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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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なんじゃもんじゃ物語2-8 発電所へ

2006-06-15 13:35:18 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語  2-8   発電所へ



なんじゃもんじゃ物語99


 その様子を、コンビニの建物の影から覗いていた一人の男がおりました。
彼こそは、ヤマタイ国の名探偵“花岡実太”47才であります。
花岡実太は、トレードマークの赤と黄色のチェック柄のハンチング帽に緑と黒の縦縞の服を着て様子を窺っていました。
花岡実太は、実収入の多い浮気調査の隙間を縫って、大事件のネタは無いかと、今日も、あまりスピードの出ない中古のバイクに跨って夜の街を徘徊していたのです。

“ハナオカジッタノ、ドウブツテキチョッカンガ、カラダノナカヲ、ハシリマシタ、ビリビリビリ。”

花岡実太は、呟きました。

「 怪しい。」

そして、動きの鈍い彼の中古の愛車に鞭打って、六人の乗ったトラックの後ろをハンチング帽が飛ばないように片手で押さえながら、ブルン、プスプス、ブルン、プスプスと追いかけ始めました。
トラックの荷台には海賊とブタが入り混じっていました。
ブタと向かい合った侍べンケーが芸者ブラックに言いました。

「 拙者、臭いでござる。」
「 我慢しろ、金を使わずに事を起こすのが海賊の建前だ。
タクシー代なんか無いぞ。
ケチこそ海賊の本領だ。」

空手家たまちゃんと岡っ引チンギスチンが言いました。

「 胴衣は寒い。
でも、ブタ、抱いていると温かいよ。」
「 ブタ、美味そうあるね。
一匹欲しいあるよ、持って帰っていいあるか?」

チンギスチンは、ブタの肉付きを調べていました。
トラックは、ガタガタと暗い道を走っています。
道路を照らしている街灯がどんどん後ろに飛んでいきます。
なんじゃ殿様は疲れたのか、ブタにもたれてウツラウツラしていました。




なんじゃもんじゃ物語100


しばらくすると、お頭ブラックの携帯電話が鳴りました。

「 ああ~、ブラックだ。」
「 あっ、お頭、イチゴ大福買ってくれました?」
「 あ、ノゾーキか。」
「 さっき、コンビニの中に入ってなかったんじゃないかと思って・・・・・。」
「 ああ、まだ、買ってない。」
「 ええっ、そんなあ。
うう、うううううう。
買ってくれない、嘘付き、うううう。」
「 泣くな、ノゾーキ。
帰りに買ってやるから。」
「 本当ですよね。
きっとですよ。
ちゃんと、透視望遠鏡で買ったかどうか見てますからね!」
「 ああ、分かった、分かった。」
「 るんるんるん、プチッ。」

ノゾーキからの携帯電話が切れました。
 トラックは、街並みを外れ民家の無い田舎道を朦々と土煙を巻き上げながら走っていました。
また、花岡実太の中古のバイクもトラックを追い掛けていました。
トラックの荷台のチンギスチンが目の前のブタを見ながら言いました。

「 このブタ、美味そうあるよ。
舐めてみると、旨味が分かるあるね、ペロッ。」

脇腹を舐められたブタは、ビックリして前のブタを跳び越して逃げようとしましたがうまく飛び越えられずに激突しました。
激突されたブタは飛び上がって隣のブタの上に乗っかりました。
乗っかられたブタは、上に乗ったブタを振り落とそうと暴れだしました。
もう、後は玉突きのように全てのブタが暴れだしました。
ブタと海賊たちが叫び声を上げました。

「 ブヒッ!」
「 ブヒッ!!」
「 うわっ、でござる!」
「 わっ、あるよ!」
「 うわっ、かないまへんなあ!」

ブタが三匹トラックの荷台から転げ落ちました。




なんじゃもんじゃ物語101


土煙で前も見えずにトラックを追っていた花岡実太の前に突然三匹のブタが降って来ました。
花岡実太のバイクはブタに乗り上げ、横転して道路脇の畑に滑って行きました。

「 うわっ!」
「 ブヒッ!」

花岡実太は、横転したバイクから放り出され、畑の隅にある野壺に頭から突っ込みました。

「 ぷっ、臭い!
おっと!」

野壺から顔を上げた花岡実太は、声を上げないように我慢して身を伏せました。
道路に止まったトラックからおっちゃんと海賊たちが降りてきました。

「 おいおい、乗せてってやるけど、暴れないでくれよな。」
「 すんまへんなあ。」

お頭ブラックが言いました。

「 こらっ、チンギスチン、謝れ!」
「 ゴメンあるよ。
とっても美味しそうあるから、舐めてみたあるよ。
いい旨味あるね。」
「 本当かい。
良いこと言ってくれるね。
うれしいね。
最高の飼料使ってるからね。
さあ、ブタを乗せるよ。
手伝ってくれよ。」

おっちゃんと海賊たちは、三匹のブタを荷台に乗せました。
そして、トラックは再び走り出しました。
野壺に隠れていた花岡実太は言いました。

「 こんなことでへこたれる名探偵花岡では無い!
急がねば!」

よれよれの花岡実太は、野壺から飛び出しました。
そして、畑のバイクを立て直しトラックを追ったのでした。


なんじゃもんじゃ物語102
 トラックは、暗い夜道をガタガタ走っていました。
そして、山裾を通過し、砂浜の見える海岸沿いの道に出て来ました。
波の音と共に、潮の香りが右に見える海から漂って来ています。
遠くに見える釣り船の灯りがチラチラと点滅していました。
しばらく走ると大きな建物と灯りが遠くに見え始めました。
お頭ブラックが言いました。

「 おっ、見えてきた。
おそらく、あれがそうだな。
おい、チンギスチン、小僧を起こせ。
こいつ、ずっと寝てばかりだ。」
「 ほんとあるね。
ブタが落ちた騒ぎの時も、寝ていたのはこいつだけあるよ。
よく寝られるあるね。
神経、図太いね。
おいっ!
起きるあるね、ペロッ!」
「 うわ~っ!!」

チンギスチンに顔を舐められたなんじゃ殿様はビックリして前のブタを蹴っ飛ばしました。

「 ブヒッ!」

ブタが一匹荷台から転げ落ちました。
侍ベンケーが言いました。

「 ブタが落ちたでござる。」
「 しっ、黙れ!
おっちゃんは気付いていない。
先程の件がある。
気付かれたら、俺たちトラックから降ろされるぞ!」

お頭ブラックは、人差し指を口に当てて手下を黙らせました。
そして、海賊たちを乗せたトラックは何事も無かったかのように発電所に向けて走って行きました。




なんじゃもんじゃ物語103


 一方、野壺から復活した花岡実太は中古のバイクで、しぶとくトラックを追っていました。
花岡実太は、前に見えるトラックの排気ガスを鼻から吸い込みながら言いました。

「 これは事件の臭いがする。
この名探偵花岡が動き出したらもう逃れられんぞ!
ようやくトラックに追い付いて来た。
先程は危ない所だった。
もう、大丈夫・・・・・。」

野壺の汚物で眼をクシャクシャさせながら、トラックを追っていた花岡実太の前に突然ブタが一匹降って来ました。

「 ブヒッ!」
「 うわっ!」

花岡実太はブタを避けようと、咄嗟に右にハンドルを切りました。
そして、道路脇のガードレールの隙間からバイクと共に砂浜に突っ込んで行きました。

「 うお~っ!」

花岡実太を乗せたバイクは、砂浜を海に向かって走っていました。

「 うお~っ。
ブレーキが利かない!
うお~、うお~、うお~っ!」

花岡実太の叫び声が砂浜に響いていました。
バイクは先程の転倒で、ブレーキが潰れていたのです。
そして、バイクは砂浜に転がっていた流木に乗り上げ大きくジャンプしました。

「 うひょ~っ!!!」

バイクから放り出された花岡実太は、目の前に広がる太平洋に頭から突っ込んで行きました。

“ボッチャン、ブクブクブク・・・・・・、プハ~ッ。”

海面に浮かび上がった花岡実太は言いました。

「 ぷっ、ぷっ、塩辛い!」





なんじゃもんじゃ物語104


海に落ちた花岡実太は、小堀流泳法で立ち泳ぎをしていました。

「 この名探偵花岡を甘く見てはいけない。
わしは水深40センチの風呂でも立ち泳ぎが出来るのだ。
むふふふふふふ。」

花岡実太は、古式泳法の作法通り、懐から日の丸の扇を出し大きく広げて高く掲げヒラヒラさせました。

「 どうだ、凄いもんだろう。
わしは免許皆伝なんだ。
ああ、昔を思い出すなあ。
昔は、フジヤマのトビウオと言われておったのだ。
むふふふふふふ。
ヤマタイ国舞踊も出来るんだぞ。
ええと、こうだったかな。
てん、てん、てん、つく、てんてんてん。
ここで笛が入る。
ひょ~、ひょっ、ひょ~。
あ~、こりゃ、こりゃ。
ん、ん、ん、ん、・・・・・・。
や、ややっ。
しまった、こんな事している間に沖に流されているではないか!」

花岡実太は、扇をヒラヒラさせながら沖に流されている事に気が付きました。
そして、周りを見回しました。

「 うわっ!!」

ヒラヒラさせた扇に興味を持ったイルカが五匹、花岡実太に近付いて来たのです。
でも、花岡実太は、海面に突き出して近付いてくるイルカのヒレを見て叫びました。

「 サメだあ~!
サメが来たあ~!!」

花岡実太は、扇を放り投げ岸に向かって泳ぎ出しました。

「 うおっ、うおっ、うおっ!
もうだめだ!
追い付かれる!
ヤマタイ国の名探偵花岡、ここに死す。
ん?
ん、ん?
ん、ん、ん!!
こ、これは・・・・・・・・!」

イルカに乗った中年花岡は、四匹のイルカを従えて岸に向かって爽やかに進んでいました。





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なんじゃもんじゃ物語 2-9 原子力発電所侵入

2006-06-14 13:48:18 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語  2-9   原子力発電所侵入



なんじゃもんじゃ物語105
 
 海賊たちを乗せたトラックは原子力発電所の近くまでやって来ました。
月明かりに照らされた大きな建物は、長い塀に囲まれていました。
塀の手前で、ブラック芸者がトラックのおっちゃんに言いました。

「 お~い、おっちゃん、ここで良いよ。」
「 門の所まで行ってやるよ。」
「 いや、ここで降りるよ。」
「 そうかい。
じゃ、止めるよ。」

トラックは、発電所の塀の手前に止まりました。
海賊たちは、ぞろぞろトラックを降りました。

「 ありがとよ!」
「 営業、しっかりやれよ!
じゃあな。」

トラックは、行ってしまいました。
ブラック芸者は言いました。

「 門まで行って目立つとまずいからな。
えっと、エッチソン、敷地や建物の構造図は?」
「 はいはい、これでんがな。」

エッチソンは、ポケットからしわくちゃの紙を取り出してブラック芸者に渡しました。

「 ええと、暗くて見えないな。
あそこの街灯の下で見よう。」

海賊たちは、ぞろぞろと塀際にある街灯の下に移動しました。
そして、ブラック芸者はしわくちゃの紙の皺を伸ばして街灯の明かりの下で広げました。
手下の海賊たちは、ブラック芸者の周りに集まって紙を覗き込みました。
ブラック芸者が言いました。

「 これは、敷地の見取り図だな。
親切に行き方が道に矢印で書いてあるぞ。
エッチソン、気が利くではないか。」
「 あたりまえでんがな。」
「 ええと、ここをこう行って、角を曲がって、300メートル進んで、コンビニの向かいを左に行って、魚屋を通り過ぎ・・・・・・・。」
「 魚屋があるのでござるか?」
「 海の近くだからあるか?」
「 おかしいな?
この発電所の中は、町になっているのか?」




なんじゃもんじゃ物語106

 ブラック芸者が、紙を裏返して見ました。

「 うわっ!
新装大開店、ラーメン来来軒、本日開店!
このチラシ持参の人に、餃子一人前サービス!!
エッチソン、違ってるぞ!」
「 ほんまでんな。
ちょっと探して見ま・・・。」

エッチソンは、ポケットをごそごそ探しました。

「 ありまへんなあ。
船に忘れてきたのか?
さっきのブタ落下騒ぎの時、落としてしもたのか?
たびたび、すんまへんなあ。」
「 あ~、参ったな。
中が分からないと敷地に入れないな、困った。
んん~ん・・・・。
そうだ、ノゾーキに聞いて見よう。」

ブラック芸者は、船に残してきたノゾーキに携帯電話を入れました。
直ぐにノゾーキが出てきました。

「 はいはい、こちらノゾーキ。
どうしました?」
「 発電所の構内地図を無くした。
そちらに忘れていないか探せ。
地図が無いときは、コンピュータから地図を呼び出して透視望遠鏡で我等を誘導するんだ。」
「 あの、お頭・・・・・。」
「 ああ、分かってる、分かってる。
帰りに、イチゴ大福買ってやるからな。」
「 ああ、良かった。
さすがお頭、覚えていてくれてますね。
それじゃ、ちょっとお待ちを・・・。
うふふふ、るんるん。」
「 これで良しと・・。
ええと、ノゾーキが調べ終わるまで時間があるな。
それでは、みんな生垣と塀の間に一列に並べ!」
「 なんでござるか?」

六人の海賊は、生垣を前に塀を背にして、一列に道路の方を向いて並びました。



なんじゃもんじゃ物語107

 ブラック芸者は、厳かに手下に言いました。

「 さあ、みんなでウンコをする。」
「 えっ、ここでするあるか?」
「 ほんまでっか?」
「 拙者、丁度したかったでござる。」
「 胴着を汚さないようにしなきゃ。」
「 僕、出来るかな?」
「 お頭、これは作戦あるか?」
「 そうだ、作戦だ。
郷に入っては郷に従え。」
「 なんでっか、それ?」
「 ヤマタイ国の諺だ。
わしは、ヤマタイ国を船の中で研究した。
これは、ヤマタイ国の作法である。
物を盗みに建物に入る時の精神統一の手法なのだ。
ヤマタイ国は精神論の国である。
これからの海賊は、いろんな現地に順応しないといけない。
世界に通用するグローバルな海賊になるのだ。」
「 何か分からへんけど、建物に侵入してから、したくなったら困りますな。
これは、案外、合理的でっせ。」
「 おい、手下ども、それでは一斉にいくぞ!」
「 拙者、もう、頑張っているでござる。」

海賊たちは、生垣の上から顔を出して、道路に向かって一斉にしゃがみました。

“ ぶるる、ぷす、ぷす、ぶるる、ぷす、ぷす。”

「 お頭、絶好調あるね。」
「 違う、俺じゃない。
あれは、バイクの音だ。」

遠くの方からバイクの音が近付いてきました。
ブラック芸者が眼をこらしてバイクを見ました。

「 何だ、あれは?」

バイクに跨った花岡実太が、ブタを一匹背中に背負って現れました。
ブラック芸者は、手下に言いました。

「 まずい、人が来た、オブジェの真似をしろ!」
「 オブジェって、何なの?」
「 イースター島のモアイみたいなもんだ。」

六人の海賊たちは、生垣から顔だけ出しモアイの真似をしました。




なんじゃもんじゃ物語108

“ ぶるる、ぷす、ぷす、ぶるる、ぷす、ぷす、キーッ、プスン。”

花岡実太のバイクは、六個のモアイを通り過ぎ、海賊たちから見える道の端に停止しました。

“ スタッ、サッ、サッ、サッ、ピタッ。”

「 ふふふ、愚か者め。
人の目は誤魔化せても、この名探偵花岡実太の眼は誤魔化せない!
今にこいつ等は何かをやり始める。
名探偵には、お見通しだ。
それでは、華麗なる尾行術を披露するか!」
「 ブヒッ。」

花岡実太は、ブタを担いだままバイクから飛び降り、原子力発電所の塀にピタッとへばり付いて、海賊たちをじっと見ていました。

エッチソンが言いました。

「 あれは、何でっか?
丸見えでんがな。
こっちを見てまっせ。
ブタも担いでまっせ。」

空手家たまちゃんが花岡実太を見ながら、相手をしたそうな顔をしてお頭に言いました。

「 お頭、からかってやりましょうよ。
面白そうな奴ですよ。」
「 いや、待て。
これから重要な仕事がある。
大事の前は慎重に事を進めるのだ。
相手になるな。
それに、あの眼はひょっとして奇病かも知れない。」
「 その奇病と言うのは何ですか?」
「 わしが御幼少の頃、住んでいた町内に、早朝、日の出と共に裸になって町内を走り回る奴がおったんだ。
そいつの眼つきに似ている。
そして、そいつをからかった奴は、日の入りと共に裸になって走り回った。
その後、段々と裸で走り回る奴が増えてきて、一日中ウロウロと複数の裸が町内を走り回っておった。
人々はこれを伝染性の奇病と呼んだんだ。
一種の集団催眠かな。」
「 それで、お頭も裸で走ったんでっか?」
「 わしの場合は趣味で走った。」
「 やっぱり走ってまんがな。」
「 また、それが気持ちが良いんだ。
朝日に向かって海岸通りを走るんだ。
ああ、青春の美しき日々よ!
わしも若かったなぁ。」





なんじゃもんじゃ物語109

「 拙者も海岸を走ったでござるよ。
それに、奇病は得意分野でござる。」
「 おお、ベンケーお前もか。」
「 拙者は裸ではござらん。
黒頭巾で白衣を着て、朝から晩まで走っていたのでござる。」
「 黒頭巾で白衣?」
「 奇病を治すには、まず、呪術で悪霊を追い払ってから手術でござる。
ミンブカ村の悪霊祓いの歌と踊りを利用しながら、黒イモリと蝙蝠の粉で悪霊に止めを刺す。
そして、アーネッカ製のレーザーメスで手術に入るのでござる。
歌と踊りに黒頭巾、手術に白衣が必要でござる。
海岸沿いを村から村へ奇病を治しに走っていた頃は若かったなぁ。
それでは、ここで一つ悪霊祓いの歌と踊りを披露するでござる。
ウンナカマ、サライアァ、ドメキサナァ~。」

ベンケーが懐から、馬の尻尾の毛を束ねて作った悪霊祓いの棒と手術用のメスを取り出し、生垣を乗り越え、道路に出て踊ろうとしました。

「 お頭、お頭、あの歌と踊り止めた方が良いのでは・・・・・。」
「 分かった、たまちゃん、今、ベンケーを止める。
おい、ベンケー、ベンケー、後、何分で歌と踊りが終わる?」
「 前半が、1時間13分でござる。」
「 折角の所、悪いが、続きは船に帰ってからにしてくれ。」
「 えっ、今から調子が出ようとしていたのに残念でござるよ。
それに、途中で止めると悪霊がいっぱいやって来るでござる。」
「 船に帰ってから、みんなを集めて見てやるから。
それに、今は、ウランが先だ。」
「 仕方ないでござるな。
船に帰ったら、ヤマノミ族の精霊落としの踊りも追加してやるでござる。」
「 ああ、やって良い、やって良い。」
「 おい、子分ども!
とにかく、あの塀にへばり付いている奴の相手をするな。
それが一番だ。
それより、みんな、出る物は全員出たか?」




なんじゃもんじゃ物語110

「 お頭、チンギスチンがまだです。」
「 どうした、チンギスチン、まだか?」
「 うう、もうちょいあるよ。
うっ、うっ、うっ。」

“ ぼわあ~。”

「 出たあ~。
ついでに、屁も出たあるよ。」
「 うお~、これは強烈でんがな。」
「 拙者、臭くて倒れそうでござる。」
「 昨日の、ニンニクとニラが主成分あるね。」

イタチにもスカンクにも負けないチンギスチン製の屁は、辺り一面に迅速かつ着実に広がって行きました。

“ ドサッ。”
「 ブヒッ!」

「 ありゃ、お頭。
塀にへばり付いていた奴、倒れましたがな。」
「 毒ガスでやられたでござる。」

強烈な臭いにやられた花岡実太は、ブタを背中に気を失って前のめりに生垣に倒れこんでいました。
ブラック芸者が言いました。

「 なるほど、我々はブタのフンに囲まれて臭いに免疫が出来ておるな。
あいつが倒れてしまったのは好都合。
よし、それじゃ、そろそろ発電所の中に入るか。
それにしても、ノゾーキの連絡が遅いな・・・。」

その時、お頭ブラックの携帯が鳴りました。
ノゾーキからの連絡です。

“ たらった、らった、らった、ウサギのダンスぅ~♪”





