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大阪朝鮮学園が補助金不支給で大阪府と市を提訴

2012-09-26 09:00:00 | (K)のブログ

 先週の20日、大阪朝鮮学園は大阪地方裁判所に、大阪府と大阪市を相手に提訴した。提訴の内容は、府と市が朝鮮学校に対する2011年度補助金を交付しないとした行政処分の取り消しと、交付の義務付けを求めたものだ。訴状提出後、学園関係者と弁護士らが大阪弁護士会館で記者会見を開いた。
 記者会見には多くのマスコミがつめかけ、テレビニュースや新聞で報道されていた。提訴に関しての朝鮮新報の記事はこちら。
http://chosonsinbo.com/jp/2012/09/0920rn/

  私も大阪地裁、記者会見場へと行き、取材をした。

  訴状には要旨次のように書いてある。
 「長年にわたり毎年交付してきた、府と市の補助金を、不交付にしたことの違法を問う訴訟である。
 その不交付の理由は、明らかに政治的背景を有するものであり、またそのさらに背景には、朝鮮学校に対する敵視、差別、またそのような政治なり政治家の姿勢があるものであって、かかる背景に起因する問題は本件の対象事項にとどまらない広がりをも有している。
 大阪府、大阪市が政治的理由により朝鮮学園に対して補助金を交付しなかった今回の行政処分は、子どもの学習権、ひいては、民族的マイノリティの教育への権利を明らかに侵害するものである。」

  朝鮮学校に対する大阪府の補助金は1974年から、大阪市の補助金は1990年から支給されてきた。事態が変わるのは、橋下徹氏が大阪府知事に就任してからである。10年3月に橋下知事(当時)が、朝鮮総連と一線を画すことなどきわめて不当な「4要件」を突きつけたことに始まる。学校側・保護者側の誠実な対応、交渉努力、そして譲歩を踏みにじりながら「要求」をエスカレートさせてきた。そしてついに、府は3月29日に、市は同30日に、不支給を決定したのであった。

 不支給を決める手続きも非常に許せない。府は上記の「4要件」などの内容が新たに加えられた要綱を、3月7日に駆け込み的に改訂し、これを前年4月1日に遡及して適用するとした。市の不交付の理由は「大阪府の補助金の対象でない」となっている。もともと市の補助金は府とは関係なく独自の判断で支給されていたものなのに、これまた3月27日に駆け込み的に、「府の補助金交付の対象となること」という内容を追加した要綱に改訂して前年4月1日に遡及して適用するとしたのであった。

  訴状では、民族的マイノリティの民族教育が憲法や国際人権法、国内法に照らしても保障されなければならないものであること、不支給の違法性などについて明らかにされている。

  朝鮮学園の代理人弁護士は、大阪府、市の補助金不支給は、「朝鮮学校を狙い撃ちした政治的な弾圧」だと指摘する。そして、「万策を尽くし、唯一残された道は司法に訴えることだけだったし、いま立ち上がらなければ、60年以上築き上げた朝鮮学校の歴史的意義と子どもたちが安心して自らの民族を誇りながら生きていく居場所を奪われてしまう」と語っていた。

  大阪の朝鮮学校を取り巻く厳しい状況の中、今年3月に朝鮮学校関係者、朝鮮学校を支援する市民団体、弁護士の三者共同団体である「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」が結成され様々な支援活動を行ってきた。毎週火曜日の府庁前での行動もそうだし、大阪朝鮮学園支援府民基金(愛称:ホンギルトン基金)の設立もそうだ。

 今回の裁判の争点は「行政の裁量権」となるとのことだが、それはあくまでも「裁判上」のことである。連絡会・大阪の人々が今回の取材の過程で語ってくれた言葉が、今回の裁判の本質を物語ってくれていた。

 「不支給は民族差別に基づくものであって、訴訟はこうした民族差別を許さないんだというメッセージを日本社会に発信していく意味もある。朝鮮学校に対するバッシングがいろんな形で出ているけれど、それが正当化される、そういう社会は変えていかなければいけない」(日本人学者)

 「裁判の過程において、民族教育の意義、その意義というのは在日同胞社会のみならず、日本社会においても、在日同胞の民族教育がどういう意義があるのか正面から問いかけていくことになる。これは単純な補助金を求める裁判ではなくて、これまで何十年間、何度も起こってきた法的な不平等を是正するとともに、朝鮮学校の価値を正面から問う、そういう意義のある裁判だと思っている」(同胞弁護士)

 「排他的なナショナリズムを基盤とする政治勢力の再編という方向に日本が向かおうとしている中、この裁判は、日本社会がどうあるべきかということを問う裁判でもある」(日本人弁護士)

 記者会見で見せた、学園関係者、保護者、日本人支援者らの表情は、新たな段階に入った闘いを、最後までやりとげ勝利を勝ち取るのだという使命感に満ち溢れていた。(k)

  裁判に関する記者会見が終了した後、その場で、ホンギルトン基金で集まった800万円が大阪朝鮮学園に渡されました。
 朝鮮学校を運営していくには、さらに幅広い人々の支援が必要です。「大阪朝鮮学園支援府民基金」(ホンギルトン基金)の振込先などを改めて、お伝えします。ぜひご協力ください。

 寄付=個人1口1000円、団体1口1万円(何口でも可)

振込先 ゆうちょ銀行 店名〇九九 当座 0164342 口座名義=大阪朝鮮学園支援府民基金
郵便振替口座記号 00980-6-164342 口座名義=大阪朝鮮学園支援府民基金
ミレ信用組合西成支店 普通口座 1088887 口座名義=大阪朝鮮学園支援府民基金
※お振り込みの後に、お名前とご住所を、E-mail でお送りくださるようお願いします。
E-mail =osakakikin@yahoo.co.jp