大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

日々の恐怖 3月25日 村岡君(1)

2022-03-25 12:21:06 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 3月25日 村岡君(1)





 それは10月も終わりに近づいた放課後のことです。
私たちは文化祭の準備で、かなり遅くまで教室に残り展示物を作る作業をしていました。
朝からの雨はいつの間にか霧雨に変わり、夕方なのにまるで夜のような暗さでした。
時々遠くで雷鳴が轟き、当たり一面を一瞬明るく照らします。
 私の故郷はかなりの田舎で、中学校も山を切り開いたその中にあり、校庭を挟んで小さな町が広がり、山手側は竹林になっています。
雷光のたびに竹林が照らし出され、うっそうとした奥のほうまでの広がりが見えます。
 私は親友の村岡君と、紙を切ってセロファンに付ける作業をしていました。
すると、村岡君が竹林を見て手を止めました。
しばらくして、

「 何や?あの女・・・?」

と私に問いかけます。
視線を上げて竹林の方を見ますが、女性はおろか特に変わったものも見えません。

「 別になんもないで・・・?」

私の言葉に村岡君は、

「 いや、変な女がおる。
かがんで地面を見つめとる。」

と言いました。
 村岡君の話では、古い服装の若い女性が竹林の中で何かを探しているように見える、と言うのです。
でも私には何も見えません。
見えるのは霧雨と、もやがかった一瞬明るくなる竹林だけです。

「 やっぱり見えへんで・・・。」

私たちの会話を聞いてクラスメートが何人か集まって来ました。
 竹林の女性が見える人もいれば、見えない人もいます。
見えると言う人たちは皆ひどく怖がっていました。
体が透けている、と言うのです。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日々の恐怖 3月21日 心... | トップ | 日々の恐怖 3月30日 村... »
最新の画像もっと見る

B,日々の恐怖」カテゴリの最新記事