大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 4月19日 左手

2014-04-19 18:21:25 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 4月19日 左手



 3ヶ月ほど前の出来事です。
新宿の某百貨店の地下道を通って某大型書店へ通じる地下道があるのだが、その道を歩いていたときのことです。
 通路に入って暫く歩いていると、床と壁の間くらいのところに人間の手が見えた。
なんと説明したらいいのか、壁から手首から先が生えているとでも表現したらいいのか、置いてあるという風には見えなかった。
ただ壁のかなり下の方に手がだらんと垂れ下がっている感じだった。
 俺は、

“ 作り物にしても、きもちわり~なァ、誰の悪戯だよ・・・。”

と思いながらそのままスルーして通り過ぎた。
特にその日はそれだけで何もなかった。


 そんなことも完全に忘れて1週間ほど経った頃、俺はまたその地下道を通って某書店へ行くことになった。
地下道は場所が少し辺鄙なところにあるため、普段あまり人通りはないのだが、その日は 俺の前方に20代半ばくらいの女の人が先を歩いていた。
 地下道の書店側出口は地上へ出るエレベーターになっており、女の人が俺に気付かず乗ってしまうとエレベーターが戻ってくるまで待たないといけないので、少し早足に歩き始め女の人に近付いたとき、ふと後姿に気が付いた。
その女の人は長袖で、右手は手首から先が見えるのだけれど、左の袖からは左手が見えない。
 俺はその瞬間先日のことを思い出したが、書店に急いでいたこともあり気にしないようにして、そのまま女の人と一緒にエレベーターに乗り込んだ。
俺が一階のボタンを押したのだが、その女の人はボタンを押す気配が無い。

“ まあ俺と同じく一階で降りるんだろう。”

そう思っているうちにエレベーターが動き出した。
 俺はボタンの方を向いたまま、一階に到着するのを待ったのだが何かおかしい。
普通なら一階までは30秒程度で到着する。
しかし、エレベーターが動いている気配はあるのに、いつまで経っても一階に着かない。

“ おかしいなぁ・・・。”

と思いながら、何となく天井辺りを眺めていると、俺の斜め後ろにいた女の人が急にボソボソと何かを呟き始めた。
 最初はよく聞き取れなかったので、俺は、

“ 気もちわりぃなぁ・・・。”

くらいにしか思ってなかったのだが、女の人の呟き声が段々と大きくなってきて、はっきりと聞き取れるようになったとき、俺は背筋が寒くなった。
 女の人はずっと俺の後ろで、

「 どうして左手が無いか知りたい?」

と繰り返し呟いていた。
 俺は必死で気付かないふりをしていたのだが、なぜか未だにエレベーターは一階に到着 しない。
明らかに異常な状況で俺は全身に嫌な汗をかきはじめ、必死で気付かない振りをしながら、

“ 早く一階についてくれ!。”

と心の中で思った。
しかし、エレベーターは動き続ける。
 焦った俺は、

「 えっと、一階なんだけど・・・。」

と、訳も無くブツブツ言いながら、一階のボタンを何度も押し始めた。
すると、今度は女の人が俺の後ろでクスクスと笑い始めた。
 俺はもう完全に耐え切れなくなり、

「 何なんだよ!」

と大声で言いながら後ろを振り向いた。

「 いない・・・・。」

女の人は消え、エレベーターの箱の中は俺一人だった。
 あれから3ヶ月、特に俺におかしなことは起きていない。
ただ、あれ以来あの地下道は通っていないし、二度と通ろうとは思わない。
そもそもあの女の人が人だったのか、それともそれ以外の何かだったのかすらわからない。












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日々の恐怖 4月18日 YMCA

2014-04-18 18:02:19 | B,日々の恐怖


     日々の恐怖 4月18日 YMCA


 仕事帰りの地下鉄での話です。
ピーク時間を過ぎてて、人もまばらで空いていた。
私は(ただなんとなくなのですが)いつも座席に座らずに立つことにしているので、その日もいつもと同じように立っていた。
 途中、ある駅で、30過ぎくらいの男性が乗ってきた。
見るからに落ち着きがなくて挙動不審。
そして、その男性は、席も空いているし他に沢山スペースがあるのに、どういうわけか私の後ろに陣取った。
 私は、動いて注意を引いたりしたら面倒なことになるし、あと4、5駅したら降りるので、少しだけ前に移動してそのままの位置にいることにした。
 乗車後しばらくして、その男性はぶつぶつ何やら呟き始めた。
すぐ後ろなので嫌でも聞こえてくる。

「 もー、お父さん、だからだめなんですよ。」
「 そういうなよ、俺だって頑張ってるんだ。」
「 いっつも、そうじゃないですか。」

男性は、家庭でのやり取りなのか何なのか、そんな内容の会話を一人で再現していた。
 そしてそれからしばらくして、その男性は突然、

「 ふーふーふー。」

と言いながら、縦ノリでリズムを取り始めた。
何度目かの、

「 ふーふーふー。」

の後、歌い始めた。

「 すばらしいー、わーい、えむ、しえーー♪」

このあとしばらくこの繰り返し。
そろそろいい加減にしてほしいな、と思い始めた時、変化が起こった。
 突然大きな声で、

「 もお悩むこーとは、なーーいんんだああーー♪」

と歌ったかと思うと例の、

「 ふーふーふー。」

が続き、いつもより大きめの縦ノリ。
そして、

「 すばらしいー、わーい、えむ、しえーー。」

で締めた。
 不謹慎だけど、

“ ちょっとは悩め!”

