極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

出・地球か人類滅亡か

2022年05月01日 | 環境リスク本位制

  
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる "招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「ひ
こにゃん」



琵琶湖博物館は、湖につきだした烏丸半島にある。ここに来れば、目
の前に広がる湖だけでなく、そこに暮らす生き物たちや、人々に出会
うことができるという。また、博物館にきた後には、魅力的なびわ湖
のフィールドに実際に出かけたくなるという。びわ湖を研究する学芸
員や、さまざまな活動を行う地域の人々に出会う交流の場でもあり、
何度でも来たくなる、身近なリニューアルされた新しい博物館を、4
月30日正午、わたしたち二人で再び訪れた(駐車場の案内表示を見
落とし一時迷子になる)。ただ、滋賀県在住で、65歳以上は入場料
と駐車料は無料になる地元高齢者住民を歓迎する配慮に驚き感謝する。


滋賀県立琵琶湖博物館 
世界有数の「古代湖」である琵琶湖をテーマとする総合博物館

 
1993年に多賀町四手(しで)で1頭分のアケボノゾウ(Stegodon aur-
orae:250万年前 - 100万年前に生息していた古代象。日本の各地で
化石が発見されている。比較的小型のゾウで、大陸のコウガゾウとほ
ぼ同時期のミエゾウが、小型化(矮小化)したものであると考えられ
いる)の化石が発見されてから20年が経ちた。今、この場所で新た
な発掘調査が進んみ同博物館でアケボノゾウ骨格模型(分離)1体分
を展示(開催期間2013年12月21日(土) ~ 2014年02月02日(日)さ
れている。➲B展示室:かつて、人びとは自然の偉大さや脅威を「
龍」として実現した。龍は雨をもたらす水神でもあり、湖や川など多
様な水域をもつ滋賀県では、各地に龍がまつられている。B展示室で
は、あちこちに現れる龍のメッセージとともに、私たちと自然の関わ
りの歴史を紹介、展示されている。➲C展示室:琵琶湖やその周囲
の自然と私達の生活は不可分に結びつき、湖と人間のよりよい共存関
係を構築にまざまな結びつきを理解し、対立する利害を調和すること
の必要性がテーマとして紹介、展示される。➲水族展示室:琵琶湖
博物館の水族展示室は展示面積が約2000平方メートル、淡水生物の展
示としては国内最大級。この展示室では、琵琶湖とその周辺のさまざ
まな環境とそこにすむ生き物を紹介すると共に、私達の生活との関わ
りを紹介、展示される。



  

国内最大級の淡水生物の水族展示室
琵琶湖の生き物と人との関わりを紹介





【ポストエネルギー革命序論 430: アフターコロナ時代 240】
現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散時代」





海面上昇対応都市構想
World's first prototype floating city will adapt to sea level rise.
大韓民国の釜山首都圏である国連ハビタットとOCEANIXは今週、世界初
のプロトタイプの持続可能な浮遊都市の設計を発表(2019.4)。計画
は現在(2021.4)、より詳細な設計作業と建築ビジュアライゼーション
を経ており、韓国の港湾都市である釜山がこれらの未来的なものの1
つをホストする最初の場所に選択。この計画は、海面上昇により深刻
な土地不足に直面している沿岸都市が、画期的な技術を駆使し脅威に
適応できることを実証実験を行う。
 世界の5人に2人が海岸から100キロメートル以内に居住し、世界中の
大都市の90%が海面上昇に脆弱であり、急速な都市の膨張により、住
民は脅威にさらされるが、数十億ドル相当のインフラを破壊、何百万
もの人々が現住地の放棄を余儀なくされる。現在の傾向に基づくと、
世界の海面は、過去100年間と同じくらい今後30年間で上昇し、2300年
以降まで続くと予測されている。 BIG-Bjarke IngelsとSAMOO(親会社
はSamsung)は、持続可能な浮遊都市に関する第2回国連円卓会議で発
表されたOCEANIX釜山の建築作業を主導。これは、6.3ヘクタールの相
互接続されたプラットフォームを備え、12,000人のコミュニティに対
応。各地区は、生活、研究、宿泊などの特定目的をもたせ。低層ビル
----屋内と屋外の生活のためのテラスを備え、公共スペースのネット
ワークを構築。コミュニティ全体がリンクスパンの橋で土地に接続さ
れ、レクリエーション、アート、パフォーマンスの前哨基地の保護さ
れた青いラグーンを囲み構成し、海面上昇と沿岸都市への壊滅的な影
響に直面した未来の危機を回避する、モジュール式の海事地区は、持
続可能で復元力を備えた世界初の都市のプロトタイプとなる。




