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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道165

2008-12-25 18:48:30 | E,霧の狐道
「 もう、今日のところは帰ってくれよ。
 夜中なんだぞ。
 みんな、寝てるんだぞ!」
「 しょうがないのう。
 呪文を思い出せないし・・・。
 それに、集中力も切れて来た・・・。
 ま、今日のところは、いったん帰るかの・・・・。」
「 その方がいいと思うよ。」
「 そうじゃな。
 じゃ、また、明日来るからの!」
「 もう、来なくていいよ。」
「 おまえが寝たのを見計らって出撃してくるからの!」
「 寝ないと出てこれないのか?」
「 レム睡眠が切っ掛けなんじゃ。
 それに、真言密教の奥儀は、まだまだこれからじゃの。」
「 充分、充分、今日ので充分。
 もう、いいって!」
「 いいや、まだまだこれからなのじゃ。」
「 来なくていいぞ。」
「 ふふふふふ、じゃ、またな・・・。」

 お揚げ婆さんの声を合図に、お揚げ婆さんとガマ太郎は輪郭が徐々に崩れ始めた。
そして、それらは大きな煙のモヤモヤした塊に変化し、次に、煙の塊は端の方から赤い円の真ん中にシュルシュルシュルと糸を引くように吸い込まれて行った。
煙が吸い込まれるのと平行して、怪しい呪文がまた響いて来る。

『 ・・・おんばあさらえんそわ・・・、おんばあさらえんそわ・・・。』

今度は、お揚げ婆さんの声とはっきり分かる。
そして、声は徐々に小さくなって消えて行く。

『 おんばあさらえんそわ・・・、おんばあさらえんそわ・・・。』

赤い円の方は、お揚げ婆さんの声が小さくなるに従って徐々に小さくなり、赤い点になって最後はス~ッと消えてしまった。
俺のベッドの右横の壁は、のっぺりとした元の白い病室の壁に戻った。



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