極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

忘れられた巨人最終章へ②

2019年10月27日 | 環境工学システム論




                
8.泰 伯 たいはく
ことば------------------------------------------------------
「人のまさに死せんとするや、その言うこと善し」(5)
「士はもって弘毅ならざるべからず。任重くして道遠し」(8)
「民はこれによらしむべし。これを知らしむべからず」(10)
「その位に在らざれば、その政を謀らず」(15)
「学は及ばざるがごとくするも、なおこれを失わんことを恐る」(18)
------------------------------------------------------------
  
7 幼君の後見として適格であり、安んじて一国の政治をまかせら
れ、どんな不測の事態にもけっして勤揺することのない人物、そう
いう人物こそ疑う余地なき君子人である。(曽子)

曾子曰、可以託六尺之孤、可以寄百里之命、臨大節而不可奪也、君
子人與、君子人也。

Zeng Zi said,"A person, to whom infant successor's care can
be left, to whom country affairs can be left, who is never
discouraged when he is faced to an important matter. Can we
call him a gentleman?  Yes, indeed."


人口減少時代のまちづくり⑯
24 「自己破産」は増加しているのか  
【要点 
①自己破産の理由「生活苦・低所得」が最も多い。。 
②破綻債務者の半数近くが、負債額500万円未満。 
③自己破産者は「女性」より「男性」が多い。

1.自己破産の現状  
「自己破産」とは、借急が膨らんで返済できなくなり、裁判所に自
ら申しに吠てる破産のことで、消費茜‥破産、個人破産とも いう、
法が自己破産を認めた場合、債務所の必要限度の生活費や財産以外
を貨て換価し(モノの値段を見積もること)、各債権者(クレジッ
ト会社など)に、その債権額に応じて借浙を返済する代わりに、残
りの借金の支払義務を免除する制度。「破産法」は1922年に制
定され、2005年に「新破産法」が改正され、自己破産制度は今
まで以上に利用しやすくなりました。裁判所の司法統計によると、
バブル経済がはじける前の1990年の自己破産件数は年間で約1
万1千件程度。1991年~2003年まで増加を続け、03年に
ピークを迎え、年間の破産件数は約25万2千件となる。それ以降
15年まで減少し続けたが、16年に増加に転じ、17年は前年度
比6・09%の増加(6万8791件)。16年から自巳破産が下
上昇した背景には、銀行のカードローンが自己破産の一因と言われ
ている。無担保で個人に融資する銀行のカードローンの事業拡大が
要因の一つと見られている。過剰融資の恐れのあるカードローンを
めぐっては全国銀行協会が17年3月に各行に過剰融資の防止策の
策定を求める「申し合わせ」する。その後の状況について、金融融
庁が国内の都市銀行・地方銀行を対象に調査。その結果国内106
行の約9割が、何らかの融資上限枠を設定した。金融庁が銀行のカ
ードローン業務に目を光らせるようになり、銀行側も対応を打ち出
さざるを得なくなったと言われている、

 Feb. 13, 2018

2.自己破産するとどうなるのか  
日本弁護士連合会「破綻事件及び個人再生事件録調査(2014年)
)」によると、破産債務者の年代で一番多いのが「40歳代」27・
02%、続いて「50歳代」21・05%となっています「20~
30歳代」は減少傾向にあるのに対して、「60~70歳代」は年
々増加傾向となり、医療費や介護費が家計を逼迫することで、自己
破産申請を行い、支払い能力も高齢化が進んでいます。裁判所に自
己破産申請を行い、支払い能力が不能であると認められると、支払
い義務を免除する「免責」手続きが行われ、毎月取り立てに追われ
ていた人は、それから解放される。ただし、デメリットもある。債
務者 の住所・氏名が国の「官報」で掲載される。また、弁護士・
宅建業者・警備員に一定期間就くことが出来ない職業制限がかかる。

