僖公二十七・八年:城濮(じょうぼく)の戦い / 晋の文公制覇の時代
※ 楚国敗戦の遠因:楚の子玉は、玉で飾った冠と冠の紐を作り、使わずにしまって
おいた。城濮の戦いが始まる前、夢の中に黄河の神が現われ、
「わたしにその冠をよこすがよい。かわりに孟諸(もうしょ)のほとり(宋を意味す
る)をあたえよう」と言った。だが、子玉はそれを捧げようとしなかった。子玉の
息子の大心、および一族の子西が、栄黄を通じて諌めたが、子玉は考えをかえなか
った。
「国のためには、命さえ投げ出さねばならぬ場合もございます。たかが冠一つ、これ
とくらべれ ば土くれ同然ではありませんか。しかもそれを捨てれば戦に勝てると
いうのに、何を借しまれるのです」
この栄黄の諌言も子玉を動かさなかったのである。退出した栄黄は、大心と子西の
二人に言った。
「戦いは負けでしょう。神の思召しというより、令尹(子玉)が人民に思いやりを持
たぬために、自分で敗北を招くのです」
戦いの結果、子玉のひきいる楚軍は敗れた。成王は、子玉のもとに使者をたてこう
伝えさせた。
「このまま国にかえって、おまえは、戦場で息子をなくした申や息の老人たちに何と
いいわけをするつもりだ」
子西と大心(孫伯)は、使者に言った。
「得臣(子玉)は自害しようとしましたが、わたしたちふたりが、わが君からの通知
を待つようにとかいって止めておきました」
子玉は連穀(楚の地)まで帰ったが、助命の沙汰がないので、自害した。晋の文公
は、子玉が死んだと聞いて、喜ぶまいことか、顔をほころばせて、「これで、わた
しに害を加える者はなくなった。蔿呂臣(いりょうしん:蔿賈のこと)は小心者、
令尹になったところで自分のことを考えるのが精一杯で、人民のために大事業を考
える男ではない」
● スーパーバックビルディングの常態化 ?!
今月6日、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)は、九州北部を襲った豪雨で大きな被害を受けた
福岡県朝倉市の上空に、巨大な積乱雲が連続して発生していたとして、解析結果に基づく立体図を公
開。最も大きなものは高度1万5千メートルに達した。積乱雲が帯のように連なった「線状降水帯」
が、上空に長時間とどまったことで降水量が増え、被害が拡大した推測。国土交通省のレーダーのデ
ータを防災科研が3次元解析、雨が激しかった5日午後3時ごろの上空の積乱雲を解析すると、気温
が零下約15度の高度8千メートルの高さまで凍らずに雨粒が持ち上げられていた。気流の勢いの強
い積乱雲が大雨の一因となったと。線状降水帯は西風に乗って東に移動していたが、午後1時から5
時にかけては特に移動スピードが遅く、長時間にわたって豪雨をもたらした。このような大規模気象
現象は「線状降水帯」は断念ながらわたし(たち)は毎年常態化していくと考えていることは、ブロ
グ掲載してきたことでもあり、対策は万全をもって善しとする。
読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅱ部 遷ろうメタファー編』
39.特性の目的を持って作られた、偽装された容れ物
おかげで仕事には以前ほど身を入れなくなったが、もともとそれほど多忙な会社ではない。社
長がろくに顔を出さなくても、古くからいる三人の社員で切り盛りしていくことは可能だった。
家にもあまり帰らないようになった。帰宅してもほとんど眠るだけだった。なぜかはわからない
が、妻が亡くなったあと、一人娘に対する関心も急速に薄らいでいったようだった。娘を見ると、
死んだ妻を思い出すことになったからかもしれない。あるいは子供というものにもともと興味が
