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父の教訓(君子危うきに近寄らず)

2014-03-08 | Weblog

  今は亡き父は長年公務員だったが趣味は浪花節だった。
終戦時、外地から帰国した数か月間私達家族はあっちこっちテント暮らしをしながらその趣味の浪曲を生かし、演劇ドサ回りの一員として飢えを忍んだ事もあり、いろいろな歴史的な昔話も良く知っていた。
父は話がとても上手で幼い時より「忠犬ハチ公」「軍馬と兵隊」「バカ息子物語」又歴史上の人物「源の義経、毛利の三本の矢、秀吉や家康、その他あらゆる剣豪物(忠臣蔵の堀部安兵衛、佐々木小次郎、宮本武蔵、後藤又衛、千葉周作)等、時には近所の子供達20人位父の話を聞きに家に集まって来た。
娯楽の少ない時代で皆とても楽しみにしていた。面白可笑しく子供達に話す人気者の父だった。

私がしっかり記憶にあるのは「君子危うきに近寄らず」で剣豪塚原卜伝の話。
道場の後継ぎを選ぶのに先生は免許皆伝の弟子三人の中で誰にするか迷っていた。
ある日、先生は襖の上に扇子を仕掛け、開けると落ちるようにして順番に弟子を呼んだ。一番に呼ばれた弟子は見事に襖を開けると同時に扇子を居合で真直ぐ切り落とした
二番目に呼ばれた弟子も同じように逆さ切りで見事に切り落とした。
三番目に呼ばれた塚原卜伝は、その襖を避けて反対の襖を静かにあけて先生の前に正座した。
先生は迷わず塚原卜伝を後継者と決めた。
道場主の先生は「君子危うきに近寄らず」これぞ無手勝流の極意。
本当に強い者は自分の行動を慎むものと教授したとの事。
又卜伝は全国武者修行中、渡し船の中で威張って大騒ぎする豪傑侍を最初は知らないふりして黙って寝ていたが、あまりしつこく乗船した皆に迷惑をかけるので、少し静かにとたしなめたら「勝負しろ!岸につけろ!」船頭は仕方なく岸につけると豪傑侍は先に飛び降り勝負だと怒鳴っていたが、卜伝は降りると見せかけ船頭から竿を借りて舟を沖へ出し、一人岸辺に降ろされ豪傑侍は卑怯者と言いながら怒鳴りまくっていたが、卜伝と乗船客に大笑いされたとの事。

私は若い頃、自衛隊最強の特殊空挺部隊に7年間籍を置き、「あらゆる武道」、「体力、精神力の限界のレンジャー教育」、「多種武器の射撃」、「徒手格闘(敵を数秒で倒す)格闘技を身につけた。その後一般社会に出て何度か避けられないトラブルにあったが、父の昔話の教訓「君子危うきに近寄らず」が加害者、被害者にもならず、今迄この年まで大きな事件、事故にも合わず平穏に無事で過ごせたと本当に感謝している。
    
                    
 (老いた卜伝修行の若武者を鍋の蓋での場面)(3月の美しき見事な紅梅)