日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

料理と風習

2018-10-11 10:00:00 | (理)のブログ
 イオ11月号「この街のオンマオリニサークル」では、埼玉県中部支部のアジャンアジャンフェ(よちよち会)を紹介する。9月末、取材のため埼玉朝鮮初中級学校(さいたま市大宮区)での集まりにお邪魔した。



 この日のイベントは、女性同盟の顧問による簡単コチュジャン作りだ。参加者が多く、始まる前から活気があった。

 コチュジャン自体は30分足らずで完成! 本来はもっと手間のかかる(発酵させながら作る)方法もあるそうだが、忙しいオンマたちが気軽に朝鮮料理に親しめるようにとオリジナルの短縮レシピを紹介していた。
 「簡単コチュジャン」と言えど、バシッと決まった味にオンマたちは大喜び。顧問が準備してくれていたハチノスにつけてじっくりと味わっていた。

 興味深かったのは、その場で飛び交うさまざまな言葉やエピソード。

「マヌル(にんにく)はバラしてお水に浸けるとつるんと皮がむける」
「にんにく、ゴマ、ごま油はチョソンサラム(朝鮮人)の3点セットね」
「昔は日本人が牛すじの良さを知らなかったけど、最近はだんだんと美味しさが分かってきて高くなっちゃったから残念」
「日本での内臓の食べ方は朝鮮人が広めたんですよ」

 うんうんと同意する声、へえ~と関心する声、そして「(発酵させて作るコチュジャンを仕込んでいた時は)醗酵の力が強くて、冷蔵庫の中で鍋の中のコチュジャンが爆発していて大変だった」という顧問の思い出話に笑いが広がる。
 あるオンマは、「顧問と喋ってたら美味しい思い出がいっぱい浮かんでくる…」と感慨深げにつぶやいていた。そのオンマのオモニも、伝統的な朝鮮料理を手間ひまかけて作る方だという。

 話を聞きながら、民族の文化や自身のアイデンティティに自覚的になる場面は生活の中でいろいろあるが、料理の話になるとそういったものが顕著に表れるんだなあとつくづく感じた。
 そういえば、親から朝鮮人であることを知らされずに育てられながらも、食卓にキムチがあったり、チヂミやスープなどの日本式でない料理から違和感に気づいたという話を聞くことが少なくない。知人や友人からそういう話を聞くたび、「なんでそこは気をゆるめる!」とつい笑ってしまう。それくらい、食文化は簡単には隠せないものなのかもしれない。

 話は戻って、アジャンアジャンフェの今イベントは大好評だったようだ。「こういうレシピや豆知識ってクックパッドじゃ分からないよね」という言葉に大きく頷いた。サークルの責任者によると、コチュジャン作りはオンマたちの要望で実現した企画だという。朝鮮料理を直接、2世の同胞から学べるこういう場は貴重で、またとてもニーズがあると思った。(理)