漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

1級配当以外の四字熟語

2016-01-03 09:28:13 | 四字熟語
 「1級配当四字熟語を網羅することが、漢検1級合格への近道」というのが私のかねてからの主張です。これを物にすれば、本試験の「(五)四字熟語」の設問で30点満点中28~30点の得点が期待できる上に、(一)(二)(九)(十)でも、1級四字熟語の知識で正解できる問題は数多く、全体では50点近くを確保できるのがその理由です。

 一方で、(五)では1級配当以外の四字熟語もぽつりぽつりと出題されています。私は、漢検1級初合格のためとの観点では、こうした問題は捨てて良い(誤答でやむなし)と考えていますが、それでも過去問に出たものが再出題された場合は、やはり押さえておきたいところ。 「過去問を落とさない」というのは、「1級配当四字熟語を網羅する」こと以前の、合格のための基本中の基本ですからね。

 というわけで、今日は平成15年度以降の過去問から、1級配当以外のもの(下位級配当とされているもの及び「漢検 四字熟語辞典」に記載がないもの)を拾ってみました。どうぞチャレンジしてみてください。



<問題>

1  とうまちくい
2  ほうとうこうめん
3  たいきんせきぎょく
4  だんしょうしゅぎ
5  とせつだこう

6  きんせいぎょくしん
7  ひじちょうもく
8  やろうじだい
9  しゃさいとりょう
10  かんりとうえき

11  だんがんこくし
12  すんぜんしゃくま
13  そうこほうし
14  ぶぶんろうほう
15  うんきんせいふう

16  なんかくらんすい
17  さていゆうけつ
18  しゅうこうしゃくきん
19  かそうさいり
20  はつぼくりんり

21  たくらくしつろ
22  ひっきゅうろうだん



<解答>

1  【稲麻竹葦】   (「漢検 四字熟語辞典」P.362  15-1で出題  準1級配当)
 たくさんあることのたとえ。多くの人や物が群がって入り乱れるさま。
2  【蓬頭垢面】   (P.434 16-2 準1級配当)
 身だしなみが悪く、むさくるしいさま。
3  【堆金積玉】   (P.317 17-2 準1級配当)
 非常に多くの富を集めること。
4  【断章取義】   (P.326 19-1・25-2 5級配当)
 抜き出して用いること。
5  【斗折蛇行】   (P.368 19-2 2級配当)
 川や道などがくねくねと折れ曲がるさま。

6  【金声玉振】   (P.166 19-3 4級配当)
 才知と仁徳を調和よく備えていること。偉大な人物として大成すること。
7  【飛耳長目】   (P.398 20-2 5級配当)
 広く情報を収集し、物事を深く鋭く判断すること。
8  【夜郎自大】   (P.455 21-1 4級配当)
 自分の力量も知らず、偉そうな顔をしているたとえ。
9  【車載斗量】   (P.242 22-2・27-1 3級配当)
 人や物の数や量が多くてはかりきれないことのたとえ。
10  【冠履倒易】   (P.141 23-1 2級配当)
 上下の順序が乱れること。

11  【弾丸黒子】   (P.325 24-1 4級配当)
 きわめて狭い土地のたとえ。
 「漢検 四字熟語辞典」には、【弾丸黒痣】 も載っています(こちらは1級配当)。本試験の標準解答は 【黒子】 の方だけになっていましたが、【黒痣】 と書いてももちろん正解でしょう。
12  【寸善尺魔】   (P.280 24-2 3級配当)
 世の中にはよいことが少なくて悪いことが多いたとえ。
13  【桑弧蓬矢】   (P.307 25-1 準1級配当)
 男子が志を立てること。
14  【舞文弄法】   (P.420 25-3 準1級配当)
 法を都合の良いように解釈すること。
15  【運斤成風】   (P.100 26-1 3級配当)
 人間離れしたすばらしい技術のこと。