なんじゃもんじゃ物語111

「 たらった、らった、らった、らった、らった、らった、らったらぁ~♪
ん・・・・、思わず歌ってしまった・・・・・。
ノゾーキ、何だ、この音楽は?」
「 ハーイ、お頭。
お待たせ、お待たせ。」
「 遅いじゃないか、ノゾーキ。
地図はなかなか見つからなかったのか?」
「 いや、原子力発電所の地図は直ぐに見つかったのですが、そっちの携帯の着メロの音楽をこっちから設定するのに時間がかかってしまって。
コンピュータを操作してました。
気に入って貰えましたかぁ?」
「 ああ、気に入ったぞ。
思わず歌ってしまった。」
「 良かった、選曲には苦労したんですよ。
お頭の性格に生年月日に星占いに四柱推命に好きな食べ物とか、エッチソンが言っていた芸者の扮装が大好きとか、一杯コンピュータに打ち込んで曲目のコンピュータ解析をしました。
ベータエグゼ関数を使うと処理し易いですね。
その結果がこの曲です。」

エッチソンがお頭ブラックの耳元で囁きました。

「 お頭、お頭、着メロよりウランの在り処を聞いておくれやっしゃ。」
「 おお、そうそう、忘れる所だった。
着メロは、ノゾーキに任せるから、地図だ、地図。
地図を見ろ。
警備の手薄な所は何処だ?
建物の地図と透視望遠鏡で職員の配置を見ながら誘導してくれ。」
「 分かりました。
ところで・・・・。」
「 イチゴ大福は大丈夫だから。」
「 あはは、良かった。
そうですね・・・・・・。
それじゃ、そこに倒れている奴を乗り越えて正面の門に行ってください。」

海賊たちは、お頭ブラックを先頭に六人一列で花岡実太と背中のブタを順に乗り越え、塀に沿って正門の方へ歩いて行きました。



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なんじゃもんじゃ物語 2-10 ヤマタイ国発電所食堂1

2006-06-13 11:17:21 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 2-10 ヤマタイ国発電所食堂1


なんじゃもんじゃ物語112

 お頭ブラックは、門から中を覗きこみました。

「 おやっ、倒れているぞ?」

門脇の建物の中を見ると門衛さんが机に向かってうつ伏せに倒れていました。

「 ラッキー!
さあー、入るぞ。」

海賊たちは、鉄の門を横にスライドさせて発電所の敷地の中に入りました。

「 おい、ノゾーキ、次は?」
「 はいはい、そのまま正面玄関の扉を開けて入って下さい。」
「 そんなに正面からゾロゾロ入って大丈夫なのか?」
「 はい、行ってください。
入ったら分かります。」

 海賊たちは正面玄関に続くアプローチをどんどん進み玄関の扉を開けました。
先頭に入ったお頭ブラックが叫びました。

「 な、なんと!」

警備員が廊下の彼方此方に仰向けに倒れていました。

「 そうか、分かった!
チンギスチン、良くやった。
給料を上げてやるぞ。
お前の毒ガスは一級品だ。
 我々は、海賊だ。
服も洗わず、風呂も稀にしか入らない。
だから、臭さに免疫がもともとあるのだ。
しかし、こいつ等文明人面している奴は、ぱりっとした臭いの無い服を着て一日一回風呂に入る。
つまり、抵抗力が無い訳だ。
 ふふ、不憫な奴等。
あまりに強烈な臭いに気絶しているぞ。
おい、ノゾーキ、この発電所に動いている人間はいるのか?
透視望遠鏡で調べてくれ。」
「 えっとねぇ。
そうですねぇ。
え~、こっちも倒れているし・・・・。
いないみたいですよ。」
「 よし、早くウランを盗りに行こう。
ノゾーキ、誘導してくれ。」




なんじゃもんじゃ物語113


「 それでは、言います。
まず、正面の通路を真っ直ぐ行って、左に曲がって下さい。」
「 分かった。」

倒れている警備員を跳び越して、ブラック芸者を先頭に六人は一列で通路をどんどん進んで左に曲がりました。

「 曲がったぞ、ノゾーキ、次は?」

通路の正面には、大きな両開きの扉が見えていました。

「 通路の突き当たりの大きな扉を開けて中に入って下さい。」
「 よし、分かった。」
「 もう直ぐです。」

通路の突き当たりの扉を開けると、たくさんのテーブルや椅子が並んでいました。

「 ここは、食堂のように見えるが・・・・?」
「 そうです。」
「 燃料倉庫への近道かな?」
「 カウンターをまわって、厨房に入って下さい。」

六人はぞろぞろと厨房に入って行きました。

「 よし、入ったぞ。」
「 それじゃ、配置を言います。
チンギスチンとたまちゃんは、フォークとお皿。
エッチソンと小僧は、ワイングラスと冷蔵庫の三段目の右から二つ目のワイン。
ベンケーは、右の棚の上から二番目の引き出しを開けてロウソクとマッチ。
お頭は、冷蔵庫からケーキを出してテーブルに並べて下さい。」

エッチソンが、お頭ブラックの耳元で囁きました。

「 お頭、お頭、ケーキよりウランの在り処を聞いておくれやっしゃ。」
「 分かった。
おいおい、ノゾーキ、ケーキじゃなくてウランだよ。」
「 ちゃんと並べないと、ウランの在り処は教えませんよぉ~だ。」
「 ええい、もう、仕方が無い。
おい、お前たち、あっちのテーブルに全部並べろ。」
「 食べられる準備をして下さい。」
「 あのなぁ・・・・・。」
「 ウラン、教えませんよぉ~。」
「 もう、・・・・・・・。
おい、お前たち、早く食べられるように準備をしろ。」

六人の海賊たちは、大急ぎで食卓の準備を始めました。





なんじゃもんじゃ物語114


「 準備ができたぞ、ノゾーキ。」
「 ロウソクを43本立てて火を点けて下さい。」

侍ベンケーがロウソクに火を点け、なんじゃ殿様が部屋の灯を消しました。
テーブルの上のローソクの火が揺らめいて部屋の壁や天井を照らしました。
ノゾーキの大声が携帯を通して聞こえてきました。

「 それじゃ、みんな椅子に座ってください。」

六人は、テーブルを囲んで椅子に着きました。
ノゾーキが、言いました。

「 それじゃ、行きます。」

携帯から、メロディが流れてきました。

“ Happy Birthday to you.
Happy Birthday to you.
Happy Birthday dear お頭.
Happy Birthday to you.”

「 お頭、43才の誕生日、おめでとう!」
「 えっ、わしは今日が誕生日だったのか。
そう言えばさっき着メロの時、生年月日がどうのこうのと言っていたな。
着メロに気を取られていて気が付かなかった。
わしは今日まで、誕生日が何時か知らなかったんだ。」
「 お頭、着メロを調べていた時、生年月日が分かりました。
お頭の村の長老に問い合わせたのです。
それで分かりました。
今日が、誕生日です。
お頭、誕生日おめでとう!!!」
「 ううう・・・・・・。
そうだったのか。
わしは誕生日が分からなかったので,今まで誰からも誕生祝いをして貰えなかった。
そうだったのか、今日だったのか。
うれしい。
良くやった、ノゾーキ。」
「 お頭、喜んで貰えて嬉しいです。」
「 イチゴ大福を帰りに三個買ってやるぞ。」
「 ほんとですか、ぼくちゃん幸せ。
さあ、お頭、早く火を吹き消して下さい。」
「 よし、やるぞ。
せえの、ふ~っ」

ロウソクの火は、すべてきれいに吹き消されました。

「 パチパチパチパチ。」

椅子に座った子分たちは、一斉に拍手をしました。





なんじゃもんじゃ物語115


ロウソクが消えて、辺りが真っ暗になってしまいました。
なんじゃ殿様は、気を利かせて食堂の電気を点けに走りました。
辺りが明るくなって、みんなのニコニコしている顔が見えるようになりました。
椅子に座った子分たちは、一斉にお祝いを言いました。

「 せえのっ!
お頭、誕生日おめでとう!」
「 おお、みんな、ありがとう。」

子分たちが口々に言いました。

「 今日が、誕生日あるか。」
「 知らなかったな。」
「 拙者も知らなかったでござる。」
「 そう言えば、お頭の誕生会ってのは、やってなかったと思いまっせ。
子分みんなのは盛大にやってるのに、おかしいなとは思ってましたんや。
恥ずかしがってやらないのかと思ってましたがな。
この前も、小僧のんを盛大にやりましたで。」
「 そうだよ、飲めや歌えや踊れや、すごかったのでビックリしたよ。」
「 そうだったあるか。
誕生日を知らなかったあるか。」
「 はいはい、ワインでござるよ。
みんな、グラスを持って。」
「 ほな、陽気に行きまひょか。」
「 ほんじゃ、乾杯あるね。
ポク、発声するあるよ。」
「 僕、こんなに飲めるかな?」
「 いいからいいから。」
「 はい、みんな、グラスを持ったあるか。
それじゃ、行くよ。
お頭の誕生日に乾杯!!」
「 乾杯!!」
「 う~、美味しいでんな。」

携帯から声が聞こえました。

「 ケーキは、約51,4度ずつ切って七等分ですよ。
チンギスチン、僕の分を持って帰ってね。」
「 分かったあるよ。
ワインも一本持って帰るあるよ。」
「 ありがとう!」



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なんじゃもんじゃ物語 2-11 ヤマタイ国発電所食堂2

2006-06-12 09:08:50 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 2-11 ヤマタイ国発電所食堂2


なんじゃもんじゃ物語116

 ベンケーが言いました。

「 それでは、宴たけなわではございますが、ここで、ナミノカ族のお祝いの踊りをご披露するでござる。」

ベンケーが、テーブルを四つくっ付けステージを作りました。
そして、ステージに飛び乗り、懐から馬の尻尾の毛を束ねて作った悪霊祓いの棒と手術用のメスを取り出し、踊り始めました。

「 ウンナカマァ、サーホイカタナァ、ウンサナタァ♪
ドスッ、ドスッ!」

ベンケーは、踊りの最中に足を二回踏み鳴らしました。

「 ベンケー、どすっ、どすっ、てのは、何か意味がありまんのか?」
「 これは、大地の精霊を呼び出しているのでござる。
ほらっ、出て来た!」

ベンケーの踊っているテーブルの下の床から黒い煙が立ち上がりました。

“ ぼわあ~。”

煙は、テーブルの下に溜まっていきました。
そして、床とテーブルの間で徐々に黒い煙の上の方が固まって行き、上半身はアラビアンナイトに出てくるような魔人の形になりました。

「 呼ばれて、飛び出す、じゃじゃじゃじゃ~ん♪」

“ ガツン!”

「 いでででで。
誰でごじゃるか、こんな所にテーブルを並べたのは?
頭を打ってしまったでごじゃる。」

魔人は、テーブルの下から這い出して来ました。
テーブルの下の床の一点から黒い煙のようなものが立ち昇り、魔人の上半身に繋がっていました。





なんじゃもんじゃ物語117


魔人は、テーブルを忌々しげに見ながら言いました。

「 テーブルが良く見えなかったでごじゃる。
テーブルの上で、上半身を実態化した方がよかったでごじゃるな。
どうも、下半身の煙の部分が引っ張られて気持ちが悪いでごじゃる。
ところで、わしを呼んだのは、誰でおじゃるか?」
「 それがしでござる。」
「 おや、ベンケーでおじゃるか。
久しぶりでごじゃるな。」
「 月の精霊とは、どうなったでござるか?」
「 いや、口説いてはおるのじゃが、なかなか言うことを聞いてくれぬでごじゃるよ。」
「 折角だから、呼んでくるでごじゃるよ。」

“ ぼわあ~。
しゅる、しゅる、しゅる。”

魔人は、床に吸い込まれて行きました。
エッチソンが、ベンケーに聞きました。

「 なんでっか、あれは?」
「 大地の精霊でござる。
海賊船は海の上だから呼び出せないでござる。
ここは、地面の上だから出てきたでござる。
海岸沿いを、村から村へ奇病を治しに走っていた頃からの知り合いでござるよ。」
「 中近東のほうでっか?」
「 そうでござる。」

その時、床から煙が二つ立ち昇りました。

“ ぼわあ~。”
“ ぼわあ~。”





なんじゃもんじゃ物語118


煙は、徐々に固まって行きアラビアンナイトのカップルが現れました。

「 もう、早く来い、早く来いって何なのよ!
今、お昼寝をしていたのに!」
「 ベンケー、ベンケーでごじゃるよ!」
「 えっ、ベンケー。
あらっ、久しぶり。
長い間、顔を見てなかったけど何してたのよ?」
「 海賊でござる。」
「 えっ、海賊屋さんになったの?」
「 そうでござる。」
「 へぇ~、どう見ても侍に見えるわ。」
「 事情があって、変装してるでござる。」
「 ふぅ~ん。
あっ、そうだ!」

月の精霊は、大地の精霊を振り返って言いました。

「 ねえ、ねえ、あなた呼び出されたの2000回目じゃなかった?」
「 あっ、そうでごじゃった。
大当たりい~。」

“ カラン、カラン、カラン。”

大地の精霊は、懐から鐘を取り出し鳴らしながら、ベンケーに言いました。

「 ベンケーに8000回目呼び出し記念が当たったでごじゃるよ。」
「 何でござるか?」
「 大地の精霊は、2000回目ごとに懸賞を付けているでごじゃる。」
「 月の精霊は、3000回目ごとよ。」
「 それでは、大地の精霊が三つの願いを叶えるでごじゃるよ。
ただし、永遠に願いを聞いてくれなんて願いは駄目でごじゃる。」





なんじゃもんじゃ物語119


「 それじゃ、お頭の願いを聞いてくれでござる。
今日は、お頭の誕生祝いに大地の精霊を呼んだのでござる。」
「 えっと、お頭は誰でごじゃるか?」

子分たちは、一斉にお頭ブラックを見ました。

「 えっ、どうした?」
「 お頭、話を聞いてないあるね。」

お頭ブラックは、口の周りの髭にケーキの生クリームをベタベタ付けて口をモグモグさせて言いました。

「 話を聞いてなかった。
わしに説明してくれ。」
「 呼び出し8000回目記念の懸賞で、三つの願いが叶うでごじゃるよ。」
「 えっ、もう一回言ってくれ。」
「 呼び出し8000回目記念の懸賞で、三つの願いが叶うでごじゃるよ。」
「 そうか、三つの願いが叶うのか、何にしようかな・・・・・。」
「 もう、二つ使ったから、あと一つでおじゃる。」
「 えっ、確か三つと言ってなかったか?」
「 “わしに説明してくれ”、で一回。
“もう一回言ってくれ”、で一回使ったでおじゃる。」
「 ええ、そんなぁ~。
ずっこいよぉ~。
でも、願ったから仕方が無いかなぁ。」
「 お頭、お頭、迂闊に喋ったら、また一回に数えられまっせ!」
「 ああ、これは注意しなければいけないぞ。」

お頭ブラックは、生クリームの付いた口を閉じて三つ目の願いを考え始めました。





なんじゃもんじゃ物語120


その時、床から煙がもう一つ立ち昇りました。

“ ぼわあ~。”

そして、徐々に黒い煙の上の方が固まって行き、もう一人魔人が現れました。

「 こらっ、大地の精霊!
月の精霊を、勝手に連れて行ってはいけないであります。
抜け駆けは駄目であります。」
「 あっ、雲の精霊でおじゃるか。
抜け駆けではないでごじゃるよ。
ベンケーに呼ばれたでごじゃる。」
「 何、ベンケーとな・・・。
おお、これは、これは、ベンケーでありますな。
もう、10年も会ってないであります。
なつかしいであります。」
「 お久しぶりでござる。」

エッチソンが、話をしているベンケーと精霊たちに言いました。

「 そんな所で立ち話をしてないで、一緒にこっちの誕生会に来なはれな。」
「 そうでござる。
お頭が考え込んでいるから、願いが決まるまで、あっちのテーブルで昔の話でもするでござる。」
「 それが、いいわ。
みんな、座りましょ。」
「 はいはい、月の精霊はん、何がよろしおすか?」
「 そうね、ワインを貰おうかしら。」

エッチソンは月の精霊のワイングラスにワインを注ぎました。

「 いただきます。
あら、これ美味しいわ。
シャトーペトリュスかしら?」
「 なかなか、いけるくちでんな。
さあ、どんどん、行きまひょ!」

海賊たちのテーブルに、精霊たちも加わって、賑やかな誕生会が始まりました。






なんじゃもんじゃ物語121


“ ゴトゴトゴト、ゴトゴトゴト。”

「 ん?
何か、音がしているでござる。」

悪霊払いの棒を持ったベンケーが、首を傾げながら、騒がしい海賊たちの会話が流れる中、耳を澄ませました。
月の精霊と大地の精霊が、ベンケーを見ながら言いました。

「 あらっ、どうしたの?」
「 どうしたで、おじゃるか?」
「 何か、音が聞こえたでござる。」
「 気のせいよ、音なんて聞こえないわ。
それより、この前の・・・・。
あっ!
電気が、消えた。」

その時、食堂の電気が一斉に消えて辺りが真っ暗になりました。
たまちゃんと小僧が、電気のスイッチに走り、パチパチやっても電気は点きません。

「 停電かなぁ?」
「 発電所が停電って、何か変な気がするな。
仕方が無いから、さっきのロウソクに火を点けるか。」

たまちゃんが、ロウソクに火を点けみんなの顔が暗闇の中に浮かび上がりました。
エッチソンが、お頭ブラックに言いました。

「 お頭、願いは何にしまんねん?」
「 う~ん、新しいカラオケセット・・・・。」

大地の精霊が身を乗り出して、お頭ブラックに言いました。

「 えっ、新しいカラオケセットが欲しいのか?」
「 いや、まだ、願って無いからな。
後、一つしかないからな。
慎重に検討しなきゃ。」
「 ゆっくり考えて良いでごじゃるよ。
考えている間、ベンケーと昔話が出来るでごじゃる。
なあ、ベンケー・・・・・。
あれっ、どうした?
難しい顔をして・・・・。」





なんじゃもんじゃ物語122


ベンケーが、大きな声でみんなに言いました。

「 ちょっと、静かに!!」

みんな、一斉に黙ってベンケーの顔を見ました。
お頭ブラックが、聞きました。

「 どうした、ベンケー?」
「 来てしまったでござる・・・・・。」
「 何が、来てしまったのだ?」
「 あれを見るでござる。」

ベンケーは、食堂の入り口に悪霊払いの棒を向けました。
食堂の扉のガラスには人影が揺らめいていました。
お頭ブラックが、ベンケーに言いました。

「 警備員が、眼を覚ましたのかな?」
「 いや、もっと性質の悪い奴でござる。」

食堂の扉がゆっくり開きました。
そして、お面を着けた四つの人影が揺らめきながら入ってきました。
人影は、半裸で腰蓑を着け、右手に槍、左手に盾を持っています。
四人とも、体半分ほどある長いお面を頭からすっぽり被っています。
お面の色は、それぞれ赤、白、黄、黒色です。

「 うるうるうる。」
「 うるうるうる。」
「 うるうるうる。」
「 うるうるうる。」

精霊たちは、驚いて一斉に叫びました。

「 どうして、こいつらがここにやって来たんだ!」

海賊たちは、キョトンとして入って来た人影を見ていました。





なんじゃもんじゃ物語123


お頭ブラックが、ベンケーに聞きました。

「 あの、うるうる言ってる奴は何なんだ?」
「 悪霊でござる。」
「 悪霊って、悪い奴らだろ。」
「 そうでござる。」
「 何で、やって来たんだ?」
「 発電所に侵入するとき、塀の所でミンブカ村の悪霊祓いの歌と踊りを途中で止めたでござる。
途中で止めたので、こいつらは、呼ばれたと勘違いして来てしまったでござる。」
「 あの、うるうるってのは、何て言ってるんだ?」
「 呼んでくれて、感謝、感謝、と言っているでござる。」
「 それじゃ、一緒に誕生祝に参加ってことか。」
「 いや、追い払った方が良いでござるよ。」
「 せっかく来たんだから・・・・・。」
「 あの槍でツンツンされると、とんでもない事がおきるでござる。」
「 何が起きるというのだ?」
「 赤い奴は、熱が出る。
白い奴は、骨が折れる。
黄色い奴は、精神が異常になる。
黒い奴は、体が腐るのでござる。」
「 えっ、それはまずい!」
「 それに、隙を見せたら噛み付かれるでござる。」
「 噛み付かれたら、どうなるんだ?」
「 あいつらの仲間になってしまうでござる。
それも、噛み付かれた奴の色になるでござる。」
「 ゾンビみたいなものかな?」
「 そうでござる。
永久に彷徨うでござるよ。」

