漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0851

2022-02-27 06:30:16 | 古今和歌集

いろもかも むかしのこさに にほへども うゑけむひとの かげぞこひしき

色も香も 昔の濃さに にほへども 植ゑけむ人の 影ぞ恋ひしき

 

紀貫之

 

 梅の花は色も香りも昔と同じように深いけれども、これを植えた人は今は亡く、そも面影が恋しく思い出されることよ。

 詞書には「あるじ身まかにける人の家の、梅の花を見てよめる」とあります。「にほふ」は現代では嗅覚のみに用いますが、古語では視覚・嗅覚両方に用いられます。視覚で用いる場合は「美しく映える」意ですね。前歌(0850)と同じく、花を見てそれを植えた故人を偲ぶ詠歌です。