皆様ごきげんよう。徹夜明けでテンション高めの黒猫でございます。
さて、徹夜の原因の感想を。
『アンダー・ザ・ドーム』(スティーヴン・キング著、白石朗訳、文藝春秋)
メイン州にあるチェスターズミルは、人口およそ2000人程度の小さな街。
この街の食堂のコック、デイル・バーバラ(バービー)は、この街の出身ではない、いわゆるよそ者。少し前に町政委員の息子、ジュニア・レニーとその取り巻きに絡まれ、諍いを起こした彼は、今まさに街から出て行くところだった。
しかしちょうどその時、バービーの耳に爆音が響く。街の上空で飛行していた小型飛行機が突然墜落したのだ。事故現場に駆けつけた彼は、現場の状況が不自然なことに気づく。
事故の音を聞きつけてやってきたもうひとりの男は、バービーの少し手前で見えない壁にぶつかって鼻を折り、街へと通じる道を走ってきた車はある位置で見えない壁に激突して炎上した。
チェスターズミルは原因不明の透明な壁<ドーム>に覆われ、外部から完全に隔絶されたのだ。
出入り不能となったチェスターズミルを調査した軍は、既に除隊しているが軍隊経験のあるバービーを街の指導者に任命する。しかし第二町政委員ながら事実上のNo.1であり、権力を何よりも愛するビッグ・ジムはこれを一笑に付し、以前から目障りだったバービーを排除するために警察を手中に収め、次第に権力を強化しながらバービーを陥れようと画策する。
実はビッグ・ジムは以前から不正に街の資金を流用し、ドラッグ生産工場を作り巨万の富を得ていた。
バービーは以前からビッグ・ジムに不審を抱いていた街の新聞社オーナー、ジュリアや、前署長の妻ブレンダなどに助けられ、<ドーム>を作り出した原因を探るとともに、ビッグ・ジムによる独裁を阻止しようと試みるが・・・?
というような話。
原因不明の障壁に覆われて、完全に孤立してしまった街を描いた作品です。
ジャンルとしてはパニックもの?ホラー要素・超自然要素もあり、まあキングが一番得意とするジャンルだと思って頂ければよろしいかと。
いやあ、すごかった。
とにかく登場人物が多い。
街の人口は2000人程度ということですが、巻頭に挙げられた主だった人物(犬も数匹)だけで60人くらいいます。
最初のほうの<ドーム>出現のあたりは出現と同時にお亡くなりになる方も多いので、いちいち覚えなくてもいいですが、でもこのあたりで慣れておかないとあとが大変です。読む時は一気に読んだほうがいいと思います、登場人物多すぎて誰が誰やらになる前に読み終われるから。
主要な悪役は最初から既に真っ黒に悪く、精神的にもちょっとおかしい。
外から警察や軍が介入できないのをいいことにどんどん悪事がエスカレートします。それが街の権力者(町政委員)親子だったからさあ大変。町政委員は3人いるんですが、一人は傀儡、一人は痛み止めの薬物中毒で、最後の一人、ビッグ・ジムの思うまま。こういう人はやたらカリスマ性があるせいか、街の人たちの大部分を巧みに操り、自由の国アメリカはどこ行ったという状態になっていきます。閉鎖空間恐ろしい。
銃がなかったら相当違ってくるんでしょうが、アメリカは建国の歴史とともに銃があるようなもんですからね。銃のない世界のほうが想像しにくい。
バービーを始めとする少数のまともな人々はビッグ・ジムの外面に騙されず、それに抵抗しようとするんですが、最初から数が少ない上にこれでもかというほどピンチに陥り、ものすごいバッドエンドになるのではとハラハラし通しでした。
半ばでドームを作り出した正体がおぼろげながら明らかになるんですが、なったところで打つ手がなく、これの決着は最後の最後まで持ち越されます。正体はなんとなく予想はついていましたが、どういう風に決着するのかは予想がつきませんでした。
こういうオチかー。
途中途中で挟まれた主役クラスのふたりの過去がこんな風にオチに絡むとは。解決ではないけど終結した、という感じですね。
それにしても今回章タイトルがよかったです。特に最後の「それを着てうちに帰りな、ワンピースに見えるよ」は秀逸だと思います。
久しぶりのキングの共同体ものを満喫した感。間違っても爽やかな読後感ではないですが、読み応えたっぷりで面白かったです。わたしキング作品ではこの手のが一番好きかも。
まあ、キングファンとしては今回の舞台チェスターズミルがキャッスルロックに隣接という時点で既に死亡フラグが立っているといわざるを得ないんですがね。メイン州呪われてるよ、キング世界的には。