漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 1087

2022-10-21 06:21:37 | 古今和歌集

あぶくまに きりたちくもり あけぬとも きみをばやらじ まてばすべなし

阿武隈に 霧立ち曇り 明けぬとも 君をばやらじ 待てばすべなし

 

よみ人知らず

 

 阿武隈川に霧が立ち込め、そのまま夜が明けてしまっても、あなたをお帰しはしません。帰ってしまったあなたを待っていると、つらい気持ちになってしまうので。

 「君」は想いを寄せる異性、「やる」は人を行かせる意。
 ここから、古今集本体最後の 1100 までは「東歌(あづまうた)」。東国の歌ということですね。そのうち 1093 までは「陸奥歌(みちのくうた)」です。古今和歌集のご紹介も、いよいよ読み切りまで秒読みになってきました。


古今和歌集 1086

2022-10-20 05:55:04 | 古今和歌集

あふみのや かがみのやまを たてたれば かねてぞみゆる きみがちとせは

近江のや 鏡の山を たてたれば かねてぞ見ゆる 君が千歳は

 

大友黒主

 

 近江国には鏡山という名の山が立っているので、わが君の長寿が今からもう見えています。

 左注には「これは今上の御嘗の近江の歌」とあります。「今上」が指すのは第60代醍醐天皇。その大嘗祭が執り行われたのは 897年のことです。近江の鏡山を詠んだ歌は 0899 にもありました。よみ人知らずの歌ですが、そこに「この歌は、ある人のいはく、大伴黒主がなり」とあるのは、あるいはこの 1086 が黒主歌であるためかもしれません。

 

 

 


古今和歌集 1085

2022-10-19 05:37:42 | 古今和歌集

きみがよは かぎりもあらじ ながはまの まさごのかずは よみつくすとも

君が代は 限りもあらじ 長浜の 真砂の数は よみ尽くすとも

 

よみ人知らず

 

 わが君の代は、限りなく長く続くことでしょう。たとえ長浜の砂の数は数え尽くすことがあったとしても。

 左注には「これは仁和の御嘗の伊勢国の歌」とあります。ですので、「長浜」は伊勢の地名と思われますが具体的な場所は不明。「仁和」は第58代光孝天皇、その大嘗祭(御嘗)は 884年に執り行われています。国家「君が代」のもととなった 0343 の第一句は「わが君は」ですが、こちらは「君が代は」ですね。時の帝の代の永続を願うこうした和歌は、それこそ「限りもあらじ」で、たくさん謳われてきたのでしょう。


古今和歌集 1084

2022-10-18 06:04:09 | 古今和歌集

みののくに せきのふじかは たえずして きみにつかへむ よろづよまでに

美濃の国 関の藤川 絶えずして 君に仕へむ 万代までに

 

よみ人知らず

 

 美濃の国の関所に流れる藤川は、流れが絶えることがない。私も同じように、絶えることなく帝にお仕えしよう。

 左注には「これは元慶の御嘗の美濃の歌」とあります。「元慶」は第57代陽成天皇を指し、その大嘗祭が執り行われたのは 877年のことです。「藤川」は現在は「藤古川」と呼ばれる川で、岐阜県不破郡を流れる川。第二句の「関」は不破の関のことのようです。


古今和歌集 1083

2022-10-17 06:07:13 | 古今和歌集

みまさかや くめのさらやま さらさらに わがなはたてじ よろづよまでに

美作や 久米の佐良山 さらさらに わが名は立てじ 万代までに

 

よみ人知らず

 

 私の噂はさらさら立てるまい、万年の後までも。

 左注には「これは水尾の御嘗の美作国の歌」とあります。「水尾」は第56代清和天皇、「御嘗」は大嘗祭ですね。清和天皇の大嘗祭が執り行われたのは 859年のことです。第一句、第二句が「佐良山」と同音で始まる「さらさらに」を導き、軽快なリズムを生み出していますね。