3.自己破産を防ぐには
自己破産にがった理由として、「生活苦・低所得」が60・24%
と最も多く、次に債務者が履行しない場合に変わって行われる「保
証債務」が22・42%、「病気・医療費」が20・73%、「浪
費・遊興費」、「ギャンブル」の合計が9・84%となっている。
そして、破綻債務者の半数近くが、負債額500万円未満で。一方
で「住宅購入」により破産にいたった人が、全体の約16%と、年
々増加傾向にあり、男女比については「男性」が57・74%、「
女性」が42・26%と男性が少し多い。このような破産に至る理
由から、「貧困による生活の困難化」、「賃金格差・資産格差」、
「失業やリストラなどにより住宅口ーンが払えない」など、破産せ
ざるを得ない状況が深化している。このよう状況は格差社会、階級
社会の弊害が原因と考えれている。
キーワード 低所得と生活苦/カードローン/賃金格差
 
   
第4部 ガウェインの追憶-そのⅡ   第15章

では、急いで終わらせてください。雌竜は弱ってるとはいえ、死
ぬのを 見るまで安心できませんから」  

だが、ウィスタンはもうベアトリスの言葉を聞いていないようだっ
た。いま、遠くを見る表情でアクセルを見つめていた。  

「大丈夫ですか、ウィスタン殿」とやがてアクセルが言った。  
「アクセル殿」と戦士がごった。

「もうお会いすることはないかもしれません。ですから、最後にも
う一度だけお聞きします。わたしが少年のころ、村を賢い王子様の
ように問歩し、罪のない人が戦の悲惨さから守られるという夢を見
させてくれたやさしいブリトン人がいました。もし少しでも記憶が
あれば、お別れするまえに、わたしに打ち明けてくれませんか」  
「仮にその男であっても、わたしはいまこの竜の吐き出す霧を通し
てしかその男を見ることができません。夢を追う愚か者でしたが、
根は善良な男です。ですが、固い誓いが残酷な殺戮の中で反故にさ
れたことに苫しみました.サクソンの村々に協定を広めた人はほか
にもいましたが、もしわたしの顔を見て、あなたの胸の中で何かが
騒ぐのなら、別人だと思うことも ないのではありませんか」  

「最初に会ったときにそう思いましたが、確信できませんでした。
率直なお答え、感謝します」  
「では、わたしにも率直にお話しいただけませんか。昨日お会いし
てから いや、たぶんずっと以前から ああでもないこうでもないと
考えつづけてきたことです。覚えているというその男、やはりあな
たが復讐したい男の一人なのですか」  
「何を言っているの、あなた」とベアトリスが前に出てきて、アク
セルと 戦士の間に割り込んだ。

「あなたとこの戦士様の間にどんないさかいがあるというの。もし
何かあるとしても、あなたにはわたしが触らせませんよ」  

「ウィスタン殿は、お姫様と出会うまえにわたしがかぶっていた皮
のことを話しておられる。はるか以前、忘れ去られた道で跡形なく
消えたものと思っていた皮だ」ついでウィスタンに向かい、「いか
がです」と尋ねた。

「その剣はまだ濡れています。復讐をお望みなら簡単でしょう。た
だ、わたしの前で震えている妻は見逃してください」  

「その男はわたしの憧れでした。のちに、裏切りに加担した罪でき
つく罰せられろ、と幾度となく望んだことは確かですが、いまはわ
かります。最初から騙すつもりではなく、ブリトン人にもサクソン
人にもよかれと思ってやったことかもしれない、と思います。もし
また会うことがあれば、平和のうちにお進みなさい、と言うでしょ
う。ま、もはや平和などありえませんが。さて、失礼します。いま
から穴に降りて、使命を果たします」

