極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

サッチャーとケインズの国

2013年04月09日 | 環境工学システム論

 

 

 

 


福島第一原発で高濃度汚染水の漏洩が問題になっている。わたしの予測では東電をはじめとし
た地域独占電力会社は4月から原子力部門を国有化し切り離し(発送電分離の法整備はセカン
ドプライオリティ)新会社としてスタートするはずだった。このことは現行政府への求心力低
下となるはずだ。

 

サッチャーが亡くなった。皮肉なことにこのブログでは「新自由主義論Ⅰ」を論考中でサッチ
ャーには批
判的だ。ラージ・システムとしてのフリードリヒ・ヘーゲル的評価としては、米ソ
冷戦構造が生み出した異端の保守主義者となろう。彼女の信念に満ちた政治用語は曖昧そのも
のだ。彼女の“共産主義”批判は、スターリン主義(=アジア専政主義)であり、彼女の新古
典主義経済政策や新自由主義政策は、安直な生活主義には厳しく、国家間戦争や武器輸出とい
う点で安直な国家主義だ。思えば、米国の新自由主義は、へーゲル主義・レーニン主義・無政
府主義(リバタリアン)や後に新保守主義に転向するトロッキズムが影響しているし、民営化
政策はマルクス主義の価値観(非組織労働者>組織労働者、民営>国営、労働>資本、資本>
国家)とクロスするところもある。そして、国際的テクノクラート(エリート階層)による資
本収奪の後遺症からの世界規模での世直し運動が始まっているというわけだ。その意味で、戦
後の一時代を切り開いた特異な政治家だった。
                                       合掌

                                    

 

【新たな飛躍に向けて-新自由主義からデジタル・ケイジアンへの道】

1.タブーと経路依存性
2.複雑系と経路依存性
3.複雑系と計量経済学
4.ケインズ経済学の現在化
5.新自由主義からデジタル・ケイジアン

 
【ケインズ経済学の現在化】


【国際通貨の改革

 【資本規制擁護論】

将来は不確実であるから,どのような時点においても,ある国の住民に自国経済の見通しにつ
いていっそうの不安を感じさせるようななんらかの出来事(束の間のものであろうとなかろう
と)が起こるかもしれない。為替取引の自由な市場システムのもとでは、これらの住民は自国
内の銀行組織からその貯蓄を引き出し、それを自らが安全な避難所と信じる他の国の銀行組織
へ移すことができる。安全な避難所を見つけようとしてある国を去る資金は「逃避資本(flight
capital
と呼ばれる。もし相当数の人びとがその資金を同時に自国経済からこの安全と思われる。
避難所に移そうとすれば、その結果もたらされるのは、銀行の倒産を引き起こす取り付け騒ぎ
と同じものになると
ポール・デヴィッドソンは語る。

 銀行取り付け騒ぎの場合には、通常であれば預金保護政策によってそれを押し止めること

 は十分可能である。不幸なことに、大量の逃避資本のある国から他国の安全な避難所への
 移動は、たんに国内の預金に保険を付けることによっては阻止できない。むしろ、もしこ
 の資金の逃避が巨額といえるほどになるならば、ますます多くの人が、国内で生産された
 財の購入を取りやめ流動的な外貨資産の自らの保有を増やすにつれて、国内経済の崩壊を
 もたらす可能性がある。このような状況は、国内経済にかなりの景気後退圧力を生み出し、
 それによって政府が経済を安定させ景気後退ないし不況に陥らないようにするための経済
 政策に取り掛かるのをより困難にするのである。

 わたくしの案では、国境をまたぐすべての資金の動きはその国の中央銀行および続いてIM
  CU
を経由しなければならないから、国家は、国境を越えるどのような資金の動きをも監視

 することができ、そのような取引がIMCUの帳簿上の中央銀行預金をつうじて処理される
 
をたんに拒否するだけでその動きを停止させることができる。各国は、理由が何であれ、
 そ
のような資金の流出を防ぐことが国民経済の利益になると政府によってみなされるなら
 ば、
資金の流出を制限するのに効果的な政策を策定することができるのである。

                  ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
                『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』 


適正な税負担分を支払うのを避けるために国際的な取引制度を悪用することはできないことをその市
民したがって、例えば第6章で指摘したように、もしそのようなシステムが実現されるならば、米国政府
は、秩序と流動性を保証するための信頼できるマーケットメーカーの制度を欠いている。投資
銀行によって組織される国内金融市場の創設を禁止することができるであろう。この資全管理
条項のもとでは、もし各国の証券取引委員会が金融サービス企業による一定の金融市場活動を
一律に禁止するならば、アメリカの金融サーヴィス産業は、米国の証券取引委員会の規則に従
わない外国の金融サービス企業に利益の奪われることを恐れる必要もなくなるであろう。最後
に、違法な活動得られた資金、自国の徴税吏の追求から逃れるためにある国から他の国へ

