久しぶりに市外の展覧会に出かけた。たびのそら屋さんで、猪爪彦一さんと季村江里香さんの二人展である。
壁面も空間もめいっぱい使った会場はその面積以上に見応えがあった。
游文舎での季村さんの個展から一年近くたつ。季村さんとの出会いはその数年前、そして「毒素の秋」展の常連として、年々、作風は多彩に展開し、目を瞠るほどに深さを増していった。さらに昨年秋には金沢のアートフェスティバルでも会場を見事にまとめていた。
そのたびに大きく成長する季村さんの作品は、今展でもそれぞれが強い意志を持ちながら、全体として人間の深淵に呼応するように語りかけてくる。細やかな手作業は、祈りや呪術行為をも思わせた。顔だけではない、手や足といった部分の一つ一つが物語の入り口となり、独特のテクスチュアーを引っ掻いたような描線に思考の過程を覗き見る。
そして猪爪さんである。いつもの静かな中世風の風景もよく見ると、ひょいと日常を跳越えている。そんな場面に季村さんの作品が紛れ込んでいても不思議ではない。そして必ず新しい面を見せてくれる。
鳥と、もうひとつ、一体何?会場をぐるぐる回ってはここに戻ってみる。どうにも気になる作品だ。
5月の風の中で、見る人それぞれが日常に潜む、あるいは日常を忘れて、物語を思い巡らす場所になることだろう。
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