穴の底の竜は、位置も姿勢も変えていなかった。見知らぬ者の接近
をとくに、いま梁穴の険しい壁を下りてくる男の接近を五感から警
告されていたとしても、クエリグは警戒するそぶりを見せなかった。
いや、背骨の上下運動が少し人きくなっていはしないか。そして、
瞼の開閉にいささかの緊張が見られはしないだろうか。アクセルに
はよくわからなかった。だが、底の生き物をながめているうち、ふ
と思ったことがあった。それは、この梁穴で竜以外の唯一の命ある
もの、あの山査子が、竜に とって大きな慰めになっているのでは
なかろうか、ということだ。いまも、竜はその心の目でこの山査子
を見、手を伸ばしているのではなかろうか。愚にもつかない空想で
あることはわかっていたが、竜を見ていればいるほど、ありうる話
のように思えてきた。なぜなら、こんな場所で山査子が一本だけ育
つなどということに、ほかにどんな説明がつくだろう。竜の孤独を
慰めるものとして、マーリンその人がこの山査子の成長を許したの
ではなかろうか。ウィスタンは鞘から抜いた剣を手にして、巣穴を
下りつづけた。その視線は常に底にいる生き物に当てられ、それる
ことはほとんどなかった。突然立ち上がり、恐るべき悪魔に変身す
ることを半ば予期していたのかもしれない。途中で一度足を滑らせ、
背中から滑り落ちそうになったが、剣を地面に突き立てて落下を防
いだ。そのとき石ころや砂利が斜面を流れ落ちていったが、依然、
クエリグからの反応はなかった。ウィスタンは巣穴の底に安全に下
り立った。額を拭い、アクセルとベアトリスをちらりと見上げると、
竜に近づいていき、あと数歩のところで立ち止まった。そして剣を
掲げ、刃を念人りに調べはじめた。なぜかそこに血の痕を発見して、
大いに驚いたようにも見えた。そして、しばらくの間そのまま勤か
ずにいた,さきほどの勝利からウィスタンの様子がおかしい、とア
クセルは思った。あのおかしさがつづいて、いま戦士は自分が ぜ
梁穴に入っているのか、その理由を忘れたのではなかろうか。 だ
が、老騎士との戦いで見せた意外性がここでも発揮された。ウィス
タンが突然前進した。走りはしなかったが、きびきびと速足で歩き、
そのまま歩調を緩めることなく竜の体をまたいで、早く巣穴の反対
側にたどり置きたくてたまらないかのように急ぎつづけた。だが、
竜をまたいだ瞬間、手の剣が素早く低い弧を描いていた。竜の頭が
くるくると回転しながら宙に飛ぶのを、アクセルは見た。頭は石の
床に落下し、少し転がって止まった。だが、その場所に長くはとど
まれなかった。なぜならその周囲に濃い 流れが発生した。流れは、
最初、枝分かれして頭を取り巻いたが、やがて集まってそれを浮き
上がらせ、巣穴の床の上を押し流しはじめた。結局、頭は山査子の
本に引っかかり、喉を空に向けた形で止まった。アクセルはトンネ
ルの中でガウェインが切り落とした悪魔犬の首を思い出し、また物
悲しさに押し包まれそうになった。慌てて心から目をそらし、まだ
歩きつづけているウィスタンを見た。戦士は広がりつづける血溜り
を避け、ぐるりと円を描くように戻ってくると、剥き出しの剣を下
げたまま巣穴の底から地上を目指しはじめた。

「終わりましたね、アクセル」とベアトリスが言った。  
「終わったな、お姫様。だが、あの戦士に一つ尋ねたいことができ
た」

               *  

ウィスタンが穴から出てくるまでに、意外なほどの時間がかかった。
ようやく一人の前に現れたウィスタンは少しも浮き立った様子がな
く、むしろ意気消沈しているように見えた。一言も発しないまま巣
穴の縁の焼け焦げた地面にすわり、いまさらのように剣を上中に深
々と突き刺した。眼差しはうつろで、その向かった先は巣穴ではな
く、それを越えた先にある雲と、遠くに見える跨白い山々だった。  
ややあって、ベアトリスがウィスタンのところに行き、その腕にそ
っと触れた。

「今回のこと、とても感謝しています、ウィスタン様]と言った。
「もしここにいれば、同じように感謝する人が国中にたくさんいる
はずです。なぜそんなに元気がないのですか」  
「元気がない……いや、すぐに元気になりますよ、奥さん。ですが、
いまは……」ウィスタンはベアトリスから目をそらし、また雲を見
つめた。
そして「あなた方ブリトン人の間に長くいすぎたのかもしれません」
と言った。

「あなた方のなかの卑怯者を軽蔑し、勇気ある人や賢い人を尊敬し、
愛してきました。幼いころからずっとです。いまこうして震えなが
らすわっているのは、疲れたからではなく、この手でいま何をした
かを考えるからです。来るべき世で、わたしは心を鋼鉄に鍛え上げ
ねば、王のためには役立たずの戦士に堕してしまいます]  

