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裁判官、国側に論理的説明を求める―東京無償化裁判控訴審第1回口頭弁論

2018-03-22 10:00:00 | (瑛)のブログ





東京無償化裁判控訴審第1回口頭弁論が3月20日、東京高裁101号法廷で行われ、原告の後輩たちである東京朝鮮中高級学校高級部1、2年の全校生徒含め500人を越える人たちが傍聴に並んだ。

弁論は1時間強の時間をかけて行われ、裁判長からは、国側の代理人に「規定ハ削除」について「論理的な説明を」との宿題が課せられた。

裁判長はまず、規定ハ削除の決済文書について確認。つづけて、国側が、朝高を不指定にした当初(2013年2月20日付けの不指定通知)は、①規定ハの削除、②規程13条に適合すると認めるに至らなかった―という2つの理由を掲げていたにも関わらず、裁判が始まってからは、②を主に主張し、①は念のため通知したと、主張を変えた経緯を振り返りながら、「二つの理由の関係について論理的に述べてもらわないと、空中戦になってしまう可能性がある。きっちり主張していただきたい」と促した。

この2つの関係について、裁判官が何度も国側に「明確に、論理的に、きっちり説明を」と課題を課したことは今後の控訴審において重要だ。

無償化裁判の最大の論点であり争点は「規定ハ」削除の違法性。にも関わらず、17年9月13日に下された東京地裁判決は「規定ハ」削除の違法性について一切審議せず、「規定13条に認めるに至らなかった」とする文部科学大臣の判断は「裁量の範囲内」だとして、国の主張を丸のみした。まさに、司法の責任を放棄した判決だった。


原告側は9月25日に控訴、原告側弁護団は12月18日に控訴理由書を提出し、今年2月に国側から答弁書が出されたことを受け、3月13日に追加の準備書面を提出した。

裁判長の質問が続いた後、喜田村弁護団長が準備書面1を、康仙華弁護士が準備書面2を、口頭で陳述した。

喜田村弁護団長は、2012年12月に総選挙で自民党を中心とする内閣が生まれ、12月28日の閣僚懇談会で文部科学大臣が「拉致問題の進展がないこと、(朝鮮学校が)総連と密接な関係にあり教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることを踏まえると、国民の理解を得られない」と述べ、総理大臣も「その方向でしっかりと進めていただきたい」と述べたように、不指定の決定は政治的外交的理由であることを再度確認。国が朝鮮学校不指定の理由を、「規程13条に適合すると認めるに至らなかった」ことが主たる理由だと述べていることに対して、以下のように反論した。

…政府は上位法である支給法には手をつけず、この結果、朝鮮高校を排除することについて、国会での審議は行われませんでした。下位法である規則(文部科学省令)だけを修正することによって、自らが望む「不指定」という結果をもたらそうとしたのです。
 本件で問題となるのは、正にこの点、すなわち、上位法である支給法が国籍に関わりなく就学支援金を支給することを定めているとき、これには何の変更も加えないまま、下位法である規則の改正によって、特定の外国人学校を不指定にすることができるかということです。

喜田村弁護士は、文部科学大臣は2つの理由を挙げて、東京朝鮮学園の指定は認められないとしたが、注意しなければならないのは、上記決済文書の「件名」に表れているように、この2つの理由とも、「規定ハを削除したことに伴うもの」であると指摘。

第一の理由は、規定ハの削除により、朝鮮学校が指定の申請をする根拠規定が失われたことにより、不指定とするというもの、

第二の理由は、規定ハが削除されることを前提にすると、本件規程も存続できないことになり、文部科学大臣は2013年2月20日まで提出された資料に基づいて、判断を示すと、不指定の結果になる、と指摘した。

