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広島で第5回口頭弁論、「不当な支配論」を根元から断つ

2014-12-01 09:00:00 | (淑)のブログ
 11月19日水曜、「高校無償化」裁判の第5回口頭弁論が広島地裁で行われました。前日に広島入りし、学校長をはじめオモニ会など学校関係者、日本人支援者たちとともに裁判を傍聴してきました。今回の裁判は、広島地裁でもっとも大きい302号法廷(60人収容)で行われました。傍聴席がすべて埋まったことで、この裁判に対して必死にたたかっているという原告側の姿が、裁判所に十分に示されたのではないでしょうか。傍聴席には、広島朝鮮初中高級学校の高級部2年の生徒たちの姿もありました。






(裁判後に弁護士会館で行われた報告集会の様子)

 裁判では、原告側が提出した準備書面5と6について、原告側弁護士の佐藤浩太郎、平田かおり両氏がそれぞれ発言しました。
 原告側の主張の内容は大きく二つ。第一点は、文科省は朝鮮学校について、規定13条(「適正な学校運営」)に適合しないとして不指定処分としたが、そもそもこの規定13条(「債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校運営を適正に行わなければならない」)は無効であると主張。もう一点、被告国が主張する朝鮮民主主義人民共和国や総聯の影響力の問題(「不当な支配論」)は、学校運営が適正に行われていないとはしえないことが主張されました。
 以下、原告側の主張と根拠についてかいつまんで報告します。

―規定13条について(原告側準備書面5)
 この規定13条というのは、無償化法が定める「高等学校の過程に類する過程を置く」といえるか否かについて、同法から委任を受けた同法施行規則ハ規定による再委任を受けて規定されたものです。
 しかし、「高等学校の過程に類する過程」とした無償化法の文言と趣旨からすれば、専門学校や各種学校が、「高等学校の過程に類する過程を置く」といえるかどうかについて、その教育内容と過程に照らして判断する細則を委任しているにすぎず、財務関係を含む学校運営の適正という観点からの判断は委任していないのです。したがって、規定13条は、同法の規定の範囲外の事項であり、裁量権の逸脱であるということです。
 つけくわえると、朝鮮学校を含む各種学校については、イ、ロ、ハ号のいずれかに該当すれば就学支援金を支給するとなっていますが、ここで求められる「学校運営の適正」というのは、イもロもハも等しく同じでなければならないのに、なぜかイ、ロ号においては、「債権の弁済への確実な充当を求める」という規定は入っていないのに、朝鮮学校が含まれるハ号だけが要求されているという、不当性も指摘していました。
 要するに、「本来あるべきではない規定」によって排除されたということです。それで、「そもそも13条は無効だろう」と明確に主張したのです。

―国の「不当な支配論」に対する反論について(原告側準備書面6)
 原告側はまず、異国の地で教育を行う外国人学校に対して、本国または関連する民族団体がその教育活動を支援することはきわめて自然なことであるということを、他の私立学校や各種学校との比較の中で主張しました。最もわかりやすい例として韓国学校の事例(財政や人事など)を紹介していました。
 続いて、被告が提出した「不当な支配」の存在を裏付ける証拠はいずれも、具体的根拠のない新聞記事などで、著しく信用にかけ、具体的根拠はなんら存在しないことを主張。不指定の中身をみても、なぜ、朝鮮学校に就学支援金を支給しても授業料に係る債権に充当されないことが懸念されるのか、被告の説明では全く理解できないと指摘されました。
 また、人種差別撤廃委員会をはじめとする国連の三つの委員会が、「無償化」からの朝鮮学校排除が差別であると指摘していることについてのべられました。

 この日、裁判の冒頭で裁判所から、被告側が主張している「不当な支配」について、特定の団体から資金援助を受けることが、他の各種学校と朝鮮学校とではどう違うのか?という問題意識がある、と指摘されました。

 また、被告は、新聞記事の報道を朝鮮学校不指定の根拠として主張しているにも関わらず、「新聞の報道は厳密な意味での真実性を主張するものではない」と矛盾した主張しています。原告弁護団の「嘘かもしれない報道を朝鮮学校不指定の判断の要素としたのか?」との質問について、被告は法廷で「そうだ」と答えました。つまり、事実かどうか認められないいい加減なことを根拠に、朝鮮学校を指定しないという判断をしたと、明確に認めたといえます。

 平田かおり弁護士は、「(「不当な支配論」の)おかしさというのは裁判所に伝わっている。なぜ韓国学校はOKで朝鮮学校はダメなの?という点を明らかにしなさいという問題意識を持って言ってくれた。おそらく被告側はそれをきちんと説明することはできないと思っているが、次回それについての書面が出てくると思う」と話していました。

 規定13条をめぐる論点について、明確な形で論じたのは広島が初めてです。まだ他地域の裁判では主張されていない分、どういう反論が出てくるかが注目されますが、この論点について足立弁護団長は、被告国が「不当な支配論」の理論的根拠としている規定13条を問うことは、「不当な支配論」を根元から断つ主張であるといえると説明してくれました。

 広島では裁判支援活動についても関係者から話を聞きましたが、長くなってしまったので、それについては次回のブログで書きたいと思います。(淑)

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