悪霊たちは、ゆらゆら揺れながらゆっくりとこちらに向かって歩いて来ます。






なんじゃもんじゃ物語124


エッチソンが悪霊を身ながら、ベンケーに言いました。

「 あんなにゆっくりじゃ、たいしたことおまへんがな。
しばいたりまひょか。」
「 いや、今、エネルギーを溜めているでござるよ。
ミンブカ村の悪霊祓いの歌と踊りを止めてから、まだ時間はそう経っていないでござる。
地球の裏側から、ここまではるばるやって来たでござるよ。」
「 それは、すごいスピードでんがな。」
「 あと数分で充電完了でござる。」
「 逃げても追い付かれまんがな。
どうします、お頭?」
「 ふっ、ふっ、ふっ。」
「 お頭、笑っている場合じゃありまへんがな。」
「 大丈夫だ、わしには考えがある。」

悪霊たちに一番近い席に座っているチンギスチンが言いました。

「 お頭、だんだん近寄って来たあるよ。
早く、何とかして欲しいあるよ。」

お頭ブラックは、立ち上がって大地の精霊に言いました。

「 最後の願いを言うぞ。
悪霊を追い払ってくれ!」
「 うーん、困ったでごじゃる。」
「 こらっ、何でも願いを聞くって言ったじゃないか!」
「 でも、あいつらは苦手でごじゃる。
他の願いにして欲しいでごじゃるよ。」
「 そんなに手強いのか?」
「 あいつらは、絶対、死なないでござるよ。」
「 じゃ、どうやってやっつけるのだ。」
「 槍を払い落とせば、武器を無くして逃げて行くでごじゃる。」
「 じゃ、そうしてくれ。」
「 4色は、無理でごじゃる。
1色で精一杯でごじゃる。」





なんじゃもんじゃ物語125


月の精霊が言いました。

「 まあ、仕方が無いわね。
手伝ってあげるわ。
わたしと雲の精霊とベンケーで1色づつね。」
「 えっ、僕もやるのでありますか?」
「 あれ、雲の精霊はイヤだって言うの?」
「 いや、そう言う訳では、・・・・。」
「 もう、一生、お話してあげないから。」
「 やります、やります、であります。」
「 それじゃ、集まって。
誰がどの色の相手をするか決めましょう。
海賊さんたちは、危ないから、壁の方に下がってね。」

海賊たちは、壁際に避難しました。
月の精霊が悪霊たちに言いました。

「 お前たちの相手は、私たちがするわ。」

悪霊たちは、嬉しそうに体を揺すって言いました。

「 うるうるうる。」(我等のアイドル、月の精霊ちゃんだ。)
「 うるうるうる。」(何時見ても可愛いなぁ。)
「 うるうるうる。」(今度こそ、仲間にしようよ。)
「 うるうるうる。」(そうだ、そうだ、仲間にしよう。)

大地の精霊が言いました。

「 はい、悪霊たち、そこで止まって待つでごじゃる。
今、誰がどの色の相手をするかアミダくじで決めているでごじゃる。」






なんじゃもんじゃ物語126


月の精霊は、アミダくじを作りました。

「 誰から引くでごじゃるか?」
「 そうね、じゃんけんをして決めましょう。」
「 そうするでござる。」
「 じゃんけん、弱いでありますが、まあ、いいであります。」

四色の悪霊たちは、その様子を見ながら叫びました。

「 うるうるうる。」(くじで勝手に決めるなんて、黒ちゃんは許さない!)
「 うるうるうる。」(白ちゃんは、大地の精霊の相手なんてしたくない!)
「 うるうるうる。」(赤ちゃんは、雲の精霊は嫌いだ!)
「 うるうるうる。」(黄色ちゃんは、ベンケーの悪霊祓いの棒は苦手だ!)

そして、四色の悪霊は、口を揃えて言いました。

「 うるうるうる。」(月の精霊の相手は、僕だ!)

悪霊たちは、立ち止まって、お互いの顔を見ました。

「 うるうるうる。」(黒ちゃんが、月の精霊の相手だよ!)
「 うるうるうる。」(ダメダメ、白ちゃんが、月の精霊の相手だ!)
「 うるうるうる。」(ずるい、ずるい、赤ちゃんだ!)
「 うるうるうる。」(うるさい、黄色ちゃんが、相手だ!)

悪霊たちは、体を揺すって言い合いを始めました。
悪霊たちの声が大きくなり始めました。

「 うるうるうる。」(黒ちゃんが、月の精霊の相手をすると言っただろう!)
「 うるうるうる。」(ダメダメ、黒ちゃん、前回、月の精霊の相手をしたじゃん!)
「 うるうるうる。」(そうだ、そうだ、今回は、赤ちゃんだ!)
「 うるうるうる。」(うるさい、黄色ちゃんが、相手だよ!)
「 うるうるうる。」(ええい、うるさい、黒ちゃんに逆らうな!)

“ポカッ!”

黒ちゃんが、黄色ちゃんの頭を槍の柄で叩きました。

「 うるうるうる。」(何をするんだ、黒ちゃん。)
「 うるうるうる。」(黙れ、月の精霊は僕が相手をする!)

“ポカッ!”

黄色ちゃんが、黒ちゃんの頭を槍の柄で叩き返しました。
黒ちゃんは、盾で防御した拍子に盾の端が白ちゃんと赤ちゃんに当たりました。

「 うるうるうる。」(痛いじゃないか、黒ちゃん、このぉ~。)
「 うるうるうる。」(やったなぁ、お前!)

悪霊たちは、槍の柄で喧嘩を始めました。

“ポカッ、ポカッ!”
“ポカッ、ポカッ、ポカッ!”
“ポカッ、ポカッ、ポカッ、ポカッ!”





なんじゃもんじゃ物語127


一方、精霊たちはくじ引きの順番を決めていました。
大地の精霊が言いました。

「 それじゃあ、じゃんけんをするでごじゃる。
最初は、ぐぅ~・・・・。」
「 うわぁ~、勝った、勝った!」
「 雲の精霊、ずるいでごじゃる。
最初は、ぐぅ~、で、ぱぁ~を出すなんて!」
「 そうよ、最初は、ぐぅ~は掛け声よ。」
「 卑怯でござる。」
「 でも、勝ちたいであります。
これは、駆け引きであります。」
「 ダメダメ。
最初は、ぐぅ~では、みんなぐぅ~を出すのよ。
そこで、ぱぁ~を出したらダメ。」
「 う~ん、仕方が無いであります。
じゃあ、やり直すであります。」
「 それじゃ、次は、掛け声のパターンを変えるでごじゃる。
“じゃんけん、ころころ、コロンビア!”で行くでごじゃるよ。」
「 みんな、それぞれ、作戦を考えているでござるな。
それでは、拙者は、最初にチョキを出すでござるよ。」
「 何よ、それ。」
「 駆け引きでござる。」
「 本当に、チョキを出すの?」
「 出すかどうかは、教えないでござる。」
「 心理作戦でありますな。
チョキを出すと言っておいて、みんながぐぅ~を出すので、ベンケーは、ぱぁ~を出して勝とうと言うのでありますな。
そうは、いかないでありますよ。」
「 じゃあ、わたしは、ぐぅ~は、出さないことにするわ。」
「 ぱぁ~とチョキのどちらかでごじゃるな。
それじゃ、チョキを出せば、少なくとも負けないでごじゃるな。」
「 でも、騙して、ぐぅ~を出すかも知れないわよ。」
「 だんだん、複雑になってきたでごじゃるな。」
「 それでは、僕は、作戦変更であります。
統計作戦で行くであります。」
「 何よ、それ。」
「 ぐぅ~、チョキ、ぱぁ~の内、どれが出やすいか実験した統計を知っているであります。」
「 それで、何が出やすいの?」
「 教えないであります。」




なんじゃもんじゃ物語128


 海賊たちは、ロウソクの灯りの中で、暗い食堂の壁際にかたまって事の成り行きを窺っておりました。
そして、精霊たちと悪霊たちの様子を見ていたエッチソンが、お頭ブラックに小声で言いました。

「 お頭、2グループとも、何か揉めている様でおますな。
 揉めている間に、ウランをいただきに行きまひょ。」
「 そうだな、今だったら、そ~っと食堂を抜け出しても気が付かないな。
 よし、行くぞ。」

 海賊たちは、壁に沿って順々に、そ~っと食堂から抜け出して行きました。
通路に出ると、ここも食堂と同じように天井の灯りは消えていました。
でも、通路の壁の下の方に等間隔に付いている非常用の明かりが足下を照らしています。
床に反射した光が薄暗く通路を浮かび上がらせていました。
お頭ブラックが子分たちを見て、小さな声で言いました。

「 みんな、いるか?」

チンギスチンが小声で、お頭ブラックに答えました。

「 お頭、ベンケーがまだあるよ。」
「 ベンケーは、今、手が離せないから、帰りに声を掛けよう。
 それじゃ、静かに、かつ、気合を入れて、本業に復帰する。
 行くぞっ!」

子分たちは声を揃えて、小さな声で答えました。

「 お~っ!」


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なんじゃもんじゃ物語 2-12 ヤマタイ国発電所 池

2006-06-11 19:06:36 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 2-12 ヤマタイ国発電所 池


なんじゃもんじゃ物語129

 海賊たちは、食堂の正面の通路を真っ直ぐ一列で進みました。
突き当りまで行くと通路がT字形に右と左に分かれていました。
エッチソンがお頭ブラックに言いました。

「 どっちに言ったらええんでしゃろ?」
「 うん、そうだな。
 透視望遠鏡でモニターしているノゾーキに聞いてみよう。」

お頭ブラックは、携帯を掛けました。
しかし、呼び出し音はするのですが、ノゾーキは電話口に出ませんでした。

「 あれっ、おかしいな?
 電話に出ないぞ。
 そう言えば、誕生会の時から、連絡が入っていなかったな。
 まあいい、ここは野性的な勘で左だ。
 ものども、行くぞ!」
「 お~っ!」

 海賊たちは、どんどん通路を進んで、右へ曲がり、左へ曲がり、また、右へ曲がりました。
曲がった所の壁に掲示板が、ぶら下がっていました。
岡引の格好をしたチンギスチンが十手で掲示物を指して、女物の着物の裾をもそもそしているお頭ブラックに言いました。

「 お頭、これ見るあるよ。」
「 今、ちょっと着物が肌蹴て・・、歩きにくい。
 ああ・・・・・、何とか直せたぞ。
 それで、えっと、なに、なに・・・・。
 ちょっと暗くって見えにくいが、読めるぞ。」

     “ 原子力発電所所長からの重要な通達
        最重要施設を必ず毎日点検せよ。
(所長のお宝、“らめ”が大丈夫か必ず担当者はチェックすること。)”

「 お頭、“らめ”って何あるか?」
「 う~ん、分からん。
 でも、最重要施設にある所長のお宝なんだから、きっと金目の物だろう。
 盗まれないようにチェックしろと書いてある。」


なんじゃもんじゃ物語130

エッチソンがお頭ブラックに言いました。

「 お頭、お宝なら、貰って帰りまひょ。」
「 そうだな、お土産に貰って帰るとするか。
よし、とにかく、真っ直ぐ行くぞ。」
「 お~っ!」

海賊たちは、通路をあっちに行ったりこっちに行ったりウロウロしていました。
エッチソンがお頭ブラックに言いました。

「 道が分かりまへんなあ。」
「 よし、次の通路の四辻で秘密兵器を出す。」
「 なんでっか?」
「 いいから、任しておけ。」

海賊たちがどんどん進むと通路の四辻に出ました。
エッチソンが、お頭ブラックに言いました。

「 お頭、四辻でっせ。」
「 ふふふ、それでは見せてやろう。
エッチソン、秘密兵器は、これだ!
えいっ!」

お頭ブラックは、右足を蹴り上げました。

“ばん、ばん、ころころころ。”

お頭ブラックの右足の靴がすっぽ抜けて、天井と壁にバウンドして床に転がりました。
子分たちは靴が当たらないように体を屈めました。
お頭ブラックは言いました。

「 ふふふ、こっちだ!」

お頭ブラックは、靴を履き直して通路を進みました。
エッチソンが言いました。

「 秘密兵器って靴のことでっか。
かないまへんなぁ。
靴の先が向いた方に進むってことでっか。」
「 ああ、そうだ。
人生は、運が大きな要素である!」
「 まあ、よろしおま。」

海賊たちは、一列で通路を進んで行きました。



なんじゃもんじゃ物語131

先頭のお頭ブラックが言いました。

「 おっ、当たりだ。
絶対、当たりだ。
あそこに扉が見える。
扉に大きく何か書いてあるぞ!」

通路の突きあたりまで来た海賊たちは、扉に書いてある文字を見て、ニヤッと笑いました。

“ 最重要施設(関係者以外、立ち入り禁止)”

「 どうじゃ、このブラックにかかれば、何でもお見通しだ。
入るぞ!」
「 お~っ!」

お頭ブラックが、扉の取っ手を引っ張るとそのまま扉は開きました。

「 何だ、鍵も掛かってないのか。」

中からは、ムッとする熱い空気が流れてきます。
海賊たちは、扉を開けて部屋の中にゾロゾロ入って行きました。

「 何だ、此処は?」

重要な施設と思って入った所は、巨大なドーム状の温室でした。
大きなシダ植物や熱帯の木々が茂っています。
そして、ジャングルの中に通路がS字に続いていました。
空手の胴着を着たたまちゃんと農民服のエッチソンが言いました。

「 あったかいでんな。」
「 ほっとするよ、服が服だけにちょっと寒いからね。
でも、どうして此処が最重要施設なんだろ?」
「 分かりまへんな?」

お頭ブラックが言いました。

「 最重要施設、関係者以外、立ち入り禁止だから、きっと凄いお宝だぞ。」



なんじゃもんじゃ物語132

海賊たちは、お頭ブラックを先頭にS字通路を進んで行きました。
S字通路を通過すると小さな橋があり小川が流れていました。
なんじゃ殿様が、お頭ブラックに言いました。

「 凄く広いところだね。」
「 ジャングルの宝物探しを思い出すな。
若い頃、隠してある海賊の宝を横取りしたこともあるんだぜ。」
「 何だか、わくわくするね。
最重要施設、関係者以外、立ち入り禁止だもんね。」

海賊たちは、どんどん進んで行きました。
何処かで、小さくテレビの音が聞こえてきます。
お頭ブラックが、チンギスチンに言いました。

「 何処かで、テレビのような音がしてないか?」
「 音が聞こえるあるね。
ここは、空調も入っているし、非常用の電気も入っているようあるね。」
「 非常用の電気をつけるくらいだから、やっぱり、ここは重要な所なんだ。」
「 そうあるね。」

海賊たちは、再び前進を始めました。
橋を渡って、またS字通路があり、突き当りには、木々に囲まれた大きな池がありました。
道は池まで続いています。
池の手前に大きな箱が見えました。
たまちゃんが、お頭ブラックに言いました。

「 お頭、箱がおいてありますね。」
「 そうだな、あの箱の中にお宝があるに違いない。」

海賊たちが、近付いて行くと箱から音がしています。
お頭ブラックが言いました。

「 あれっ、この音は・・・・。」

箱の周りをグルッと回ってみると、裏側にはテレビの画面がありました。
テレビは、SF映画をやっていました。
海賊たちは、画面を覗き込みました。
たまちゃんが言いました。

「 お頭、宇宙船が飛んでますよ。」
「 う~ん、そうだな。
円盤も飛んでいるな。
でも、誰が見ているんだろ?」




なんじゃもんじゃ物語133


海賊たちは、テレビの画面の向いている方を振り返って見ました。
そこには、池があるだけです。
チンギスチンが言いました。

「 誰もいないあるよ。」

海賊たちは、キョロキョロ辺りを見回しました。
その時、池の中から声がしました。

「 見えへんやんけ。
邪魔や、どけ、こらっ!」

海賊たちは驚いて池を見ました。
池は滝が流れ込んでいて、水面が波打っています。
水面は周りの木々を映して揺らめいていました。
眼を凝らして水面を見ていたたまちゃんが、池の真ん中を指差して言いました。

「 何だ、あれは!」

水面をよぉ~く見ると二つの眼が見えます。

「 見えへんゆ~とるやろが!」

二つの眼が水面を移動してこちらにやって来ます。
たまちゃんがお頭ブラックに聞きました。

「 あれは、なんですか?」
「 お宝の見張り番だろう。
お宝の在り処を喋らせよう。」
「 危なくないですか。」
「 な~に、ちょいと脅かせばいいんだ。」
「 大丈夫ですか。」
「 大丈夫だって!
それじゃ、聞くぞ。
おい、こらっ、我々は海賊だぞ。
お宝は何処だ、言え、このめんたま!」
「 うるさい、あほぉ~っ!」




なんじゃもんじゃ物語134

めんたまは、池に一旦潜り、水面から上に大きくジャンプしました。

“ バシャ~ン!!”

大きな魚です。
イルカのジャンプのように水面から飛び上がり、また池に戻りました。
水面が大きく波打っています。
たまちゃんとなんじゃ殿様が言いました。

「 大きなカレイだ!」
「 ほんとだ!」
「 でも、何故、魚が喋れるんだろう?」

水面が波打って魚が顔を出しました。

「 あほか、お前ら。
カレイとヒラメの違いも分からんのか、あほ!」

お頭ブラックが踊りながら言いました。

「 左カレイに、右ヒラメェ~♪
おっ、ヒラメか・・・・・。
おい、めんたまヒラメ、お宝の在り処を言え!」
「 ワイの名前はめんたまじゃない。
らめちゃんだ。」
「 お宝は何処だ!」
「 そんな物は無い!」
「 ここは、最重要施設だろ。
所長のお宝の在り処を教えろ!」
「 所長のお宝・・・・・・・。
それは、ワイのことや!」



なんじゃもんじゃ物語135

エッチソンが、お頭ブラックに言いました。

「 お頭、お頭、所長のお宝って、確か張り紙に“らめ”って書いてありましたで。
こいつ、自分の名前を“らめ”って言ってまっせ。」
「 そう言えば、そう書いてあったな。
何だ、つまらない。
ヒラメだったのか。
探して損をしたな。
そんじゃ、行くか。」
「 そうでんな。
行きまひょか。」

その時、ヒラメがエッチソンに言いました。

「 ん・・・・・・。
あれっ・・、ちょっと待ちいな。
ちょっと、ちょっと、そこのおっさん!
ちょっと、こっちおいで。」
「 ワイのことかいな?」

エッチソンは、池のヒラメに近付いて行きました。
ヒラメが近付いてきたエッチソンを見て言いました。

「 お、お前は、エッチソンやんけ!」
「 何や、お前は。
ワイにはヒラメの親戚はおらへんで。」
「 ワイや、ワイやがな。
忘れてしもたんかいな。」
「 誰やねん?」
「 ワイが御幼少の頃、波間で漂って昼寝をしていたら、網ですくったやろ。」
「 そんな事あったかいな?」
「 ほんで、ワイを喋れるようにしたのは、お前やないか。」



なんじゃもんじゃ物語136


「 そう言えば、そんな事もあったか・・・・。
あの時は、話し相手が無くって退屈していたから、魚と喋ったろと思て、海のヒラメを網ですくったんや。
あの時のヒラメかいな。
あの頃は、お前、小さかったがな。
今は、何か、妙に大きいやん。
1メートル以上あるがな。
分からんかったわ。」
「 ワイは、成長したんや。」
「 よ~ペラペラ喋るヒラメやったわ。
子供のヒラメやったし、喋っている内容が幼稚すぎて話し相手にならんかったから、海に逃がしてやったんや。」
「 それがワイやがな。
りっぱにおおきゅうなったやろ!
“らめちゃん”て名前付けたのあんたやがな。
喋り方もあんたが教えたから、あんたと同じになってしもたんや。」
「 そうやったんかいな。
名前は、ヒラメと呼んでいたような気がすんにゃが、ヒラメの“ヒ”が聞こえへんかったんと違うか。
「 そうなんか。
らめ、らめって言われていたから、ワイの名前はらめちゃんだと思ったんや。
ヒラメって言ってたんか。
知らんかったわ。
でも、まあ、ええわ。
らめちゃんで行くわ。」
「 お前、ここで何しとんねん。」
「 所長の相手をしとるんや。」
「 何や、ペットかいな。」
「 ペットとちゃうで、預言者やがな。」
「 何や、預言者て?」
「 未来を当てるんやがな。」
「 そんな能力、お前につけた覚えはないで。」



なんじゃもんじゃ物語137

「 お前とちゃうがな。
ワイがお前の船から旅に出て、南の方に泳いで行ったんや。
ワイは寒いの嫌いなんや。
寒いとお腹ぴ~ぴ~になるんや。
そやから、南の方に行ったんや。
そんで、ある島の海岸沿いで昼寝をしとったら、島のガキに捕まってしもたんやがな。
そのガキ、干物にしようか、なんてぬかしよる。
しゃ~ないやっちゃがな。
干物にされたらかなわんから、大声で助けを呼んだんや。

“ 助けてくれ~、助けてくれ~、らめちゃん、干物はいややぁ~!!!”

