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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 5月9日 箱(3)

2022-05-09 20:28:08 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 5月9日 箱(3)





 葬儀の後、高校生だった弟からこんな話をされた。
兄は、自分こそが家を継ぐべきだと両親に主張していた。
長男なのだから、と。
 両親は相手にしていなかったようだ。
女系というものについて、よく調べなさい、と母が兄を叱っていた、と弟は言った。

「 兄貴、箱を盗んだんだよ」

 倒れた兄を見つけたのは、弟だった。
夕食の時間になっても顔を見せない兄を、部屋まで呼びに行った。
 半開きのドアから中を見ると、兄が倒れていた。
その傍らには箱が落ちていた。
弟が目を向けたのと、箱がぱたんと閉まるのが、ほぼ同時だったという。
 弟は、すぐに両親を呼んだ。
やってきた父が救急車を呼ぶ間、母は部屋に入ると真っ先に箱のもとへ向かい、慎重に拾い上げた。
そして開かないかどうかを確かめた。
 箱は、開かなかった。
取っ手を引いても、カチャカチャと鳴るだけだった。
母はそれを確かめると、ほっとしたように息を吐いたという。

「 兄貴より先に、箱の心配をしたんだ。
変だよな。
それに、あの箱、開かないって話だったのに・・・・。
 俺が部屋に行った時は開いてたんだ。
それが、ひとりでに閉まった。
絶対、変だよ。
箱も、母さんも。」

弟は何度もそう繰り返した。

「 兄貴の顔、凄かったんだ。
化け物でも見たような顔で・・・。
俺、怖いよ。
なんなの、あの箱・・・。」









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