と思わずにはいられなかった。
歌を聞かされただけで無事に下車した。
絡まれたりしなくて良かった。











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日々の恐怖 4月17日 墓参り

2014-04-17 19:54:27 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 4月17日 墓参り



 20代前半で地方から上京して仕事をしていた時、間もなくして同僚の女性と仲良くなった。
これは、その子との話です。
 名前は、仮にS。
明るい子で、実家が大富豪だったが社会勉強も兼ねて職に就いたらしい。
何度かデートをするうちに親密になり、運命の女性にすら思えた。
まだお互いの親には面識がなかったが、将来の結婚も約束していた。
 しかし、そんな幸せな日々も長くは続かず、交際から半年後Sは入院し、Sから白血病であることを告げられた。
俺は毎日病院に足を運んだ。
病状はかなり深刻らしく、休憩所でSの母親が泣いている光景も何度となく目にしていた。
 ある日、いつものように病室に二人でいると、Sが、

「 もうお見舞いにこないで・・。」

と言った。
 驚いたが、細かく話を聞いてみると、これから先は髪も全て抜け落ちるだろうし、ミイラのように痩せ細り醜く変貌する。
そんな姿を俺には見られたくないし、綺麗なまま、ずっと覚えていてほしい。
そんな内容だった。
 しばしの言い合いの後に、

「 分かった。」

と返事をした。
 正直、俺もSのそんな姿を見たくなかったのかも知れない。
何より、愛した人が刻々と死に向かう有り様を黙って見ているしかない現状に耐えられなかった。
完全なノイローゼだった。


 しばらくして、仕事を辞めて逃げるように引っ越した。
苦痛から解放されるためにSのことを忘れてしまいたかったが、内心恋しくて胸が張り裂けそうだった。
 それから数ヶ月経った、ある晩の出来事だった。
俺は何かの気配を感じて、真夜中に、ふと目を覚ました。

“ 誰かがいる。”

俺は目を閉じたまま、身動きひとつ取れずにいた。
すると、その何者かはゴソゴソと布団をまさぐった後に、俺の手を握ってきた。

“ Sだ。”

手を握られた瞬間に思った。
 その掌は氷のように冷たく、枯れ木のように痩せ細っていた。
俺は目をあけてSを抱きしめたいと思ったが、しかしSと話した最後の会話が脳裏をよぎる。

“ 醜く変貌した自分を見られたくない。
綺麗なまま覚えていてほしい。”

それが彼女の最後の意志だった。
俺は閉じてある目を、さらにぐっと閉じながら彼女の手を握ったまま眠った。
 彼女の霊は定期的に現れた。
深夜、目が覚める時は彼女が来た時だった。
そしていつも俺の手を握った。
俺も目を閉じたまま、冷たく痩せ細った手を握り返した。
 俺が起きている時は決して現れない。
やはり自分の姿を見られたくないのだろう。
 数年経っても、まだSの霊は現れ続けていた。
それ故、俺は恋人も作らず、人間関係も薄く、周りからは暗いヤツと遠ざけられる存在になっていった。


 ある日、電車でSと出会った街を通る機会があった。
辛くて逃げ出した街だ。
しかし数年ぶりに見ると妙になつかしくなり、思い切って電車から降りてみた。
 しばらく街を徘徊した。
Sとよく訪れた公園の前を通りかかった時、偶然Sの母親が大きな犬を連れて前方から歩いてきていることに気付いた。
 俺は即座に俯いた。
自分の顔を隠すためだ。
Sの死に目にも会わずに逃げ出した男だ。
恨まれているに違いない。
そう思った。
 俺は俯き加減に歩いた。
あと少しですれ違う。
そのくらいの距離になって、Sの母親は俺に気付いてしまった。

「 あら、久しぶりじゃないの。」
「 あ、はい・・・・。」

逃げられないと思って、ぼそりと返事をした。
そして続ける。

「 あの、すみませんでした。」

 その後、俺とSの母親は公園のベンチに座っていろいろ話した。
Sの話は出来るだけ避けたが出てしまう。
やはり会話の内容は、昔の彼女の思い出話になってしまった。
どのくらい話していただろう、Sの母親は俺のことを恨んでいる様子もなく犬を撫でながら話を聞いてくれた。

「 あの、Sのお墓はどこにあるんですか?
今度、お墓参りに行かせてください。」

俺が思い切ってそう言うと、Sの母親は怪訝な表情を浮かべた。

「 S、まだ生きてるわよ。」

俺は一瞬固まった。
 Sは完治して退院していた。
そして数年前に恋愛結婚、子供もいるらしい。
その事実を知って以来、俺は眠れなくなり、今では重度の不眠症になった。
もちろん、マンションは別の所に大急ぎで引っ越した。











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しづめばこ 4月17日 P285

2014-04-17 19:54:04 | C,しづめばこ
しづめばこ 4月17日 P285  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 4月16日 印刷

2014-04-16 19:13:48 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 4月16日 印刷