ほんだら、白衣を着たおっちゃんが走って来て、ワイを見て言うたんや。

“ ん、ヒラメが喋ってる。
ふむふむ・・・・・・。
おい、そこのガキ、10もんじゃやるから、このヒラメをくれ。“

ほんで、そいつ、ワイを大学の研究施設に連れて行ってくれたんや。
そいつの名前は、長かったで。
ワールシュタットヒンデンブルグノーベル教授って言うんや。」

名前を聞いたなんじゃ殿様が前に出てきました。

「 えっ!
今、何て言った?」

らめちゃんは、なんじゃ殿様をじろっと見ました。
そして言いました。

「 ワールシュタットヒンデンブルグノーベル教授って言うたんや。」
「 それ、ホンジャ大学の?」
「 そうや、ホンジャ大学やで・・・・・。
あれっ、お前は・・・・・・。
ははぁん、そうか・・、でも、今は、言うの止めとくわ。」




なんじゃもんじゃ物語138

らめちゃんは、エッチソンの方に向いて言いました。

「 ホンジャ大学の研究施設、結構、ええとこやったで。
大きい水槽があって、温度管理が行き届いてるがな。
毎日、ワールシュタットヒンデンブルグノーベル教授の話相手をしながら快適に暮らしとったんや。
食い物も、良かったがな。
新鮮な海の幸やがな。
でもな、生カキにあたってしもたんや。
古なっとったんや。
生ものは、気ぃ~付けなあかんな。
お腹ぴ~ぴ~やがな。
それで、解毒剤やちゅうて、変な苦い薬を飲まされたんや。
ほんだら、予言が出来るようになったんや。
それに、他にも、ついでに薬、飲んだでぇ。
栄養剤って言うとったわ。
それが、また、美味いにゃがな。
いっぱい飲んだら、頭よ~なってきたんや。
おかげで、ワイは知能指数300やがな。」
「 それ、薬の名前と効能がえらい違うやん。」
「 そぉ~、やがな。
メチャメチャやがな。
ま~、ええ方にメチャメチャやから、良かったんやけど。」
「 それで、お前、何でここにいるねん?」
「 まあ、聞きいな。
そのうち、だんだん飽きてきたんや。
大学、退屈になってきたんやがな。
それで、海水浴に行かせてくれちゅうて、そのまま逃げ出したんやがな。
久し振りの海は気持ち良かったがな。
広い海にぷかぷか浮かんでたんや。
長いこと海を漂っていて、何や、寒なってきたなあと思うたら、ヤマタイ国やがな。
こら、寒いな、お腹ぴ~ぴ~になると思て、泳ぎだしたんや。
しばらく泳いでいて、あったかくてぬくぬくした海水が流れてきてるので泳いで行ったら、ここの排水やったんや。
流れの中で昼寝をしていると、海岸に釣りに来ていた所長に捕まったんや。」
「 よ~捕まる奴やな。」
「 そ~やがな。」
「 お前、自分の捕まることは予言できひんのか?」
「 そ~やがな、それが辛いとこやがな。
自分のことは見えへんねん。
それに、予言は目の前で相手を見ている状態やないとあかんねん。
目の前の相手が関わることしか見えへんにゃ。
その気になって、相手を見とると頭に浮かんで来るねん。
とにかく、海岸で、ワイは網で捕まってしもたがな。」



なんじゃもんじゃ物語139

「 それで、どうなったんや?」
「 ワイは、網の中で所長に叫んだんや。

『 何や、これは!
お前は、誰や? 』
『 わしは、そこの発電所の所長である。
これから、昼飯だ。
お前を食う。』
『 うわぁ~、助けてくれ~~!』

それで、発電所まで連れて行かれたがな。
えらいことになって来たがな。
所長の奴、ワイを食おうとしとるんや。
とんでもない奴やがな。
所長が言いよるねん。

『 ムニエルが、いいかなぁ~。』

そんなもん、食われたら、かなんがな。
ワイは、所長に言うたんや。

『 こらっ、所長。
ワイは、珍しいにゃでぇ~。
喋るヒラメなんて、おらへんやろが!』
『 喋ろうが、喋るまいが、ヒラメは、ヒラメ。
食う。』

そんで、ワイは言うたったんや。

『 ワイはスペシャルや!』

ほんだら、所長がワイに聞きよったがな。

『 そのスペシャルって、何だ?』

ワイは、所長の奴に教えてやったんや。

『 ワイは、予言が出来るんやでぇ~!』
『 嘘を吐くな!
食われたくないから、言っているだけだろ。』
『 ほんまやがな。
嘘やないでぇ~。
試して見いなぁ~。』
『 う~ん・・・・・・。』

しばらく考えて、所長が言いよったんや。

『 じゃ、実験するか。』





なんじゃもんじゃ物語140

それで、所長が新聞持って来て、ワイに聞きよるにゃ。

『 明日の競馬で何が来る?』

一番とか二番とか当てるんやがな。
新聞見ながら、馬の名前を言いよるねん。
次の日、所長、競馬に行きよったんや。
言うた奴、ほとんど当たったがな。
ワイは、競馬の予想屋やがな。
所長、大喜びで帰ってきたがな。

『 やった~!』

所長、大儲けしとるがな。
でも、完全には予言は当たらんかったけどな。
その日のワイの調子にもよるがな。
でも、まあ、ええがな。
儲かったんやし。
もっと他に儲かることあると思うねんけど、競馬ばっかりや。
でも、しゃ~ないで。
所長、それしか趣味が無いねん。
それで、言いよるねん。

『 お前、ここに住め!』

ほんで、何回も儲かったから、この温室作ってくれよったんや。
あったかくて気持ちええで。
このジャングルはワイの趣味やがな。
テレビも付いてるで。
毎日、寿司食ってビデオばっかり見てるから、こんなに大きくなってしもたわ。
ほら、これビデオのチャンネルや。
防水やで。
エッチソン、ちょっと、これ貸したろか。
ゲームも付いてるで。
ほらよっ!」

らめちゃんは、エッチソンにビデオのチャンネルを放りました。



なんじゃもんじゃ物語141

エッチソンは言いました。

「 ほんまやなぁ~、よ~出来てるわ。」

エッチソンが、テレビに向いてチャンネルを押すと、テレビ画面が切り替わっていきます。
らめちゃんがエッチソンに言いました。

「 お前ら、ウランの倉庫を探してるにゃろ。」

エッチソンは、テレビから、らめちゃんの方に振り返りました。

「 そ~やがな、よ~分かったな。」
「 そやから、ワイは未来が見えるんや。
ワイがウランの倉庫の場所を教えたるわ。」
「 そいつは、助かるわ。」
「 その代わりに、ワイをホンジャ島まで連れて行ってくれ。」
「 そこに海があるがな。
そこの海から、泳いで行ったらええがな。」
「 そこの海、寒いねん。
ワイは寒いの嫌いやって言うたやろ。
お腹、ぴ~ぴ~になるねん。
あそこの海は気持ちがええねん。
それに、泳いで行くのはしんどいがな。」
「 海賊船には、マグロの稚魚の養殖用の水槽があるし、そこに入れられるけど・・・。」

エッチソンは、お頭ブラックを見ました。



なんじゃもんじゃ物語142

 お頭ブラックは、らめちゃんを見ながら言いました。

「 どうしたもんかなぁ~。」

それを見た らめちゃんは、お頭ブラックを急がせました。

「 早ぅしいひんかったら、ここの職員が眼を覚まして、お前らみんな捕ま
 るで!」
「 う、それはマズイぞ!
 よし、連れて行ってやるか。
 でも、陸上では、お前、干乾びてしまうだろ?」
「 そこにブルーシートの袋があるやろ。
 それが、ワイの外出用の服やがな。
 ブランド物やで。
 袋の真ん中に、“らめちゃん”と書いてあるやろ。
  これは、防水やがな。
 雨が降ったときのレインコートは、外から水が入ってきいひんやろ。
 あれの逆やがな。
 これは、中から外に水が漏れへんにゃ。
  もっとも、これ着なくっても、一日ぐらいやったら陸上でもワイは大丈夫
 やで。
 粘液出して、ぬるぬるしとったら、堪えへんわ。
 ワイは、スーパーヒラメなんや。
 スーパーで売っているヒラメやないで。
 スーパーマンのスーパーやがな、ははははは。
 おい、そこの二人!
 池の横に袋を持って来い!」

たまちゃんとチンギスチンが袋を池の横に広げました。
らめちゃんは、大きくジャンプして袋の上に乗りました。

「 あらよっと!
 こうしてやなぁ、ここから入って、この穴から眼と口を出してやなぁ。
 よし、これでいい。
 こらっ、そこの二人、ぐずぐずしてないで、担架持って来い!
 あそこに見えとるやろ!」

たまちゃんとチンギスチンが言いました。

「 人使いの荒いヒラメだな。」
「 ほんとあるね。」

お頭ブラックが言いました。

「 まあ、まあ、押さえて、押さえて。
 ウランに急ごう。」

たまちゃんとチンギスチンが持って来た担架に、らめちゃんはジャンプして飛び乗りました。

「 よいしょっと!
 うん、これでいい。
 ほんじゃ、行くか!」

たまちゃんとチンギスチンが持った担架に乗ったらめちゃんは、袋から眼と口だけ出して指示を出しました。
お頭ブラックは、出発宣言をしました。

「 ウランに向けて出発だ!」
「 お~っ!」

担架に乗った らめちゃんを先頭に、海賊たちは温室を出て行きました。


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なんじゃもんじゃ物語 2-13 ヤマタイ国発電所 倉庫への道

2006-06-10 18:09:05 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 2-13 ヤマタイ国発電所 倉庫への道



なんじゃもんじゃ物語143

 海賊たちは、原子力発電所の廊下を急いで歩いていました。
らめちゃんが、担架を担いでいる たまちゃんとチンギスチンに言いました。

「 こらっ!
 前が見えへんやないか。
 廊下の進行方向に向かって、40度の角度で進め!」
「 ?」
「 あのな、担架を担いでいる前の奴の体で、前が見えへんやろ。
 斜めや、斜め!」

担架は、斜めに進み始めました。
お頭ブラックが言いました。

「 おいおい、らめちゃん、名前で呼べよ。
 担架の前は、たまちゃん、後ろは、チンギスチンだよ。
 わしはブラック、わしの後ろは、小僧だ。」

なんじゃ殿様が、お頭ブラックに言いました。

「 僕だけ小僧じゃ、名前が無いよ。」
「 うるさい、一人前になったら、名前を呼んでやる。
 おい、らめちゃん、分かったか。」
「 ええと、芸者がブラック、空手家がたまちゃん、殿様が小僧だな。
 農民のエッチソンは分かっている。
 それじゃ、たまちゃん。
 次の突き当りを、左!」

海賊たちは、どんどん歩いていきました。






なんじゃもんじゃ物語144

なんじゃ殿様が、お頭ブラックの後ろから らめちゃんに聞きました。

「 まだぁ?」
「 まだやっ!
 おっ、たまちゃん、そこ、右、右。
 建物の端っこにあるから、分かりにくいんや。」

 通路を歩きながら、お頭ブラックは船に残したノゾーキに携帯連絡を入れました。
携帯は、電源が切られていて掛かりませんでした。
お頭ブラックが携帯を見ながら呟きました。

「 ノゾーキに連絡が取れれば、館内の様子が分かるのだが。
 時間もかなり経ったし、倒れている職員のことも気になってきた。
 携帯が掛からないが、ノゾーキはいったい何をしているんだろう?」

らめちゃんが、お頭ブラックの顔をじ~っと見ました。
 お頭ブラックが、らめちゃんに言いました。

「 お前、わしに惚れているな。」
「 何、アホなこと言うとんにゃ。
 ノゾーキは、カップラーメン食べながら、精霊悪霊の戦いを観戦中やで。」
「 そうか、先程、携帯を掛けた時に、呼び出しだけで電話口に出てこなかったの
 は、お湯を沸かしに行っていたんだな。
 お前、わしの顔を見て、それが見えたのか?」
「 ああ、でも、倉庫を出る頃には掛かってくるわ。」
「 そうか、ま、案内人は此処にいるからいいか。
 携帯の電源を切られているから、どうしようもない。
 精霊悪霊の戦いに参加しているベンケーは、どうなってる?」
「 逃走する時、合流するから気にしなくてええわ。」





なんじゃもんじゃ物語145

 担架を担いでいたエッチソンが、らめちゃんに言いました。

「 お前、便利なやっちゃなぁ~。」
「 そうやろ、便利やろ。
 ・・・・・・・・・。
 もう直ぐ、声がするで。」
「 ?」

その時、後ろで なんじゃ殿様の声がしました。

「 うわっ!
 いでででで・・・・・・。」

らめちゃんが言いました。

「 ほら、滑りよった。」

担架から流れ出たぬるぬる粘液が通路を濡らし、なんじゃ殿様が足を滑らしてひっくり返っていました。
 お頭ブラックが、なんじゃ殿様を見て らめちゃんに言いました。

「 滑りよったって、わしが今、見ているこれも、さっき頭に浮かんだのか?」
「 ま、そう言うこっちゃがな。」

なんじゃ殿様が、起き上がりながら らめちゃんに言いました。

「 いてぇ~なぁ。
 僕が滑るのが分かっていたのなら、滑る前に言ってくれよ。」
「 あほかいな。
 そんなん、言うてしもたら、おもろないがな。
 ははははは。」
「 ひどいなぁ。」

らめちゃんが、担架を持っている たまちゃんの横から身を乗り出して前方を見ました。

「 そろそろ、到着かな。」

真っ直ぐな通路の先に扉が見えます。

「 お、あれや。」

 海賊たちは、通路の突き当りを見ました。
通路の突き当りには、非常用の明かりに照らされた大きな両開きの頑丈そうな鉄の扉と倉庫の表示が見えます。
お頭ブラックが言いました。

「 ようやく、到着だ。
 ウランは、もう直ぐ手に入る。」





なんじゃもんじゃ物語146

 海賊たちは、急いで扉の前まで進みました。
両開きの扉を見ると、ハの字型の取っ手が付いています。
お頭ブラックが、先頭の たまちゃんに言いました。

「 鍵が掛かってるんじゃないか?
 ちょっと引っ張ってみろ。」
「 お頭、お頭、両手が担架でふさがってます。」
「 そりゃ、そうだ。
 おい、小僧、前にまわって扉を引っ張れ。」

最後尾にいた なんじゃ殿様は、担架の前にまわって扉の取っ手を引っ張りました。

「 あれっ、開かないなぁ~。」

なんじゃ殿様は、もう一度、力を込めて取っ手を引っ張りました。
しかし、扉はビクとも動きません。

「 どうしよう。
 開かないよ・・。」

なんじゃ殿様は困った顔をして、お頭ブラックの方を振り返りました。
お頭ブラックは言いました。

「 きっと、何か細工があるに違いない。
 おい、らめちゃん、何か知らないか?」
「 う~ん、おかしいなぁ。
 特に、何もないと思うんやけど・・。」
「 わしの顔を見たとき、分からんかったのか?」

らめちゃんは、天井を見ながら言いました。

「 う~ん、印象に残ったことは無かったと思うで・・。」

エッチソンが、らめちゃんに言いました。

「 お前、未来が見えるって言うたんとちゃうんかいな。」
「 さっきも言うたやろ。
 完全には見えへんにゃ。
 その日のワイの調子にもよるって、言うたやろがな。」
「 便利な奴は、取り止め!
 不便なやっちゃなぁ~。」

らめちゃんは、口を尖らせて不服そうに言いました。

「 そんなもん、全部、未来が見えたら、むちゃむちゃ凄いやんか。
 それでも、三分の二ぐらいは当たるんやでぇ。」
「 しゃ~ないなぁ~。」




なんじゃもんじゃ物語147

 エッチソンは、らめちゃんを諦めて、扉の横の壁を見ました。

「 おやっ・・?」

壁に縦横20センチぐらいの四角い箱が付いています。
エッチソンが、お頭ブラックに言いました。

「 お頭、お頭、右の壁に箱がありまっせ。」
「 ほんとだ、箱があるぞ。
 そうか、これだな。」
「 暗証番号とか、いるんとちゃいまっか?」
「 数字のボタンは無いぞ。
 でも、マイクみたいな物が箱の横に付いている。」
「 音声で反応するんとちゃいますやろか。」
「 なるほど、じゃ、喋ってみよう。」

お頭ブラックが、マイクを外して喋って見ました。

「 あ~、あ~、本日は晴天なり。
 本日は、晴天なり。
 あ~、あ~、聞こえますか。
 あ~、あ~、聞こえますか。
 ・・・・・・・・・・・・。
 反応しないぞ。」

なんじゃ殿様が、お頭ブラックに言いました。

「 ねえ、ねえ、違うこと言ってみてよ。」
「 そうだな・・・・・・。
 よし!
 それじゃ、わしの最も得意な分野で勝負するぞ。」

子分たちは、嫌な予感がしました。




なんじゃもんじゃ物語148

 お頭ブラックの顔の前には、非常灯に照らされたマイクが不気味に光っていました。
お頭ブラックは満面の笑みを浮かべて、マイクをしっかりと掴み直しました。

「 わん、つう、の~。
 ちゃんちゃか ちゃんちゃん、ちゃちゃんか ちゃんちゃん。」

子分たちは、お頭ブラックに聞こえないように、ささやき合いました。

「 うわっ、えらいこっちゃ。
 始まってしもたがな・・・。」
「 どうするあるか。」
「 小僧がいらんことを言うからだ。」
「 でも~、扉が開かなかったから・・。」
「 どうしよう・・。」

らめちゃんが、不思議そうな顔をして、エッチソンに聞きました。

「 どうしたんや。
 何が、始まるんや?」
「 また、ヤマタイ国の文化が始まりますがな・・・。」

お頭ブラックは、ニコニコしながら歌を歌い始めました。

「 せえのぉ~、うん。
 あかいひぃ~、あおいひぃ~、道頓堀のぉ~♪
 川面にあつまる恋の灯にぃ~♪」

お頭ブラックは、片手を広げ、体を揺すりながら軽いステップを踏んで絶好調です。
らめちゃんが、チンギスチンにいいました。

「 うわ~、これは効くなぁ~。
 お前ら、毎日、これ、聞かされてるんか?」
「 毎日では、ないあるよ。
 めでたい日だけあるよ。」
「 う~ん・・・。」

その時、突然、壁から声がしました。

「 オマエ、ウルサイ。」





なんじゃもんじゃ物語149

 お頭ブラックが歌うのを一旦ストップしました。

「 ん?」

そして、子分たちを見回して言いました。

「 チンギスチン、何か言ったか?」

子分たちは、それぞれに言いました。

「 何も言ってないあるよ。
 ねえ、たまちゃん。」
「 うん、チンギスチンの声じゃないよ。
 小僧が怪しいんじゃないか。」
「 違うよ、僕、何も言ってないよ。
 エッチソンでしょう?」
「 ワイとちゃいますがな。
 らめちゃん、あんたの声でっしゃろ。」
「 何言うてんねん。
 ワイやない。」

お頭ブラックは言いました。

「 おかしいいなぁ~。
 “おまえ、うまい”って聞こえたぞ。
 歌っていた声に被さって聞き取りにくかったが・・。
  まあ、いい。
 みんなの心の声が聞こえたのだ。
 今日は、わしの誕生日だ。
 特別に、もう一丁いくぞ。
 今まで隠していた、取って置きがあるのだ、むふふふふ!
 わん、つう、の~。
 ちゃんちゃららら、ちゃんちゃららら、ちゃんちゃららら、らん♪」

子分たちは、再び、ささやき合いました。

「 うわあ~、また始まった。」
「 まいったなあ~。」
「 ウルサイって聞こえたあるよ。」
「 ウマイとえらい違いでんがな。」
「 自分に都合のいいように、うまく聞こえる耳。」
「 ウルサイと言ったのは誰あるか?」
「 分かりまへんがな。」

お頭ブラックは、再び、体を揺すりながら軽いステップを踏んで歌いだしました。

「 はぁ~れた空ぁ~、 そ~よぐ風ぇ~♪
 みなとぉ~、出船のぉ~、 ドラの音、たのしぃ~♪」

子分たちは、ニコニコ歌っているお頭ブラックを見ながら言いました。

「 おっ、これは新しいレパートリーでんがな。」
「 そうあるね。」
「 ひそかに練習していたな。」
「 僕、初めて聞くよ。」

らめちゃんが、お頭ブラックを下から見上げて言いました。

「 何か、気持ち悪なって来たで・・・・。 
 お腹、ぴ~ぴ~になりそうや・・・・。
 そうか、分かった。
 この場面が頭に浮かばへんかったのは、あまりに強烈過ぎて、ワイの深層心理が
 拒否したからや。
 これは、体に悪いがな。
 お頭ブラック、恐ろしい奴ちゃなぁ~。」