弁護団は「規定ハ削除」が法律に反していることを、高裁でさらに理論的に研ぎ澄ませた。

喜田村弁護士の主張を解説すると、そもそも規程13条の適合性判断の結論は、「適合する」か「適合しない」のどちらかしかない。2013年2月20日に、国が「規程13条に適合すると認めるに至らない」と判断したのは、有識者による審査会の結論が出るのを待たず、「適合する」という結論を出す前に、「ハの規定」を削除し、無理やり判断することになったからだ。このあいまいな表現こそ、「規定ハ削除」が朝高排除の真実の理由であることを物語っている。文科省内部の決済文書の表題は「ハの規程の削除に伴う朝鮮高級学校の不指定について」であり、本文にもそう書いてある(李春熙弁護士)。

続けて康仙華弁護士は、東京朝鮮中高級学校が私立学校の「自主性の尊重」を原則とする私立学校法の趣旨目的に沿って適正に運営されていることを立証するために、教育学、教育行政学専門の佐野通夫・こども教育宝仙大学教授に鑑定を依頼し、鑑定意見書を作成したことについて報告した。

康弁護士は、教育基本法第16条1項の「不当な支配」の有無が、本件規程13条の適合性判断の考慮要素になっているとした東京地裁判決は誤りだと指摘。佐野教授が入手した客観的資料は、文科省も審査の過程で把握し、これらの資料を踏まえた審査会では、13条に抵触する事実は一切確認されなかったと主張した。

この日、弁護団は裁判官に曇りなき目で朝鮮学校を見てもらえるよう、生徒たちの日常生活を撮った映像と、書籍「朝鮮学校物語」などの証拠も提出した。高校無償化法の制度設計時に文部科学省大臣官房審議官だった前川喜平前文部事務次官の陳述書も提出した。

●悪質な国側の答弁書

一方これに対する国の控訴答弁書は、地裁時よりさらに悪質なものだった。

国側は、教育基本法、学校教育法及び支給法等の定めからは、規定ハの「高等学校の課程に類する課程」を有するといえるためには、申請者(朝鮮学校側)において少なくとも、


①当該学校における教育内容が教育基本法の理念に沿ったものであること、
②支給した就学支援金が授業料以外の用途に流用されるおそれがないこと、
③外部団体・機関から不当な人的・物的な支配を受けていないこと、
④反社会的な活動を行う組織と密接に関連していないことについて、立証しなければならないと指摘。「客観的証拠からは、朝鮮学校は、反社会的組織としての側面を有する疑いが強い朝鮮総聯ときわめて密接な関係を有していること、その教育内容も北朝鮮の指導者やその国家体制を唯一の絶対価値として賛美、礼賛するものであることが明らか」とまで朝鮮学校を貶めた。



●裁判-「むずかしい時代に」


閉廷後に衆議院第1議員会館で行われた報告集会には、3月4日に東京朝高を卒業した68期卒業生たちも詰めかけ、高裁での勝利を誓った。

14年2月の提訴。裁判官の交替、そして、司法の役割を放棄した9月13日の不当判決…。集会では、怒りと悔しさに涙をのみ、それを乗り越えた決意が生徒、卒業生、教師、保護者、日本人支援者から何度も伝えられた。東京中高オモニ会・金栄愛会長の言葉を紹介したい。金会長は三代に渡って東京中高が母校だ。この春、三女が朝高を卒業した。

…今日の控訴審第1回口頭弁論期日を傍聴するまでもなく、この裁判はすでに結論が出ています。
朝鮮学校にも「高校無償化法」の即時適用のみです。

当時の政権の横やりが入って、私たちの学校にだけ難癖を付けて、他では実施していない資料まで開示させて…。国が出す証拠は産経新聞や公安調査庁の資料、それも疑惑の範囲を出ていない古い新聞記事…。高校無償化は、子どもの学習権の問題であり、日本の社会を共に担う子どものためなのに…。

声を上げないと私たち在日は日本社会では居ない事になってしまいます。

高校無償化裁判は、原告の生徒たちが既に卒業し、また妹や弟も卒業という難しい段階に入りました。


これからは歴代オモニ会長、OGオモニ達のように高校無償化適用の日まで、私が出来る時にできることをやって行くつもりです。


この日、大阪では補助金裁判敗訴の結果となったが、裁判官の本質的な質問に、司法へのかすかな希望を持つことができた。次回期日は6月26日(火)15時から、東京高裁101号法廷。(瑛)



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