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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 3月18日 手

2014-03-18 18:37:49 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 3月18日 手


 数年前、大学院生で修論も出して毎日が暇だった。
そんな時幽霊話にハマり、いろいろ読んで、見えたこと無いけど幽霊って本当にいるのかな?と考えていた。
 完全に昼夜逆転していたから、昼の2時くらいに起きてカップ麺を作ろうと台所へ。
台所から玄関のドアが見えるんだけど、そのドアに付いてる新聞用の郵便受けから白くて小さい手が出ているのが見えた。
幅は5センチもなく、ふつうの人間の腕が入るような大きさじゃない。
その手は、下から上に向かって何かを探すような動きをしていた。
 その直前に手だけの幽霊の話を読んでいたこともあり、パニックになった俺は、幽霊も怯えると調子に乗るという話を思い出し、2度と来たくなくなるようにビビらせてやろうと思い、玄関の横に置いてあった軍手をはめて、

“ 軍手なら幽霊でも大丈夫!触っても大丈夫!”

って自分に言い聞かせて、手を掴んで思いっきり体重をかけて後ろに引っ張った。
なぜ大丈夫だと思ったのか、今では全く分からない。

 突然、甲高い声で悲鳴が上がった。
俺はあわてて外へ出ると、郵便受けに手を突っ込んで泣き叫んでる子供と、誰かが廊下を走り去っていく音が聞こえた。
 大学時代はボクシングをやっていて、腕力には自信のある俺。
子供の腕は抜けなくなっていた。
俺はどうして良いのかわからず、119番に電話をして、

「 救急ですか?消防ですか?」

と聞かれ、

「 消防です!」

と答えた。
多分、小坊(小学生)です!って言いたかった。
 子供の手が抜けない、と伝えると向こうで気を利かせて救急車を派遣してくれ、救急隊員が引っ張っても抜けず、やむなくバールのようなもので郵便受けの穴を広げて手を抜いた。
子供は、鎖骨と指骨折、手首と肘と肩脱臼、靱帯損傷、すり傷多数と重症だった。
 俺は警察署で事情聴取となった。
警官は怒鳴りまくりで怖かった。

“ やっちまった、ごめんなさい、刑務所かな・・・。”

と怯えていたら、2泊した後、警察から、その子はカギを開けて親が空き巣に入るコンビの常習犯だったと言う事を聞かされた。
子供の小さい手を利用して、郵便受けから手を入れてドアノブの鍵を外してたらしい。
どうやらあの時、廊下を走り去っていったのは親だったようだ。
 その後、俺は不起訴。
向こうの親とも話したけど、どうしても生活費がなくて、家を追い出され車で生活し、子供の食費を稼ぐため仕方なくやっていたらしい。
空き巣に入ってもお金は、1000円とか最低限必要な分しかとっていなかったとか。
 俺が警察に2泊3日も拘留されて起訴か不起訴の審議に掛けられたのは、俺の推測だけど多分俺の、幽霊話で読んだ白い手の幽霊が来たかと思って、滑り止め付きの軍手をして引っ張ったって、訳のわからない証言の扱いに困ったんだと思う。
わざと怪我させたんじゃない、ってことをわかってもらうのが大変すぎた。
 親子が、それからどうなったのかは、わからない。
子供が怪我して泣き叫んでるのに、走り去って逃げていく親が怖いと思った。
あの子の幸せを切に願う。













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