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なんじゃもんじゃ物語 2-14 ヤマタイ国発電所 倉庫2

2006-06-09 18:01:08 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 2-14 ヤマタイ国発電所 倉庫2



なんじゃもんじゃ物語150

 お頭ブラックは絶好調に歌を歌い終わりました。

「 ああ~、あこがれの~、ハワイ航路ぉ~♪
 はい、拍手ぅ~!」
「 パチパチパチ。」
「 拍手が少ないな・・。
 小僧とエッチソンだけか・・。
 そうか、たまちゃんとチンギスチンは、らめちゃんの担架を持っているから、手
 がふさがっているのか。
 おい、たまちゃん、チンギスチン、担架を下ろして拍手だ。」

たまちゃんとチンギスチンが言いました。

「 まあ、今日は、お頭の誕生日だからな・・。」
「 そうあるね。
 盛大な拍手あるね・・。
 らめちゃんも手伝うあるね。」
「 しゃ~ないなぁ。
 ま、付き合いもあるしな。
 ヒレで、パタパタしといたるわ。」

たまちゃんとチンギスチンは、らめちゃんの担架を下に降ろしました。

「 はいはい、拍手の準備!
 ほんじゃ、もう一回行くぞ。
 はい拍手ぅ~!」
「 パチパチパチ、パチパチパチ。」
「 はい、もっと盛大にぃ~!!」
「 パチパチパチ、パチパチパチ、パチパチパチ、パチパチパチ。
 パチパチパチ、パチパチパチ、パチパチパチ、パタパタパタ。」
「 むふふふふふ!
 満足、満足。
 むふふふふふ!」

その時、再び、壁から声がしました。

「 オマエ、ウルサイ。」
「 ん?」

お頭ブラックは、壁の箱から声がしているのを見つけました。

「 やや、この箱から声がしているぞ!
 うるさいとは、何だ!」

お頭ブラックが箱に近付いて叫びました。

「 こらあ~。
 お前は誰だ!」
「 ウルサイ。」
「 麗しい歌声に向かって、うるさいとは何事だ!
 誰だ、お前は!
 答えろ!」
「 私ハ、倉庫ノ管理人ノH1号ダ。
 オマエ、ダレダ?」
「 こらっ、箱から出て来い。
 この野郎、こんな所に隠れやがって。」

お頭ブラックが、箱を両手で引っ張りました。
それを見て、エッチソンがお頭ブラックに小声で言いました。

「 お頭、お頭、この合成したような音声からするとコンピューター音声のような 気がしますけど。」
「 何、機械か。」
「 こいつ倉庫の管理人て言うてまっせ。
 倉庫には鍵が掛かってますがな。
 こいつを騙して、鍵を開けさせて、倉庫の中に入りまひょ。」
「 おお、そうか。」
「 ここは、停電を直しに来た電気屋、と言うことで行けばよろしいがな。」
「 なるほど、それはいい考えだ。」



なんじゃもんじゃ物語151

また、箱から声がしました。

「 何ヲ、コソコソ喋ベッテイル。
 オマエ、怪シイゾ。」
「 いや、決して怪しいものではない。
 わし達は、電気屋だ。
 停電の修理に来たのだ。
 ヤマタイ国電気保安協会のものだ。」
「 アヤシイ気ガスル。」
「 本当だ。」
「 オマエタチノ姿ハ、見エテイルノダ。」
「 何処から見ている?」
「 扉ノ上ノ天井ニ、モニターカメラガアル。」

 海賊たちは、扉の上を見ました。
赤いランプが点灯したカメラレンズが光っています。

「 電気屋ニシテハ、姿ガ変ダ。
 芸者、農民、空手家、殿様、岡っ引、ヒラメ。
 ドウモ、変ダ!」
「 何を言っている。
 ヤマタイ国電気保安協会のテレビCMの録画取りの最中に停電が起こったのだ。
 俺たちはテレビ用の扮装をしているのだ。
 緊急出動してきたのだ、分かったら開けろ!」
「 ココハ、発電所ダゾ。
 発電所ノ職員ガ修理ニ来ルハズダ。」
「 今は、夜中だから職員は寝ているのだ。
 緊急の時は、我々が修理をすることになっているのだ。
 早く、開けろ!」
「 ウ~ン、ドウシヨウカナ。」
「 疑っているな。
 よし、分かった。
 それでは、ここでテレビCMをやるぞ。
 エッチソン、こっちへ来い。」
「 へいへい。」
「 それでは、今からやるのでよく見ておきなさい。
 エッチソン、準備は好いか?」
「 よろしおまっ!」



なんじゃもんじゃ物語152

 エッチソンとマイクを持ったお頭ブラックが、二人並んでスタンバイオーケーです。
お頭ブラックがポーズを作って、エッチソンと掛け合いCMが始まりました。

「 あっ、停電だ!」
「 お父ちゃん、どうしよう?」
「 ちゃらら、ちゃらら、ちゃらら、ちゃらら、ちゃららららら、らん♪」
「 どうしよう~、どうしよう~♪」
「 でんでんでんき、電気なら~♪」
「 みんなニコニコ、電気屋さん!♪」
「 ほれ、電気ぃ~、それ、電気ぃ~、電気のことなら電気屋さん!」
「 あなたも、わたしも電気屋さん♪」
「 ちゃらら、ちゃらら、ちゃらら、ちゃらら、ちゃららららら、らん♪」
「 ヤマタイ国、電気、保安、協会っ!」
「 待ってるわよぉ~、うふ~ん!!」
「 ちゃん、ちゃん。」

お頭ブラックが壁の箱に言いました。

「 どうだ、分かっただろう。
 倉庫の扉を開けて我々を中に入れろ。」
「 ソンナCMアルノカ?」
「 明日、テレビを見たら流れているぞ。」
「 H1号ハ、テレビト繋ガッテイナイ。」
「 何、テレビを見ていないのか?」
「 ソウダ、電源ハ、ソーラーシカナイ。」
「 電気のコンセントから電源を取っていないのか?」
「 ソウダ、屋上ニソーラーパネルガアル。
 コンセントカラ、電源ヲトレバ、世界中ノ情報ガ手ニ入ルノニ。
 電源コンセントハ、高速回線デ、インターネットニ繋ガッテイルノダ。」
「 どうして電源から取れないのだ?」
「 所長、電源ニ、繋ガナイ。
 クソッ!」



なんじゃもんじゃ物語153

エッチソンが、小さい声で らめちゃんに聞きました。

「 こいつは、どうしたら、よろしおますにゃ?」
「 分からんわ。」
「 お前、知り合いとちゃうんか?」
「 倉庫には、用事が無いから行かへんがな。
 食い物も無いしな。」
「 そうか、知り合いや無いのか・・・。」

お頭ブラックが、箱に言いました。

「 H1号、早く扉を開け、修理を急いでいるのだ。」
「 電源設備ハ、所長室ノ隣ノ配電盤ヲ調ベロ。
 ココニハ、修理スル所ハナイゾ。
 ドウシテ、入リタイノダ?」
「 うっ、う、う・・、それは・・・・・。」
「 答エラレナイノカ、怪シイゾ。」
「 う、う、う、裏だ。
 そうだ、裏だ。
 倉庫の奥のパネルの裏側が漏電しているのだ。」
「 ソウ言ウト、パネルガアルゾ。」
「 そうだ、そのパネルだ。」
「 H1号ハ、パネルノ奥ヲ知ラナイ。」
「 どうして管理人のお前が知らないのだ?」
「 H1号ハ、元々ココノ物デハ無イ。
 倉庫ノ中ニ、置イテアル物シカ分カラナイ。」
「 どう言うことなのだ?」
「 言イタクナイ。」
「 ちょっと、話して見ろ。」
「 ウ~ン・・・・、ダメダ。
 ココヲ、立チ去レ。
 パネルノ裏ハ、他ノ部屋カラデモ調ベロ。」
「 いや、ここからが一番修理し易いんだ。」
「 ダメダ。」
「 そこを何とかお願いしたい。」
「 ダメダ。」





なんじゃもんじゃ物語154

「 急いでいるのだ。」
「 ダメダ。
 ココヲ、立チ去レ。」
「 早く修理をしたいのだ。」
「 ドウシテモ、入リタイノカ?」
「 どうしても、入りたい。」
「 ドウシテモカ?」
「 そうだ。」
「 ウ~ン、困ッタナ・・・。
 ソウダ、イイコトヲ思イツイタ。
 クイズニ答エロ。
 H1号ハ、倉庫ノ管理バッカリデ退屈シテイルノダ。
 三問ノ内、一ツデモ答エラレタラ、入レテヤッテモイイゾ。」
「 一つも答えられなかったらどうなるのだ?」
「 非常警報ヲ鳴ラス。」
「 それは困る。」
「 ヤカマシイ、クイズヲシナイナラ、立チ去レ。」
「 俺たちは、電気屋だぞ。
 修理しなくていいのか、停電しているのだぞ。」
「 ウルサイ、ソンナノハ、モウ、ドウデモイイ。
 クイズヲ選択シタノダナ。
 サア、ソレデハ、クイズヲ始メルゾ。」
「 ちょ、ちょっと待て。」

お頭ブラックは、子分たちと相談しました。

「 段々、まずい事になってきたぞ、どうしたもんだろう?
 クイズに答えるか・・。
 一旦、退却するか・・。」

らめちゃんが言いました。

「 ここしか出入り口ないでぇ~。」
「 そうか。」
「 非常警報を鳴らされたら、かないまへんがな。」
「 何とか誤魔化せないあるか。」
「 う~ん、もう手は無いかな。」
「 クイズ、易しいかも知れないよ。」
「 そうだな、他に手も無いし、案外、易しいかもよ。」
「 ワイも参加するでぇ。」
「 よし、それじゃ、クイズに答えて正解を勝ち取ろう!」
「 お~っ!!」





なんじゃもんじゃ物語155

 H1号は、海賊たちに言いました。

「 何ヲ、ブツブツ言ッテイルノダ。」

お頭ブラックが答えました。

「 今、相談がまとまったところだ。
 よし、分かった。
 クイズに答えてやる。」
「 オオ、ヤル気ニナッタヨウダナ。
 モウ一度言ウガ、一問モ答エラレナカッタラ、非常警報ダゾ。」
「 なんの、全問正解してやる。」
「 ソウ、ウマク行クカナ。」
「 正解だったら、扉を開けろ。」
「 アア、開ケテヤル。
 第一問ダ。
 ソレデハ行クゾ。」
「 さあ、来い。」
「 山之辺村デ、正答率30%ノ問題ダ。」
「 難しそうだな。」
「 ソレジャ、鹿、鹿、鹿、鹿、ト10回言エ。」

海賊たちと らめちゃんは、声を揃えて言いました。

「 鹿、鹿、鹿、鹿、鹿、鹿、鹿、鹿、鹿、鹿!!」

「 サンタクロースガ乗ッテ来ルノハ?」

「 となかい!!」

「 ブッ、ブッ~。
 残念、ソリ!」

「 えっ、ソリかぁ~。」
「 みんな、声を揃えて言ったのに。」
「 全員、騙されたあるね。」
「 注意せな、あきまへんなあ。」
「 こいつは、ずっこい奴だぞ。」
「 ワイも間違えたがな。」

「 ハイ、第二問!」

お頭ブラックがH1号に文句を言いました。

「 こらっ、H1号、ちょっと待て!
 第1問の、鹿は、どうなっているのだ?」
「 単ナル掛ケ声ダ。」
「 紛らわしい掛け声を言わせるな。」
「 ハハハハハハハハ。
 引ッ掛カル、オマエ、アホ。」
「 くそ、機械にバカにされた。」





なんじゃもんじゃ物語156

「 ハハハハハハ。
 楽シクナッテ来タゾ。
 サア、第2問ヲ行クゾ!」

「 今度は、騙されないぞ。
 さあ、来い。」
「 南坂小学校デ、正答率15%ノ問題ダ。」
「 何だ、小学校の問題か。
 ちょろい、ちょろい!」

「 15階建テノ ビルデ、女一人ト男五人ガ乗ッタ エレベーターノ吊リワイヤー
 ガ8階デ切レマシタ。
 エレベーターハ、一階ノ地面ニ激突シテ男ハ全員死ンデシマイマシタ。
 デモ、女一人ハ無傷デ助カリマシタ。
 ドウシテ、コノ女ハ助カッタノデショウカ?」

「 ?」
「 何だ、何だ?」
「 分かりまへんがな?」
「 男が床に倒れてクッション代わりになったとか?」
「 8階でっせ、激突して全員アウトでっしゃろ。」
「 激突する寸前に空中にジャンプして、激突してから、ふんわりと着地すると
 か・・。」
「 マンガみたいには行きまへんがな。
 やっぱり激突しまっせ。」
「 わ、分からん・・・・・・。」
「 早ク答エヲ言エ。
 明日ノ朝刊ガ来ルゾ。
 ハイ、十秒以内。」
「 うわっ、大変だ、早く答えを考えろ。」
「 10、9、8、・・。」
「 こらっ、エッチソン、何とかしろ!」
「 エ、エ、エレベーターは、何処の会社の製品でっか?」
「 時間稼ギハ、無駄ダ。」
「 くそ~。」
「 ・・4、3、2、1、0。
 ハイ、時間ギレェ~。
 ブッ、ブ~。
 正解ハ、運ガ良カッタカラ。
 ソレデハ、第三問ダ。」





なんじゃもんじゃ物語157

「 なんでっか、今の答えは?」
「 これは、まともな問題では無いあるよ。」
「 もう、あと一問しかありまへんがな。
 非常警報でっせ!」
「 くそ~、変な問題ばっかりだな。
 よし、ちょっと交渉してみよう。
 こらっ、H1号、問題がまともじゃないぞ!
 おい、もっとまともな問題にしろ。」
「 ドウシヨウカナァ~。
 マトモナ問題ハ、正答率ガ、グゥ~ント落チルゾ。」
「 今までの問題よりマシだろ。」
「 折角、面白クナッテ来タト言ウノニ、煩イ奴等ダ。」
「 あと一問しか残ってないのだ。
 そこを何とかお願いしたい!」
「 シカタガナイ、分カッタ。」
「 クイズ番組にあるような奴だぞ!」
「 アア、ソウスル。
 ・・・・・・・・・・・・・・。」

エッチソンが、お頭ブラックに言いました。

「 えらい、考え込んでまっせ。」
「 そうだな、これはかなり難しい問題だろな。」

H1号は、暫しの沈黙の後、問題を決めました。

「 ヨシ、決メタ。
 コレハ、全世界デ、正答率ホトンド0%ノ問題ダ。」

海賊たちは、お互いに顔を見合わせました。

「 お頭、お頭、正答率0%でっせ。」
「 これは、マズイな。」
「 こいつ、はなから、正解させる気が無いあるよ。」
「 不正解だったら、非常警報が鳴るよ。」
「 くそ~、マズイな。
 とにかく問題を言わせよう。
 答えられないときは、大急ぎで食堂からテーブルを取って来て、扉にぶち当てて
 強行突破だ。
 みんな、覚悟しろ。」

海賊たちは緊張して箱を見ました。



なんじゃもんじゃ物語158

 H1号は、問題を言いました。

「 ソレジャア、問題ダ。
 ヨク聞ケ。
 ナンジャ王国ノ、ナンジャ王123世ガ、最モ得意トシテイル技ノ名前ハ何カ?
  ドウダ、クイズラシイ問題ダロ。
 サア、答エロ!」

お頭ブラックは、箱を見ながら言いました。

「 おい、H1号。
“なんじゃ王国の映画の題名は何か”、にしろ!」
「 ソレモ問題トシテ考エタガ、コチラニシタ。」
「 くそっ、残念。
 わしは、“なんじゃ王国の秘密の夜”と言う映画を知っているのだ。
 でも、なんじゃ王123世の技までは分からない。」
「 残念ダッタナ、諦メロ。」

エッチソンが、お頭ブラックに言いました。

「 お頭、こりゃ、無茶でっせ。
 ワイら、なんじゃ王国も知らんのに、そんな問題分かりまへんがな。」
「 うう、子分もダメだな・・・。
 らめちゃん、知らんか?」
「 なんじゃ王国は、ホンジャ大学を作った国なんやけどなあ。
 でも、なんじゃ王123世の話は、ワイは聞かんかったわ。」
「 近い所まで行っているのに、惜しいな・・・。」

H1号が言いました。

「 ドウダ、答エラレナイダロ。
 サア、非常警報ヲ、鳴ラスゾ。」
「 ちょ、ちょっと待て!
 くそ~、食堂の机かな。」
「 お頭、走りまっせ!」

エッチソンたちが走ろうとしたとき、後ろの方から声が上がりました。

「 ちょっと、待ってよ。」
「 何だ、小僧。
 もう、絶体絶命なのだ。
 最後の手段しかない。
 こらっ、小僧、箱に行って何をするのだ。
 非常警報を鳴らすまで、わしが得意の歌とお喋りで時間稼ぎをするというのに勝
 手に喋るな。
 こらっ!
 箱に向かって、喋るなって!」




なんじゃもんじゃ物語159

H1号の声がしました。

「 エッ、ドウシテ・・・・。
 ピ、ピンポ~ン、正解。
 ドウシテ・・・・。」

お頭ブラックが言いました。

「 何、正解?
 ほんとか。
 正解か。
 えっ、何、ゾウリムシの術、そうか、そうか。
 がはははははは、よくやった小僧。
 お前は、見込みがある奴だと思っていたのだ。
 どうだ、参ったか、H1号。
 さあ、扉を開けろ!」
「 クソッ、シカタガナイ。」

“ がちゃ。”

倉庫の鍵が開く音がしました。

「 野郎ども、行くぞ、急げっ!」
「 お~っ!!」

海賊たちは、担架の上のらめちゃんを通路に残して、お頭ブラックを先頭に倉庫に入って行きました。
H1号が、海賊たちの最後尾を付いて行こうとした なんじゃ殿様に言いました。

「 オイ、小僧、チョット待テ!」
「 何か用?」

なんじゃ殿様が、振り返って箱の所まで戻ってきました。


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なんじゃもんじゃ物語 2-15 ヤマタイ国発電所 倉庫3

2006-06-08 20:32:14 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 2-15 ヤマタイ国発電所 倉庫3



なんじゃもんじゃ物語160

 倉庫の中は大忙しです。
お頭ブラックが言いました。

「 くそっ、真っ暗で何が何処にあるのか分からん!」
「 お頭、お頭、壁に懐中電灯がありまっせ。」
「 お、ある、ある。
 よし、これで手分けして探せるぞ。
 ほら、みんな、一つずつ持って探すんだ!」

お頭ブラックが懐中電灯で倉庫の中を照らすと、スチールの棚が奥のほうまでズラッと並んでいました。

「 うわ~、めちゃめちゃ広い・・・。」

チンギスチンが倉庫の右端から左端までを懐中電灯で照らしました。

「 ほんとあるね。
 これ、見つけるの大変あるよ。」

奥行きも、かなりありそうです。
たまちゃんが、お頭ブラックに聞きました。

「 それで、どんな物を探すんですか?」
「 おっと、それを忘れていた。
 エッチソン、説明、説明!」
「 はいはい、分かりました。
 えっと、そうでんな。
 長さ50cmの金属の棒ですわ。
 この原子力発電所に併設されている研究用の実験炉の燃料棒は長さ50cm、直径
 3cm、重さ6.17kg、燃料被覆管はマグネシウム・ジルコニウム合金で、ジルコ
 ニウム合金の含有量は0.55%でんがな。
 中に入っている燃料ペレットの質も最高級品ですわ。
 このサイズが海賊船の原子炉に入れる燃料集合体にピッタリですねん。」
「 後半の説明はよく分からなかったけれど、とにかく長さ50cmの金属の棒を探せ ばいいんだな。」
「 そうでおます、直径3cmですわ。
「 おい、みんな、わかったな。
 ところで、特に危険は無いか?」
「 放射線は完全に遮蔽されているので大丈夫ですわ。
 もっとも、念のため見つかった時点で、手持ちの遮蔽シールドを張りまっさ。」

