日々の恐怖 6月6日 お迎え(2)
いよいよこれは大変だ、どうしたものかと悩んだが、不思議なことにその日以降、夢遊病はおろか不眠の症状さえピタリと治った。
夜中目覚めることはなく、朝も気持ちの良い目覚めだ。
今まではなんだったのかと思えるほどだった。
そしてそれと同時に、電池切れだと思っていたのですが玄関のセンサーライトも、不調が全くなくなったのだという。
彼女は、それを訝しむことなく純粋に喜んでいた。
ところが、職場でポロっとその話をした時、一人の同僚から言われた。
「 それって、誰かを外からお迎えしたみたいで気味が悪いわね。
もう出迎える必要はなくなったから、あなたの夢遊病もライトも治ったんじゃないの?」
彼女はそのとき、
“ ハッ・・・!?”
と気付いたと言う。
「 そう言われた途端ね、なんだかものすごい寒気がしたの。
私のなけなしの本能が、全力で同意しているみたいでね。
それで、家の中で何があったわけではないんだけど、すぐに引っ越したのよ。
それが良かったのか悪かったのか、それはわからないけど、なんだかスッキリしたわ。」
私は大きく頷いた。
話の途中から、彼女の同僚と同じことを想像してしまっていたのだ。
「 前の部屋、こないだ通ったらまだカーテンもかかってなくて、入居者はいないみたい。
いずれは誰かが入るんでしょうけど・・・・。」
彼女がお迎えしたかもしれない誰かは、まだその部屋にいるのだろうか。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