移動していIMCUに至るものでなけ
ればならない。その結果、各国はそのような国境を越える取引を監視することができ、その発生を阻止
することができるのである。明らかにこれはIMCU案の重要な側面である。それにより各国は、
だれも自らのような違法な国際的麻薬取引による利益の源をも切り崩すのを可能にするの
であるとこの章をむすぶ。

【ケインズも誇りに思うような文明化された経済社会の実現に向けて】

文明社会とは、その市民を励ましてその行なうどのような試みにおいてもすぐれたものになる
よう努力させるものである。しかしながら、文明社会はまた。その市民がすでに特っているか
あるいは今後伸ばすことのできる特殊技能を活かせる分野で働く機会を、市民に与えなければ
ならない。いやしくもなすに足ることなら立派にやるだけの価値がある。文明社会はまた、社
会で生産を担当している人びとが、他の人びとの欲求についての感受性と共感を持ち続け、他
の人びととの間で公明で誠実な契約上の取引をするよう促すはずである。これらすべての目的
は、すべての人が働き所得を稼ぐ機会を特っている経済システムにおいては、達成が容易であ
る.資本主義経済においては、律義に働きそれに対して正当な所得を得る能力は、労働者その
人だけでなくその家族に対しても自尊心を与えるものであるとし。デヴィッドソンは次のよう
に述べる。


 しかしながら、過去40年のほとんどの期間中、経済政策をめぐる社会に公開された議論は、
 もし利己的な個人が政府の干渉も規制もない自由な市場で社会の他の人びとについて思い
 わずらうことなく事業活動をすることを許されるならば、結果として生ずる自由市場は経
 済を至福の状態に導くであろうという信念によって支配されてきたのである。しかし、金
 融機関の規制緩和は、一方で私利をはかる住宅ローン組成業者、投資銀行およびその他の
 業者たちが、住宅購人希望者たちに(しばしば詐欺的な情報と一緒に)住宅ロ-ンを提供
 することを可能にしたものの、他方でもはやその住宅ローンの返済負担に耐えられなくな
 った数百万の罪のない人びとやグローバルな経済がいっそうの景気後退に陥るにつれて働
 き口を失った多くの無事の人びとに、大きな不幸をもたらしたのである。今望まれること
 は、今日の政治的リーダ
ーたちがこの社会的地殻変動ともいうべき経験から学び、けっし
 て再び自由市場哲学に盲目的に従うことのないようにすることである

 現代の資本主義経済システムにおいては、生産的な仕事を持つことは各市民に尊厳を与え
 る上での重要な要素である。したがって、文明化された資本主義経済システムの最も重要
 な目的のひとつは、働く意欲と能力を持っているすべての人が、安全で健康的な環境下で
 の働き口を確実に得ることができるようにすることである。先の諸章は、民間部門の雇用
 主が、積極的に仕事を求めているすべての労働者を雇用するのに十分な利潤インセンティ
 ブを持
つことができるのを、政府がどのようにして保証することができるのかにいてのケ
 インズの考えを説明した。


 ルーズヴェルトは,政府にはすべての市民に雇用と繁栄を提供する最後の拠り所たる買い手とし
 て演じるべき積極的で強力な役割があるという。ケインズの哲学の威力を明確に理解した最初の
 大統領であった。それでもなおルーズヴェルトは、国家を打ちのめし将来の世代に負担を
 負わせる
国債の恐怖にとらわれていたが、戦争が勃発したとき、そのような懸念は一蹴さ
 れてしまった。巨額の政府赤字によって賄われた戦争に勝つための支出は、政府がつねに
 民間の全就労可能人口に対して完全雇用という幸運を保証する上で積極的な役割を演じる
 ことができるのを明確に証明したのである。

                  ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
                『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』 