 20年来の幼馴染から聞いた話です。
幼馴染(A男)はある女子高で英語の教師をやっていた。
Aはいつも、英語を教えるクラスの生徒に配るプリントを、校内の印刷機で刷っていたのだが、担当クラスは1学年に4つあって、全員分刷るとけっこうな枚数になるそうだ。
一気に4クラス分を刷ると、時間かかるわ紙無くなるわで色々と面倒なので、Aはクラス人数分ごとの数量指定で、授業前にいちいち印刷するようにしていたらしい。
 しかし、なぜかあるクラスだけ、数が違って出来上がるんだそうだ。
32名分32枚刷ったのが、いつも33枚出来上がっているという。
 最初はAも、

“ ただ数を間違ったんだろう。”

と思って気にしなかったそうだが、いつもとなるとなんだかおかしい。
他のクラスではそんなことない。
 Aは、教室に並ぶ机の一番前の席1列の生徒に、

「 うしろに廻してね。」

と言ってプリントを配る。
すると、手元に必ず1枚あまるそうなのだ。
 前に、それを見た生徒に、

「 先生、なんでいつも1枚あまるの?」

と聞かれ

「 これは先生の分だから。」

と答えたそうなのだが、そんなつもりで刷っているわけじゃないのは自分がよく知っている。
だいたい自分の分は既にきちんとファイルに入っているのだ。
 いよいよ不思議に思ったAは、

“ 自分がちょっとおかしくなっているのでは?”

と思い、印刷機の前で数を数えてみることにした。
プリントをセットして、枚数を31と入力する。
 31枚+原本=32枚
1枚、2枚、どんどん出てくる。
Aは目を離さずにそれを数えていたそうだ。
とうとう31枚出てきたところで、印刷機は止まった。
原本を足して再度数えてみたところ、やはり32枚で間違いない。
 しかし、そのきちんと数えたプリントをそのまま例のクラスに持って行き配ったところ 、やはり手元に1枚あまってしまった。
 Aは慌てて生徒の数を数えたが、休みの生徒もなく、ちゃんと32人いる。
あまるはずがないのだが、でもあまっている。
 Aは呆然としてしまい、生徒たちに、

「 このクラス32人だよな?」

と聞いてみた。
するとクスクスと笑われ、

「 先生寝ぼけてるよ~。」

などと野次られた。
 でも、そのあと、

「 33人いないよな?」

と生徒たちに念を押したAの顔がマジだったからか、

「 先生マジでやめてよ。」

とか、

「 冗談きついよ。」

とか、教室内がもうすごい騒ぎになってしまった。

“ これはいけない・・。”

とAは気を取り直して、

「 何でもない、やっぱり俺の気のせいだ。」

と言って教室内の沈静化を図ろうとした時、

「 なんでわかった、なんでわかった!?」

って、すごい声で叫びだしたヤツがいた。
それでAは、もう恐ろしさからか気が遠くなって、気がついたら校長室のソファーで寝ていたらしい。


 今、Aはその学校にもういなくて、既に教師でもない。
早い話、学校やめて地元に戻ってきた。
今は実家でブラブラしてる。
ちなみに、俺の家の2軒隣だ。
 Aが戻ってきたとき、なんで先生やめたのか言葉を濁してたから、ずっと聞きづらかったんだけど、こないだ酒の勢いで聞いたらこの話をしてくれた。
何が一番怖いって、Aが学校を去ることになったとき、やたら避けられていた問題のクラスにいた生徒を捕まえて聞いたら、

「 なんでわかった!?」

って叫んでたのは、なんとA自身だったらしい。
 でもAは、

「 声は聞こえてたけど、俺が言った覚えなんてない。」

と言っていた。

“ やっぱAがおかしいのかなぁ・・・?”

とも思うが、2軒隣にいるだけに、すげえ心配だ。













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日々の恐怖 4月15日 パンク

2014-04-15 17:57:11 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 4月15日 パンク



 今は嫁さんになった彼女と、昔、同棲してた時の話です。
同棲に至った成り行きは、彼女が、父親と大喧嘩して家出した。
彼女の父親は大工の親方してる昔気質だ。
あまり面識はなかったが、俺も内心びびりまくりの存在だった。
 仕方ないから彼女と俺の有り金かき集めて、風呂無しぼろアパートで同棲した。
しかし最悪のアパートで、ゴキブリは出るし、畳は湿気ですぐ腐るし、上の階に住むバンドマン風の若者は、毎晩、大声で歌の練習するし、隣に住む老人は薄気味悪い。
 まぁそんな最悪な環境にも、だんだん適応しながら同棲生活を送り、俺は建築現場でバイト、彼女はカラオケボックスの夜勤で生計を立てていた。
 住み始めて半年くらいして、変なことがおこり始めた。
ある朝、バイトに行くために、自転車に跨ったんだが、違和感を覚えて、タイヤを確認すると、パンクしていた。
 その日は歩いて仕事に行き、休日に、自転車屋に行って、修理してもらった。
その店でのパンクの修理はタイヤに穴が多い程、金額が上乗せされるんだが、確か、5~6箇所は穴があいてたと思う。
 自転車屋に、