 【ポストエネルギー革命序論 430: アフターコロナ時代 240】
現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散時代」








ペロブスカイト」けん引 次世代太陽電池市場8000億円
富士経済(東京都中央区)がまとめた新型・次世代太陽電池の世
界市場と開発動向の調査によると、2035年の世界市場は、21年
比22・6倍の8300億円となる見通し。既存の太陽電池との併用
や代替によるペロブスカイト太陽電池(PSC)が伸長し、大幅
に拡大すると予測する。PSCは結晶シリコンをはじめとした既
存の太陽電池の代替需要の獲得が期待されている。22年以降、
本格的な量産が開始されるとみられる。特に既存の太陽電池から
の屋外用途の代替需要は潜在的に高い。今後、建材一体型太陽電
池(BIPV)を含む建材用途や結晶シリコン太陽電池の上にP
SCを載せ、太陽光の波長の吸収できる幅を広げることで発電効
率を向上させたタンデム型の量産化により、35年の市場は21
年比48・0倍の7200億円を予測する。色素増感太陽電池(
DSC)の22年市場は60億円を見込む。今後、発電デバイス
単体ではなく通信デバイスやセンサー、蓄電池などと一体化した
モジュールとしての提案を中心に採用が広がり、35年の市場を
350億円と予測。 有機薄膜太陽電池(OPV)についてはD
SCよりも量産化や事業化を進めている企業は多い。22年は前
年比12・5%増の180億円を見込む。同社は今後もBIPV
や壁材、窓材用を中心に市場が拡大するとみられるとしている。
(2022.4.26)


河出書房新社(2021/09発売)
サイズ 46判/ページ数 320p/高さ 20cm
商品コード 9784309228303 NDC分類 345.1 Cコード C0022
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 George Bernard Shaw
第13章 社会民主主義の発展

         ピーターから奪ってポールヘの支払いに充てる政
         府は、いつでもポールからの支援をあてにできる。
              ジョージ・バーナード・ショー(1944年)

タックスフリーダムデー
 1948年(この年にわたしがが生まれたのだが)、フロリダ州在住の
あるビジネスマンは考えた。平均的なアメリカ国民の納税額がいくら
なのか、はっきりしたデータが出ていないのではないか、と。
 ダラス・ホステトラーはいいアイデアを思いついた。一月一日以降
の平均的なアメリカ国民の所得額が、納税額に達する日を特定する
その日以降、所得はすべて自分のものになり、自分(政府ではなく)
の好きに使えるというわけである。
 彼はその日をタックスフリーダムデーと名づけた。
 その後二〇年間、ホステトラーは毎年、タックスフリーダムデーが
どの目になるかを計算した。さらに、この名称を商標登録した。そし
て19771
年、引退するにあたって商標をワシントンDCのシンクタンク、
タックス・ファウンデーションに譲渡した。披がやっていたことはこ
のシンクタンクが引き継いだ。現在、世界各国のさまざまな機関が自
国のタックスフリーダムデーを算出している。イギリスのそれはアダ
ム・スミス研究所によって割り出される。
 致し方ないことだが、いくつもの平均値がかかわることから、算出
される結果は面確とはいえない。しかし、世界各国のタックスフリー
ダムデーを比較することで、それぞれの国民の納税額や、政府の相対
的な規模や、国民の経済的自由度などが大まかに把握できる。これは、
経済国における国民の税負担を理解するための、簡単でわかりやすい
デモンストレーションなのだ。
 アメリカとオーストラリアでは、タックスフリーダムデーは四月の
最終週にやってくる。イギリスでは六月に入ってからであり、フラン
スとベルギーでは七月の最終週以降となる。
 二十世紀に入るころ、タックスフリーダムデーは一月上旬から中旬
にやってきた。これは政府の規模拡大の度合いに一致する。つまり平
均的な国民は、生涯のうち報酬をもらわずに働く期間が、少なくとも
二〇年、たいていの場合は二五年あるということだ。
 中世の農奴の場合、週に三日、地主の所有地で労働に従事しなけれ
ばならなかった。そのかわり、地主からの保護と、自分の土地を耕作
する権利を与えられた。二十一世紀には、一般市民の労働の四〇%か
ら六〇%が国のものになり、そのかわりに国からの保護と、残りの労
働の所有を認められることになる。今日の状況は、たいへん過酷だっ
た当時のそれとはまったく異なる。中世の農奴よりも、われわれは表
現の自由、移動の自由を行使できる。そして、ずっと大きな利益を獲
得できる。だが、われわれが義務を果たすために時間を費やす点は、
基本的には同じだと考えれば、物事がより理解しやすくなる