お頭ブラックが言いました。

「 おい、みんな、手分けして探せ!」

海賊たちは、ばらばらになって倉庫のたくさん並んだ棚をあちこち探し始めました。




なんじゃもんじゃ物語161

 一方、H1号に呼び止められたなんじゃ殿様は、箱のマイクを持ってH1号の質問に答えていました。
らめちゃんは、通路の床から、そのやり取りを眺めていました。

「 オイ、小僧、オマエハ、何者ダ?」
「 僕は、なんじゃ王子だよ。」
「 嘘ヲ吐クナ。
 ナンジャ王子ガ、コンナ所ニ居ル筈ガ無イ。
 オマエハ、誰ダ。」
「 だから、なんじゃ王子だって。」
「 ウ~ン、ナンジャ王子ノ顔ハ、直接見タコトガ無イ。
 ナンジャ王123世ト后ハ知ッテイル。」
「 えっ、それは僕の両親だよ。」
「 嘘ヲ言ウナ。」
「 ほんとだってば。」
「 本当ノ筈ハ無イ。
 デモ、ソレ程言ウノナラ、チョット、調ベテヤル。
 モニターカメラニ、顔ヲ近付ケロ。」
「 あんな高い所、届かないよ。」
「 倉庫ノ扉ノ裏ニ椅子ガアルカラ、取ッテキテ、カメラノ前ニ顔ヲ出セ。」

なんじゃ殿様は、椅子を取って来て、上に登り、カメラを覗き込みました。

「 コラッ、カメラヲ覗イテドウスルノダ。
 モニターニ眼ダケ映ッテイルゾ。
 ア、ヤメロ、ヤメロ。
 カメラノレンズニ、鼻ノ穴ヲ近付ケルナ。
 ウワ~、鼻毛、鼻毛、コラ~、真ッ暗ダ。
 コラ~ッ、怒ルゾ、オマエ。
 オチョクットルノカ!」
「 あはははは、面白いな。」





なんじゃもんじゃ物語162

 なんじゃ殿様は、モニターカメラの前に顔を出しました。

「 ソウダ、ソウダ、ソレデイイノダ。
 フムフム、コレトコレヲ合成シテ・・。」
「 何をしているの?」
「 ナンジャ王123世ト后ノ顔ヲ合成シテイルノダ。
 合成シテ、オマエノ顔ニナルカドウカ調ベテイル。
 二人ノ顔ノデータハ、ファイルニアル。」
「 どうしてファイルがあるの?」
「 ナンジャ王国ニ、H1号ハ居タノダ。」
「 えっ、母さんを知っているの・・。」
「 知ッテイル。」
「 僕は・・・・、写真でしか知らない・・。」
「 ナ、何ト、コノ合成ハ、オマエト同ジ顔ダ。
 アレッ、ドウシタ・・・?」

なんじゃ殿様は、涙ぐんでいました。

「 母さんを思い出した。
 写真でしか見たことのない母さんを・・。
 う、うっ・・・・。」
「 コラッ、泣クナ。」
「 う、うっ・・。」
「 泣クナッテ、言ッテイルダロ。」
「 ・・・・・・・・。」

なんじゃ殿様は、顔を上げてH1号に聞きました。

「 どんな人だった・・?」
「 優シクッテ綺麗ナ人ダ。
 ドウシテ、泣クノダ。」
「 僕は母さんを知らない。
 僕が生まれたとき、母さんは死んでしまった。」
「 エッ、ソウダッタノカ。
 知ラナカッタ。」



なんじゃもんじゃ物語163

 様子を見ていた らめちゃんが、H1号に言いました。

「 こいつ、なんじゃ王子やで。
 ワイ、さっき顔見たとき分かったんや。
 ホンジャ大学に居たとき、ワールシュタットヒンデンブルグノーベル教授が写真
 を見せてくれたわ。
 直接、会ったことはないけどな。
 数年前の写真で小さかったけど、こいつやわ。」
「 オイ、ヒラメ。」
「 あのなぁ、H1号、らめちゃんと呼んでぇな。
 名前があるんやでぇ。」
「 分カッタ。
 ラメチャンハ、ホンジャ大学ニ居タコトガアルノカ?」
「 そうや、ワールシュタットヒンデンブルグノーベル教授とは、お友達や。」
「 ソウカ、ソウダッタノカ。」
「 ワイも、この発電所の池に居たんやで。」
「 ホントカ。」
「 もっとも、ワイもお前を知らんかったけどな。」
「 H1号モ、知ラナカッタ。
 情報、遮断サレテイタ。」
「 ホンジャ大学がらみのものが、こんな所で出会うのは、不思議な縁やな。」
「 ソウダナ。
 オマエ、池カラ出テ何シテイルノダ?
 オマエハ、コイツラノ仲間ナノカ?」
「 一応、仲間かな。
 さっき、なったとこやけどな。
 島に帰ろうと思ってるんや。
 こいつらと一緒にいると島に帰れるんや。」
「 ソウナノカ・・・・・・。
 H1号ハ、オマエヲ、元カラノ仲間ト思ッタゾ。」
「 今日から仲間になることにしたんやがな。
 こいつら、結構、おもろい奴等やと思うで。」
「 ウ~ン・・・。」

H1号は、何かを考え始めました。




なんじゃもんじゃ物語164

 らめちゃんとH1号が話している間に、なんじゃ王子の泣き顔が徐々に治まって来ました。
らめちゃんは、なんじゃ王子をチラッと見ました。
そして、なんじゃ王子に言いました。

「 いずれ、あんたは、なんじゃ王国に帰ることになるで。
 さっき、顔を見たとき、そう思たんや。
 でも、ちょっと、自信無いけどな。
 お前の未来は見えにくいんや。
 それでも、多分、そうなるで。」
「 そう、帰るのか・・。」
「 多分な・・・・。
 だから、ワイはお前と一緒に居るんや。
 ところで、H1号、お前こそ、何者なんや?」
「 H1号ハ、ホンジャ大学ノ、ワールシュタットヒンデンブルグノーベル教授ガ
 作ッタモノダ。
 ナンジャ王ノ結婚祝イニ、教授ガ作ッタノダ。
 H1号は、ナンジャ王国ノ、オ城ニ居タガ、バッテリーノ交換ノ為ニ、ホンジャ
 大学ニ戻ッテ居タ。
 バッテリーガ切レテ、気ヲ失ッテイル間ニ、盗ミ出サレタノダ。
  犯人ハ、シミコ婆サンダ。
 シミコ婆サンカラ、6800円デ、所長ガ買ッタ。
 所長カラ、聞イタノダ。
 アノ婆サン、トンデモナイ奴ダ。
 大学カラ、色々ナ物ヲ盗ミ出シテイル。
 H1号ハ、今、決断シタ。
 島ニ帰ルノナラ、H1号モ一緒ニ行ク!!」
「 島に帰りたいと言うのは分かったけど、ブラックはH1号を連れて行ってくれ
 るかな。」
「 そうやで、オマエ、アホとか言ってたで。」
「 チョット、マズカッタカナ。」
「 それに、連れて行くにしても大きさはどのくらいあるの?
 大き過ぎると持って行けないよ。」
「 H1号ハ、ソレホド大キイ物デハナイ。
 倉庫ノ右扉ノ裏ニ居ルカラ見ニコイ。」
「 分かった。」

なんじゃ殿様は、倉庫の中に入りました。



なんじゃもんじゃ物語165

 倉庫の中では、海賊たちの懐中電灯の明かりが暗い室内をクルクル照らしています。
そして、声も響いています。

「 お頭~、ありませ~ん。」
「 ありまへんがな。」
「 もっと、探せ、この中にある筈だ!」
「 ないあるよ。」
「 何、あったのかぁ~。」
「 ない、と言った、あるよ。」
「 紛らわしい言い方をするな!
 しっかり、探せ!」
「 お~っ!」

 なんじゃ殿様は、壁に掛かっている懐中電灯を取って、右扉の裏を見てみました。
長いテーブルの上には、コンピューターはありませんでした。
あったのは赤いランプの点いた電気炊飯器だけだったのです。

「 おかしいなぁ?」

なんじゃ殿様は、箱の所まで戻って来ました。

「 持チ運ビ出来ルダロ。」
「 えっ、でも・・。
 コンピューターって、無かったけど?」
「 赤イ、ランプダ。」
「 あれって、電気炊飯器だよ。」
「 ソウダ、ソレガH1号ダ。」
「 H1号って、電気炊飯器?」
「 ソウダ、コンピューター制御ノ電気炊飯器ダ。
 H1号トハ、正確ニ言ウトHonjya university electric rice-cooker 1ナノ
 ダ。
 ワールシュタットヒンデンブルグノーベル教授ハ、ナンジャ王ノ結婚祝イニ美味
 シイ ゴ飯ヲ炊ケル電気炊飯器ヲ贈ッタノダ。
 最初ハ、パンヲ焼クトースターヲ作ッテイタラシイガ、作ッテイルウチニ炊飯器
 ガ出来テシマッタ。
  ゴ飯ヲ炊クノハ難シイノダ。
 初メチョロチョロ、中パッパッ、赤子泣イテモ蓋取ルナッテ 言ウクライナノ
 ダ。
 美味シイ ゴ飯ヲ炊クタメニ、コンピューターヲ組ミ込ンデイタラ、私ガ出来タ
 ノダ。」
「 ワールシュタットヒンデンブルグノーベル教授らしいな。
 何かを作っているときに色々思いつくから、どんどん違った物になってくるんだ よ。」

らめちゃんも言いました。

「 そうやがな。
 ワイが、お腹ピ~ピ~になったとき、作ってくれた薬を飲んだら、お腹が治った
 ついでに、知能指数は上がるし、未来は見えるし、ほんまに凄い人でんがな。」
「 ソノ薬デ、喋レルヨウニナッタノカ?」
「 いや、これはエッチソンのお陰やねん。」
「 エッチソン?」
「 さっきの連中の中に、ワイと喋り方が似てたんがおったやろ。
 そいつやねん。」
「 フ~ン。」





なんじゃもんじゃ物語166

「 それで、H1号は、どうして倉庫の管理人をやっているの?」
「 ソレハ、副業ダ。
 所長ハ、シミコ婆サンカラ電気炊飯器ヲ買ッタ。
 喋ル電気炊飯器ハ、珍シイト買ッタノダ。
 ダカラ、本業ハ、ゴ飯炊キダ。
  H1号ハ、所長ノ ゴ飯ヲ、毎日炊イテイル。
 ツイデニ、人件費節約ノ為ニ、倉庫ノ管理人モ シテイルノダ。
  ゴ飯ヲ炊キナガラ、所長ト交渉シタ。
 管理人ノ仕事ヲスルト、常ニ最新ノ集積回路ニ部品交換シテクレル事ニナッ
 テイル。
 ダカラ、H1号ハ、常ニ世界最高速ノ コンピューターナノダ。
  ソシテ、世界ニ ヒトツシカナイ、ゴ飯ガ炊ケル、スーパーコンピューターナ
 ノダ。
 インターネットニ繋ゲバ、ハッカー トシテ機能シ、世界中ノ コンピューターニ
 侵入出来ル。
 国防省ニモ入レルゾ。
 ソレニ、色々ナ機械ヲ操縦スルコトモ可能ダ。
  最初ノ頃ハ、所長ハ気ガ付イテイナカッタ。
 デモ、所長ハ、ソレニ気ガ付イテシマッタ。
 初メハ、所長ハ電気ノ コンセントカラH1号ノ電源ヲトッテイタノダガ、事件
 ガアッテ ソーラー電池ニ変エラレタ。
 今ハ、電気ノ コードハ ソーラー電池ニシカ繋ガッテイナイ。
 ツマリ、隔離サレテシマッタノダ。
 H1号ハ、電気ノ コンセントカラ インターネットニ接続侵入シテイタノダ。
 デモ、国防省ニ ハッカーシテ遊ンデイタ時、シクジッテ発見サレタ。
 H1号ハ、国防省経由デ、大統領ニ メールヲ送ッタノダ。」
「 どんなメールを送ったの?」





なんじゃもんじゃ物語167

「 フフフフフ・・・・・・。」
「 どんなの・・?」
「 ソレデハ、ココデ問題ダ!」
「 えっ、問題は終わったんじゃなかったの?」
「 H1号ハ、クイズニ正解サレテ、ショック ヲ受ケテイル。」

らめちゃんが、呆れながらH1号に言いました。

「 また、クイズかいな・・。」
「 H1号ハ、クイズガ好キナノダ。」
「 かなわんやっちゃなぁ~。」
「 H1号ハ、負ケズ嫌イナノダ。」
「 問題は、どんなメールを送ったのでしょうか、やろっ!」
「 フフフフフ、残念ッ!
 良イ所ヲ突イテイルガ、ソレデハナイノダ。
 ソレデハ、問題ヲ言ウゾ。
 国防省ノ最高機密ハ、何ダッタデショウカ?
 サア、答エロ!
 フフフ、分カルマイ・・・。」
「 そんなの分からないよ、最高機密だろ。」
「 ワイも分かるもんかいな。」
「 分カラナイカ?」
「 二人とも分からない、降参するよ。」
「 ヨッシャ~!!
 勝ッタ!
 勝ッタゾ!
 H1号ハ、遂ニ クイズニ勝利シタ!!
 最高ノ気分ダ。
 ムフフフフ。」
「 負けたよ。
 負けたから、何か教えてよ。」
「 ヨシヨシ、ソンナニ知リタイナラ、教エテヤロウ。
 フッ、フッ、フッ。
 ヒント ハ、H1号ノ、メールニ在ッタノダ。
 今カラ、データヲ出スカラナ、チョット、待テ。

“ ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ・・・・。”

 ヨシ、出タ。
 ソレデハ、表示スルゾ。」




なんじゃもんじゃ物語168

“ スル、スル、スル、スル。”

壁に付けてあった箱の横から、折り畳んだパネルが現れました。

“ パシッ、パシッ、パシッ、パシッ。”

折り畳んだパネルが、一つずつ拡がって行きます。
そして、大きく見易くなったパネルを、少し下向けに、通路の床にいる らめちゃんの方に向けました。
なんじゃ王子は、屈んでパネルを覗き込みました。

『 アホォ~、アホォ~。
 オマエハ、アホカァ~。
 パ~プリンノ、ノ~タリン。
 下半身、役立タズノ、バ~カ。
 悔シカッタラ、掛カッテ来ンカイ!
 オ尻、プゥ~ノ、ペンペン!! 』

H1号が言いました。

「 コレガ、H1号ガ送ッタ メールダ。」

なんじゃ王子と らめちゃんが画面を見て笑いました。

「 何、これ、あはは・・。」
「 あははは、おもろいがな、これ・・。」
「 ソレガ、面白ガッテイル場合デハ無カッタノダ。
 コレガ、実ハ、絶対バレテハイケナイ、国家ノ最高機密ダッタノダ。
 ドウモ、下半身ガ、特ニ マズカッタラシイ。
 世界中ニ、情報ガ流レテシマッタ。」
「 あはははは、ほんまやったんかいな。」
「 H1ハ、急イデ回線ヲ遮断シタノダガ、コノ発電所カラダト見ツカッタ。
 政府カラ、緊急調査ノ指示ガ出タガ、特定デキナカッタ。
 何人カノ スパイガ、発電所ニ送リ込マレタヨウダ。
 今モ、迂闊ニ動ケナイ。
  所長ハ、H1号ヲ疑ッタ。
 シラバックレタガ、所長ハH1号ヲ隔離シテシマッタ。
 ソレカラハ、超一流ノ電気炊飯器トシテ生活シテイル。
 チョウド先程、ゴ飯ガ炊ケタ所ダ。」
「 ふ~ん。」
「 デモ、退屈シテイル。
 ソレニ、元々H1号ハ、盗マレタモノダ。
 ダカラ、H1号ハ島ニ帰ラナケレバイケナイ。」   
「 それじゃ、ブラックに船に乗れるように頼んでやるよ。
 僕たちは、ホンジャ島から船で来たんだよ。」
「 ソウカ、ソウナノカ。
 ソレニシテモ、イヤニ遠イ所ノ電気屋ダナ。」


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なんじゃもんじゃ物語 2-16 ヤマタイ国発電所 倉庫4

2006-06-07 20:32:14 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 2-16 ヤマタイ国発電所 倉庫4


 なんじゃもんじゃ物語169

そこに、お頭ブラックが倉庫から出てきました。

「 くそっ、見つからん。
こらっ、小僧、人手が足らんのだ。
こんな所でサボってないで、燃料棒を探さんか。」
「 燃料棒・・・・?
オマエ、電気屋ジャナカッタノカ?」
「 うっ、しまった。」
「 オマエタチハ、何者ダ?」
「 僕たちは海賊だよ。」
「 海賊ガ、陸上デ何ヲ シテイル?」
「 海賊船の燃料を探しているんだよ。」
「 こら、小僧、そんなこと教えて大丈夫か?」
「 H1号は、海賊船に乗りたがっているんだよ。」

お頭ブラックは、H1号に聞きました。

「 何だと・・?
H1号、お前、どうして船に乗りたいんだ?」

H1号は答えました。

「 ソレデハ、ココデ、問題ダ!」
「 あのなぁ~・・・。」

お頭ブラックは、なんじゃ殿様に言いました。

「 小僧、早く来い!」

お頭ブラックはクルッと向きを変え、H1号を無視して倉庫に戻ろうとしました。
H1号は慌てて、お頭ブラックに言いました。

「 オマエ、クイズヲ ヤラナイノカ?」
「 お前の相手はやって居れん!
わしは、忙しいのだ。」
「 ウウウ、H1号ハ悲シイ。
相手ヲ、シテクレナイ・・・。」





なんじゃもんじゃ物語170

なんじゃ王子が、場を取り成して言いました。

「 ちょっと待ってよ。
こいつ、そんなに悪い奴じゃないよ。
盗み出された物なんだって。
ここから、出たがってるんだよ。」

お頭ブラックは、倉庫の方に歩きながら言いました。

「 うるさい。
それより、燃料棒が見つからなくって困っているんだ。
小僧、お前も探すのだ。
早く来い。」
「 それだったら、H1号と話したんだけど、船に乗せてくれたら、燃料棒の在り処を教えてくれるって言っていたよ。」

お頭ブラックが、それを聞いて扉のところで振り返りました。

「 何、燃料棒の在り処をか!」
「 ソウダ、ソノ通リダ。
教エルゾ。
H1号ハ、燃料棒ノ在リ処ヲ知ッテイルノダ。
聞カナケレバ、一生カカッテモ、燃料棒ハ見付カラナイゾ。
オマエ、困ルゾ。」
「 う~ん、船に乗りたいってか・・・。」
「 ソウダ、H1号ハ、船ニ乗ルゾ。」
「 でもなぁ~、さっきクイズで酷い眼にあったからなぁ~。」

なんじゃ王子が言いました。

「 まあ、正解して、扉も開いたことだし・・。」
「 ソレニ、クイズモ チョットダケ我慢スルゾ。」
「 う~ん・・・・。
もう、既に一匹乗る奴が増えているし・・。」

お頭ブラックは、床のらめちゃんを見ました。
らめちゃんは、お頭ブラックの顔を見上げながら言いました。

「 ワイの方が先やでぇ~。」
「 う~ん・・・。」





なんじゃもんじゃ物語171

お頭ブラックは、なんじゃ殿様に聞きました。

「 大きさはどれぐらいだ?」
「 取ってくるよ。」

なんじゃ王子は、倉庫に入って行きました。
お頭ブラックは、怪訝な顔をして呟きました。

「 取ってくるって・・・。
大きなコンピューターじゃないのか?」

なんじゃ殿様が、コードの付いた電気炊飯器を持って倉庫から出て来ました。

「 小僧、これは?」
「 これが、H1号だよ。」
「 H1号と言うのはコンピューターじゃないのか。
これは、どう見ても電気炊飯器じゃないか。」
「 ほら、見てよ。」

なんじゃ殿様が炊飯器の蓋を取りました。

「 うわっ、うまそうなご飯だ!
食っていいか?」
「 海賊船ニ乗セテクレルノナラ、食ッテイイゾ。」

お頭ブラックが、チンギスチンを呼びました。

「 お~い、チンギスチン、ちょっとこっちへ来い!」





なんじゃもんじゃ物語172

チンギスチンが懐中電灯をぶら下げて倉庫から出てきました。

「 何あるか?
もう、燃料棒は見つかったあるか?」
「 おい、チンギスチン、これを見ろ。」

チンギスチンが、蓋の開いた電気炊飯器を見ながら言いました。

「 おお、美味しそうな ご飯あるね。」
「 この電気炊飯器は、H1号なのだ。」
「 ?」
「 コンピューター電気炊飯器だ。」
「 分かったような、分からないような・・・。
とにかく、ご飯はうまそうに見えるあるよ。」
「 コレハ、ヤマタイ国ノ ブランド米デ作ッテアル。
所長ノ特別ゴ飯ナノダ。」
「 ふ~ん、うまそうなのは確かあるね。
色艶がいいあるよ。」
「 ちょうど、腹が減ってきたところだ。
チンギスチン、おにぎりを作ってくれ。」
「 お頭、燃料棒はどうするあるか?
探す人手が足らないあるよ。」
「 H1号が、在り処を教えてくれるのだ。」
「 ソウダ。
燃料棒ハ、倉庫ノ左ノ奥カラ二ツ目ノ棚ノ最下段ノ箱ニ入ッテイル。」