「 誰かのイタズラだろうね。」

って言われた。
クギか何かで刺したらしい。
 それから、風呂無しアパートなんで、毎晩、彼女と近くの銭湯に通っていたんだが、自転車の二人乗りで銭湯まで行って、風呂入って、また二人乗りで帰ってくる。
ある日の銭湯からの帰り、二人で銭湯の前に止めてある自転車まで来て、サドルに座ると、また違和感が。案の定、パンクしてた。
後日、自転車屋さんに修理してもらうと、また凄い数の穴があいていた。
 また別の日、彼女が自転車に乗って一人で夕飯の買い物に行った時も買い物中にパンク。重い自転車を押して帰宅。
他にも、二ケツで駅まで行って、自転車を駐輪場に止め、電車で遊びに行った時も、遊び終えて、駐輪場に戻るとパンク。
いずれも、多数の穴。
 そんな事が定期的に続き、パンク修理のしすぎで、タイヤがボコボコになってしまい、買いかえ。
最後の方はもう3台目くらいの自転車になってたかな。
 自転車屋曰わく、タイヤごと外して新品のタイヤに変える作業に費用払うのと、安い自転車買うのとでは、金額的にあまり変わらないって事だったんで、タイヤがボコボコになって乗れなくなったら買いかえていた。

 それにしても無差別のいたずらにしては被害に遭う回数が多すぎるし、ストーキングでもしない限り、こんなに何度も何度も俺たちの自転車を狙えない。
俺も彼女もイラつきのピークだった。
 二階のバンドマン、隣の部屋の薄気味悪い老人、誰もかれも疑って疑心暗鬼。
極めつけが、レンタカー借りて、二人で遠くまで旅行に行った帰り道での事。
高速道路のサービスエリアにあったレストランで夕食を食べた。
食べ終えて、車に乗り込み、

“ ・・・ん?”
と、また違和感を覚えた。

“ 何かこの車、傾いてない?”

 車から降りて、恐る恐るタイヤを確認すると、右前後、二つのタイヤがパンク。
この時ばかりは、彼女も俺も、怒りよりも恐怖を覚えた。
犯人は、俺達の旅行の予定まで知っていて、タイヤをパンクさせる為に高速にまで乗る。
いったい、どんだけ恨まれてるんだよ俺達、と。
 盗聴器を疑い、部屋中のコンセントを分解した事もあったが、それらしき物は何もなかった。

 そんなある日、建築現場のバイト中に、俺は怪我をした。
不注意で、クギを思いっ切り踏んでしまって病院へ。
クギが錆びていた可能性もあるって事で、結構な事態になってしまった。
 家に帰り、彼女に一連の事を話した。
彼女は俺の傷を心配した後に、何かに気付いて急に暗い顔になった。
しばらくして、暗い顔のまま言った。

「 君がもしタイヤだったらパンクしてたね。」

俺もそれを聞いて初めて、この怪我と一連のパンクを結びつけた。
それまで考えてもいなかった。
しかし万が一、俺の怪我も一連のパンクと関係あるとしたら、犯人はもはや人間ではないのでは?
そうなったらもう呪いや悪霊の類だ。
 彼女は今にも泣きそうな顔をしてる。

「 考えすぎだろ。」

と俺は言った。
言ったものの、内心、怖くて仕方なかった。
 嫌な事ばかり考えてしまう。
例えばこのぼろアパートが呪われてるのでは?とか。
けど、一番怖いのは、彼女に被害が及ぶ事。俺は今回、怪我をしたが、幸い彼女の身にはまだ何もない。
 数週間考えて、話し合い、彼女は家出した実家へと戻る事になった。
一人で、このぼろアパートに住むのは怖かったが、俺の実家は遥か地方だし帰れない。新しいアパートを借りる余裕もない。足の怪我で、ろくに仕事もできない。仕方なかった。
 しかし、意外なことに、彼女が実家に帰ってから、なぜか自転車のパンクは全くなくなった。
同棲生活は終わっても彼女との交際は続いていたし、彼女も首を傾げていた。
それからは何事もなく月日が経っていった。


 その後、数ヶ月経って彼女の父親がガンで入院した。
手術の甲斐も無く亡くなってしまった。
それで、その葬式の時に、彼女と彼女の母親と俺の三人で話す機会があり、その席で妙な話を聞いた。
 死んだ父親は、俺の事を相当憎んでいたらしい。
大事な娘を奪った男という認識だったようだ。
彼の仕事は大工だ。
大工という仕事は、木材にクギを打ち付ける機会が多い。
彼は俺への恨みを込めて、木材にクギを打ち込んでいたらしい。
わら人形にクギを打つように。

「 そうすると、気分がスッキリするって、あの人、言ってたわ。」

そう言って彼女の母親は笑った。
ブラックジョークのつもりだったのか?
 彼の行動と自転車のパンクや俺の怪我に因果関係があるとは思えないが、それを聞いてからは、彼の遺影を直視出来なかった。










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しづめばこ 4月15日 P284

2014-04-15 17:56:45 | C,しづめばこ
しづめばこ 4月15日 P284  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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日々の恐怖 4月14日 廃村

2014-04-14 18:57:08 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 4月14日 廃村



 俺はオフロードバイクでツーリングするのが趣味だった。
連休には良く一人で遠出する。
 お盆休みに、九州の南端目指して三泊四日の予定でツーリングに出発した。
もちろん、高速道路をひたすら走って目的地に着いても面白くない。
途中に絶景ポイントや美味しそうな林道を絡めつつ走る。