 Herbert Clark Hoover 

第14章 非公式の税負担  非公式の税負担---非公式の税負担

       若者たちは幸いだ。国の借金を受け継ぐことになるのだから。
                ハーバート・フーヴァー1936年)

 税金がいくら高くとも、たいてい政府支出は税収を大きく上回る。
財政収支が黒字になることは稀である。国民への約束をかならず守ら
なければならない政府は、徴税以外にも、なんらかの手段によって収
入を得なければならない。その第一は借金である。
 借金は、もちろん厳密には税金ではないが、税金として見ることが
できる。政府がそれをどう使うかを考えれば、なおさらそうである。
借金は「未来に諜される税」なのだ。
 第二次世界大戦中、アメリカはイギリスに金を貸した。その返済が
終わったのは100年後の2015年のことだった。実質的に、私の世代は
高祖父の世代がつくった借金の利息を支払うために働いている。未来
の世代は、彼らの責任ではないながらも、今日のもっとずっと大きい
財政責任を引き受け、その負債を返していかなければならない。
 現時点で、アメリカの国の借金は21兆5,000借ドルにのぼる。債務
はジョ-ジ・W
・ブッシュ政権時代に倍加した。バラク・オバマ政権
時代でまたもや倍加した。ドナルド・トランプ政権時代にも倍加する
ことになる。財政収支がやや黒字だった。1999年から2001年までの四
四年間(IT
バプルの影響があった)を除けば、アメリカは1969年以降、
毎年赤字を計上している。
 イギリスの国の借金は2兆ポンドにのぼる。ドイツは現時点で2兆
1,000万ユーロ、フランスは2兆3,000万ユーロ、イタリアは2兆4,000
万ユーロ。1兆がどれほど大きな金額か、念のために確認しておこう。
100万に100万を乗じる。それが一兆だ。
 これらの途方もない負債額は、いっそう途方もなくなるばかりだ。
ほとんどの先進国は、大きな借金を抱えているうえ、ずっと赤字続き
である。日本は1966年から連続して財政赤字を計上している。フラン
スは1966年から。イタリアは1950年から万年赤字国となっている。結
果、借金は膨らみつづけている。イギリス政府の債務残高の対GDP
比は80%以上である。フランスとスペインは90%台。アメリカは100
%超。アイルランドは110%、ポルトガルとイタリアは130%。だが、
その頂点に君臨するのは日のいずる国である。日本の債務残高の対G
DP比は、なんと驚愕の230%。なのが。政府がどれほど努力をして
も----多くの場合、努力をしようともしないが----支出を控えること
はできない。果たすべき義務政権の約束に基づくものがあまりにも大
きいのだ。
 しばしば疑問の声が上がる。「その金はどこから借りたものなのか
?」アメリカの場合、債務の約30%が中国を始めとする外国政府と海
外投資家からの借入である。また、社会保障基金、退職年金基金など
を通じ、連邦政府自体から調達した資金が約30%。さらに、デジタ
ル通貨発行の形態を取る量的金融緩和政策によって返済資金をつくっ
ている連邦準備銀行が、連邦政府の借金のおよそ12%分の債権を保有
する。さらに、投資信託会社、銀行、年金基金、保険会社、その他の
投資家が残りの分の債権者である。人類学者のデイヅィッド・グレー
バーの考えでは、アメリカの海外からの借金は、実際には海外の駐留
米軍のために課される、現代版の貢租であるという。
 イギリスの場合、国の借金の約25%がイングランド銀行(連邦準
備銀行と同じように、事実上、貨幣を発行することで借金額を減じて
いる)からの融資である。さらに、25%は外国の政府と海外投資家
からの借入、残りの分か国内の銀行、住宅融資組合、年金基金、保険
会社、その他の投資家からのものだ。
 国民は、政府の借金の一部を年金の形で背負わされていることが多
い。だから、自覚を持っているか否かはどうあれ、国民は政府に対し
て金を貸しているのだ。国債市場は巨大な規模を持ち、100兆ドル
を超える価値を有する。おそらく、その規模は世界の証券市場の二倍
はあるだろう。より大規模なのは外国為替市場くらいである。
 現時点で、アメリカの債務の未払い利息の金額は国家予算の約7%
にのぼる。イギリスの場合、国家予算の六%近い(教育予算の半分を
超えるほどである)。借金が膨らめば、金利がたいへん低いとはいえ、
利息の支払いのみでも一苦労だ。返済となればなおのことである。金
利が従来の平均的水準である4%から6%に戻れば、財政状況が大き
く圧迫されることになる。
 この借金の大半は、通貨価値を大きく引き下げることなしに返済す
ることはできないと思われる。これは解決のほぼ不可能な問題なのだ。
差し迫った問題には見えないため、たいていの政治家はわれわれと同
様に----それを無視している。だが、赤字は続いており、借金は膨れ
あがっている。必然的に、圧迫が厳しくなるばかりなのだ。まだ恐慌
になっていないことに驚いている人びとは多い。もしもいま2008年の
ときのような金融危機が発生すれば、おそらく誰もが首をひねり、政
府がこれほど借金漬けになっていたことを不思議がるに違いない。女
王は、どうしてこれを予見しなかったのかとと経済学者たらに尋ねる
だろう。社会の片隅にいる人びとのうち何人かは、手を挙げ、「われ
われは予見していました」というが、目を留めてはもらえないだろう。
しかし、ドイッ銀行のトップ級アナリストであるジム・リードの見解
によれば、「シヨックや危機が多く発生する時期というのは、債務残
高も、財政赤字も高水準である」。われわれがいま体験しているのは、
戦時を除けば、前例のない状況なのである。
 結果はどうあれ、窮地におちいった政府は税務当局に助けを求める
ことだろう。
 今日の債務がもたらす結果をじかに見ることになる人びとの多くは、
まだ生まれてすらいない。選挙権の有無から考えれば、彼らは積みあ
がりつづける借金に関して発言権を持だない。それでも、税金を支払
うことで借金を返していかなければならないのは彼らである。悪くす
ると、返済しきれない借金によってもたらされる結果に直面すること
になる。債務とは、未来に課される税金であり、アメリカ独立戦争の
モットーをもじれば、代表なき課税なのだ。