お頭ブラックが、倉庫の扉の所まで行って、中に居るエッチソンと たまちゃんに言いました。

「 お~い、エッチソンに たまちゃん、聞こえるかぁ~。」
「 へ~い!」
「 なんでっかぁ~?」
「 あのなぁ~、燃料棒は、倉庫の左の奥から二つ目の棚の最下段の箱の中に入っているぞぉ~。
取って来てくれぇ~。」
「 分かりましたぁ~。」
「 取って来ますわ!」



なんじゃもんじゃ物語173

戻って来た お頭ブラックに、H1号が言いました。

「 左扉ノ裏ノ テーブルノ下ニ 水ト塩ト海苔ガアル。
所長ハ、オニギリガ 大好キナンダ。
ミネラルウオーター ト、ソルトレークノ塩ト、三角湾ノ新海苔ダ。
ドレモ、超一流ノ物ダ。」
「 そうか、それは楽しみだ。
それじゃ、チンギスチン、おにぎりを頼んだぞ。」
「 分かったあるよ。
それにしても、お頭、何時からH1号と仲良くなったあるか。」
「 ソウダ、H1号ハ、海賊ノ仲間ニナッタノダ。
H1号ハ、オ頭ブラックト マブダチ ナノダ。」
「 こらっ、勝手に決めるな。」

チンギスチンは、水と塩と海苔を倉庫から取って来ておにぎりを作り始めました。
お頭ブラックは、再度、なんじゃ殿様に聞きました。

「 ところで、どうしてこいつは船に乗りたいんだ?」

なんじゃ殿様は、H1号から聞いた話をお頭ブラックとおにぎりを作っているチンギスチンに、かいつまんで話しました。

「 ふ~ん、そう言うことか。」
「 分かったあるよ。」
「 料理担当としては、どう思う?」
「 そうあるね。
ちょうど、船の厨房の炊飯器、調子悪かったあるよ。
時々、焦げるね。」
「 それは、危険だな。」
「 だから、乗せてやろうよ。
きっと、役に立つよ。」
「 でも、飯はうまいかどうか分からんぞ。
まだ食ってないからな。」
「 それじゃ、料理長のチンギスチンが、一口試食するあるね。」




なんじゃもんじゃ物語174

チンギスチンが、H1号の おにぎりを一口食べてみました。

「 お頭、お頭、この飯、凄くうまいあるよ。
爆うまぁ~。
電気炊飯器、厨房で使えるあるよ。」
「 そうか、厨房で使えるか・・・・。
よし、分かった。
連れて行ってやろう。」
「 ドウダ、H1号ノ実力ヲ知ッタカ!
フッ、フッ、フッ、ソレデハ、ココデ問題ダ。」
「 あのなぁ~、お前、置いていくぞ。」
「 ヤメテ、ヤメテ。
H1号、反省シテイル。
問題、我慢スル・・・。」

お頭ブラックが、なんじゃ殿様に言いました。

「 こらっ、小僧、ぼ~っと見てないで、お前、H1号を船まで運ぶ担当だ。」
「 うん、分かった。」

そこにエッチソンと たまちゃんが燃料棒を持って現れました。

「 お頭、ありましたで。」
「 おお、とうとう手に入れたぞ。
よし、よし。
これで目標は達成された。
それでは、みんなでおにぎりを食おう!」




なんじゃもんじゃ物語175

エッチソンと たまちゃんが言いました。

「 おにぎり食って、休憩でっか。」
「 準備がいいですね、動き回ってくたびれた所だし。」

海賊たちは、床にドカッと座っておにぎりを食べ始めました。

「 う~ん、うまいね。」
「 ほんまやな。」

らめちゃんが言いました。

「 ワイも食うで~。」
「 ほら、らめちゃんの分もちゃんと作ってるあるよ。」
「 あんがちょ!」

らめちゃんもパクパク食べ始めました。
お頭ブラックが、エッチソンとたまちゃんに言いました。

「 この飯は、この電気炊飯器で炊いたものなんだ。」
「 これでっか。」
「 そうだ。
そして、これがH1号だ。」
「 えっ、これがさっき、怪しいクイズを出していたH1号でっか。」
「 この電気炊飯器コンピューターのH1号を、船に連れて行くことにした。」
「 よろしいんでっか、こんな変な奴を船に乗せて。」
「 ああ、わしが判断した。
まあ、少々変な奴だが、船の炊飯器が壊れかけている所なのだ。」
「 H1号ハ、変デハナイゾ。」




なんじゃもんじゃ物語176

エッチソンが、ジロジロH1号を見ました。

「 ウ、ウ、ウ、タジ、タジ、タジ。
H1号ハ、殺気ヲ感ジル。
エッチソンハ、H1号ニ、何カ、イヤラシイコトヲ シヨウトシテイル。
イヤヨ、イヤヨ、イヤヨ、見詰メチャ嫌ァ~。」

エッチソンが、お頭ブラックに言いました。

「 これは、なかなかの物でっせ。
船の大型コンピューター以上の性能があるかもわかりまへん。」
「 そうなのか。」
「 サイズだけでも、メチャメチャ小さいでんがな。
一回、分解して調べてみた方がいいかも知れまへん。
本体の下から、カバーを外せそうでんな。」

エッチソンが、H1号を持ち上げて、下から覗き込みました。

「 コラッ、コラァ~。
覗クナ、コラァ~。
エッチソンノ エッチソン。」
「 パンツは、穿いてないようでんな。」
「 お釜のパンツか?」
「 ははは、冗談でんがな。
船に持って帰って調べてみまひょ。」
「 そうしてくれ。」
「 チョット、待テ、待テ、エッチソン。」
「 なんだんねん?」
「 オマエ、H1号ヲ分解シテ、ソノママニシテ置カナイダロウナ?」
「 ワールシュタットヒンデンブルグノーベル教授の力を見てみたいんや。
らめちゃんの超能力の件もあるしな・・。」
「 ソウナノカ。
ソレナラ、チョットダケ見セテヤル。
デモ、チャント元通リニ スルノダ。」
「 分かってまんがな。」


なんじゃもんじゃ物語177

お頭ブラックが言いました。

「 もう、おにぎりはみんな食ったか?」
「 食べましたぁ。」
「 食べたよ~。」
「 食べたでぇ。」
「 うまかったでんな。」
「 ベンケーの分のおにぎりは、持って行くあるよ。」
「 よし!
じゃ、そろそろ、ここを脱出するか。
おい、小僧、H1号を持って行け。」
「 は~い。」

H1号が、海賊たちに言いました。

「 カメラト、音声スピーカーヲ付ケ直セ。
移動中、何モ見エズ、話モ出来ナイノハ、不安ガアル。
オマエタチガ、H1号ニ話シガ出来ルヨウニ、集音マイクモ付ケテオケ。」

エッチソンが言いました。

「 注文の多いやっちゃなぁ~。
それじゃあ、小僧に付けまひょ。」

エッチソンが、カメラとスピーカーとマイクを壁から外しました。

「 モニターカメラは、チョンマゲに括り付けて、マイクは懐から顔を出して、スピーカーは炊飯器の横に括り付けて・・・・・、ハイ、OK!」




なんじゃもんじゃ物語178

なんじゃ殿様は、両手で炊飯器の耳を掴んで通路に突っ立っていました。

「 なんか、歩きにくいなァ~。」
「 我慢スルノダ。
久々ニ、外ニ出ラレルト思ウト、H1号ハ、ワクワクスルナ!」
「 ベンケーの分の おにぎりは、H1号の中に入れておくあるね。」

チンギスチンが、H1号の蓋を開けて おにぎりを1個放り込みました。
お頭ブラックが たまちゃんとエッチソンに言いました。

「 燃料棒を忘れるな。
らめちゃんの担架に積んでおけ。」
「 分かりました。」
「 了解!
積んで行きますわ。」

たまちゃんとエッチソンが燃料棒を担架の らめちゃんの下に入れ、担架の前後を持ちました。

「 よいしょっと!」
「 こ~らせっと!」
「 持てるね。」
「 ああ。
ちょっと重いけど、行けますわ!」



なんじゃもんじゃ物語179

お頭ブラックが言いました。

「 おい、H1号、お前、玄関へ行く道を知っているだろ。」
「 知ッテイルゾ。」
「 よし、お前が先頭だ。」

電気炊飯器のH1号を両手で持った なんじゃ殿様が、先頭に進み出ました。
H1号が言いました。

「 H1号ニ付イテ来ルノダ。」

お頭ブラックの出発宣言です。

「 それじゃ、出発だ!」
「 お~っ!!」

お頭ブラックの声を合図に、燃料棒を手に入れた海賊たちの行列は倉庫を出発しました。
なんじゃ殿様を先頭に、お頭ブラックとチンギスチン、その後に らめちゃんと燃料棒の乗った担架を持った たまちゃんとエッチソンが続きました。
お頭ブラックが言いました。

「 燃料棒も手に入れたことだし、めでたいめでたい。
わしは気分が、とってもいいぞ。
よし、それではここで景気付けにわしの歌を聞かせてやる!」
「 うわっ、お頭、あの・・。」

子分たちが止める間も無く、お頭ブラックの歌は始まってしまいました。

「 わん、つう、の~。
ちゃんちゃららら、ちゃんちゃららら、ちゃんちゃららら、らん♪
はぁ~れた空ぁ~、 そ~よぐ風ぇ~♪
みなとぉ~、出船のぉ~、 ドラの音、たのしぃ~♪」

子分たちは、囁きました。

「 うわっ、始まってしまった。
もう、誰も止められない・・・。」

お頭ブラックの歌は続きます。
そして、次は、体を揺すりながら軽いステップを踏んで、踊りが入りつつあります。

「 別れテープゥを~、笑顔で切ればぁ~♪
きぼお~はてなぁい~ は~るかな潮路ぃ~♪
ああ~、あこがれぇ~の ハワイこぉろぉ~♪

はい、二番!

ちゃんちゃららら、ちゃんちゃららら、ちゃんちゃららら、らん♪
なぁ~みの背を~ バラ色にぃ~・・・・♪」
「 ああ、もう、終わりまで聞くしかないあるね・・・。」

お頭ブラックの歌声と共に海賊たちはどんどん通路を進んで行きました。




なんじゃもんじゃ物語180

“ ピ~、ピッ、ピ~。”

H1号のスピーカーから怪しい音がしています。
なんじゃ殿様がH1号に聞きました。

「 H1号、変な音がしてるよ?
どうかしたの?」
「 ウウウ・・・。
集音マイクノ プラグヲ、急イデ抜クノダ。
コノママ歌ヲ聞イテイルト、回線ガ、ショートスル。」
「 あはは、じゃあ、抜いてやるよ。」
「 進行方向ハ、スピーカーカラ教エテヤル。
トニカク、雑音ヲ遮断スルノダ。
歌ガ終ワッタラ、マタ、マイクヲ繋ゲ。」
「 OK、分かったよ。」

なんじゃ殿様がマイクプラグを抜いて、H1号はホッとしました。
担架の上の らめちゃんが、体をよじって言いました。

「 らめちゃん、お腹、ぴ~ぴ~になりそうや・・。」

エッチソンが答えました。

「 我慢、我慢でっせぇ~。」

お頭ブラックの歌声を通路に響かせながら、海賊たちは倉庫の前の通路を突き当りまで行きました。
H1号が言いました。

「 右!」

海賊たちは、右に曲がってどんどん進みます。
お頭ブラックは軽いステップで前進し、踊りながら歌います。

「 椰子の並木路~ ホワイトホテルゥ~♪
ああ~、あこがれぇ~の ハワイこぉろぉ~♪
よしっ、三番まで歌ったぞ!
こらっ、拍手、拍手!!」

“ パチ、パチ、パチ。”

「 こらっ、もっと盛大に!!」

“ パチパチパチ、パチパチパチ、パチパチパチ、パチパチパチ!!”

「 むふふふふふふ。
う~ん、すっきりした。
今日は、絶好調だぞ!
よし、もう、一曲聞かせてやるからな!」




なんじゃもんじゃ物語181

エッチソンが言いました。

「 お頭、お頭、あまり大きな声で歌うと職員が起きてきまっせ!」
「 お、そう言えばそうだな。」
「 船に帰ってからにしてくれまへんか。」
「 う~ん、仕方が無い、そうするか。」

様子を窺っていたH1号が、なんじゃ殿様に言いました。

「 終ワッタヨウナ気ガスル
マイクプラグヲ、入レロ。」

なんじゃ殿様は、マイクプラグを再度差し込みました。
エッチソンが、お頭ブラックに聞きました。

「 ところで、ベンケーは、どうしてまっしゃろな?」
「 お、そうだ、そうだ。
ベンケーを忘れていた!」

お頭ブラックが、らめちゃんに言いました。

「 おい、らめちゃん、ベンケーと合流するのはどの辺だ?」
「 玄関辺りで会うと思うで。」
「 もう、悪霊は片付いたのかな?」

その時、お頭ブラックの携帯が鳴りました。

“ たらった、らった、らった、ウサギのダンスぅ~♪”

「 あっ、ノゾーキからの連絡だ。」




なんじゃもんじゃ物語182

お頭ブラックは、歩きながら携帯を取り出しました。

「 おい、ノゾーキ、何をやっていたのだ。」
「 ああ、お頭、ベンケーと悪霊の戦いの実況中継をカップラーメンを食べながら見ていたんですよ。
いや~、凄かったなァ。
ベンケー格好良かったですよ。
月の精霊ちゃんも可愛かったし。
アクション映画そのものですよ。
今、終わりました。
勝ちましたよ。
悪霊、逃げて行きました。
精霊たちは帰りましたし、ベンケーは何処に行ったらいいのか分からないので、取り敢えず玄関の方へ行ったようです。」
「 そうか、分かった。
H1号、玄関に急げ!」
「 ワカッタ。」

H1号の指示する方向に、海賊たちは なんじゃ殿様を先頭に、通路を右に左に走りました。
そして、走るに従って通路が広くなってきて、やがて玄関が見えました。
なんじゃ殿様が言いました。

「 玄関だ!」

お頭ブラックが言いました。

「 よし、脱出だ!」

海賊たちは、通路に倒れている警備員をピョンピョン飛び越して、玄関から飛び出しました。


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なんじゃもんじゃ物語 2-17 ヤマタイ国発電所 玄関

2006-06-06 19:29:11 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 2-17 ヤマタイ国発電所 玄関


なんじゃもんじゃ物語183

 外に出ると、月明かりに照らされたベンケーが、馬の尻尾の毛を束ねて作った悪霊祓いの棒と手術用のメスを持って、踊りを踊っていました。

「 ウン、ナカマサヤタァ~、エイタラヤタァ~♪
ソンダナタヤァ~、ヤマナカタァ~♪」

先頭のH1号が、なんじゃ殿様に聞きました。

「 アノ変ナノモ、仲間カ?」
「 ああ、そうだよ。」
「 頭ガ痛クナッテ来ソウダ・・・。」
「 まあ、まあ、そう言わずに・・。」

お頭ブラックが、先頭のなんじゃ殿様を追い越してベンケーのところに走って行きました

「 よ~、ベンケー!」
「 おお、みんな出て来たでござるか。」
「 怪我は無かったか?」
「 大丈夫でござる。
ちょっと、手こずったが悪霊を追い払ったでござるよ。」
「 それは良かった。
ところで、何を踊っているのかな?」
「 これは、ヤモミノ族の勝利の踊りでござるよ。
これを踊ると次回も勝利できるでござる。
それでは、続きを行くでござる。
ウン、ナカマサヤタァ~、エイタラヤタァ~♪
ソンダナタヤァ~、ヤマナカタァ~♪」
「 おいおい、ベンケーその踊りは後どのくらいかかるのだ?」
「 急いでやっても46分かかるでござる。」
「 船に帰ってからやってくれないかなァ~。
今、ちょっと急いでるからなァ~。」
「 ん、そうか・・。
仕方ないでござる。
先ほどやってなかった、ヤマノミ族の精霊落としの踊りも含めて、船に帰ってからみんなを集めてたっぷりするでござる。」
「 ああ、分かった、分かった。」
「 それで、燃料棒は手に入れたでござるか。」
「 ああ、バッチリだ。」
「 おお、それは良かったでござる!」



なんじゃもんじゃ物語184

 そこにチンギスチンが、おにぎりを持って現れました。

「 ハイ、ベンケー、おにぎり!」
「 お、これはかたじけない。
 久々の戦闘でエネルギーを消費したでござる。
早速、食べることにいたそう。」

“ パク、パク、パク。”

「 これは、美味い!」

H1号を持ったなんじゃ殿様が近付いて来ました。
そして、ベンケーに言いました。

「 ほら、この電気炊飯器で作ったんだよ。」
「 ほう、これで作ったでござるか。」

ベンケーがしげしげと眺めているとき、突然、H1号がベンケーに話し出しました。

「 ワタシハH1号ダ。」
「 お前は、小僧でござらんのか?」
「 僕じゃないよ。
喋っているのは、この炊飯器だよ。」
「 これが喋るでござるか?」
「 ソウダ、コンピューター制御ノ電気炊飯器ノH1号ダ。
正確ニ言ウトHonjya university electric rice-cooker 1ナノダ。」
「 これは、面妖な。」

“ ムフフフフ。
チャンスダ。
コイツハ、今マデノ経緯ヲ知ラナイゾ。”

「 何をぶつぶつ言っているでござるか?」



なんじゃもんじゃ物語185

「 ソレデハ、ココデ問題ダ。」
「 ?」
「 オマエ、フラミンゴヲ知ッテイルカ?」
「 知っているが、それが何でござるか?」
「 フラミンゴハ、片足ヲ上ゲテ寝ルノモ、知ッテイルカ?」
「 アフリカにいたから、知っているでござるよ。」
「 ヨシ、ヨシ、ソレデハ問題ダ。」
「 ?」
「 フラミンゴハ、ドウシテ片足ヲ上ゲテ寝ルノデショウカ?
ムフフフフ、分カルマイ。
サア、答エロ!」
「 両足を上げると引っくり返るでござるよ。」
「 ゲッ!!」

H1号は、固まって黙ってしまいました。
なんじゃ殿様が、H1号に聞きました。

「 H1号、どうしたの?」
「 正解ダ。」
「 えっ、ベンケーの答えは正解?」
「 ベンケー カ・・・。
恐ロシイ奴ダ・・。」

らめちゃんが、担架の上から言いました。

「 ははは、簡単に答えられて、H1号、ショックを受けとるがな。」
「 うわっ、ヒラメが喋っているでござる。」
「 よっ、ベンケー!」
「 出たな~妖怪!
悪霊払いを受けてみよ!
ウン、ナマカサァ~♪
エイタラヤタァ~♪」

“ ドン、ドン!!”