 一日目は主に高速を走る。
福岡の友人宅に泊まる。
 二日目、主に下を走る。
途中温泉に入ったりしつつマイペース走行。
阿蘇で写真も沢山撮った。
 だが、少し寄り道し過ぎたらしい。
目的地にはまだだいぶあるが夕方になってしまった。
このとき、熊本と宮崎のちょうど真ん中辺り。
予定では鹿児島に入ってるはずだった。
 別に宿を予約している訳でもないから急ぐ必要もないと林道へ向った。
峠を下り切った所で一服。
川が涼しげに道の向こうを流れている。
 と、その川に小さな橋が架かっている。
先には小ぢんまりとした神社。
そして、神社の脇に向かいの山へと続く砂利道だ。
 まだ日はある。
俺はゴーグルを下げ全開で走り出した。
 だが夢中で走っていたらいつの間にかオーバーペースになっていたようだ。
しまったと思う前に、俺は空中に放り出された。
頭の上を飛び越え、逆さまに地面に叩き付けられる愛車が見えた。

“ やっちまった。”

幸い路面に沿って投げ出されたお陰で木や岩に突っ込む事はなかった。
 しかし、さすがにあちこち痛む。
ゆっくり起き上がる。
骨に異常はないみたいだ。
 ふらつきながら先の方に転がっているバイクに近付く。
ウィンカーやミラーは脱落し、メーター周りは粉々だ。
それでも一応エンジンを掛けようと試みたが、予想通り無反応。
 辺りは既にかなり暗くなって来ていた。
携帯はもちろん圏外。

「 仕方ない歩いて下るか。」

バイクを邪魔にならない場所に引きずり込み、リュックを背負う。
絶望的な気分で懐中電灯の明かりを頼りに歩き始めた。

“ もう3時間歩き続けている、おかしい。”

時間的に、あの神社のある場所に出ても良いはずだった。
右手に夜空、左手に山の斜面を見続けて歩いているのだから間違いないはず。

“ もしかして、気付かないうちに脇道に入ったか?”

地図を広げてみたがもはや何の役にも立ちそうになかった。
 暗い。
雲が出ているのか月の明かりすらない。
懐中電灯がなかったら谷底へ転落してもおかしくない。
 少し休もうと思い腰を下ろしタバコに火をつけた。
近くで川の流れる音が聞こえるが入口にあった神社は見えない。
やはり間違ったルートを下った様だ。
 しかし、どのみち今夜は野宿だ。

“ もう歩きたくない。
あとは明るくなってから考えよう。
万一クルマやバイクが通っても轢かれる心配のない場所を探して野宿しよう。”

そう考え再び歩き出した。


 しばらくすると急に道が開け、今まで見た事のない風景に出くわした。
そこにいきなり村が現れたのだ。
もちろん明かりの点いた家は全くない。
 廃村だ。
どうやら途中で枝別れしたこの廃村へと続く道を歩いて来たらしい。
 辺りを照らしてみると木造の半壊した建物ばかりだ。
赤錆びた給水塔らしきものも見える。
かなり昔に放棄された村らしい。
不気味ではあったが面白くもあり少し見て周った。
 かなり小さな村のようで、狭い範囲に5~6戸程の小さい民家が斜面に並んでいる。
その殆どがツタに覆われ、壁の一部が崩れ去り部屋の中が見えるような状態だった。
玄関に施錠はされているが意味はなさそうだ。
 集落の中央には石段が通っていた。
井戸が何箇所かあり、蓋が閉じられている。
記念に数枚写真を撮った。
 そして比較的まともな一軒の玄関にもたれ顔にタオルを巻き、虫よけスプレーをかけ寝ることにした。
地面に直に寝転ぶのを考えたら、それでもかなり有り難く思える。
 もうクタクタだ。
すぐに睡魔が襲って来た。

“ ・・・・・?”

何か気配を感じて目が覚めた。
俺が今いる玄関の中からの気配。
いや、気配ではなく音がする。

「 ミシッ・・・、ミシッ・・・。」

ゆっくり何かが中を歩く音。
 最初はただの家鳴りかと考えたが、ゆっくりとしたリズムを刻み床を踏む音が微かに聞こえて来る。
玄関の上半分はスリガラスで中の様子は見えなかった。

“ まさか人がいるのか…?”

この廃墟に人が住むとは考えられなかったが、確かめようと思い寄り掛かったまま玄関に耳を当てた。

「 ミシッ・・・、ミシッ・・・。」

間違いない。
この家の中を歩き回ってる者がいる。
 いつの間にか月が顔を出し、不気味に廃墟群を浮かび上がらせていた。
急に自分の置かれている状況がひどく恐ろしいものに感じられた。
当然だ、こんな時間にこんな山奥の廃墟に人などいるはずがない。
 心拍数が跳ね上がるのが分かる。
得体の知れない何かがすぐそばにいる恐怖。

「 ゴトッ・・。」

今度は少し離れたところから音がした。
 目をやるが何も見えない。
緊張感からか身動き一つ取る事が出来ない。
額から汗が流れる。
緊張からか体が固まって動けなくなった。
 目だけを動かし周りを見渡す。
すると俺の今いる場所の正面、少し低い場所にある家の窓を月明かりに浮かんだ黒い影がスッと横切るのが見えた。
また少し間を置いて横切る。
影が往復しているように見えた。

“ 歩き回っているのか・・・?”