なかったのかもしれない。いずれにせよ当然のことながら、子供もあまり父親になつかなかった。
残されたまりえの世話は、妹の笙子がとりあえず引き受けることになった。里子は東京の医科大
学長の秘書の仕事を休んで、小田原の山の上の家に一時的に同居していたのだが、結局は正式に
職を辞してそこに仕み着くことになった。おそらくはまりえに情が移ってしまったのだろう。あ
るいは小さな姪の置かれた状況を見るに見かねたのだろう。
それだけ話し終えると免色は指の腹で唇を撫でた。そして言った。
「おたくにウィスキーはありますか?」
「シングル・モルトが瓶に半分くらいあります」と私は言った。
「厚かましいお願いですが、それをいただけませんか? オンザロックで」
「もちろんいいですよ。ただ免色さんは車を運転してこられたし……」
「タクシーを呼びます」と彼は言った。「私も飲酒運転で免許証を失いたくはありませんから」
私はウィスキーの瓶と、氷を入れた陶器の鉢と、グラスを二つ台所から持ってきた。免色はそ
のあいだに、私がさっきまで聴いていた『薔薇の騎士』のレコードをターンテーブルに載せた。
そして我々はリヒアルト・シュトラウスの爛熟した音楽を聴きながら、二人でウィスキーを飲ん
だ。「シングル・モルトがお好きなのですか?」と免色が尋ねた。
Oct. 9, 2002
「いや、これはもらいものです。友だちが手土産に持ってきてくれたんです。なかなかおいしい
と思うけど」
「スコットランドにいる知人がこのあいだ送ってくれた、ちょっと珍しいアイラ島のシングル・
モルトがうちにあります。プリンス・オブ・ウェールズがその醸造所を訪れたとき、自ら槌をふ
るって栓を打ち込んだ樽からとったものです。もしよかったら今度お持ちします」
どうかそんなに気を造わないでもらいたいと私は言った。
「アイラ島といえば、その近くにジュラという小さな島があります。ご存じですか?」
知らないと私は言った。
「人口も少ない、ほとんど何もない島です。人の数よりは鹿の数の方がずっと多い。ウサギや雄
やあざらしもたくさんいます。そして古い醸造所がひとつあります。その近くにとてもおいしい
わき水があって、それがウィスキーをつくるのに適しているんです。ジュラのシングル・モルト
を、汲んだばかりのジュラの冷たい水で割って飲むと、それは素晴らしい味がします。まさにそ
の島でしか味わえない味です」
とてもおいしそうだ、と私は言った。
「そこはジョージ・オーウェルが『1984』を執筆したことでも有名なところです。オーウェ
ルは文字どおり人里離れたこの島の北端で、小さな貸家に一人で龍もってその本の執筆をしてい
たのですが、おかげで冬のあいだに身体を壊してしまいました。原始的な設備しかない家だった
んです。彼はきっとそういうスバルタンな環境を必要としていたのでしょう。私はこの島に一週
間ばかり滞在していたことがあります。そして、暖炉のそばで毎晩一人で、おいしいウィスキー
を飲んでいました」
「どうしてそんな辺鄙なところに一週間も一人でいたのですか?」
「ビジネスです」と彼は簡単に言った。そして微笑んだ。
それがどんなビジネスだったのか、説明するつもりはないようだった。私もとくに知りたいと
は思わなかった。
「今日はなんだか飲まずにはいられないような気分だったのです」と彼は言った。「気持ちがう
まく落ち着かないというか。だからついこのように勝手なお願いをしてしまいました。単は明日
にでも取りに来ます。それでよろしいでしょうか?」
「もちろんぼくはかまいませんが」
それからしばらく沈黙の時間があった。
「少し個人的な質問をしてかまいませんか?」と免色は尋ねた。「気を悪くされないといいので
すが」
「ぼくに答えられることならお答えします。気を悪くしたりはしません」
