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EU内騒然 Sarkozy angered Euopean counterparts

2008-10-25 | 米国・EU動向
2008-10 No.024

北京で開催中のASEM首脳会議において、ドイツのメルケル首相同席の公式の場で、サルコジ大統領は金融危機を乗り越えるための連帯を呼びかける演説を行いましたが、その途中で、ドイツとの「意見の不一致」があることを認めました。

FTは、フランス国内で、サルコジ大統領は自分に似せて作ったブードゥー人形の発売禁止を求める訴えを起したと報じている中で、「その人形にわたしが最初にピンを打ってやりたい」と思っている欧州首脳はさぞ多いことだろうからきっとよく売れるだろうに、と揶揄しています。

このところサルコジ大統領は精力的に活動し、発言していますが(2008-10 No.22参照)それらはいちいち欧州の首脳の気分を害し、怒らせ、警戒心を募らせさせてきました。こうしたサルコジ大統領の動きには欧州の秩序を破壊した上で、フランスに都合のよいように改変してやろうとの野心が見え隠れします。

今週、「欧州財務省」構想を突然ブチ挙げましたが、これはいわばEU経済政府(economic government for the EU)のような不可思議なしかも一方的提案であります。そしてサルコジ大統領が永続的にその議長を続けるということまでもが想定されていて、喜んでいるのはフランス国民以外にはないという代物であります。

このように同大統領は、先般ユーロ通貨15カ国の会議を招集・主導して公的資金の注入をきめるなどの成果を挙げた余勢を駆って、ユーロ諸国をないがしろにする発言が多く大きい反発を受け始めています。

特にドイツの反発はEU経済政府をフランスが仕切るというのは、フランクフルトにある欧州中央銀行の存在に関わる問題であるのでなおさらであります。しかも今回事前相談を受けなかったことでメルケル首相の怒りは相当のものがあるようで、それが冒頭のサルコジ発言の伏線となっています。。

さらにサルコジ大統領は、EUの国富ファンド(sovereign wealth fund)を創設して、域外の国富ファンドによる産業資本への「侵略」を防止しようという提案を行っていますが、これは国家資本主義(state-run capitalism)や保護主義(protectionism)への回帰として強い反発を受けています。

しかしサルコジ大統領の意気は軒昂です。「わたしに、拙速に過ぎる(You moved too fast)という人がいる。そうでしょうとも。行動したくない人にとっては」と反論しています。