俺の背後の家からも相変わらず音が聞こえている。
 もはや俺の中の恐怖心は耐え難いものになっていたが、なにしろ身体が石の様に固まって動けない。
それに、少しでも動いて俺がいることがバレたら大変な事になる気がする。
 目を動かし様子を窺う。
暗さに目が慣れたのか、先程物音がした方を再び見ると井戸が見えた。
井戸は何故か蓋が地面に落ちていて、その中から目だけを出してこちらを見ている女の顔があった。
 いつの間にか足音は止んでいた。
俺は背後にも何かがいるような気がした。

「 うわぁっ!!」

思わず声が出た。
 その瞬間体が動くようになった。
ヘルメットをひっ掴み全力で来た道を駆け戻る。
懐中電灯を使う事も忘れ月の光を頼りに森を走った。
脇腹が痛くなるまで走り、あとは歩き続け朝になるのを待った。
 とても立ち止まる気にはなれなかった。
東の空が明るくなるのと町に辿り着くのと、ほぼ同時だった。
その日の始発高速バスに乗り帰ることにした。
 バイクは地元の業者に引き上げてもらい廃車になった。
体もあちこち打撲だらけで、まさに呪われたツーリングとなってしまった。
あと、この廃墟を撮影した写真を見ると、そのときは気が付かなかったが、廃墟の後ろの一段高くなった場所に苔むした墓石が何柱かフラッシュに浮かび上がっていた。














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しづめばこ 4月13日 P283

2014-04-13 19:11:21 | C,しづめばこ
しづめばこ 4月13日 P283  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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日々の恐怖 4月13日 親父の話

2014-04-13 19:10:20 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 4月13日 親父の話



 親父が若かった頃、就職が決まり新築のアパートを借りたらしい。
バイトしていた材木店のトラックを借り、今まで住んでいたボロアパートから後輩に頼んで引越しをした。
特に大きい物は無かったので、荷解きはそんなに時間はかからなかった。
 後輩は部屋についた頃から顔が真っ青で、あきらかに体調が悪そうだったのでバイト代数千円を握らせその日は帰したそうな。
 その夜、引越しの疲れで早々と床についたのだが、深夜にボソボソ・・・と何か語りかけてくるような声を聞き目が覚めた。
親父が一番早く引越しをして他の部屋にはまだ誰も住んでおらず、隣人の声では無かった。
 電気を点け、外を見渡しても静かな深夜の住宅街。
酔っ払いも歩いてはいなかった。
気のせいにして再び床につくと寝入り始めた頃にまたボソボソ・・・・と声がする。

“ 家鳴りとか風の音が、人が話しているような音に聞こえるに違いない。”

そう思おうとしたが、やはり建物の中で誰かが話しているような気がした。

“ もしや、間抜けな泥棒が隣の空室に忍び込んだのか?”

と壁に耳をあて、聞き耳をたてる。

“ 何も聞こえない。
人の気配はない。
明日も早いし気のせいだ、寝よう・・・。”

と思った矢先、反対の耳からボソボソ・・・と声が聞こえた。
振り返るも、当然誰もいない。
 イライラしてきた親父は原因を突き止めようと両隣の部屋、上階、全ての部屋をノックして回ったそうだ。
結果、やはり親父以外はまだ越してきていない。
 引越しの疲れだと思い部屋に戻ると、とんでもない光景が目に入った。
キッチンの排水から白い手が伸びている。
今まさに、そこから這い出ようとせんばかりに伸びている。
 思わず叫びそうになり逃げ出しそうになったが、グッと堪える。
目を凝らして見ていると、何かを探しているような手付きでパタパタとキッチンを這い回り、暫らくするとスーっと排水口に飲まれていった。
 体中汗が噴出したが、ここで逃げたら俺の負け(確かに親父はそう言った)と思い、キッチンの蛇口を開き水を思い切り流したそうだ。
当然、細い配水管に人なんか入っている訳もなく、何の異常もなく流れる排水。
シンク下の収納も開けてみたが、もちろん誰もいない。

“ これは幽霊・・・・?”

見間違えでは無いし、特有の嫌な感じもした。
 子供の頃から嫌なモノは見たし、怖い思いも何度もした。

“ 逃げるのもいいが、それでいいのか?
敷金礼金は返って来るのか?
これは立ち向かわなければならない現実じゃないか?”

そう考えた親父、わが父ながら頼もしい。
おもむろに排水口に顔を寄せ、

「 二度と出てくるな!
テメー、俺が死んだら追っかけまわすぞ!!」

深夜にも関わらず、排水口に向かって思い切り怒鳴ったらしい。
気が済んだ親父は、バカらしくなって布団に入ったそうだ。

“ 命までは取られない、幽霊ごときに殺される訳がない。”

 その後、何事も無く朝を迎え、材木店にトラックを返しに行くと後輩が昨日と同じく真っ青な顔して、何か言いたげにしていた。
理由を聞くと、

“ 部屋に入った瞬間、物凄く嫌な感じがして、その方向を見るとキッチンから白い手が生えていた。”

とのことだった。
そして、後輩は言った。

「 時々変なのを見るけど、あんなに気持ち悪いのは初めてだった。
折角の新居で、そんなモンを見たと言ったら気を悪くするだろうから言えませんでした。」

 それから親父の脅しが効いたのか何事も無かったそうだけど、2年くらいで転勤となり部屋を出ることになった。
 最後の日、部屋から出ようとすると背後に妙な気配がする。

“ あ~、また出たか、憑いてくるなよ・・・。”