「あなたはたしか結婚しておられたのですね?」
私は肯いた。「していました。実を言うと、ついこのあいだ離婚届に署名捺印して送り返した
ばかりです。だから今現在、正式にどういう状態になっているのかよくわかりません。でもとに
かく結婚はしていました。六年ほどですが」
「お子さんは?」
「子供はいません」と私は言った。
「作るうと考えたことはありますか?」
「ぼくは考えたんですが、妻の方がその気になれなかったものですから、延ばし延ばしになって
いた。そのうちに結婚生活自体がうまくいかなくなりました」
免色はグラスの中の氷を眺めながら何かを考え込んでいた。それから質問した。
「立ち入った質問になりますが、そういう離婚という結果に至ったことについて、あなたには何
か悔やんでいることがありますか?」
私はウィスキーを一口飲み、彼に尋ねた。「『買い手責任』というのはラテン語でなんて言い
ましたっけ?」
「caveat emptor」と免色はためらいなく答えた。
「まだうまく覚えられないけど、その言葉の意味するところは理解できます」
免色は笑った。
私は言った。「結婚生活について悔やんでいることはなくはありません。しかしもしある時点
に戻ってひとつの間違いを修正できたとしても、やはり同じような結果を迎えていたんじやない
かな」
「あなたの中に何か変更のきかない傾向みたいなものがあって、それが結婚生活の障害となった
ということですか?」
「あるいはぼくの中に変更のきかない傾向みたいなものが欠如していて、それが結婚生活の障害
になったのかもしれません」9 特定の目的を特って作られた、偽装された容れ物
「でもあなたには絵を描こうという意欲がある。それは生きる意欲と強く結びついているものの
はずです」
「でもぼくはその前に乗り越えるべきものをまだきちんと乗り越えていないのかもしれない。そ
ういう気がするんです」
「試練はいつか必ず訪れます」と免色は言った。「試練は人生の仕切り直しの好機なんです。き
つければきついほど、それはあとになって役に立ちます」
「負けて、心が挫けてしまわなければ」
免色は微笑んだ。それ以上、子供のことにも離婚のことにも触れなかった。
私は台所から瓶詰めのオリーブを持ってきて、それをつまみにした。我々はしばらく何も言わ
ずにウィスキーを飲み、塩味のついたオリーブの実を食べた。レコードの面がひとつ終わると免
色はそれを裏返した。ゲオルグ・ショルティはウィーン・フィルの指揮を続けた。
ああ、免色くんにはいつも何かしら思惑がある。必ずしっかり布石を打つ。布石を打たずし
ては動けない。
彼が今どのような布石を打っているのか、あるいは打とうとしているのか、拡にはわからなか
った。それとも彼はこの件に関しては、今のところうまく布石が打てないでいるのかもしれない。
拡を利用するつもりはないと彼は言う。たぶんそれは嘘ではあるまい。しかしつもりはあくまで
つもりに過ぎない。彼はその手腕を発揮して、最先端のビジネスを成功裏に乗り切ってきた男だ。
もし彼に何か思惑のようなものがあるのなら(たとえそれが潜在的なものであれ)、拡がそれに
巻き込まれずにいることはまず不可能だろう。
「あなたはたしか三十六歳でしたね?」とほとんど出し抜けに免色はそう言った。
「そうです」
「人生の中でおそらくいちばん素敵な年齢です」
私にはとてもそうは思えなかったが、あえて意見は述べなかった。
「私は五十四歳になりました。私の生きてきた業界にあっては、ばりばりの現役でいるには識を
取りすぎていますし、伝説になるにはまだ少し若すぎます。だからこうして、とくに何心せずに
ぶらぷらしているようなわけです」
「中には若くして伝説になる人心いるみたいですが」
