い事を強制するのである。これを二つ重ねて書いたのが「哥」である。「欠」は人が声をあげて何かを言い、歌い、叫んでいる様子を表した文字である。この祝詞(のりと)を入れたサイを枝で叩くだけでなく、抑揚をつけて声に出し、強調し、神に向かって願い事を主張している様子を表した文字が「歌」と言う漢字であると説明されていた。

悲と哀について

2009-09-02 10:33:58 | 漢字

非や哀と言う漢字の成り立ちについて、以下のコメントを寄せてくれた人がいる。
「非は左右の羽根が互いに反対方向(左と右)に広がった状態。
つまり心が引き裂かれてしまった様を表します。ちなみに哀は衣で口(心)を隠している状態。つまり人知れず泣てい嘆いている様を表すそうです。」と言う文で有った。この解説に私は少し疑問を感じたので調べてみると。
先ず、非は図のように梳き櫛の形で羽根ではない。「あらず」と言う否定の意味で使うのは仮借の用法で非がその昔、どのように発音されたのかは知らないが否定の言葉の音が非と言う梳き櫛を表す文字の発音と同じだったので非の本来の意味とは関係なくその音だけを利用したのである。
悲は図のように心臓の上に否定の意味を示すようになった非を書き添えたものである。
哀は図のように衣と口を組み合わせた形で衣は襟を合わせた形、口は物を食べたり喋ったりする口ではなくサイと言う祝詞(のりと)を入れる容器である。人が死ぬと死者の襟元にサイを置いて、哀れみ、死者の魂を呼び戻す儀礼をした事を表す文字である。
白川静著「常用字解」平凡社から



遵と言う漢字

2009-08-09 14:17:10 | 漢字

これは大分昔の話。有る私より年輩の人が貰ったパソコンで文章を書き始めた。
ある時、「そんしゅ」と言う漢字が何度やっても上手く漢字に変換出来ないと
言って私に相談に来た。変換したい「そんしゅ」と言う漢字を見ると「遵守」と
書いてある。この人はこの遵守と言う漢字を「そんしゅ」と読み、漢字変換を
しようとしていたのだ。「じゅんしゅ」と読むのだと、その人に教えておいたのは
言うまでもない。
ついでに遵の漢字についても調べて見た。遵は従うの意味で遵法闘争などと昔の国鉄
の労働争議でよく使われた文字である。
この漢字は図の篆文に見るとおり酒樽を持って歩く状態を示したもので、酒を供えて
祭祀を行い、その祭祀に従わせる意である。ついでながら「循」も従うと言う意で、
こちらは盾を持って歩く事を意味する。つまり武器で従わせる意である。

2009-07-26 13:54:56 | 漢字

最近は看護婦が看護師になり助産婦が助産師、保健婦が保健師と呼ばれる。
婦の元の字は帚(ふ)と書かれた。帚は神殿を清めるためのかやの類の植物で箒の形である。寝殿の寝の文字の中にも帚が含まれる事でも判るが寝殿は寝る場所ではなく神の安んずるところである。帚に酒をふり注ぎ、その芳香と共に祭壇を清めた。
寝は粗霊の居るところで、新しく嫁いだ婦人は、異民族の神に属する人であり、嫁いだ家の氏族神に廟見の礼を行わなければならなかった。三ヶ月にわたり行われたと言う。こうして嫁いだ家の氏族神に新しく加入したと言う許可を得るのである。これが済むと里帰りが行われ生家の氏族神との別れが行われた。家廟を清め、仕える事が婦の本来の重要な任務であったのである。
ついでながら嫁ぐ事を帰といい、その元の字は歸で、本来は軍隊の帰還を言う語であった。

花は草が変化するから花?

2009-07-18 09:57:15 | 漢字

新聞の「漢字の謎」と言う書籍の広告文に「花は草が変化するから花」と言う文が有った。少し違うような気がしたので調べて見た。白川静著「常用字解」によると、花の元の字は華で花びらが咲き乱れている象形の文字で図はその篆文である。花と言う漢字は形声で五世紀に作られた新しいものである。図の上側の花の篆文で化の部分は人と匕(か)とを組み合わせたもので匕は人を逆さまにした形で死者の形である。化は死者が背中合わせに横たわっている形である。

日本の漢字の使用法は古い

2009-07-17 09:03:21 | 漢字

ある中国人の留学生が日本の新聞に投稿していた。日本の漢字の使われ方が中国の古典の漢字の使用法に似ているのだそうだ。どんなところが似ているのかは記述がなかったが
同じように海外で使われている日本語も同じ事が言えるようだ。ハワイやブラジルに昔、移民した人の日本語が古いままで伝わっている事でもそれは解るような気がする。「停車場」などと言う言葉が今でも使われていると言う事を以前に聞いた事がある。英語でも同様でアメリカの英語はイギリスの英語より古い使用法であるとも聞いた事がある。フランス語などもカナダのフランス語は本国のフランスよりも使われ方が古いのだろうか。