と思いつつ、怖いもの見たさで振り向くと、例の白い手が排水口の所から手を振っていたそうです。
シュールな光景ですが、親父も手を振り返したと言っていました。
 さすがに最後のこれは作り話だと思いましたが、親父ならやりかねないので余談までに書き留めておきます。











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日々の恐怖 4月12日 男女の顔

2014-04-12 17:42:59 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 4月12日 男女の顔



 これは、俺の友人が実際に体験したことである。
作り話にしてはなんとなくオチもゆるいし、実際家族の人もうなされてるのを目撃してたようだ。


 友人の親父さんが軽度に内臓を患って手術しなきゃいけなくなった。
で、友人は家族と一緒に手術に付き合って手術室の前で手術が終わるのを待っていた。
そこで、友人は猛烈に眠くなり、堪らなくなって椅子に寝転がって寝てしまった。
 で、そこからなんだけど、



『 ふと気づくと自分が手術室の前にいる。
周りには母親と弟。
一瞬夢だとわからないくらい同じ光景。
 タバコがすいたくなってくる。
当然、病院内は禁煙。

「 ちょっとタバコ吸ってくるわ。」

といってエレベーターに乗る。
 そこの手術室は他の棟からちょっと隔離されてて、主な移動手段はエレベーターだった。
実際の病院の配置も一緒である。
 エレベーターに乗ると、なんだか不穏な空気が漂う。
1階のボタンを押すと、ゆっくりとエレベーターが動き出した。
なんか無駄にゆっくり動いて、いらいらしてるとエレベーターのドアが透けて見え出した。
もうこのあたりで友人は、自分が夢を見ていることを自覚していたようだ。

“ ああ、夢なんだ・・。”

と思いながらドア越しに外を見てると、なんか白いもやもやした人たちがうごめいているのが見える。

“ これ、やばくね?”

と思いながら、ふと視線を感じて上を見ると男と女の一組の顔が壁から覗いていてじっとこっちを見ている。

“ うおっ!?”

ってなってそこで途切れる。


 気づくとまた手術室の前に立ってる。
今度は弟がジュースを買いに行くといってエレベーターに乗ろうとする。

「 そこのエレベーター、幽霊出るから気をつけろよ。」

といって弟を見送るが、自分もなんとなくジュースが飲みたくなって、またエレベーターに乗ろうとする。
 エレベーターに乗ると、なんだか不穏な空気が漂う。
1階のボタンを押すと、ゆっくりとエレベーターが動き出した。
なんか無駄にゆっくり動いて、いらいらしてるとエレベーターのドアが透けて見え出した。

“ ああ、また夢をみている・・。”

と思いながらドア越しに外を見てると、なんか白いもやもやした人たちがうごめいているのが見える。

“ これ、やばくね?”

と思いながら、ふと視線を感じて上を見ると男と女の一組の顔が壁から覗いていてじっとこっちを見ている。

“ うおっ!?”

ってなってそこで途切れる。


 気づくとまた手術室の前に立ってる。
そして、また何かの理由があって、自分はまたエレベーターに乗ろうとする。
それで、エレベーターで降りて行く途中、またさっきの男と女の顔が壁から覗いている。

“ うおっ!?”

ってなってまた途切れる。』



 延々それの繰り返しで、何回も何回もず~と同じところをグルグルグルグル回っていたようだ。
友人は夏の病院で適温にもかかわらず、汗びっしょりになってうなされていた。
見かねた母親が起こして、ようやく友人は目が覚めた。
 友人とその母親はこの話を笑いながらしてたけど、聞いた俺はなんとなく背筋がぞくっとした。
怪談なんか一度もしたことない、そういう話とは無縁そうな友人が、そんな体験をしたってのが、なんとなく。
 まあ、豪快な親父さんと豪快な親子関係といえども、やっぱり親父の手術でそれなりに不安だったんだろうし、肉体的にも真昼間から猛烈に眠くなるくらい疲れていたんだから、おかしな夢くらい見ても不思議じゃないかなと思う。
それでも、夢がループして抜け出せないってのと、病院の手術室の前ってのが何か結び付いてしまって、割とさらっと言われたけど、後でその風景を想像してみると、

“ 怖くね・・・?これ・・・ ・?”

ってなったって話です。










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しづめばこ 4月11日 P282

2014-04-11 18:27:50 | C,しづめばこ
しづめばこ 4月11日 P282  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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日々の恐怖 4月11日 ひょろっと細っこいヤツ

2014-04-11 18:26:53 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 4月11日 ひょろっと細っこいヤツ



 25年ほど前にじいさんが死んだ時も、20年ほど前にばあさんが死んだ時も、ばあさんと同じ頃死んだ伯父の時も、病院で最後を看取ることが出来たんだが、3回とも枕元に同じ少年を見た。
ひょろっと細っこいヤツ。
 顔は覚えてなかったが、何となく“同じヤツだな”と分かった。
3回とも、じいさんやばあさんが死んだと同時にふっと消えた。

“ 死神か・・・?”