「なんのことでしょう、戦士様」とベアトリスが尋ねた。

「これから何があると言うのですか」  
「正義と復讐です、奥さん。これまで遅れていた正義と復讐が、い
まや大急ぎでこちらへやってきます。もうすぐです。わたしの心が
いま乙女のように震えているのは、わたしがあなた方の間に長くい
すぎたからに違いありません」  
「最前おっしやった言葉が耳に残っています」とアクセルが言った。
「平和のうちに進めと言いながら、もはや平和などありえないとも
言われました。あなたが竜の巣穴に下りていくのを見ながら、どう
いう意味だろうと考えていました。ここで説明していただけません
か」  
「アクセル殿はわかりはじめておられるようです。わたしの王が雌
竜退治を命じられたのは、かつて虐殺された同胞への記念碑を建て
るためだけではありません。もうおわかりでしょう。竜退治は、来
るべき征服に道を開くためです」  

「征服ですか」とアクセルはウィスタンに身を寄せて言った。「あ
りうることでしょうか、ウィスタン殿。あなた方サクソンの軍隊は、
海外からの同胞で膨れ上がったのですか。それとも獰猛な戦士ぞろ
いで、平和裏に統治されている国々でも征服を口にするのですか」  

「わが軍の兵力は、沼沢地においてさえまだまだ貧弱です。ですが、
国土全体を見渡してみてください。谷という谷、川辺という川辺に
サクソン人の村があります。どの村にも強い男たちと成長しつつあ
る少年たちがいます。西に向かって進軍するわが軍勢は、途中でそ
の男たちを吸収して勢力を拡大するでしょう」  
「これは勝利後の混乱がしやべらせているのでしょう、ウィスタン
様?」 とベアトリスが言った。「なぜそうなるのです。あなたもご
覧になったはず。ここでは、どの村でもサクソン人とブリトン人が
ともに暮らしています。子供のころから愛してきた隣人を襲う人な
どいるでしょうか」 

「そうです。いまや竜が死に、あの子を呼ぶ力が消えましたから、
すぐに落ち着くでしょう。あの少年は、たぐいまれな本物の戦士の
魂を持っています。ほかのことは学べばいい。わたしが鍛えます。
わたしと違って甘い感傷などに侵されない、鋼鉄の心を鍛え上げま
しょう。来るべき世界で、あの子は慈悲の心など微塵も見せないよ
う育つはずです」  

「ウィスタン様」とベアトリスが言った。「あなたの言葉がうわ言
なのかどうか、わたしにはまだわかりません。ですが、夫とわたし
は弱っています。山を下りなければなりません。あの騎士様の埋葬
のお約束、覚えていてくださいますか」  

「約束しますよ、奥さん。そろそろ鳥どもが集まってくるころでし
ょう。あなた方は、今後この国がどうなるか、その一端をお知りに
なった。逃げる時間はあります。騎士殿の馬に乗り、この土地から
お逃げなさい。息子さんの村へ行くなら、そうなさるといいが、と
どまるのはせいぜい一日か 二日。わたしたちの軍隊はまだでも、
憎しみの炎がいつ燃え上がるか誰にもわかりません。息子さんにも
警告を。聞き入れないようなら捨て置いて、ご自分はできるだけ西
へ逃げることです。まだ虐殺は逃れられるかもしれません。さあ、
行って騎士殿の馬をお探しなさい。ああ、エドウィンのあの不思議
な熱がさめて、落ち着いているようなら、ロープを切ってやってく
ださい。そして、ここへ来るように、と。あの子には荒々しい未来
が待っています。つぎの段階へ進むためにも、この場所を----倒れ
た騎士と倒れた雌竜を----ぜひ見せておきたい。それに、あの子は
墓掘り上手だったことを思い出しました。さあ、お急ぎなさい、や
さしい友よ。そして、さようなら」