インフレ税

    誰であれ、持っている者は与えられ、いっそう豊かになる。
   だが、持っていない者は、持っているものまで取りあげられる。
               マタイによる福音書 第13章11節

 ルネサンス期の博識家のニコラウス・コペルニクスは、それを「潜
在するもの」と呼んだ。----隠れている」から、と。ケインズによれ
ば、その「実際のところを見きわめられる者は100万人に1人もいな
い」。それはひそかに進み、目に見えず、読み違えられてしまうもの
である。しかし、それは通貨と同じくらい古くからあって、歴史上の
支配者たちは、財政が危うくなったときに偶然に、あるいは故意にそ
れに助けてもらってきた。古代ローマでも、オスマントルコでも、ロ
バート・ムガベ政権時代のジンバブエでも、また、理解してくれる人
はあまりいないかもしれないが、今日のさまざまな国でも。
 つまり、インフレのことである。
 債務と同じく、インフレも厳密には税金ではないが、だからといっ
てそれが存在しないいわけではない。実は、故意に引き起こされるこ
とがたびたびあって、その効果はつねに同じである。一方の集団から
富を奪い、別の集団に渡すのだ。給与所得者や貯蓄者から国に。債権
者から債務者に。披雇用者から雇用者に。それは「とくに悪辣な課税
形態」であると経済学者のヘンリー・ハズリットはいう。ミルトン・
フリードマンもつぎのように咎めている。「目に見えない税であり、
初めはなんの苦痛もない。それどころか、快適に思えるかもしれない
……。それは、とくに法律を制定しなくとも課税できる税である。ま
さに代表なき課税なのだ」。