と、そのとき思ったりしたが、空気を呼んで誰にも言わずにいた。
それに、死神というにはあまりに普通なTシャツにジーンズ、明るい表情、全くおどろおどろしくなく怖いとは思わなかった。

 それで、最近、うちの次男がどんどんその死神に似てきている。
中学に入った頃から背がにょきにょき伸び、その頃から何となく誰かに似てるとは思っていたが、先日じいさんの法事があり、亡くなったときの話をしてるうちにヤツのことを思い出した。
あれから1回も誰も近しい親族が亡くなっていないから、確かめようもないから余計、激似な気がしてしょうがない。
 次男は運動神経だけが取り得の極々普通の中学生だ。
見た目も普通なら成績も普通、バスケに熱中し、お調子者だが時々友達と喧嘩するぐらいでDQNでもなさそうだ。
 ただ、ひとつ変わったところがあるとすれば、年に2~3回予知夢を見る。
それが結構当たる。
だが、内容は実につまらん予知である。
 俺的に1番hitだったのは、

“ ワタルのちんちんがデカくなる。”

というヤツ。
ワタルは次男の友達だが、当時まだ幼稚園児だったため、

「 そりゃ無いだろ・・・!」

と言っていたのだが、そうでも無かった。
 3日ほど後、朝、ワタル母が慌てた様子で、

「 ワタルのちんちんが大変なことに!!」

と電話をして来た。
どうも寝グソをしたまま寝ていて菌にやられたらしい。
 車の免許を持っていないワタル母が、うちの嫁に助けを求めてきたのだ。
長男と次男を幼稚園に放り込んで、そのまま病院につきあった嫁が言うには、

「 尋常じゃないデカさに腫れあがってた!」

そうだ。
因みに、ワタルのちんちんは飲み薬ですぐ腫れが引いたそうな。
 死神と、何の役にも立たんしょうもない予知夢の関係はどうなんだろう?
そもそも、死神と次男の関係もあるのかどうか分からん。
無理やりこじつけるとすれば、俺のオヤジの兄貴が早くに亡くなってるのだが、その兄貴は次男とよく似ていたらしい。
 俺は写真でしか知らんが、確かにちょっと似ている。
俺にとっては伯父なのだから次男が似ていても不思議ではないし、両親や弟が死ぬ時に迎えに来たと思えばちょっといい話である。














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日々の恐怖 4月10日 ドライブ

2014-04-10 18:17:47 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 4月10日 ドライブ




 4、5年前に経験した話をする。
俺は車でドライブするのが好きなんだ。
地図も見ずに適当に走り回って、満足したら携帯電話カーナビを使って自宅に帰る。
気ままにドライブできるってんで、深夜に良く出かけていた。
 その晩も適当にドライブして、じゃあ帰るかってなった。
おもむろに携帯電話を取り出して、カーナビソフトを起動。
自宅の位置は登録してあるんで、ボタン一つで自宅までのルート検索が出来る、はずだったんだけど何か様子がおかしい。
 どうやらGPS信号が取れていないらしい。
周りを確認したけど、単なる住宅街で遮蔽物なんであるわけがない。
車の外に出て受信状態を確認したけれどもそれでもダメ。
 しょうがないんで、携帯電話をセンターパネルに固定して出発。
適当に走っていればGPS信号を取れるところに行くだろうし、道路標識もあるだろう。
まあいっか、と軽い気持ちで走り始めた。
 で、走り始めて15分、変だ。
最初は気にしていなかったんだけど、なんかおかしい。
走っているのに周りはずっと住宅街、幹線道路にぶち当たる気配もない。
 普通、こういう感じの住宅街なら10分も走れば幹線道路っぽいのがあるはず。
それにさっきから対向車が一台もない。
交差点もあったが、標識のある交差点がない。

“ たまたまだよね、たまたま。
ラジオには首都圏の局が入っているし大丈夫!!”

と必死に自分に言い聞かせるけど、ヤバくないか? と警告が出る。
周りの情報を取りこぼさないようにラジオの音量をしぽって、眼を皿のようにして走ってた。
 不安ながらも走り続けていると、前方に歩行者を見つけた。

“ やった~!あの人に道を聞ける! ”

と安堵したのも束の間、俺の中の冷静な部分が言ってくる。

“ こんな時間に歩行者が一人?
この状況下で?
なんかフラグが1ダース位立ってるんじゃないか?
アレな感じのが・・・。 ”

パニクったまま、それでもゆっくりめの速度で歩行者を追い越すことにする。
 追い越す瞬間、横目で確認すると傘を持った普通のサラリーマンっぽい。
ほっとして車を止めようとサイドミラーを確認すると、

“ あれ・・・ !? ”

思わず振り返って確認。

“ 追い越した歩行者が、いない!!”

もう一回振り返って確認、やっぱりいない。
 ぶわっと、全身から色んな汁がだだ漏れてくる。

“ 落ち着け、落ち着け!!”

と言い聞かせるも、落ち着ける訳がない。
 何故か脳裏を駆け抜ける走馬灯。
目をグルグルさせながら走り続けていると、道路標識を発見、それを辿って幹線道路に到着。
多数走っている自動車を見てやっと一安心できた。
 後部座席や助手席に見知らぬ人が座っていることもなく、無事に帰宅できた訳だけど、4時間のロングドライブになってました。
 後日トランクに見覚えのない紳士用の傘を発見した。
ボロボロの傘だったし、一昨日乗せた友人の忘れ物だと決め付けて、近所のコンビニの傘立てに置いてきた。












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しづめばこ 4月9日 P281

2014-04-09 18:50:10 | C,しづめばこ
しづめばこ 4月9日 P281  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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