第16章
しばらくまえから山羊がエドウィンの頭の近くを歩きまわって、ガ
サガサとうるさい。なぜこんなに近くに来るんだろう。同じ杭に結
びつけられているのは確かだけど、場所ならそっちにもたっぷりあ
るじやないか。起き上がって山羊を追い払ってもよかったが、あま
りにも疲れていた。ついさっき不意に疲労感に襲われた。それはじ
つに強い感覚で、エドウィンはそのまま前のめりに地面に倒れ伏し
た。以後、頬をマウンテングラスに押しつけたまま横たわっている。
眠りに落ちかけたとき、突然、母さんが去ったという確かな思いが
湧き上がってきて、眠りから引き戻された。それから動かず、目を
閉じて、ただ「母さん、いま行くから。もうちょっと待って」と地
面につぶやきつづけていた。答えはなく、エドウィンの内部に大き
な空っぽの穴ができた。その後、眠ったり覚めたりを繰り返し、ま
た何度か母親に呼びかけてみた。どの呼びかけにも、返ってきたの
は沈黙だけだ。そして、いま、山羊が耳の近くで草を食べている。  

「母さん、許して」と土に向かってそっと言った。
「縛られてしまって、抜 け出せなかった」  

上のほうから声がする。そのとき初めて、周りで聞こえているのは
山羊の足音ではない、と気づいた。誰かが手をほどいてくれている。
体の下からロープが引き抜かれた。やさしい手が伸びてきて、エド
ウィンの頭を持ち上げた。目を開くと、老婦人の顔があった。ベア
トリスさん………ヘアトリスはエドウィンの顔をのぞき込むように
していた。もう縛られていないことに気づき、エドウィンは立ち上
がった。片方の膝がひどく痛んだ。だが、不意の突風に体を揺さぷ
られても、ちゃんと立っていられる。あたりを見回すと、灰色の空
と、上り斜面と、隣の山の頂にある岩の並びが見えた。少し前まで、
あの岩こそすべてのように思えていたのに、いま、母さんは去って
しまった。そのことはもう疑いようがない。戦士に言われた言葉を
思い出した。救出には遅すぎたとしても、復讐にはまだ間に合う。
戦士の言うとおりなら、母さんを連れていったやつらに、借りを返
してやる。思い切り返してやる。 

ウィスタンの気配がなかった。ここには老夫婦しかいない。だが、
いてくれることにエドウィンの心が和んだ。二人は前に立って、心
配そうに見ている。親切そうなベアトリスさんの姿に、突然、涙が
出そうになった。だが、何か言っていることに気づいた。ウィスタ
ンさんのことを何か言っている。エドウィンは一所懸命聞こうとし
た。ベアトリスさんのサクソン語は聞き取りにくいし、風が邪魔を
する。エドウィンはとうとう相手の言葉をさえぎり、

「ウィスタンさんは倒されたんですか」と尋ねた。  

ベトリスは目を閉じ、答えなかった。エドウィンが問いかけを繰り
返し、その声が風より大きく響いたとき、ベアトリスははっきり首
を横に振って、言った。  

「聞こえなかったの、エドウィン?ウィスタン様は無事です。あの
道のてっぺんであなたを待っていますよ」  

聞いて、エドウィンはほっとし、駆け出した。だが、すぐに目まい
がて、しかたなく、言われた道までも出ないうちに足を止めた。気
を落ち着かせ、後ろを振り返った。老夫婦が自分の方向へ数歩踏み
出すのが見えた。なんて弱くて、頼りなさそうな人たち、と思った。
風の中に並んで立ち、支え合っている。初めて出会ったときよりず
っと老いて見える。あれで、山を下りるだけの力が残っているんだ
ろうか。いまぼくを見ているけど、あの奇妙な表情は何。二人の後
ろでは、いつも動きまわってしかたがない山羊までが、立ち止まっ
てぼくを見ている。不思議な思いがエドウィンの心を通り抜けてい
った。ぽくはいま頭のてっぺんから足の爪先まで血 に濡れている、
と思った。だから、みんながああやってじろじろ見つめているんだ。