「もちろんそういう人たちも少しはいます。しかし若くして伝説になることのメリットはほとん
ど何もありません。というか、私に言わせればそれは一種の悪夢でさえあります。いったんそう
なってしまうと、長い余生を自らの伝説をなぞりながら生きていくしかないし、それくらい退屈
な人生はありませんからね」
「免色さんは退屈なさらないのですか?」
免色は微笑んだ。「思い出せる限り、退屈したことは一度もありません。退屈をしているよう
な暇がなかったというか」
私は感心してただ首を振った。
「あなたはいかがですか? 退屈したことはありますか?」と役は私に尋ねた。
「もちろんあります。しょっちゅうしています。でも退屈さは、今ではぼくの人生の欠くことの
できない一部になっているみたいです」
「退屈であることが苦痛にはならないということですか?」
「どうやら退屈さに慣れてしまったようです。苦痛に感じることはありません」
「それはやはり、あなたの中に練を描こうという強い一貫した意志があるからでしょうね。それ
が生活の芯のようなものになっていて、退屈であるという状態は、いねば創作意欲の母胎として
の役目を果たしているのでしょう。もしそういう芯がなければ、日々の退屈さはきっと耐え難い
ものになるはずです」
「免色さんは、今は仕事をしておられないわけですね?」
「ええ、基本的には引退状態にあります。前にも言ったように、インターネットで為替と株の取
引を少しばかりやっていますが、必要に退られてのことではありません。頭の訓練を兼ねたゲー
ム程度のものです」
「そしてたった一人で、あの広い屋敷に暮らしておられる」
「そのとおりです」
「それで退屈することがないのですか?」
免色は首を振った。「私には考えることがたくさんあります。読むべき本があり、聴くべき音
楽があります。多くのデータを集め、それを分類し解析し、頭を働かせることが日々の習慣にな
っています。エクササイズもしますし、気分転換のためにピアノの練習もしています。もちろん
家事もしなくてはならない。退屈している暇はありません」
「歳をとっていくのは怖くありませんか? 一人ぼっちで歳をとっていくことが?」
「私は確実に歳をとっていきます」と免色は言った。「この先身体も衰えるし、ますます孤独に
なっていくことでしょう。しかし私はまだそこまで歳をとった経験かおりません。どういうこと
なのか、おおよその見当はつきますが、その実相を実際に目にしたわけではありません。そして
私はこの目で実際に見たものしか信用しない人間です。ですから自分がこれから何を目にするこ
とになるのか、それを待っています。とくに怖くはありません。それはどの期待もありませんが、
いささかの興味はあります」
免色はウィスキーのグラスを手の中でゆっくりと揺らせ、私の顔を見た。
「あなたはいかがですか? 歳をとるのは怖いですか?」
「六年ばかりの結婚生活は結局うまくいかなかった。そしてその期間、自分のための絵を一枚も
揺くことができませんでした。普通に考えればそのぷん無駄に歳をとったということになるので
しょう。生活のために意に染まない種類の結を数多く揺かなくてはならなかったわけですから。
しかし結果的にはそれがかえって幸いした部分もあるかもしれない。鍛近になってそう思うよう
になりました」
「おっしやりたいことは理解できるかもしれない。自分の我みたいなものを捨てることも、人生
のある時期には意味のあることになる。そういうことですか?」
この項つづく
● 読書録:高橋洋一 著「年金問題」は嘘ばかり
第1章 これだけで年金がほぼわかる「三つのポイント」
☑ 年金は「保険」である
☑ 「四〇年間払った保険料」と「20年間で受け取る年金」の額がほぼ同じ