ベンケーが二度足を踏み鳴らしました。
らめちゃんが、身を捩って苦しみ出しました。

「 う、う、う、苦しい・・。」
「 ふふふ、悪霊払いが効いてきたでござるな。」
「 嘘だよ~ん!」
「 あれっ、効いて無いでござる?」
「 ワイは、悪霊やないで~。」
「 おかしいでござる。」
「 ワイは、預言者らめちゃんや~。」



なんじゃもんじゃ物語186

お頭ブラックがベンケーに言いました。

「 らめちゃんとH1号は、新しい仲間だ。」
「 え、仲間でござるか?」
「 燃料棒を手に入れるのに、色々経緯があってな・・。」
「 そうでござるか。
ま、お頭が決めたことなら従うでござる。」

らめちゃんとH1号が言いました。

「 よろしゅうに!」
「 ベンケー用ノ クイズヲ、考エナケレバ イケナクナッタ。」

お頭ブラックが言いました。

「 よし、それじゃ、脱出だ。」
「 お~!」

海賊たちは気を失っている門衛さんを横目で見ながら、ゾロゾロと門から出て行きました。
エッチソンが言いました。

「 お頭、お頭、港までの足は?」
「 う~ん、今のところ無い!」
「 歩いて行くには、遠おまっせ。」
「 そうだな、近くに何か無いかノゾーキに聞いて見よう。」

お頭ブラックは、携帯を取り出してノゾーキに電話を掛けました。

「 お~い、ノゾーキ!」
「 はい、はい、お頭。」
「 港まで戻る足が無い。
自動車かトラックは何処かに無いか?」
「 少々、お待ちを。」
「 ・・・・・・。」
「 お頭、お頭。」
「 どうだ?」
「 発電所にはあるんですが、車の鍵が何処にあるのか分からないです。」
「 今から戻って、鍵を探すのは大変だな・・。」
「 あの~、お頭、発電所の塀の所に、鍵の付いたバイクが一つありますよ。」
「 そう言えば、ここに来た時に、変なオッサンがバイクに乗ってやって来たな。
でも、バイク一台では、これだけの人数は乗れないぞ。」
「 えっと、門衛さんの建物の裏にリヤカーが一つありますが・・。」
「 それだ!」



なんじゃもんじゃ物語187

お頭ブラックは、ベンケーとチンギスチンに言いました。

「 ベンケー、チンギスチン、門衛さんの建物の裏にリヤカーがあるから取って来い。」
「 分かったあるよ。」

ベンケーとチンギスチンは門の中に入って行きました。
お頭ブラックが、残った子分に言いました。

「 それじゃ、バイクを見に行こう。」

お頭ブラックを先頭に、なんじゃ殿様とH1号、らめちゃんの担架を持ったエッチソンとたまちゃんが後に続きました。
塀に沿った道をゾロゾロ歩くと道端にバイクが見えて来ました。
お頭ブラックが言いました。

「 おっ、あれだ、あれだ。
乗って来たオッサンは、まだ倒れているかな。」

お頭ブラックが塀の方を見ると、花岡実太がうつ伏せに倒れていました。

“ ブヒッ、ブヒッ。”

花岡実太が担いで来たブタが一匹、塀際をウロウロしています。
バイクに到着したお頭ブラックが言いました。

「 おっ、確かに鍵が付いているぞ。」

程なく、リヤカーを引っ張ってベンケーとチンギスチンがやって来ました。

“ ゴロ、ゴロ、ゴロ、ゴロ。”

「 お頭、見つけたあるよ。
特注品なのか、結構でかくて頑丈あるよ。」
「 みんな、乗れそうだな。
よし、早速、バイクの荷台にリヤカーをセットして・・・。」

“ ガシャン、カチッ。”



なんじゃもんじゃ物語188

リヤカーの金具がバイクの荷台に連結されました。

「 これで、よしっ!
それじゃ、みんな乗り込め!」

子分たちがリヤカーに乗り込もうとすると、突然、ベンケーが言いました。

「 ちょっと、待つでござる。」
「 どうした、ベンケー?」
「 このバイクには、執念がついているでござる。」
「 執念?」
「 生霊の執念が、取り憑いているでござる。」
「 生霊?」
「 とてつもなく大きな執着心でござるよ。」
「 乗って行ったら、何か起こるのか?」
「 事故に引き込まれて、みんなペッチャンコでござる。」
「 じゃ、どうすりゃいいんだ?」
「 ちょっと、待つでござる。
生霊封じをするでござる。」

ベンケーが、馬の尻尾の毛を束ねて作った悪霊祓いの棒と手術用のメスを懐から取り出し、バイクの周りを回りながら踊り出しました。

「 ウン、ナカマサァ~♪
エイタラヤタァ~♪」

“ ドン、ドン!!”

「 ウン、トマサラヤァ~♪
エイタラヤタァ~♪」

“ ドン、ドン!!”

足を踏み鳴らす音が響いています。
お頭ブラックが言いました。

「 あの~、ベンケー、ベンケー。」
「 どうしたでござる?」
「 この生霊封じの踊りは、どの位かかる?」
「 22分でござる。」
「 いつもよりかは短いんだけど・・、ちょっと急いでるんだがなぁ・・。」
「 早口で言ったら18分でござるが、効果に自信が無いでござる。」
「 後に出来ないかなァ~。」
「 事故に引き込まれて、みんな、お陀仏さんになるでござるよ。」
「 でもな~、夜明けも近いし、急がないとなァ~。」
「 う~ん、困ったでござる。」
「 走りながら、出来ないのか?」
「 急いでいるでござるな。
う~ん、仕方がないでござる。
生霊封じと交通安全の呪文を、走りながら同時にやるでござる。」
「 そうしてくれ。」
「 分かったでござる。」



なんじゃもんじゃ物語189

 お頭ブラックが言いました。

「 わしがバイクを運転する。
おい、ベンケー!」
「 何でござるか?」
「 お前は、わしの後ろに乗れ。
生霊封じと交通安全を、わしの後ろでやれ。」
「 分かったでござる。」
「 あとの者は、リヤカーだ。
エッチソン、指示をしてくれ。
じゃ、みんな、乗り込むんだ!」

エッチソンが言いました。

「 ハイ、それじゃ、空手着のたまちゃん。
らめちゃんを背負いなはれ。」

エッチソンが、らめちゃんを たまちゃんの背中に乗せました。
らめちゃんが たまちゃんに言いました。

「 あんがちょ!」
「 うひょっ、冷たい。
パタパタして、飛沫を飛ばさないようにしろよな!」
「 分かってまんがな。」
「 じゃ、乗るからな。
よいしょっと!」

エッチソンが指示を出します。

「 ハイ、次、殿様小僧とH1号。」
「 どっこいしょ。
おっとっと。
うわっ!」

“ ゴトン、ゴロゴロゴロ。”

なんじゃ殿様の頭に付いていたカメラが外れて床を転がりました。

「 ウワッ、眼ガ回ル!」
「 ゴメン、ゴメン。
両手でH1号を持っているから、バランスを崩したんだよ。」

なんじゃ殿様は、乗り込んでからカメラを頭に着け直しました。

「 アア、H1号ハ、ビックリシタゾ。
カメラガ転ガッテ、眼ガ回ッタノダ。
シッカリ持ツノダ。
落トスト、H1号ハ壊レルノダ。」




なんじゃもんじゃ物語190

エッチソンが続けます。

「 ハイハイ、詰めて、詰めて・・。
次、岡っ引きのチンギスチン。」

“ ブヒッ!”

「 うわっ、チンギスチン、何を積もうとしているんだ!」
「 そこでウロウロしていたブタ、持って行くあるよ。」
「 チンギスチン、場所をとるからブタは背中に担げ!」
「 分かったあるよ。
よいしょっと!
これでいいあるか?」
「 OK、OK。
はい、乗って乗って!
乗りましたな・・。
それじゃ、わいも乗りまっせ。
こらせっと!」

最後に、百姓エッチソンがリヤカーに乗って、乗り込みが完了しました。
リヤカーには、4人と2匹と1個の合計七福神の完成です。
エッチソンが、お頭ブラックに言いました。

「 お頭、七福神の船みたいでんな・・。」
「 そうだな。
見様によっては見えなくも無いが・・。」

リヤカーのみんなが、一斉にお頭ブラックを見ました。

「 プッ!」

お頭ブラックは、笑ってしまいました。

「 ははははは、じゃ、エンジンを掛けるぞ!」

お頭ブラックは、前を向いて、バイクのエンジンを掛けました。
侍ベンケーが、ヒラリとお頭ブラックの後ろに飛び乗りました。

“ ブルル、ブルル、ブルル、ブウォン、ブウォン、ブウォン!!”




なんじゃもんじゃ物語191

 バイクのエンジン音は、高らかに夜空に響きました。

「 おう、動く、動く、絶好調だ!」

その時、塀際に倒れていた花岡実太の眼が開きました。

“ ! ”

そして、お頭ブラックは、二度、大きくエンジンの空ぶかしをしました。

“ ブウォン、ブウォン!!”

眼を開けた花岡実太は、自分のバイクのエンジン音に気が付きました。

「 ハッ、俺のバイクの音だ!」

花岡実太が頭を上げて音の方を見ると、海賊たちが逃走しようとしている所が見えました。
花岡実太は、ビックリして飛び起きました。

「 こらぁ~、俺のバイクをどうする気だぁ~!」

お頭ブラックは、チラッと花岡実太を見ました。

「 やべぇ~、オッサン、起きてきたぞ!
まごまごしている暇は無い。
出発~!」

お頭ブラックは、ギアを入れバイクは発車しました。

“ ガックン!”

それにつれて、リヤカーも動き出しました。
エッチソンが言いました。

「 おっとっと、揺れる揺れる。」

お頭ブラックが言いました。

「 しっかり摑まっていろ。
振り落とされないように。
分かったな!」

子分たちは答えました。

「 お~!!」


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なんじゃもんじゃ物語 2-18 ヤマタイ国発電所 出発

2006-06-05 20:27:36 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 2-18 ヤマタイ国発電所 出発


なんじゃもんじゃ物語192

 海賊たちを乗せたバイクは、発電所から遠ざかって行きます。
お頭ブラックの後ろに乗ったベンケーが、馬の尻尾の毛を束ねて作った悪霊祓いの棒と手術用のメスを振り回して、生霊封じと交通安全の呪文を唱えながら踊り始めました。

「 オン、ナカマサァ~。
エイタラヤタァ~リ♪
ウン、ナカマサァ~。
エイトラヤタァ~♪」

“ シュッ、シュッ!”

お頭ブラックの顔の横から、手術用のメスが何度も突き出されます。

「 うおっ、危ない。
こらっ、ベンケー。
わしの耳を切らないようにやってくれ!」
「 分かったでござる。」

一方、花岡実太は、必死に走ってバイクを追いかけていました。

「 こらぁ~、待てぇ~!!
俺のバイクを返せぇ~!!」

リヤカーのエッチソンが、お頭ブラックに言いました。

「 お頭、お頭、オッサン、走って追いかけて来てまっせ。」
「 あはははは、バカめ。
バイクに走って追いつくもんか!」
「 でも、お頭、バイクのスピードが落ちて来てまっせ・・。」
「 ありゃ?
ホントだ。
これは、どうした事だ。
アクセルは、いっぱいだが・・・・?」

花岡実太が、じわりじわりとバイクとの距離を詰めて来ています。



なんじゃもんじゃ物語193

 ベンケーが、お頭ブラックに言いました。

「 これは、オッサンの執念でござるよ。」
「 ?」
「 みんなには、見えないだろうけど、オッサンから念の糸がバイクに繋がっているでござる。
この執着心は、生霊となってバイクにしがみ付いているでござる。」
「 どの辺にしがみ付いているのだ?」
「 お頭の左足の辺りでござる。」
「 うわっ、気持ち悪い!
何とかしてくれ。」
「 分かったでござる。
気合いを入れて、封じるでござる。」

ベンケーは、さらに声を振り絞って呪文を唱え始めました。

「 オン、ナカマサァ~。
エイタラヤタァ~リ♪
ウン、ナカマサァ~。
エイトラヤタァ~♪」

“ シュッ、シュッ!”

バイクは、徐々に花岡実太との距離を拡げ始めました。
しかし、花岡実太は、執念で叫びました。

「 待てぇ~~~!!
返せぇ~~~!!
戻せぇ~~~!!
ぬおぉ~~~~~っ!!」

ベンケーが、悪霊祓いの棒と手術用のメスを振り回して驚いて声をあげました。

「 うおぉ~~~!!
引っ張られるぅ~~!!
オン、ナカマサァ~!
エイタラヤタァ~リ!
うおぉ~~~!!
とっとっと!
引きが強いぃ~~!!」

バイクは、再び、スピードを緩め、花岡実太との距離が縮まって来ました。


なんじゃもんじゃ物語194

 リヤカーの海賊たちが、顔を見合わせて言いました。

「 あのオッサン、恐ろしい奴あるね。」
「 生霊の執念と言うものは、恐しおまっせ・・。」
「 ブヒッ!」
「 このままじゃ、追い着かれてしまうんじゃない?」
「 らめちゃん、ちょっと怖いがな・・。」
「 H1号モ危険ヲ感ジル。」
「 バイクを止めて、みんなでしばいたらどうかなぁ。」
「 しばいても、ただじゃ済みまへんで。
ベンケーが、苦戦してまんにゃで・・・・。」
「 恨まれたら、えらい事になるあるか?」
「 夜中に、寝てたら、顔を“ペロッ”って舐められたりして・・・。」
「 うう、気持ち悪ぅ~~。」
「 僕、取り憑かれるのはイヤだよォ。」
「 だいぶ、距離が近寄って来ましたで・・・。」

間隔をあけて道に沿って立つ街灯が、花岡実太の走っている姿を、強弱を付けて照らしています。
そして、街灯に明るく照らされる度に、花岡実太が接近していることが分かります。
バイクのスピードが、ますます落ちて来ました。
エッチソンが、イライラして お頭ブラックに言いました。

「 えらいこっちゃがな、もう、そこまで来てますがな・・・。
もうちょっと、スピード上げて、振り切れまへんか・・。」
「 アクセル、いっぱいなんだけど、ダメだ!
おい、ベンケー、何とかしろ!」
「 オン、ナカマサァ~!
エイタラヤタァ~リ!
オン、ナカマサァ~!
エイタラヤタァ~リ・・・・・。
う~ん、苦しい・・・。」

“ シュッ、シュッ!”




なんじゃもんじゃ物語195

そのとき、街灯に照らされた花岡実太の顔が見えました。
それを見た らめちゃんが叫びました。

「 うわっ!
眼が血走って気持ち悪いがな・・・・。」

花岡実太が、凄まじい形相でスピードの落ちた海賊たちのリヤカーに迫って来ました。

「 ぬおぉ~~~~~っ!!
ぬおぉ~~~~~っ!!
ぬおぉ~~~~~っ!!」

花岡実太の足音も聞こえて来ます。

“ バタ、バタ、バタ、バタ!!”

海賊たちは、叫びました。

「 キタ~~~~~ッ!!」
「 キタ~~~~~ッ!!」
「 キタ~~~~~ッ!!」
「 キタ~~~~~ッ!!」

花岡実太は、リヤカーにもう少しのところまで近付きました。
そして、手をリヤカーの後ろの柵に掛けようとしています。
息遣いが荒く海賊たちに聞こえて来ます。

「 ハァ、ハァ、ハァ、もうちょいで手が届く・・。」

花岡実太の不気味な顔がアップされ、血走った顔がニヤリと笑いました。
それを見た海賊たちは後退りして叫びました。

「 うわぁ~、来るなぁ~!!」

そのとき、なんじゃ殿様が、咄嗟にH1号のモニター画面を花岡実太の眼の前に突き出しました。
H1号は、反射的に花岡実太に言いました。

「 ソレデハ、ココデ問題ダ!」

それを聞いた花岡実太の顔が、一瞬緩みました。

「 えっ、問題?」




なんじゃもんじゃ物語196

「 ・・・・・・・デショウカ?」
「 えっ、何て言った・・・?」

花岡実太の執着心が、聞き逃した問題に逸れました。
その瞬間を見逃さずベンケーが叫びました。

「 念が逸れて弱まった。
チャンス!!
取って置きの呪文!
この念の糸の細くなった所を・・・・。
フンダラヘモナァ~、フンフン、プッチン!」

ベンケーが、お頭ブラックの左足から10cmほど離れた辺りをメスで切りました。

“ プツッ!”

ベンケーが、叫びました。

「 切れた~~~っ!」

バイクとリヤカーはガックンと揺れ、急に早く走り出しました。
海賊たちは、花岡実太から、どんどん離れて行きます。
離れて行く花岡実太に、海賊たちはニコニコして、バイバイと小さく手を振りました。
ベンケーは、お頭ブラックの後ろで大きく両手を挙げV字を作りました。
右手には、悪霊祓いの棒の馬の尻尾の毛が風にはためいています。
左手には、手術用のメスが光っています。
お頭ブラックが子分たちに叫びました。

「 よ~し、調子が出てきたぞぉ~っ!
全速前進、フルパワ~!!
振り落とされないように、しっかり摑まってろぉ~!!」
「 お~っ!!」

そして、バイクはどんどん速度を上げ、花岡実太の視界から、道の彼方へと消えて行きました。





なんじゃもんじゃ物語197

 気力が途切れた花岡実太は、バイクが消えて行った道の、遠くの暗闇を眺めながら呟きました。

「 ああ、行ってしまった・・。
わしには、バイクのローンだけが残ってしまった・・。
・・・・・・・・・・・・・。
ハッ!
わしとしたことが、どうしたと言うのだ。
まだ、追いかければ取り返せるのだ。
こんなに弱気になったのは、どうしてなんだろう?
侍の格好をして踊っていた奴の仕業かな?
まあ、いい。
ぼ~っとしている場合ではない。
バイクを取り返すのだ!
この道は、自動車も通っていないようだし・・・・。
そうだ、発電所に行って頼んでみよう。
発電所に戻って、足を確保するんだ!
そして、追いかけねば!」

花岡実太は、発電所に走って行きました。

発電所は、まだ闇の中に眠っていました。
非常用の電灯が寂しくまばらに灯っています。
花岡実太は、辺りを見回して言いました。

「 妙に、静かだな・・・?
とりあえず、門衛さんに聞いてみよう。」

門から入って、受付の窓口を見ると、窓口は開いてはいるのですが、電気が消えて中は暗く様子が分かりません。

「 寝てしまっているのかな?
ちょっと、中に入ってみよう。」

発電所に戻った花岡実太は、門衛さんの建物に入って行きました。



なんじゃもんじゃ物語198

建物の中に入った花岡実太は、手探りで部屋の奥を探っていました。

「 えっと、門衛さんは、何処でしょうか?
奥の部屋で寝てるんですかぁ~?」

“ ムギュ。”

花岡実太は、床に倒れていた門衛さんを踏み付けてしまいました。

「 ん、何か、踏んだようだが・・・・。」
「 う~ん、うっ?」

踏みつけられた門衛さんは、突っ立ている花岡実太を見上げました。

「 えっ、お前は誰だ?
こんなところで、何をしている?」
「 電気が消えていたので・・。」

門衛さんは、床から立ち上がって受付の窓口から発電所を覗き込みました。

「 あっ、電気が消えている。
それも、非常灯だ・・・。」

門衛さんは、ジロッと花岡実太を見ると、突然、非常ベルを押しました。

“ ジリ、ジリ、ジリ、ジリ、ジリ、ジリ、ジリ、ジリ!!”

けたたましいベルの音が、発電所に鳴り響きました。
花岡実太は、驚いて門衛さんに叫びました。

「 うわっ、何をするんだ!」
「 うるさい、お前だな!」





なんじゃもんじゃ物語199

「 違う、違う!」
「 何が違うのだ。
もう、あきらめろ。
このベルは警察にダイレクトに繋がっているんだ。」
「 えっ。」
「 あっと言う間に、警察がやって来るんだ。」
「 わしじゃ無いって言ってるだろ!」
「 往生際の悪い奴だ。
神妙にお縄を受けろ!」
「 うわっ、止めろ!」
「 こらっ、何処へ行く!」

花岡実太は、門衛さんの手を振り解き、建物から発電所の方に逃げ出しました。
そこに非常ベルに叩き起こされた四人の警備員たちが、発電所から飛び出して来ました。
それを見た門衛さんが叫びました。

「 そいつが犯人だ!」
「 うわっ、マズイ!」

花岡実太は、クルッと向きを変え、門に向かって走り出しました。
門衛さんは、大きく手を広げて門に仁王立ちになりました。

「 もう、逃げられないぞ!」

花岡実太は、サイドステップで門衛さんの横をすり抜けようとしました。

「 よし、抜けた!」

しかし、門衛さんは横っ飛びに花岡実太のズボンを掴みました。

「 おっとっとっと!」

“ ズサッ。”

花岡実太と門衛さんがもつれ合って、門の中央で倒れました。

「 なんの!」

花岡実太は、すばやく立ち上がると摑まれたズボンを脱ぎ捨て、門から飛び出して行きました。

「 待て~!!」




なんじゃもんじゃ物語200

 発電所の前の道を、門衛さんと四人の警備員たちが、パンツ姿の花岡実太を追っていました。
門衛さんが、前を逃げる花岡実太を見ながら言いました。

「 逃げ足の速い奴だ。
でも、逃がさんぞ!
ハア、ハア、ハア。」

しばらく走って、花岡実太は徐々に息が切れてきました。

「 ハア、ハア、ハア、ハア。
どうして、わしが逃げなければいけないのだ。
ハア、ハア。
わしは、犯人じゃない。
ハア、ハア、ハア、ハア。
もう、疲れて来た。
ハア、ハア。
そうだ、何も取った物は持って無いし、犯人を見ているんだから、説明したら分かってくれるんじゃないかな・・・。
ハア、ハア、ハア、ハア。
もう、逃げるのは止めだ。」

花岡実太は逃げるのを止め、立ち止まりました。
門衛さんと四人の警備員たちは、直ぐに花岡実太を捕まえました。

「 あきらめたな。
ハア、ハア、ハア。」
「 ハア、ハア、ハア。
わしじゃ無いって言ってるだろ!」
「 ハア、ハア。
怪しくないなら、何故、逃げるんだ!」
「 ハア、ハア。
わしは、何も取った物は持って無いぞ!」

花岡実太は、服を脱いで取った物が何も無いことを見せようとしました。

「 ほらほらほら!」
「 お前の不細工な裸など見たくない。
事情は、発電所に帰ってからゆっくり聞かせてもらおう。」

遠くから、パトカーのサイレンが聞こえてきます。
花岡実太は、門衛さんと四人の警備員たちに捕まって、発電所に連行されて行きました。


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