日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

東京でも「高校無償化」裁判始まる

2014-02-19 09:00:05 | (K)のブログ


 一昨日の17日、「高校無償化」からの朝鮮学校排除の問題で、東京朝鮮中高級学校高級部の生徒62人が国を相手に計620万円(ひとり当たり10万円)の損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。「高校無償化」に関連する裁判は、大阪、愛知、広島、九州に続くものです。
 ついに、とうとう、やっと、という思いが強い、東京での提訴です。

 ご存知の通り、2012年末に安倍政権が発足すると、昨年2月に「高校無償化」の施行規則自体を改悪、後でのべる(ハ)を削除することで、完全に朝鮮学校を「高校無償化」制度から排除してしまいました。
 おさらいとして少し書くと、「高校無償化法」の施行規定では、各種学校である外国人学校を(イ)民族系外国人学校、(ロ)インターナショナルスクール、(ハ)その他―の3つに分類していました。朝鮮学校が「高校無償化」制度を受けるためには(ハ)の指定を受ける必要があったわですが、延坪島での砲撃事件などを理由に、指定の手続きが停止されたり遅々として進まなかったり、朝鮮学校だけが指定を受けられずにきました。そして、安倍政権が誕生し、(ハ)そのものを削除して制度からの排除にいたるわけです。



 17日の提訴の後、東京地裁で弁護団による記者会見がもたれました。そこで、今回の訴訟について、4つのポイントがあると説明がありました。かいつまんで書くと次のようになります。
 1.就学支援金の受給資格、受給権は、学校ではなく生徒にあるということ。学校は生徒の代理として受け取って授業料に当てるだけ。だから、今回原告となったのは生徒個人個人で、生徒一人ひとりの学ぶ権利を争う裁判であるということ。
 2.(ハ)を削除は、外国人学校に学ぶ生徒の就学支援金の受給の可能性を閉ざすものであり、教育の機会均等という法の目的に反し、「高校無償化法」の委任の範囲を逸脱した違法なもので無効であるということ。
 3.(ハ)の削除は政治的理由によるもので、すべての生徒の学びを保障するという「高校無償化」の趣旨を根底から覆すものとして違法であり、無効であるということ。
 4.東京朝高は指定の基準をすべて満たしており、制度の対象として指定されなければならないから不支給は違法であるということ。

 不支給決定から1年、担当する弁護士たちは綿密に準備を進めてきたといいます。今回の裁判の特徴を、弁護団の同胞弁護士は「論点を絞ったシンプルな裁判」と表現しました。「朝鮮高校生徒に就学支援金を支給しないのは高校無償化法に違反している」という単純明快な論理を展開しています。違反の根拠が上に挙げた4つのポイントということです。
 記者会見で弁護団の喜田村洋一団長は、「国籍を問わず、後期中等教育段階の学びに励んでいる生徒を等しく支援するということで法律を作ったのに、差別的な運用をすることはおかしい」と明快に語っていました。

 原告となった生徒たちは、施行規則改悪の時点から今までの間に在校している2~3年生たちです。生徒たちは、「受給権利者、当事者である自分たちが立ち上がらなければならない」という思いで名乗りを挙げたといいます。そして、「経済的に苦労している親を少しでも助けたい」「後輩たちのために権利を勝ち取りたい」と、様々な思いがそれぞれにあるといいます。



 そして、昨日18日には文京区民センターで「東京朝鮮高校生の裁判を支援する会 結成集会」が行われました。会場には本当に多くの人がつめかけ超満員で、参加者の日本政府に対する憤り、絶対に裁判に勝つのだという熱い思いで溢れていました。
 結成集会については、ブログの木金土を担当するイオ編集部の精鋭3人の誰かが報告してくれると思います。
 月刊イオでは今年から電子ブックレットをネット上に公開しています。その中の一つに「「高校無償化」―問題の始まりと闘い」と題して、これまで月刊イオに掲載した「高校無償化」問題の記事を集めて編集したブックレットがあります。「高校無償化」問題の基本がわかる内容となっています。無料なので、ぜひダウンロードしてご利用ください。Http://www.io-web.net/store/




 話は変わりますが、月刊イオ3月号が完成しました。特集は「3.11から3年 震災と同胞社会」。東日本大震災から3年が経った福島、宮城、岩手の被災地の様子を、同胞たちの生活を伝えるルポや、朝鮮学校児童・生徒の作文、放射能に苦しむ福島の家族の姿、宮城と兵庫に暮らす若い同胞の往復書簡など、様々な形で伝えています。また、現在も続けられている支援活動も紹介しました。

 特別企画は「絵本で世界旅行!」。世界の民話の絵本、各国のお国柄が楽しめる絵本、五感で楽しめる絵本、ロングセラーの絵本、平和を訴える絵本と、世界のいろんなお話が楽しめる絵本を一挙に紹介しました。

 特集、特別企画以外にも、東京朝鮮中高級学校で行われた特別支援クラス合同授業と講習会の模様や、「国連・人権勧告の実現を!」というタイトルで行われた集会とデモの様子、朝鮮籍同胞の旅券発給拒否処分取消訴訟問題、神奈川での朝鮮学校に対する補助金カットのことなど、3月号も盛りだくさんな内容でお届けしています。ご愛読ください。(k)

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