☑ 「ねんきん定期便」は国からのレシート
「ねんきん定期便」には「これまでの年金加入期間」も記載されています。ここで加入期間を確
認しましょう。未納の時期があると、加入期間が少なくなっています。不審に思うときは、「ね
んきんネット」にアクセスすれば、過去に未納期間がなかったかどうか、さかのぼって記録を調
べることができます。
先にもご紹介したとおり、これまでは年金に加入して25年(300月)以上保険料を納めて
いなければ年金を受給できませんでしたが、平成28年の法改正で、10年(120月)以上納
めていれば、受給できるようになりました,
また、50歳未満の場合は「これまでの加入実績に応じた年金額」、50歳以上は「老齢年金
の種類と見込額(1年間の受取見込額)」という欄かおります。これを見ると、どのくらい年金
をもらえるかがわかります。将来受け取る年金額(現時点での見込額)です。「この金額では生
活費として足りない」と思う人は、貯蓄や民間の年金保険などで備えておくことを検討しましょ
う,
第1章 「ねんきん定期便」の見方、使い方
ねんきん定期便」の役割はレシートですが、もう一つ、大切な役割があります。それは、住所
確認です。
日本年金機構が手紙を出すと、住所が変更されている人は年金機構に手紙が戻ってきます。戻
ってきた手紙によって「この人は住所移転している」ということを確認できます。年金機構は、
戻ってきた手紙の分については、住所変更をするように会社に促すことができます。
個人の側からいえば、「ねんきん定期便」が届かないときは、年金機構に届け出されている住
所が間違っていることになります。「ねんきん定期便」は、年金機構と個人をつなぐ連絡網の役
割も果たしています。誕生月に「ねんきん定期便」が届かなかったら、勤務先に確認するか、年
金機構に問い合わせをするべきです。
《ねんきん定期便の役割》
・保険料のレシート
・給付見込額のお知らせ
・住所確認
役所に届け出された個人住所が間違っているケースはけっこうあります。平成二十七年からマ
イナンバーが通知されましたが、手紙が届かなかった人がいました。これも住所管埋かきちんと
できていなかったことによるものです。
「ねんきん定期便」は、日本年金機構(社会保険庁)が企業から届け出された住所を便っていま
す。
会社から間違った住所が届け出されていたり、住所変更の手続きがなされていなかったりして、
住所が間違っているケースもかなりあります。「ねんきん定期便」が届かない場合は、会社に確
認して、会社に住所変更の手続きをしてもらうのが筋ですが、会社をあまり信用できない人は、
直接、日本年金機構に確認したほうがいいでしょう。
第1章 意外と大切な「住所確認」の役割
この章では年金のポイントとして、次の三つのことを説明してきました。
・年金は「保険」である
・「四〇年間払った保険料」と「二〇年間で受け取る年金」の額がほぼ同じ
・「ねんきん定期便」は国からのレシート
この章をお読みいただいただけで、だいぶ年金の仕組みについてイメージが固まってきたと思
いますし、公的年金で自分がいくらくらいを受給できるかもおわかりいただけたかと思います。
公的年金は、その発想からすればあくまで「年金保険」であり、「長生きするリスク」に備え
るものなのです。もちろん、退職後の生活を支える基本部分の資金になってくれることは間遣い
ありませんが、いくらもらえるかは開示されているわけですから、先にも書いたとおり、「この
金額では生活費として足りない」と思う人は、貯蓄や民間の年金保険などで備えておけばいい、
ということになります。
年金から天引きされる所得税・住民税以外の特別税の根拠は?