だが、足元を見下ろしてみると、服のあちこちに泥と草がついてい
るだけで、とくに変わったことはなかった。不意に、老人が何か叫
んだ。プリトン人の言葉で、エドウィンには理解できなかった。あ
れは注意だったんだろうか。頼みだったんだろうか。ベアトリスさ
んの声が風に乗って聞こえてきた。  

「エドウィン、わたしたち二人からのお願い。これからも、わたし
たちを忘れないで。あなたがまだ少年だったころ、老夫婦と友達に
なったことを思い出して」  

それを聞いたとき、ほかにもよみがえってきたものがある。戦士と
の約束があった。ぽくにはすべてのブリトン人を憎む義務がある。
でも、このやさしいご夫婦も含めろとは、ウィスタンさんも言わな
いだろう。いま、アクセルさんが、おずおずと手を上げている。さ
ようならのつもりかな、 行くなということかな……… エドウィン
は前を向いた。今度は、走り出しても体がちゃんと応えてくれた。
風が一方から体を押してきても、もう平気だ。母さんは去った。た
ぶん、どうやってももう取り戻せない。でも、戦士は無事で、ぼく
を待ってくれている。エドウィンは走りつづけた。道は険しくなり、
膝の痛みは ひどくなったが、走りつづけた。 

                     『忘れられた巨人』

次回から最終章(第17章)に入る。

時代設定:前カンタベリーのアウグスティヌス(Augustinus Cantuar-
iensis, 生年不明 - 604年5月26日か605年)はイングランドへのキリ
スト教布教で知られる7世紀の司教。初代カンタベリー大司教。正教
会・カトリック教会・聖公会で聖人)時代(ブリテン先史時代以降~
前中世期)。グレートブリテン島には紀元前9世紀ころから紀元前5
世紀
ころにかけてケルト系民族が侵入。これによってグレートブリテ
ン島の鉄器時代が始まり、ブリテン島各地にケルト系の部族国家が成
立。紀元前55年ローマユリウス・カエサルがグレートブリテン島に
侵入、西暦43年ローマ皇帝クラウディウスがブリテン島の大部分を征
服。ローマ帝国時代のブリタニアはケルト系住民の上にローマ人が支
配層として君臨。ただしローマの支配はブリテン島北部のスコットラ
ンドとアイルランド島には浸透せず、ケルト系住民の部族社会が続い
た。5世紀になって西ローマ帝国がゲルマン系諸集団の侵入で混乱す
ると、ローマ人はブリタニアを放棄。ローマの軍団が去ったブリタニ
アはゲルマン人の侵入にさらされる。

ゲルマン人のアングロ・サクソン諸部族がブリタニアに侵入し、グレ
ート・ブリテン島南東部を征服。この地域には後世アングロサクソン
七王国と呼ばれるようになる小国家群が成立。5-7世紀にブリテン島
南部のピクト人はアングロ・サクソンによって吸収・消滅する。この
ブリテン島南部の小国家割拠状態の中から次第にイングランド地方
形成された。イングランドの名称はアングロ・サクソン諸部族の中の
アングル人に由来。一方、ウェールズにはゲルマンは浸透せず、ロー
マから取り残されたケルト系の住民が中世的世界。スコットランドと
アイルランドもゲルマンに征服されることなく、ケルト系部族国家が
継続。それぞれの地域はこの頃から次第に独自の歴史性をもって分離
していく。この後、イギリスの歴史は、イングランド、ウェールズ、
スコットランド、アイルランド(現在では北アイルランドのみ)より
構成される連合王国(イギリス)の歴史となる。イングランドはまず
ウェールズを併合し、アイルランドを植民地化し、スコットランドと
連合、さらにアイルランドを併合するも、その大部分が独立して現在
の形となった。