ルーズヴェルトの後継者たちは、共和党員であれ民主党員であれ、ケインズがこのような政策
処方茎を提案した最初の人物であったことを必ずしも理解していなかったとしても、経済的繁
栄を維持するためにケインズの発案した政策を採用した。われわれがすでに指摘したように、
トルーマン大統領の政権は、マーシャル・プランを生み出した。この計画で、国際貿易の黒字
国である米国は、貿易不均衡問題を解決するためにその富を使用し、それによってヨーロッパ
諸国がその国民経済を再建するのを助けるとともに、アメリカ人のために輸出産業での雇用機
会を作り出したのである。トルーマンの後
継者であるドワイト・アイゼンハワー(Dwight Eisenhower
は、平時に企てられたものとしては最大規模の公共事業計画のひとつである。全国高速自動車道路
網の建設計画を策定した。この事業は建設業やその関連産業に利潤と雇用をもたらしたばかりでなく、
工場の戸口で原材料を受け取ったり最終製品を市場に届けたりするのをより安価にすることによって、
アメリカの工場の生産性を高める輸送システムを国家に提供したのである。そのような積極的な政府
施策は、米国や自由世界のほとんどの国に繁栄し続ける文明化された生活の場をもたらしたのである
と強調し、その担保としての金融市場の流動性と安定性の維持が不可欠であると説く。

また、1970年代におけるスタグフレーションの出現とフリードマンの自由市場哲学の勝利によ
って、中央銀行と政府は、経済に対して、これまでとは異なったあまり
洗練されているとはいえ
い哲学的アプローチを採択するに至った。例えば、石油輸出国機構(OPEC)によって仕組
まれた原油価格の2回目の急騰後の1979年に、ヴオルカー議長のもとにあった連邦準備制度は、
利子率を2桁の水準にまで高め、多くの企業にとっての利潤獲得の機会を意図的に台無しにし,
大不況以来最も高い失業率を生み出した。米国経済が急速に悪化し自由世界の他の国々の経済
もまた落ち込むにつれて、ガソリンやその他の石油製品に対する需要の著しい減少がみられた。
同時に、非OPECの新しい原油供給が、北海やアラスカのような地域から市場に現れた。0PEC
のカルテルは、これらの挑戦に直面して、それほどの圧力を市場に加え続けることができなく
なった。石油価格は低下し、以後長年にわたって低水準にとどまった。労働者が生計費の増額
を要求し企業がその利潤マージンをインフレから守るために価格を引き上げるにつれて所得イ
ンフレを誘発することになる商品インフレの脅威は、抑えられたかのように見えた。


このように所得インフレの到来を阻止するため意図的に高い失業率を作り出すという、1979年から81
年に至る連邦準備制度主導の政策の肛例から導き出される考えは、単純明快であり自由市場哲
学にも合致するものであった。その構成員が2年ごとの政治的選挙の洗礼を受ける必要のない
独立した中央銀行理事会は、国民が不本意ながらも受け入れざるを得ないような政策をも立案
することができた。これらの政策は、労働者と経営者が自由市場において顧客を失うことなく
賃金や価格を引き上げることができると信じるほど経済が好調なときに解き放
たれるインフレ圧
力を抑えることを、目的とするものであったと思われる。

むしろ、もしインフレが中央銀行家の望ましいと感じている水準より高い場合、雇用主に労働
者を一時
解雇させるために企業にとっての利潤獲得機会の減少を生み出すことを意図的に狙っ
た不人気な金
融引き締め策を中央銀行が実施するという。金融政策が立案されるのがつねであ
った。メロン財務長
官のフーヴァ大統領に対する冷徹な政策提言が、政治権力の中枢部に復活
してきているのである。
体制から不健全な部分を取り除くには企業と労働者の所得を稼ぐ機会を一
掃する必要があった。企業と労働者は、所得を稼ぐ機会を失うことにより、新たな働き口や利
潤獲得の
機会が現れた時、より勤勉に働きより控え目な要求をするようになるであろうという
のである。確かにこれは、21世紀の資本主義システムの経済問題に対するあまり洗練された解
決策とはいえない。


ケインズ・ソリューションは単純であるとともに、間違いなくより洗練されたものである。人
びとが働くことを望んでいるかぎり、政府は人びとが自らの技能に適した働きロを得る機会を
確実に持てるような手段を講じなければならない。もしその国の営利企業が労働者を完全に雇
用して生産できるすべての財・サービスに対する市場需要を生み出すのに十分な民間部門の購
入者からの需要が存在するならば、政府の唯一の責務は、安全な労働条件、製品の安全性要件
などを確保するために文明社会によって制定された法律に、雇用主を間違いなく従わせること
である


国の産業の生産物に対する民間部門の市場需要に大幅な不足がある場合、そしてその場合にか
ぎり、政府は,企業にとって利潤獲得の機会を,また失業者にとって雇用の機会をそれぞれ生
み出すような需要を増大させる上で積極的な役割を演じるべきである。
かなり大幅な景気
後退が差し迫っているように思われ民間部門の購入者がその所得をより多く支出しようとしな
いとき,政府は最後の拠り所たる買い手としての機能を果たすべく介入しなければならない。
それでは政府はどんなものを購入すべきであろうか

