徳丸無明のブログ

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南日本酪農協同 スコール 赤ぶどう・マンゴー

2020-01-10 23:54:39 | 
そう、愛。すべては愛です。愛が恵みとなって降りそそぐ。愛のスコールなのです!






えーとね、皆さんこれご存じ?製造は南日本酪農。宮崎のメーカーなんですね。九州だけでしか発売されてないのかもしれません。プレーンのやつは緑と青のパッケージでして、どんな飲み物かっていうと、ほぼカルピスソーダです。大まかにいえばね。
前回コンサートの仕事の話をしました。コンサートの仕事は、開演中の接客だけでなく、ステージの設営や終焉後の解体作業も希望すれば入ることができます。設営のことは「仕込み」、開場中は「本番」、解体作業は「撤去」と呼んでいました。仕込み・本番・撤去の3つすべてを行うことも可能で、すべて入る場合を「しほんてつ」と称していました。
この「しほんてつ」はかなりハードで、勤務時間は最長で16時間になります。といっても、16時間ぶっ続けで働くわけではなく、リハーサル中とか、バイトには何もすることがない時間帯もあるので、休憩時間はわりと多いのですが、それでもけっこう疲弊します(バイトはおもにツアースタッフさんの指示を受けて雑用を行います)。
余談ですけど、仕込みと撤去では音響機材の出し入れも行っていまして、こないだカルロス・ゴーンがレバノンに逃亡した際に隠れていたという音響機材の箱を見て、「ああ懐かしい」と思いました。あ、それとね、福岡ドームの外野ってフェンスが高いことで有名じゃないですか。あれね、下が吹き抜けになってるんですよ。大型トラックを直に入れて資材を搬入できるようになっているんですね。
僕は生活費のためにたびたび「しほんてつ」に入っていました。今日はそのきつい仕事の話です。

コンサートの仕事で2番目にきつかったのが20th Century(トニセン)。2日間の公演で、1日目は会場が北九州、2日目は福岡市内でした。
1日目、会社の前に集合して貸切バスで北九州へ。移動時間は1~2時間くらいでしたかね。到着したら「しほんてつ」で16時間。1日2回公演でしたので、本番2セットです。終わりで福岡までバス移動。会社前到着で解散となるのですが、1日目の解散から2日目の集合までの間がほとんどないんですね。なので、自転車でまっすぐ家に帰って、帰宅後すぐ風呂入って、1時間だけ寝て出勤。そこからまた16時間労働でした。
とにかくしんどかったんですが、ランナーズ・ハイみたいな現象なのか、仕事が終わるころには妙に元気になっていて、「このままもう1回16時間勤務いける!」って感覚になっていました。

1番きつかったのがKinKi Kids。ちょうど「Anniversary」って曲を発表した後の「アニバーサリーツアー」というドームツアーのときです。
ドームのコンサートというのは、とにかくセットが巨大なので、設営に時間がかかります。収容人数200~500人ぐらいの会場であればコンサート当日の設営で間に合うんですけど、ドームだとそうはいかない。なので、5日間の勤務だったんですけど、設営が3日。本番が2日で、最終日は本番終了後に撤去という工程でした。
5日間の勤務時間はそれぞれ12~16時間ほど。時間が長いとか、設営は重いものを運ぶ肉体労働だということとかもキツさなのですが、食事が弁当ばかりというのもキツかったんですよね。
勤務時間が長いため、会社が注文してくれた弁当が1日2回出ました。しかし、バイト用の弁当なので、あまりいい弁当ではありません。安いやつです。現場には電子レンジもないので、冷え切った弁当を食べることになります。僕は朝食を食べないので、1日2食です。なので、5日間の食事がすべて弁当になったのです。冷たい安弁当を食べ続けていると、だんだん精神がすさんでくるのです。弁当以上に心が冷たくなるのを感じました。
最終の5日目、ようやく本番が終わると、体に鞭打って最後の撤去作業が始まります。なんかコンサートの撤去のときって、スタッフの人たちみんなピリピリしてるんですよね。連日の仕事でストレスがたまっているのか、肉体労働の現場なので荒くれ者が多いのか、とにかくひたすら急かされますし、些細なことで怒鳴られる。心身ともにボロボロになりながらの作業となるのです。ちなみに、設営と撤去はツアースタッフだけでなく、現地の建築関係の作業員も入ってきます。
そこで事件が起きました。メインステージの裏側には足場が組んであります。建築物の改修のときに、作業員が動き回るための骨組み建てますよね。あれです。コンサートでは、まず足場を組んで、ステージを建てるのです。終わったらステージを解体し、そののち足場をばらす。高所での作業なので、僕らバイトはかかわりません。もっぱらプロのとび職の人が行います。
その、一番最後の足場解体のときです。てっぺんで作業をしていたとびの人が、転落したのです。高さにして、建物の5,6階くらいあったでしょうか。僕はその瞬間を見ていなかったのですが、パチンコ玉のように足場にガンガンぶつかりながら床まで転げ落ちたそうです。
もちろん救急車が呼ばれましたが、それだけではすみません。事件が起きたということで警察もきて、現場検証が始まりました。その間、作業はストップです。疲れ切っているので、1秒でもはやく終わってほしいのに、さらに長引くことになりました。
転落した人がどうなったのかはわかりません。そのあとなにも話が出なかったので、たぶん死んではいないと思いますが、ひょっとしたら後遺症が残るくらいのケガを負ったのかもしれません。
この業界では、「巨大なステージが組まれる現場1か所につき、だいたい1人ぐらいは大ケガをする」と言われています。僕がかかわった現場でも、ワイヤーが腕に絡まって脱臼した人や、重い機材をつかみそこなって足の骨を折った人、あと、原因はわかりませんが指を切断した人もいました。足の骨を折った人は、僕と同じバイトの子で、全治6か月の大ケガでした。たぶん大学生の子だったと思いますが、人生経験も兼ねた生活費稼ぎとして、ちょっとした軽い気持ちで来ていたのが、半年間の学生生活を棒に振ることになってしまったのです。
とにかく事故が多いし、起きてしまったら取り返しがつかないので、社員からは「とにかく声掛けをしっかりしろ」と口うるさく言われます。コンサートの現場というのはそういう所なのですね。ミュージシャンが華やかに歌い踊るそのステージは、そんな犠牲の上に成り立っているのです。

皆さんもドームなどの大きな会場のコンサートに行くことがあれば、このことを思い出してください。巨大できらびやかなステージを見たら、「これは作業員の血の犠牲の上に組み立てられてるんだな」と考えてください。そしてできれば、ケガをした作業員のために祈りをささげてください。そうすれば人柱となった作業員も少なからず救われることでしょう。


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