なんとも荒涼とした叙景歌である。鳩が烏になっていたら、さらに「すごし」。
ひらかなy135:あれはてた はたけのがけの きにとまり
はとなくこえが ひびくゆうぐれ
ひらかなs1674:ふるはたの そばのたつきに ゐるはとの
ともよぶこゑの すごきゆふぐれ
【略注】○そば=小学版は「岨(そば)。崖(がけ)。」とする。ここでは従う。
(補説)
○鳩=この語で私は採歌した。たしかに『古今集』にも出て来るが、
『新古今集』にとは、珍しい。ただし、古語の通例として、動植物の名
に多く異同があるので、油断は出来ない。
○西行=悠 006 (07月04日条)既出。
【補説】岨。嶮岨(険阻)の熟語でお馴染み。しかし、少し調べると、あまり単
純ではない。
①広辞苑 「そわ([歴史仮名は]そは)。山の切り立った斜面。がけ。
きりぎし。そば。[略]」。
②旺文社版古語辞典 「そは。(近世以後は「そば」とも)山の険しい
ところ。がけ。」 また、「そば」の見出しはなく、「そばだつ」に、こうあ
る。「峙つ。[略]。<そばたつ>とも。(1)そびえ立つ。高くそびえる。
[略]」。
こうして考えてみると、西行の歌では「荒れた畑に、聳えている木」と
も読めそう。さらに「側、傍」との掛詞とも思われる。ただし、小学版は
これらに全く言及しない。