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中国の成長率鈍化 Below most pessimistic forecasts

2008-10-21 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2008-10 No.020

中国の第3四半期の経済成長率は9%に急減速しこれまで5年間続けてきた二桁成長が予想を超える低い水準へと鈍化しました。「この9%の経済成長率は中国にとっては問題だが世界から見ればまだうらやむべきレベルである、一方昨年の12%からの急降下と見るならば、それは世界全体の大問題だ」と、FTが論評しています。

数ヶ月前までは、中国経済の好調の「余波」は世界中に及んでいました。商品相場の急上昇は言うに及ばず、上海の高級ブティークの繁盛振りまでもがその効果(the ripple effect)であったわけです。

いまやその勢いに変調が見られます。中国国内の建設需要の減退によって鋼材価格はつるべ落としに下落しています。2007年には年率25%で延びた自動車の売り上げも、来年は横ばいとなる予想です。昨年同月比でみても輸出は各品目押しなべて減少しています。ただでさえ貯蓄率の高い国民(nervous householders)はますます貯蓄にお金を回しています。

しかし中国は先進諸国が景気刺激策に有効打を撃てないなか、いくつもの政策の選択肢を保持しています。金利の引き下げを最近二回にわたって行いましたが、さらに減税や公共投資の増額といった流動性増大策も打つことができるのです。そして銀行の預金準備率も引き下げることができますし、不動産売買規制も緩和することとなるでしょう。

また繊維製品の輸出税の引き下げを行えば、繊維工業は輸出産業として復活して雇用創出になります。ただこれは低付加価値産業からの脱却を図ろうとしてきた国策の修正となりますが。一方鉄やニッケルなど鉱物資源の輸入代替を図るための鉱山開発に注力をしてきているので、こうした国内経済刺激策を実行しても原料輸入需要のレベルが維持されるという状況は考えにくいところです。

経済専門家の間でもこの減速が一時的なものか(a breather)、長期的な下降の始まりか(a long slide)についての見方は大きく分かれています。FTの見出し”China’s growth returns to earth”(成長率は現実的なレベルへと落ち着いた)がそのあたりの雰囲気を伝えていますし、「景気浮揚策は総論にとどまっているところを見ると中国政府当局はまだ真剣に心配していないようだ」というところでしょう。