John Brian Taylor
 現代は、途方もない水準の課税や債務、さらにはインフレのせいで
異常な時代となっている。グローバル・フィナンシャル・データベー
スでデータの集積を行なっている統計学者のブライアン・テイラー博
士によれば、二十世紀は「歴史上の他の世紀に比較して」インフレが
より顕著で、その程度がより深刻であった。「世界中のどの国も苦し
められた」この状況は二十一世紀に入っても継続している。政府は、
借金を返せないとき、あるいは、フリードマンによれば「戦費の財源
を得るために」、インフレを引き超こす。
 インフレとデフレの意味をはき違えている言葉の一つである。しば
しばテレビの番組なので、インフレあるいはデフレを生き抜くのか、
などといった討論がおこなわれている。こういう議論に決着がらかな
いのは言葉の意味をぱき違えているからだ。今日、インフレは「物価
上昇」、デフレは「物価下落」と定義されているが、いったいなんの
物価が上下しているのだろうか? 中央銀行は、たいてい住宅価格や
金融資産のインフレには目もくれず、消費者物価ばかりを重く見る。
そのために、せっかく生産性が向上しても、デフレ圧力が働きやすく
なる。
 ここで明確にしておくが、本書ではインフレという言葉の従来の定
義を用いることとする。インフレとは通貨量および信用量の拡大であ
り、結果的に物価上昇をもたらすものである。経済学者ならば「通貨
供給量の拡大」とか「人為的な金融刺激」と呼ぶだろう。歴史学者な
らば「通貨引き下げ」というのではないだろうか。どの言葉を使うに
しても、経過は同じである。
 金融テクノロジーが進歩するにつれ、支配者の通貨引き下げの手段
と、その結果としての「インフレ税」課税の手段もまた進歩してきた。
ローマ皇帝は貨幣に含まれる金と銀の量を減らした----いわゆる、ク
リッピングである。中世の王も同じことをした。西欧諸国の政府はそ
の一つ先に踏みこみ、1914年に貨幣から金と銀を取り除いて戦争の資
金をつくった。ヴァイマル共和国、第二次世界大戦後のハンガリー、
ジンバブエは価値の裏づけなしに通貨を発行した。今日の中央銀行の
場合、金利を低く抑えたり、インフレを引き起こすうさんくさい手段
を用いたり、量的緩和を取り入れたりする。やり方は変わっても、意
図するところは同じである。通貨価値を引き下げれば、借金の価値を
引き下げられる----債務を軽くすることができる。だがそれは、債権
者からその価値の差額を奪うことでもある。
 金本位制が定着した十九世紀、インフレはほとんど存在しなかった。
ヨーロッパでもアメリカでも、第一次世界大戦までの百年の期間に、
物価は下がっている----アメリカの場合、なんと40%の下落落であ
る。消費者物価の完全な記録が残っている唯一の国であるイギリスで
は、十九世紀末の物価はその百年前よりも30%下落していた。英米
では、緩やかなインフレとデフレはあっても、そのトレンドは一時的
なものだった。たとえばアメリカでは、南北戦争中に軽いインフレが
起こったあとデフレになり、ドルがふたたび金本位制を取ることにな
った。戦費をつくるために多くの紙幣を発行していたアメリカ連合国
では極端なインフレが起こり、やがて通貨制度が破綻に至った。敗戦
国にはよくあることである。
  債務のことをわきへ置いておくとすれば、国が発行できる通貨の量
は、国庫に保有する金もしくは銀の価値に、少なくとも緩やかに関連
していた(とはいえ、そうでなくとも発行できる手段があれこれと考
案されていた)。したがって、基本の通貨供給量を増やすには、採掘
によってより多くの貴金属を手に入れるか、他国を征服し、その国が
保有していた金銀を奪いとるかしかなかった。だから、通貨供給量の
増加には限りがあった。そのため、物価は時間とともにごくゆっくり
と上昇し(多くの場合、国ごとの借入能力によって変わった)、長期
的には横ばいか、下降することが多かった。消費者や労働者にとって
は、自分の持っている通貨の購買力が上がるのは、たいへん心強いこ
とである。
 しかし、1914年以降の百年間に発行された量があまりにも多かった
ため、通貨のほとんどは購買力が95%以上低下した。低下の幅が99
%を超えた通貨も少なくなかった。イギリスの場合、1914年に十進剥
1ペンス〔百分の1ポンド〕があったとすれば、それは今日の1ポン
ドよりも購買力が高かった。カーメン・ラインハート教授とケネス・
ロゴフ教授によれば、概して世界中で、物価は百年前の30倍以上に
も上昇しているという。

