世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

渡辺夫人の豪ドルは下がり円高は亢進 The yen resurgent

2008-10-26 | 世界から見た日本
2008-10 No.025

先週の市場はいっせいに円買いに向かう動きが支配しました。東京からNYまでパニック的な動きで引け、大幅な円高に輸出企業の悲鳴が上がりました。FTはこの状況を世界的に、「借入金比率を下げようとする投資家がキャリー取引のギアを急速にバックに切り替えた」のが原因であると伝えています。その結果終値で円は対ドルで93円、対ユーロで119円まで高騰しました。

一方韓国ウォンは対ドルで1/3以上減価しました。この対照的な動きが、市場の動向を見事に現しています。投資家はより安全な投資先と通貨を求めて急速に資産を移動しているのです。韓国に較べれば日本の経常収支は黒字ですし、巨額の債務もほとんどが円建てです。

投資家も含めてまだ、日本経済がいつリセッション入りするのか、メガ・バンクが株式の巨額の評価損や企業倒産の償却をいつ計上するのかは、把握できていない状況です。このように日本経済に対する評価はまだよく分からない状況で、投資家にとって確かなことは、円が過小評価されているということのみです。

このため外人投資家は、円資金調達によるキャリー取引の巻き戻し(unwind)にいっせいに動いています。日本の一般投資家(retail investors)も外貨建て投資残高は約60兆円に達していましたが、今回のやけど(burnt fingers)で急速に円を買い戻しています。

去年あれほど有名になった架空の「渡辺夫人」の好きだった豪ドルは、ここ一ヶ月で約1/3も値下がりをしました。手数料稼ぎのプロ投資家は、自動的に「損切り」が発動されて外貨ポジションを清算して円転をどんどん進めているのが現状です。

一方、円高に悩まされてきた人たちに新しい動きが出てきました。先週にはいって日本人投資家のポジションは円の売り越しに転じており、売買も活発となっているとのことです。強くなった円を手にした「渡辺夫人」が、外貨ディーラーに電話を掛ける日が来るのもそう遠くないのでは、とFTのコラムは結んでいます。

(注)「渡辺夫人」は欧米金融界が昨年はやらせた造語。架空の日本人専業主婦で、「超低金利の円を借りて、円キャリー取引で豪ドルなどを買い進める」投資家がモデル化されている。