満月と黒猫日記

わたくし黒猫ブランカのデカダン酔いしれた暮らしぶりのレポートです。白い壁に「墜天使」って書いたり書かなかったり。

『英国王のスピーチ』

2011-06-12 03:14:28 | 映画

皆様ごきげんよう。ぼーっとしたままの頭で支度をしてジムに行ったら、左右で色違いの靴下を装備する羽目になった黒猫でございますよ。まあ、準備してったのも自分なので誰も責められないです。もし誰かに指摘されたら「ガイアが俺にもっと輝けと囁いているから」と答えるつもりでしたが、靴を履いてしまえばほぼ見えなかったので問題なしでした。無駄にドキドキしたぜ。


今日は映画のレビュー。

『英国王のスピーチ』

英国王ジョージ5世(マイケル・ガンボン)の次男・アルバート(コリン・ファース)は幼い頃から吃音があり、立場上時折行わなくてはいけない大衆の面前でのスピーチを大の苦手としていた。
アルバートの妻・エリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)は夫のために様々な言語聴覚士を訪ね歩き、スピーチ矯正の専門家・ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)に辿り着く。アルバートは渋るが、ひと悶着の末結局ライオネルのもとで矯正をすることに。
オーストラリア人のライオネルは、大声を出す、腹筋を鍛える、力を抜いて身体を揺するなど、今までにかかったどの専門家とも違ったやり方でアルバートの吃音矯正をしていく。

そんな中、アルバートの父であるジョージ5世が崩御し、アルバートの兄・デイヴィッド(ガイ・ピアース)がエドワード8世として王位を継承する。デイヴィッドには結婚するつもりで交際している女性がおり、彼女は離婚経験者だった。英国国教会は離婚女性を王妃に迎えることを容認することはできない。周囲の説得も虚しく、結局デイヴィッドは愛する女性のために退位することとなり、アルバートが王位を継ぐこととなる。

折りしもイギリスはドイツと対立しており、ナチスドイツとの開戦を余儀なくされ、国内は不安に揺れていた。
そんな国民に向かって、アルバートはイギリス国王としてラジオでスピーチをしなげればならず・・・?

というようなお話。

以下ちょっとネタバレがありますので知りたくない方は読まないほうがよろしいかと。



いやあ、素晴らしかったです。
何がって、英国紳士たちのスーツぶりが。主役のコリン・ファースはもちろん、他の出演者たちのスーツの着こなしの美しいこと。まあ主に上流階級が舞台の話なので、それぞれみんな最高のスタッフに仕立ててもらったものを着ているんでしょうから似合って当たり前なんでしょうけど、下々の皆さんもそれぞれ素敵でした。言語矯正担当のライオネルは下町の人間として描かれていますが、それでも毎回お洒落だったなあ。
兄のパーティーに呼ばれたシーンでキルト姿のコリンも一瞬拝めます。これはこれでいいものだ。
いやあイギリスは真に紳士の国ですな、とか、内容にあまり関係ないことをしみじみ思いました(笑)。

コリン・ファースの王族ぶりも素敵でした。すきすき。喋るのは苦手だけど実は癇癪持ちという役柄で、プライベートなことまでぐいぐい突っ込んで訊いてくるライオネルにキレて怒鳴ったりします。その神経質そうな雰囲気がまたいい。ちょっとネタバレになってしまいますが、謝る時も上から目線な態度にグっと来てしまいました(笑)。まあ、王様だから当たり前なんですが。

コリンもよかったけどライオネル役のジェフリー・ラッシュもアルバートの奥様役のヘレナ・ボナム=カーターも素晴らしかったです。そらアカデミー賞4冠獲るわ。


ライオネルが持ち前の気安い態度で色々と治療に関係なさそうなことまでうまいこと訊き出した結果、アルバートが幼少期に乳母に虐待を受けていたことが判明し、それが吃音の原因のひとつであるとわかります。
王族が虐待されるってマジかよ、と思いましたが、イギリスの上流階級って子育てを直接親が行わないので、発覚しにくかったのかも。あと、現代にあっては虐待だろと思われるようなことも、躾の一環として平気で行われていたということもあります。このことを告白するシーンは観ているだけでかなしかったですが、一番重要なところだったかも。
王族に生まれていなければそこまでやる必要もなかったんでしょうけど。

しかも次男だったので、いわゆる帝王学は受けていなかったのに、結局王位を継承する羽目になってしまい、スピーチ以外も色々大変だったろうと思います。そんな彼を支えたのが妻と二人の子供。家族の仲はとても良く、二人の娘にお話をしてあげるシーンなど、見ていて実に微笑ましかったです。王女ふたりがとっても可愛かった。このうちの上の娘さんが今の国王エリザベス2世というわけですね。

クライマックスは英国王としてのスピーチです。ラジオ放送なので大勢の人の前で喋らなくても済みますが、今までのスピーチとは責任の重さもプレッシャーも桁違いです。しかも当時はオーストラリアとかインドとか、今は独立している植民地の王でもあるわけですから、演説のたびに「イギリスおよびカナダ、オーストラリア、インドの王として」とか言わなきゃいけないわけです。これ吃音ない人でもハードル高すぎるよ。

このシーンは本当に国民と一緒になって固唾を飲んでスピーチに聞き入る心境でした。コリンがんばって!かっこいいから大丈夫!と(笑)。

wikiを見るとジョージ6世はご本人の真面目な性格から国民には非常に愛され、「善良王」と呼ばれたそうです。よかったよかった。


それにしてもエドワード8世(デイヴィッド)はあのご時世で恋のために退位するって逆にすごいなと思いました。ロマンス小説か。
この人によってジョージ6世の色んなハードル上がっちゃったんだろうなあ。