大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

日々の恐怖 7月19日 搬送車

2014-07-19 18:35:16 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 7月19日 搬送車


 私が生まれる前、確か兄も生まれていなかったので、30年ほど前のことだと思う。
当時、父は葬儀関係の仕事をしていた。
私が中学の頃も、バイトと言って斎場の設置などは手伝っていた記憶がある。
 物心ついたころには、父はタクシーの運転手になっていた。
葬儀関係は休みが不定だったので、子供のために転職したそうだ。

 葬儀全般いろいろとしていたようで、帰りが遅い日もあったようだ。
まだ新婚だったから、仕事の合間に夕飯だけ食べに帰ることが多かった。
 ある日、父が仕事用の車で、夕飯を食べに帰ってきた。
仕事用とは、病院などで亡くなられた方を自宅へお送りする車だ。
ちゃんと名前があるんだろうけれども、名称は知らない。
見たことがある人はイメージがつきやすいと思うけれど、車の後ろにストレッチャーを差込、そのまま故人を車に乗せることができたり、中は特殊な構造になっている。

 夕飯のときに、その車で帰ってきていることを聞いた母は、見てみたいと言ったそうだ。
まぁ、当時まだ20台前半だったらしいし、興味があったわけだ。
なんか、乗り込んで「へぇ、こうなっているんだ」と見学した。
 それで、その夜、母は金縛りにあった。
もともと、そうした霊感があるらしい。
母の祖父の通夜の時、グイッと髪を引っ張られたことがあったり、ああ、これ以上進めないな、と言う感覚を受けたり。
その娘である私は、一切霊感なんてないんだけれど。
 それから、毎日は起こらず、たまに金縛りにあうようになったそうだけれども、さすがに続くので、

“ おかしい、怖い。”

と思ったそうだ。
なぜなら、いつも一人の時ばかり金縛りにあう。
 父は葬儀関係と言う仕事上、夜勤になることがあった。
先ほども言ったが、それでも夕飯は家で取れる場合は取っていたようだ。
そして、ふと気づく。
父が夕飯を家で取って夜勤になった夜は金縛りにあう。

母「 もしかして、あの車で夕飯食べにきとる?」
父「 あの車?」
母「 仕事の車さ。亡くなった方ば運ぶ。」
父「 ああ、それで帰ってきよるばい。」

 父は母が見学した日だけでなく、毎回仕事用の車で夕飯食べに帰ってきていたらしい。
父は霊感皆無だから。
母は、

“ それだ!
興味本位で覗いたから、きっと怒ってしまったんだ!”

と気づいて、反省したと言っていた。
 それからは父には自家用車で帰ってくるようにお願いし、金縛りにもあわなくなったそうだ。
この場合、車に憑いていたみたいで、父が自家用車で帰るようになってからは何もない。
今も同じところに住んでいる。











童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日々の恐怖 7月18日 電話 | トップ | 日々の恐怖 7月20日 ス... »
最新の画像もっと見る

B,日々の恐怖」カテゴリの最新記事