ケインズが主張したことは、上述のような場合、国家は生産性を向上させるような活動を国に
もたらす分野への投資を試みるべきであるということであった。ケインズによれば、もし政府
支出が「完全雇用に近い状態を確保する唯一の方法」であると考えられるならば、「政府当局
が個人の創意と協調するようにさまざまな形で妥協し工夫することをすべて排除する必要はな
い」とし、
政府は、通勤者の交通を高速道路上でガソリン燃費の悪い車を使用することから効
率的で信頼性の高い公共輸送機
関に切り替えるのを促進するために、軽軌条鉄道輸送システム
の発展を促すべきであろう。そ
の上うなプロジェクトはまた、地球温暖化を防止しわれわれの
子孫に残す大気汚染を削減し上
うとする国の努力にも寄与するであろうと具体例を示し次のよ
うに述べる。

 
 しかしながら、ケインズも『一般理論』の中で警告している上うに「われわれは著しい分
 別をもっており、思慮深い理財家にそっくり似るようにしつけられており、子孫のために
 彼らの住む家を建て彼らの『金融的』負担を増す上うな場合には、事前に慎重な考慮を払
 うので、われわれには失業の苦難からそんなに簡単に脱出する途がないのである」。借入
 は将来の世代に多額の国家債務を負わせることになるであろうから、政府は雇用や将来の
 世代が使用する上うな生産的投資を生み出すために借金をすべきではないと主張するもの
 がいる。もし政府が後世により少ない国家債務を残そうとして、なにもしないでおくなら
 ば、われわれが生産的な成果を提供しないことによってどれだけ将来の世代を貧乏にする
 ことになるのかを、かれらは理解していない

 明らかに、政府が経済回復のための大規模な支出再建計画によって促進できると考えられ
 る投資プロジェクトの一覧表は、膨大なものになる。これらのプロジェクトの多くは、た
 とえ経済が深刻な不況に陥っていないとしても、投資するのが好ましいものであろう。国
 民の生産性を改善するメリットはあまりにも明らかであるので、投資プロジェクトヘの支
 出の結果として生じる国家債務の規模がわれわれの子供たちにとってあまりにも耐えがた
 い負担となる恐れがあるからといって何もしないで済ますことはできないのである。

 おそらく重要だが政治的に議論となる恐れのあるプロジェクトは、すべての国民にとって

 の健康管理への投資にかかわるものである。米国は、ほとんどの先進諸国とは異なって国
 民すべての健康を守るための国の制度を持っていない。その代わりにアメリカ国民は、い
 ろいろな健康保険制度の寄せ集めに依存している。第2次世界大戦以来、ほとんどの雇用
 者は、主として雇用主によって支弁される民間の健康保険制度によって守られてきた。こ
 れらの制度は、生産物を生産し販売する企業のコストを著しく増加させるに至っている。
 米国の3大自動車メーカーにとって、生産された自動車1台当たりの、雇用者と退職者(
 その健康管理費用もまた負担される)のための健康管理コストは、使用される鋼材のコス
 トよりも大きいといわれている。この事実によっても、とくに一般的に自由な国際競争を
 余儀なくされている今日のような時代において、米国の雇用主がコスト競争の点で外国の
 生産者に比べ大変不利な立場に置かれていることは明らかである。

                             ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
               『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』 


要するに、政府は、民間部門がよい結果をおさめるのを促すような多くの投資プロジェクトに
資金供給することができるのである。問題は、資金の不足にあるのではなく、決意の不足にあ
る。わたくしは、政府の規制当局者が、公開された金融市場のよく組織化され秩序立っている
ことを社会の構成員に保証する上で、演じるべき重要な役割を持っていることを明らかにする
ことができたと思っている。この保証行為は、自分の退職後の生活向けに流動性のある購買力
を十分に蓄えておくためのみならず、現役として所得を稼いでいる期間中のなんらかの将来の
(予期されているか、あるいは予期されていない)支出の必要性を満たすために、自らの貯蓄
を投資しておくべき金融資産を探し求めている家計を守ることになるであろう。ケインズ・ソ
リューションを実行に移すことは容易なことではないであろう。しかしながら、その解決策は、
近年推進されてきた効率的市場理論、すなわち、グローバル経済を破滅の寸前にまで追い込ん
だ哲学よりも,安定的な繁栄する経済システムヘのよりいっそうの希望を与えてくれるもので
あると述べ締めくくる。
 

 

                                                   この項つづく

 

 

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