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Q:年金振込通知書の中の「所得税および復興特別所得税額」欄に税額が記載されていますが、所得
税額と復興特別所得税額を分けて記載していないのはなぜですか。
A:源泉徴収される復興特別所得税の額は、源泉徴収される所得税額の2.1%相当額とされ、その源泉
徴収は所得税の源泉徴収の際に併せて行うこととされています。
したがって、今回送付した年金振込通知書には、所得税が源泉徴収の対象となる支払金額等に対して
源泉徴収税率(合計税率)を乗じて計算した金額を、「所得税額および復興特別所得税額」としてそ
の合計額を記載しています。
Q:年金から復興特別所得税額って引かれているのです。復興特別所得税額ってなんですか? 年金
の貰う額によって違うのですか
A:年金から所得税を引かれている人は、いっしょに復興特別所得税を引かれています。それは何で
すかと言われても困りますが、先の東日本大震災の復興のために使われる税金です。でも、復興とは
関係の無いまたは薄い事業や自治体などに税金が流用されていることが発覚してもめました。復興特
別所得税の税額は、所得税額の2.1%です。所得税額は年金額に比例しますから、復興特別所得税も
年金額に比例することになります。
※ 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法
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こう見てくれば、非常にシンプルに見通せるようになるはずです,
しかし、ではなぜ「年金不安」などという言葉が騒がれるのでしょうか。それは、本章でも見
てきたように、「年金制度はつぶれる」「年金がもらえなくなる」などという言説が世の中で騒
がれているからでしょう。
たしかに、就職活動をしているときに「この会社に入っても給料をもらえないかもしれない」
などといわれたら、よほど自分の夢と合致する就職先でないかぎり、多くの人が入社に躊躇して
しまうことでしょう。それと同じで、「日本の年金制度は破綻する」などということばかりをい
われたら、「どうせ年金をもらえないだろうから、保険料は納付しなくてもいいや」と思ってし
まう人も出てくるに遣いありません,
さらに、年金保険料を納付している人でも、「老後の生活が危ないから、今からどんどん投資
をしておくべきですよ。こちらの投資をすれば、高利回りでどんどんお金が貯まります」などと
いう話を聞いて、ついついハイリスクな(場合によってはぱ佳しt4%)投資商品に手を出してし
まう可能性もあります,
まずここで、間這いなくいえることは、日本の公的年金に入らないのは「損」だということで
す。そのことは、本書をここまでお読みいただいた方であれば、納得いただけると思います。万
が一、未納の人がいたら、これからは10年(120月)以上、保険料を納めていれば、公的年
金が受給できるようになりましたから、ぜひ保険料を納付することをお奨めします。
次にいえることは、「年金不安」をあおっているのは、(意識しているかどうかは別として)
何らかの思惑に乗っかってのことである場合が多いですから、けっして、それに安易に乗っかる
べきではない、ということです。
もちろん、老後の備えをすることは重要ですが、必要以上に不安に苛まれるのはバカげていま
す。それどころか、そういう言説に踊らされて軽挙妄勤してしまうと、思わぬ「損」をする羽目
になりかねません。
第1章 真実を知らねば思わぬ「損」をする羽目になりかねない
第2章 「日本の年金制度がつぶれない」これだけの理由
身もフタもありませんが、最初に結論をいってしまいましょう。日本の公的年金制度は破綻し
ません。プロローグでも書きましたが、少なくとも、今後、よほど酷い制度改悪を行なったり、
日本の経済をボロボロにするような悪しき経済政策運営を行なったりしなければ、日本の年金制
度は大丈夫です,
前章で述べたように、年金というのは「保険」です,保険は、保険数理で計算されて成り立っ
ています。それをよく知らない人は、破綻すると思ってしまいがちですが、保険は、割り切って
いえば「数学」の世界です。厳密な計算をして「保険料」と「給付額」がはじき出されます。そ
して、全体として「保険料」=「給付額」となるように、保険料と給付額が決められる。
つまり、破綻しないように設計されているのです,
もちろん、社会の環境に合わせて計算し直し、多少「保険料」が上がったり、多少「給付額」
が下がったりする調整が行なわれることはあります。それによって適正に保たれるのです。
