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AIG破綻の理由:Multiple actions by multiple parties

2008-10-08 | グローバル企業
2008-10 No.008

米国議会は破綻銀行・証券・保険会社の元経営陣に対する証人喚問を今週の月曜日から開始していますが、昨日からマスコミをにぎわせているのは、850億ドルの政府資金による救済を受けて生き延びることとなったAIG最高幹部の証言についてです。

議会調査委員会の委員が、救済決定直後にAIG幹部がカリフォルニアの高級リゾートホテルで催した幹部懇親会に約4000万円を費消したことを、写真や領収書を突きつけて厳しくその経営姿勢を非難したのです。これは全米にTV放映されていましたので非常に大きなアンチ=ウオールストリート感情を形成することになったことと推測されます。

前AIG社CEOマーティン・サリバン氏は、破綻の原因を、「多くの関係者による、多くの行動の結果(Multiple actions by multiple parties)が、未曾有の金融界の破綻をもたらした」ことにあると責任を回避した上で、もっとも大きな原因は、「資産の時価評価による期末の洗い替えをしなければならないという会計基準にある」といい「売却の意思も無い資産を時価で売却をすると仮定して再評価させられるのは不当だ」と反論。

さらに「AIGにとって想定外の損失計上をしなければならなくなったのはデリバティブのCDSの評価損のためであった」と説明し、「わが社のような100兆円の資産を有する企業が、資産再評価で突然数兆円の未実現損失を計上することを余儀なくされた。これがドミノ効果を呼んでますます事態を悪化させた」のだと弁明しました。

これに対して、SECの前会計制度責任者は、この批判と言い訳に対して証言席から「高熱が出て苦しんでいるときに、それを体温計のせいにするようなもの」(like blaming the thermometer for a fever)と一笑に付しました。またこの喚問では、このような事態に立ち至って辞任に追い込まれたサリバン氏の高額の退職時報酬に対する非難が極めて厳しいものとなったのはもちろんであります。

今後こうした高額報酬問題が大統領選挙のなかで重要な政治課題となるとともに、経営陣に対する責任追及が、FBIやSECレベルでも話し合われることになるでしょう。また欧州においても同様な議論が進行しており、サルコジ大統領、メルケル首相、ブラウン首相が一様に「破綻企業最高幹部の高額報酬」を問題視する発言を行っています。

(参照記事:2008-10 No.004)