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日々の恐怖 8月16日 ばばちゃ(1)

2021-08-16 21:14:22 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 8月16日 ばばちゃ(1)




 祖父が昔、よく言っていた。

「 この世で最も恐いのは、ばばちゃだ。」

祖母は、それほど恐れられた存在だった。
 私が生まれる前の話だ。
ある時、祖母は朝からタケノコを取りに山へ入った。
 ずいぶん調子よくタケノコが集まり、ほくほく顔で帰ろうとしたところ、気づけばあたりが霧に包まれていた。

” おやっ・・・・?”

と思いながらも帰途についたが、なかなか集落が見えてこない。

” ははあ、これはキツネか、ムジナか・・・。
なんにせよ化かされているな・・・。”

そう気づいた祖母は、背負っていたタケノコのかごを下ろすと、鍬を構えて、

「 おう!」

と霧に向かって怒鳴った。

「 どこのどいつか知らねえけんど、おらを化かすっちゃあえ~え度胸だあ!
おらぁ、ここらじゃ名の知れた猟師の嫁だで!
それが獣に負けたとあっちゃ、名が廃る!
見てろ!
しっぽ、ちょんぎってくれっからなあ~!」

そう言って、

” ぶん!”

と鍬を振り回すと、霧は恐れをなしたかのように、

” サア~ッ!”

と、引いて行ったという。









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