Kenneth Saul Rogoff

 変化は1910年の直後から始まった。おもに第一次世界大戦のせいで
ある。1914年、イギリスとフランスとドイツは戦費に、必要な通貨を
発行するため、金本位制を停止した。これから三カ国がそうしていな
ければ、第二次大戦があればど長引くことはなかっただろう。支払い
に足るほどの金銀はなかったのである。信じがたい思いつきではない
か?通貨の価値を下げること----インフレを起こすこと----で戦争を
遂行できるようにしたわけだ。通貨の価値を下げる決断によって広範
囲にとんでもない結果がもたらされることを、ほとんどの人が理解し
ていなかった。イギリスでは、当時の借金がつい最近ようやく完済さ
れた。戦争によって失われた人命にくらべれば、ほんの些細なことで
はあるが
 イギリスは1925年に金本位訓に復帰したが、1931年にふたたびそれ
を停止した。大恐慌による景気の底がやってきたのはその2年後1933
のことだった。以降、イギリスの物価は2009年を除いて年々上がりつ
づけ、2010年の時点で1934年の60倍以上になっていた。
 アメリカドルは金本位制を保ち、それ以外の通貨は、1945年のブレ
トン・ウッズ協定に基づき、米ドルを基軸とする固定相規制を取るこ
とになった。これが蓋のような作用をしたために物価の急上昇は抑え
られたが、1971年にアメリカが金本校訓を放棄したことで状況は変わ
った。
 実際の通貨供給量に関していえば、二十世紀初頭には約70億ドルだ
った。そして1971年、アメリカの通貨供給量は4,800四借ドルにのぼ
っていた。今日、それは1971年の30
倍超、1900年のおよそ2200倍にあ
たる15兆5,000億ドルとなっている。そう、アメリカのGDPは1971
年から約16倍、人口は60%増えている(2億700万人から3位,3億2500
万人)が、通貨供給量の増加率はそれらよりもずっと大きいのである。
 イギリスの1971年の通貨供給量は220億ポンドだった。現在は2兆8000
億ポンドを超えている。つまり、90倍(8900%)増ということになる。
同じ期間に、イギリスのGDPは17倍になり人口は5500万人から6500
万人に増えた。通貨供給量の増加率は、これら経済および人口の成長
率をしのいでいるのだ。
 イギリスにおけるインフレ発生をひっそりと示すものは住宅価格で
ある。1390年から1939年までの649年間に、住宅価格は887%上昇した。
ずいぶん上がったように思えるが、この期間が約650年であることを
考えれば、年間の上昇率はたった0.4%で、同じ期間に採掘された金
とほぼ同じくらいとなる。インフレ調整を行なえば、実際の住宅価格
は49下落しているのだ。だが1939年以降、住宅価格は4万1,363%(年
8%)上昇している。このインフレの原因は、他のどの国のインフレ
とも同じ、通貨供給量の増加である。 
 住宅価格の上昇について、住宅不足と人口増加に原因があると考え
る人びとは多い。だが、1997年年から2007年の10年間では、人口が5
%増えた一方で、住宅ストック数は10%増えている。住宅価格がた
んに需要と供給のバランスによっる。ところが、実際には3倍になっ
ている。同じ期間に、住宅ローンの貸出額は370%増加したて決まると
すれば、この期間にやや下落していることになる。ところが、実際に
は3倍になっている。同じ期間に、住宅ローンの貸出額は370%増
加した。これは、住宅価格の上昇にほぼ一致している。住宅価格上昇
の原因は、債券発行を通じて通貨供給量が増えたことにある。その影
響で、ひそかに大規模な富の移動が生じている。
 いまや、あらゆる世代がジェネレーション・レント、すなわち賃貸
世代を自称する。というのも、いつまでたっても住宅を購入する余裕
ができないだろうと考えているからだ。こんな状況は馬鹿げている。
住宅の建築に莫大な全がかかるわけではない。そして、イギリスの国
土全体の95%以上が何も建設されていないヒ地なのである。
 その件についてよくよく考えれば、通貨の購買力がびっくりするほ
ど低下していることに気づく。た
利息分を含めずに考えれば、初年度の1万ドルが2年目に9,600ドル、
3年目に9,216ドルになる計算だ。5年後には8,500ドル余り、7年後に