                        この項つづく

 
【ポストエネルギー革命序論77】

画像処理事業:血管のなかも通れる砂粒大の極小カメラ
10月22日、 OmniVision Techonologiesは同社のイメージセンサ
「OV6948」が商用イメージセンサーで世界最小としてギネス世界記録
登録されたことを発表。内視鏡などの医療用イメージセンサで、サ
イズはわずか0.575×0.575mmとなっている。200×200ドット(4万画素)
解像度の映像を30fpsでキャプチャ可能。本センサーを搭載したカメ
ラモジュール「OVM6948 CameraCubeChip」も、本体サイズが0.65×
1.158×0.65mm(幅×奥行き×高さ)に抑える。高効率なウェハレベル
パッケージング技術により小型化を実現。センサにはバックサイド光
源を備えており、LED光源の発熱を抑えながら、低照度環境下におい
ても優れたイメージを出力可能という。独自の「OmniBSI」技術を搭
載し、容易にキャリブレーション可能なほか、4ピンのインターフェ
イスによりシンプルな接続性を実現。カメラモジュールとしては、
120度の視野角と、3mm~30mmのフォーカスレンジを備えており、アナ
ログ出力は4m超の転送が可能。消費電力は25mW。本センサおよびカメ
ラモジュールにより、神経、眼科、耳鼻咽喉科、心臓、脊椎、泌尿器
科、婦人科および関節など、身体のもっとも細い血管内の映像を映し
出すことができるとしており、需要が拡大を続けている内視鏡分野の
ニーズに応える。



40年までに洋上風力発電事業は110兆円に成長
10月25日、国際エネルギー機関の報告書によると、洋上風力は今
後20年間で指数関数的に成長し、エネルギーシステムの脱炭素化と大
気汚染の削減が世界の電力供給の大部分を占めると予測。


IEAは、2040年までに世界の洋上風力発電の容量を15倍に増やし、1兆
ドルの累積投資を誘致できると判断しています。ただし、これはほん
の始まりに過ぎず、政策立案者からの強化支援により、急速成長する
可能性がある。洋上風力資源は非常に豊富であり、IEAは最終的に年間
420,000テラワット時(TWh)以上を生成できると計算。これは現在の
世界の電力需要の18倍に相当する。欧州は洋上風力技術の先駆者、
この地域は将来の発展の原動力となる位置する。今日、欧州連合(EU
)の洋上風力発電容量はほぼ20ギガワット。現在の政策設定では40
年までに130ギガワット近くまで上昇するように設定。炭素中立性の
目標に達すると、洋上風力発電容量は2040年までに約180ギガワット
に跳ね上がり、地域最大の単一電源となる。政策が洋上風力のクリー
ンな水素の需要を大幅に増加させる野心的なビジョンは、欧州の洋上
風力発電容量を劇的に増加させる可能性がある。

過去10年間、エネルギーシステムの変革----シェール革命と太陽光発
電----に続き洋上風力発電は、大幅なコスト削減の観点からランクに
加わる可能性がある。洋上風力の大きな期待は、海上でさらに展開で
きるフローティングタービン開発の貢献による。理論的には、洋上風
力発電は、欧州、米国、日本など、複数の主要な電力市場の電力需要
全体を数回満たせる、現在、洋上風力発電は世界の発電量のわずか、
0.3%の供給だが、クリーンエネルギーの移行の主力になるためには、
政府と民間による作業が残っており、長期ビジョンを提供することで、
洋上風力発電開発による加速推進される。これには、低コストの資金
調達と、発電の効率的な統合を提供する陸上送電網の拡張に関する規
制が含まれる。IEAは、石油およびガス会社がオフショア技術の専門知
識を活用する大きなビジネス機会でもあると述べ、建設・保守を含む
洋上風力事業トの推定40%の生涯コストは、洋上石油およびガス部
門と大きな相乗効果をもたらし、最大の洋上風力エネルギー市場では、
今後20年間4千億ドル(約44兆円円以上の市場機会となると試算
する。

 

二酸化炭素捕捉ファラデー電気スイング反応吸着システム

10月25日、マサチューセッツ工科大学は、空気の流れから二酸化
炭素を除去する新しい方法----大気中の約100ppm二酸化炭素濃度まで
捕捉できるシステムの開発に成功したことを公表。