たとえば、平成16年(2004年)の改正で、保険料をその時点から2017年まで段階的
に引き上げて、そこで固定することが決められました(厚生年金18.3%、国民年金1万690
0円)。また、2009年度までに基礎年金の国庫負担割合を2分の1にすることも決められて
います。一方、給付される年金額については、今見てきた「保険料」収入の範囲内に収まるよう
に、「マクロ経済スライド」が導入されました。
この「マクロ経済スライド」とは何か? 厚生労働省の説明を引けば、次のとおりとなります,
《(公的年金財政の)収入の範囲内で給付を行うため、「社会全体の公的年金制度を支える力(
現役世代の人数)の変化」と「平均余命の伸びに伴う給付費の増加」というマクロでみた給付と
負担の変動に応じて、給付水準を自動的に調整する仕組みを導入したのです》
《年金額は、賃金や物価が上昇すると増えていきますが、一定期間、年金額の伸びを調整する(
賃金率物価が上昇するほどは増やさない)ことで、保険料収入などの財源の範囲内で給付を行い
つつ、長期的に公的年金の財政を運営していきます。
5年に一度行う財政検証のときに、おおむね100年後に年金給付費一年分の積立金を持つこ
とができるように、年金額の伸びの調整を行う期間(調整期間)を見通しています》
ここに書かれていることは、ひと言でいえば、「保険料収入の範囲内で給付を維持できるよう
に保険数理で計算します」ということです。つまり、きちんとマクロ経済スライドで調整してい
けば、年金が制度的に破綻する可能性はない、ということです。
繰り返しますが、きちんと保険数理で計算さえすれば、その制度がもつかもたないかは、きち
んとわかるのですから、要は「制度がもつ」ように運営していけばいい、ということですし、支
払う保険料も、もらえる給付額も、劇的に変動(たとえばいきなり負担が倍になったり、もらえ
る金額がゼロになったり)することはない、ということです,
第2章 年金は「保険数理」で破綻しないように設計されている
もちろん、制度の中に問題点が含まれていること確かです。しかし、それらは少しずつ解消さ
れつつあります。
制度上の問題点は、大きなものとしては次の三点です。
《年金制度上の問題点》
☑ 厚生年金基金
☑ GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)
☑ 徴収漏れ(歳入庁)
厚生年金基金の重大な問題点については、第4章で詳しく述べます。これは、20年以上前か
ら私が指摘してきたことです。私は、厚生年金基金の積立金の運用は、数学的に成り立だない点
をずっと指摘してきました。
ほぼ予想通り、多くの厚生年金基金が運用に行き詰まりました。現在は、厚生年金基金の多く
が解散し、新規に厚生年金基金をつくることは認められていません。厚生年金基金の問題はほぼ
解消されつつあります。
ちなみに、「厚生年金」と「厚生年金基金」は名称が似ているために紛らわしいのですが、「
厚生年金」が公的年金であるのに対して、「厚生年金基金」は各企業が加入するかどうかを判断
する「企業年金(私的年金)」でした。要は、「国民年金+厚生年金」にさらに上増しして年金
をもらえるようにするためのものです。
二つ目のGPIFの問題は、第5章で述べます。この問題は、今もって解決されていません。
ただ年金財政全体の中で見れば、GPIFの運用が占める割合は低いですから、年金制度を破綻
させるほどのものではありません,
三つ目の徴収漏れ(未納・滞納)の問題は、運用の問題といえますが、歳入庁という組織をつ
くることによって制度的にも徴収漏れを減らしていくことが可能です。これについては第6章で
述べます。制度上の問題点が解消されれば、あとは、保険数理による数学的な計算だけで決まり
ます。数学を専門とする私の目から見れば、日本の年金制度が破綻することを示す数字は出てき
ません。
もっとも、今後、想定以上の経済成長の落ち込みが長期にわたったりすれば、もらえる年金額
が少なくなる可能性もあります。そうなると、年金以外のところでも不満足なことがおこります。
その意味で、それは年金破綻でなく、経済成長の低下によるものです,これは、あとで詳しく説
明します。
第2章 制度の問題点も少しずつ解消されつつある
まず、年金の全体像について確認しておきましょう.
日本の年金制度は、今、お話ししたように三階建てです,制度が入り組んでいますので、詳細は上図
を見ていただければと思いますが、わかりやすいように、大ざっぱに分けると次のような構造になってい
ます,
第2章 日本の年金制度の基本的な枠組みを知っておこう
この項つづく