Gabbie's Cafe

 天使のカフェへようこそ

変わらないもの変わるもの

2005年11月09日 | Cafe Sweets

ひとつは青の市松模様、もうひとつはそら豆色の可愛らしいボールに入って、友人が丁寧にいれてくれたカフェオレは出てきました。
フランス映画の中で、顔がすっぽり隠れてしまうほどの大きなカフェオレボールを両手で包んで飲んでいるシーンを初めて見た時のことが、ふと思い出されました。
あれ以来、カフェオレボールというやつにずっと憧れていたのです。どんぶりさながらのあの大きさ。うどんでも入っているのか!?と思いきや、中に入っていたのは意外にも泡立ったミルクがたっぷり入ったフレンチコーヒー・・・。“コーヒーはカップで飲むもの”という既成概念を打ち破る、衝撃のワンシーンだったわけです。

先日、あるレストランを訪ねて生まれ育った横浜に行きました。
それはデパートの中にあり、テーブルには白いクロスがかかっていて、座るときに給仕の人が後ろから椅子を押してくれるような、きちんとした店でした。
幼いころから、何か特別なことがあると決まって母がそこへ食事に連れて行ってくれたものでした。そこへ行く時には、なんだか自分が大人になったような気がしてわくわくしたのを思い出します。
私の人生の中で、節目節目に母とこの店で食事をするのが、決まりのようになっていました。流行り物の派手さはないけれど、いつも変わらない質の良い料理とサービスに出会える数少ない店として、私にとって特別な場所でした。
10年ぶりに訪れると、その店は元の場所にはありませんでした。聞けば最上階のレストラン街にリニューアルオープンしたとのこと。エスカレータを上った先には、すっかりきれいになって様変わりを遂げた同じ名前の店がありました。
ふぅんと思いつつ店に入り、席に着く。垢抜けて洗練された雰囲気の店内。けれどもテーブルには昔のように白いクロスはかかっていませんでした。以前よりずっと年齢層が低いウエイトレスたち。店はすっかり、若者向けのカジュアルなものに変わっていました。

不思議とがっかりはしませんでした。むしろ、世の中のものはすべて変わっていくんだなと妙に腑に落ちた感じがしただけでした。変わっていかなければ生き残っていけない現実があるんだなぁ・・・と。

変わっていくもの朽ちていくもの別れを告げねばならないもの・・この世はそんなものばかり。でもそれでいいんだと言えた時に、一歩前に進めるのかもしれません。そしてそう言えるためには、決して変わらないものに根をおろしている必要がある気がします。もちろん、そう言えない時もある。でも、変わらないものは必ず変わらずに私達を待っていてくれる。そう言えるようになるまで・・ね。

長いこと憧れているのに、なかなかカフェオレボールを購入できずにいるのは、自分のものにしてしまうといつか特別なものでなくなるような気がするからかもしれません。
でもいつか店でカフェオレを出すときは、顔も隠れんばかりのおおきなボールを傾けて、ほっとしながら飲んでほしいかな。