若き日、神に仕える身であった。ある晩、神域にときどき響くほととぎすの鳴き声。語りかけるような気配がいつまでも続くので、そっと起きて夜空を見遣る。遠い昔のことだ。詞書に「斎の昔を思ひ出でて」と。
ひらかなy120:あのときの かりねのやどの ほととぎす
そらをみあげて おもいだすわね
ひらかなs1484:ほととぎす そのかみやまの たびまくら
ほのかたらひし そらぞわすれぬ
【略注】○そのかみ山=「その上」(その昔)「神山(=賀茂神社、その山)」を掛ける。
○旅枕=仮寝(の宿)。この場合は、四月賀茂祭の前の晩、斎院であることから、
寝所を移したこと。だから男女の情とは無関係。
○式子==悠 011(07月09日条) 既出。なお、悠 022(07月23日条) 参照。
【補説】この歌のもとは、源氏・花散里。私がときどき使う「ほの」が、「ほの語らひし」と出
て来る。光源氏が女に遣わした歌であるが、これを式子もそのまま踏襲した。表面
的には恋愛感情は無関係としたが、式子の内面はそうではなかった、と思う。ほと
とぎす(移り気の象徴)・光君の贈歌などに、それが見て取れる。
この一番前の1438は、その紫式部の歌があって、採否をかなり迷った。やはり賀
茂祭に、桜葉へ書いた歌を記す。卯月の桜花への素直な驚きがある。
1438 神代にはありもやしけん桜花
今日のかざしに折れるためしは 紫式部
☆personal memo:①Society for the Oral Reading of Greek and Latin Literature (Sorgll)/
Sappho 1 with reading using RealPlayer.
http://www.rhapsodes.fll.vt.edu/sappho1.htm
②Songs of Sappho/ with sevwral readings also using RP etc.
http://trevor.butler.edu/~psaffire/sappho.html