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10月30日は、東京無償化裁判控訴審判決!

2018-10-26 10:00:00 | (瑛)のブログ


 10月30日に東京高裁で控訴審判決が出される東京無償化裁判をめぐって25日、東京・霞ヶ関の司法記者クラブで原告である東京朝鮮中高級学校生徒の弁護団による記者会見が行われた。

 本裁判は2014年2月17日、東京中高高級部の元生徒(現在は卒業生)61人が国に対して各自への10万円の支払を求めた国家賠償請求訴訟。17年9月13日の一審判決は原告敗訴の結果に終わっている。

 東京地裁判決は、朝鮮高校はずしを目的とした「規定ハ削除」の違法性については、「政治的外交的理由だと裏付けるものとはいえない」とし、不指定処分が適法である以上、規定ハ削除の違法性は「判断する必要なし」として、本裁判の最大の論点である「規定ハ削除の違法性」については判断しなかった。

 しかし、今年3月20日から始まった東京高裁の審理過程では、国が東京朝鮮学園を不指定とした、2つの理由について裁判所から疑問が呈され、裁判長は国側が朝高を不指定とした2つの理由が論理的に成立しない可能性を指摘。「規程13条に適合すると認めるに至らない」という理由だけを判断した東京地裁判決に疑念が表明された。

おさらいすると、国が東京朝鮮学園を不指定にした2つの理由とは、
 ①規定ハを削除した
 ②規程13条に適合すると認められるに至らない
というものだ。

 記者会見で、喜田村洋一団長は、国が述べる2つの理由が論理的に両立しえず、理由としてもありえない、ということを実定法に基づいて説明した。要旨を整理する。

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 国が朝高を不指定にした理由は、
 
  ①規定ハの削除したと、いう「規則の問題」と

  ②規程13条に適合すると認められるに至らない、という「規程の問題」だ。

 法律は国会、政令は内閣、規則、規程は文部大臣が決めるものだ。

 重要なものほど上の機関が決め、その下にどんどん落としこんでいく。

 下位法は、上位法に委任された範囲内で決められる。上位法に反する下位法は無効だ。

 規定ハを削除した以上、下位法である規程13条は成立しえない。

 監獄法や薬事法で、規程が上位法に違反しているという最高裁の判断がある。

 上位法がなくなれば、下位法は自動的になくなる。

 2013年2月20日の官報に規定ハの削除が載った。法令が適用されるのは、官報に告示された日で、公布と同時に効力が発生する。規定ハについては、20日付けで効力を失ったことになる。それと同時に規則に伴う規程もなくなったことになる。

 東京朝鮮中高級学校側に不指定の通知が郵送で着くのは、早くて21日。行政処分は、相手方に届いたときに効力が発生する。

 しかし、20日付けで規定ハが削除されたので、21日の時点で法律は存在していない。

 つまり、東京地裁が朝鮮高校側の請求を棄却した理由とした、②は成立しえないのだ。これは行政法の基本に立った主張だ。法律、政令、規則、規程という、日本の法律体系の上下関係を基準にして考えれば、原判決が維持されることはありえない。

 ②の判断を採用するということは、行政法の考え方をすべてひっくり返すことで、法体系が崩れる。

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 高校無償化裁判をめぐっては、地裁レベルで広島、東京、愛知が敗訴、高裁では大阪で一審を覆す原告敗訴の結果になっているが、すべて国の主張を丸呑みしたヘイト判決で、「規程13条」の考え方を採用している。

 喜田村団長の主張は、各地の裁判で国を勝たせている②の理由が、そもそも理由にならないと論破したもの。国の不指定理由や不当判決の根拠を崩す判断が示される可能性がある――東京高裁の判決が注目されるゆえんだ。

 記者会見では、李春熙弁護士が発言。他地方の裁判では、朝鮮学校と総聯との関係が問題にされているが、東京高裁が審理の過程で、13年2月20日の不指定処分以降の証拠は「必要性なし」「関連性なし」として、国側が提出した、朝鮮総聯の活動が「反社会的である」とする証拠の多数を却下したことも紹介した。

 そもそも朝鮮学校と朝鮮総聯との関係は、本件の争点とは、まったく関係がない。

 最大の争点は、国が拉致問題を口実に朝鮮高校を外すために「規定ハ」を外したことが違法かどうか、だ。この論点を隠すために国が出してきた「論理」が、「規程13条」を利用した朝鮮学校叩きだった。

 「規定ハ削除」の違法性を「違法」と判断したのは、17年7月の大阪地裁判決だ。大阪地裁は、規定ハの削除は、「拉致問題を口実にした政治的理由によるもので、違法」「指定しないのは、裁量権の逸脱乱用」として原告の大阪朝鮮学園が勝訴。しかし、今年9月27日の大阪高裁ではこれがひっくり返された。

 司法すら国の差別を上塗り、ヘイトを撒き散らしている現状。

 そもそも文科省が、無償化法を法律の趣旨に添って適用していれば、原告を二度苦しめる裁判など起こす必要もなかった。

 東京高裁は「法の番人」としての、役割を果たせるのか―。

 判決は10月30日(火)16時から東京地裁101号法廷。抽選は15時半まで。(瑛)
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