本件の炭素回収は、温室効果ガスの排出を削減するための最も重要な
方法の1つ。従来の技術は、熱エネルギーの損失、大きな設置面積、
または吸着剤の劣化により、本質的に非効率的。二酸化炭素の二酸化
炭素への還元的付加を利用して炭素を捕捉する電気化学セルを備えた
固体ファラデー電気スイング反応吸着システムである。このデバイ
スはコンパクトで柔軟性があり、補助装置の必要性を排除し、電気化
学的に活性化されたレドックスキャリアを使用し、エネルギー損失を
排除。ポリアントラキノン–カーボンナノチューブ複合負極を備えた
電気化学セルは、還元されたキノンのカルボキシル化により充電時に
二酸化炭素を捕捉し、放電時にを放出する。セル構造は、ガスにさら
される表面積を最大化、平行通路接触器ベッドでのセルの積み重ねを
容易にします。ファラデー効率が90%超とし、一定の二酸化炭素容
量で、0.6%(6000 ppm)から10%までの二酸化炭素濃度の入口ストリ
ームから、密閉チャンバーと吸着床の両方で捕捉することを実証した。
 捕捉された二酸化炭素モルあたり40〜90 kJの仕事。電気化学セルの
優れた耐久性は、7000サイクル後の容量の30%未満損失を示す。

 
水と食物とエネルギーの関係でトレードオフ可能

10月5日、米国オレゴン州立大学(OSU)のキャンパスで進行中の
実証研究を報告する調査チームは、世界の農地のわずか1%に太陽光
発電システムを設置するだけで、世界の電力需要に十分であることを
公表。この結果によると、農業生産性と生物多様性、特に受粉者の著
しい増加を明確にした。

農地での農業エネルギーシステムの実践:太陽光発電の利点を取り入
れるPVパネルの下および周辺で植物を栽培(日本発ソーラーシュアリ
ング)すると、植物の成長、水保全、固有の生物多様性、およびより
高い太陽エネルギー変換効率につながる微気候と生息地が生まれる。
太陽光発電の可能性は耕作地を超えて最大にする。 同研究チームは、
さまざまな種類の土地での太陽光発電システムのもと、太陽光発電と
農業生産に重要な変数(日射量、気温、相対湿度、風速と風向、土壌
水分)を調査。農地は、17の科学的土地利用分類の単位面積あたり
最大の太陽光発電ポテンシャルの中央値であり、約28ワット/平方メー
トル(W / m2)であった。この研究結果は、農業とエネルギー生産の
土地利用でのトレードオフに関して、水と食物とエネルギーの関係で
利益相反を調整できることにある。



二重用途の農業システムの可能性は、太陽光発電開発の土地の競争ま
たは他の空間的制約を緩和し、将来のエネルギー持続可能性に重要な
機会を与える可能性がある。

【要約】
太陽エネルギーは、世界中の再生不可能な電力需要のかなりの部分を
相殺する可能性があるが、このレベルで展開されると、広範囲の領域
を占める可能性がある。大規模な再生可能エネルギー施設が他の土地
利用に取って代わるという懸念が高まっている。最高のエネルギー生
産を達成し、限られた土地資源を最大限活用に、将来の太陽光発電設
備はどこに配置すべきか----この作業前提は、太陽電池パネルの効率
が、その中にある場所の微気候関数。現在の研究では、太陽光発電(
PV)パネルの機能に影響を与える環境要因の多くはほとんど無視され、
パネルの微気候の影響を取り入れた太陽電池パネルの効率のモデルは、
第一原理から導き出され、野外観察で検証。結果は太陽電池パネルの
効率が日射量、気温、風速、相対湿度の影響を受けることを確認。モ
デルは、バイアス補正された再解析データセットを使用してグローバ
ルに適用され、太陽電池パネルの効率と、地域の条件を考慮した太陽
光発電の可能性をマッピング。太陽光発電のポテンシャルは、地域の
土地被覆分類に基づいて分類され、耕作地の最大太陽光ポテンシャル
の中央値は約28µW/m2。二重用途の農業システムの可能性は、太陽光
発電開発のための土地の競争または他の空間的制約を緩和し、将来の
エネルギー持続可能性のための重要な機会創出できるだろう。世界の
エネルギー需要は、農地の1%未満でも農業システムに変換された場
合、太陽光発電によって相殺できる。

※Solar PV Power Potential is Greatest Over Croplands,Scientific
Reports
 volume 9, Article number: 11442 (2019), https://www.
nature.com/articles/s41598-019-47803-3#article-info
           

 

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