は7,800ドル余りとなる。手元の資金で買えるものの価値が年々下が
っているのだ。
 二十世紀に購買力をもっともよく保った通貨はスイスフランだった。
スイスフランは金本校訓をもっとも長く(1999年まで)維持していた
通貨でもある。
 ドイツ銀行のジム・リードによれば、「そうは思えないかもしれな
いが、長い歴史に照らせば、現代はインフレの時代である」。
 平均賃金は上昇しているが、通貨の購買力は、それでは間にあわな
いほどのペースで低下しつづけている。つまり、事実上、一人びとの
稼ぎは毎年減っているのである。足りない分を補うために、もっと多
くの金を借りたり、長時間働いたりする。かつては二親のうち一人が
働けば中流の生活水準を保てたところを、いまでは共働きでなければ
やっていけない。子供の数も、それほど増やせない。そんなこんなで、
多くの人びと、とりわけ下層階級と中流階級に属する人びとは無理に
無理を重ねてきている。どの世代も、税金とインフレという二つの重
石に挟まれ、前世代よりも貧しくなっている。ところが、彼らが用い
るインフレの判断材料----小売物価指数(RPI)と消費者物価指数(C
PI)----は、一定の商品の価格をはかるものに過ぎない。それ以外の
経済セクターを考慮に入れていないのである。不動産価格も、金融資
産も気にかけないのだ。つまり中央銀行は、物価上昇率を低いと判断
し、金利を低く設定することにより、借金を促し、インフレを加速さ
せることができる。
 2000年代の金利が通貨供給量の増加を反映していたならば、その数
値は実際の2倍になっていたはずで、住宅バブルが発生することはな
かっただろう。2008年の金融危機ののちには、金利がさらに引き下げ
られて0%に近づき、量的緩和政策が導入された。この一件からわか
るのは、危機に瀕したときにインフレを起こすことが、現在の当局の
本能になっているという事実だ。
 ここまでは、通貨価値の引き下げとインフレの取り立てが行なわれ
る方法について記した。その最終的な目標は、ほぼつねに、債務、と
りわけ政府債務の価値を減じることと、財政支出を可能にすることだ。
結果として、資産----すなわち国民の財----の価値は政府に移動する
ことになる。ウラジーミル・レーニンはこう述べた。「政府は、イン
フレを維持すれば、人民の財の重要な部分をこっそりと、気づかれる
ことなく没収できる」
 なかには、インフレのおかげて潤うセクターもある。新たに発行さ
れる通貨によって利益を得るセクター----たとえば金融、あるいは金
融街のあるニューヨークやロンドンの不動産----に資産を所有する。
者ヽあるいはそこで事業を経営する者は大儲けできるっだが、こうい
う資産を持っていない者の大半がそうだろうが----置いてけぼりを食
う。そして、経済的不平等が広がっていく。たいていの場合、財政支
出が大きく膨らんでいる国で最悪のインフレが発生する。これは悲し
い皮肉である。つまり、貧しい国民の面倒を見るために大金を投じて
いる政府が、結局は彼らをいっそう貧しくしているというわけだ。ケ
インズによれば、「いまある社会基盤をひっくり返す、もっとも気づ
かれにくい、もっとも確実な方法は、通貨価値を下げることである」。
ジャン=パティスト・コールベールの言葉を改めて考えよう。「課税
とは、ガチョウの悲鳴をできるだけすくなく抑えつつ、羽毛を出来る
だけ多くむしることである」。通知されない、目に見えない、納税者
の理解を得ていないインフレ税は、声と立てさせることなくガチョウ
の羽毛をむしりとるようなものだ。コペルニクスがいったように、そ
れは「潜在するもの」であるなかでも、きわめてステルス性が高いの
だ。
                         この項つづく

✔ インフレ論について独自の考え(Credit annealing theory)を
もつが
 確立されたものはない。

【きまぐれ読書録:営利組織会計管理学篇】

風蕭々と碧い時代



イマジン John Lennone

●今夜の寸評:出・地球か人類の滅亡か
イーロンマスクなどベンチャーが宇宙産業の「出・地球プロジェク
ト」を推進してるというが、足下では、「地球の金星化」の歯止めが
掛からない。さて、どうする!


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