16  【南郭濫吹】   (P.372 26-3 3級配当)
 無能な者が才能があるように見せかけて、よい地位を占めること。
17  【左提右挈】   (19-3)
 左にひっさげ、右にたずさえる。手を取り合って助け合うこと。
 ここからの6問は「漢検 四字熟語辞典」に記載のないものですが、この 【左提右挈】 は「漢検 漢字辞典」には見出し語として載っています。(初版 P.537/第二版 P.542)
18  【衆口鑠金】   (25-3)
 事実でないことでも多くの人が言うと、いつのまにか真実のようになってしまうたとえ。多くの人の言葉やうわさは、硬い金をも溶かしてしまうほどの力がある意。
 こちらは、 【衆口金を鑠かす】 という故事成語の形で「辞典」に記載があります(688/694)。また 22-1 では、「衆口は金を かす」 の形で、(一)の訓読み問題として出題されていました。なので、過去問を深く研究していた人には、四字熟語としては知らなくても正解できた問題ではありました。しかし、なかなかそこまでは・・・(苦笑)
19  【禍棗災梨】   (26-2)
 無用の本を刊行すること。
 比較的メジャーな熟語のようですが、何故か「漢検 漢字辞典」にも「漢検 四字熟語辞典」にも記載がありません。
20  【潑墨淋漓】   (26-2)
 筆に十分墨を含ませて、雲や煙の趣などを奔放に勢いよく画くさま。

21  【拓落失路】   (26-3)
 十分な地位を得られず、出世の道が絶たれること。
 こちらも、「漢検 漢字辞典」には記載されている熟語です(994/1001)。
22  【必求壟断】   (27-1)
 利益を自分だけのものにすること。



詩人は四字熟語がお好き?

2014-12-23 15:26:50 | 四字熟語
 今日は四字熟語のお話し。
 「辞典」を眺めていて、 【石破天驚】 という四字熟語が目にとまりました。詩や文章が巧みであることのたとえで、漢検の級では4級配当とのこと。四字熟語の配当級は、使われている漢字の配当級で決められているようですが、四字熟語自体の使用頻度も考慮すべきですよね。まあ、実際の出題はそうなっているようなので良いのですが。。。

 さて、これを見て、そう言えば詩人や詩文に関係する四字熟語がたくさんあったなと思ったので、まとめてみました。書き取りの練習にどうぞ。



<問題>

1 がいだせいしゅ
  権勢の盛んなさま。詩文の才が豊かなさま。

2 げっかすいこう
  詩文の字句・表現をあれこれ工夫をこらし、完成を目指すこと。

3 いっしょういちえい
  ひと杯の酒を飲んで一つの詩を作る。

4 いっしょうさんたん
  すぐれた詩文を称賛する語。

5 がんえいしょか
  文章のすぐれた部分をよく味わい、心の中に蓄積すること。詩文に妙味があることのたとえ。

6 けいしせんだん
  有徳の人の形容。すぐれた詩文のたとえ。

7 しぼくとごう
  文人。詩文を作る人。

8 きょくすいりゅうしょう
  曲折した水の流れに杯を浮かべ、それが自分の前を流れすぎないうちに詩を作り、盃の酒を飲むという風雅な遊び。

9 りんろうしゅぎょく
  非常に美しい玉。すぐれた人物や美しい詩文のたとえ。

10 こうきんげきせき
  詩文の美しいリズムを、打楽器の美しい音色にたとえた言葉。

11 ちんうつとんざ
  詩文の風格が高く内容が深くて文章中の字句の意味がすらすらと通らず、滞ること。

12 ひょうおうせつわん
  清らかで上品な文具のこと。また、それを用いて詩文を写すこと。

13 しじんぜいこつ
  銘茶をたたえる語。また、銘茶のこと。すぐれたお茶は詩人の感性までもすぐれたものに変えてしまうことをいう。

14 ちょうふうろうげつ
  風や月を題材にして詩歌を作ること。

15 せきはてんきょう
  このうえなく音楽が巧妙なこと。また、詩文が非常に奇抜ですぐれていること。

16 おうようろらく
  初唐の四人の詩の大家。王勃、楊炯、盧照鄰、駱賓王。

17 はきょうろじょう
  詩を作るのに絶好な場所のこと。



<解答>
 かっこ内の数字は、「漢検 四字熟語辞典」初版の掲載ページです。

1  【咳唾成珠】   (P.119)
2  【月下推敲】   (P.178)
3  【一觴一詠】   (P.84)
4  【一倡三歎】   (P.84)
 これ自体は1級配当ですが、「一唱」「三嘆」でもOKなので、実際に1級の問題としては出そうにないですね。
5  【含英咀華】   (P.133)
6  【瓊枝栴檀】   (P.174)
7  【子墨兎毫】   (P.240)
8  【曲水流觴】   (P.158)
9  【琳琅珠玉】   (P.474)
10  【敲金撃石】  (P.189)
11  【沈鬱頓挫】  (P.343)
12  【氷甌雪椀】  (P.406)
13  【詩人蛻骨】  (P.233)
14  【嘲風哢月】  (P.340)
15  【石破天驚】  (P.290)
16  【王楊盧駱】  (P.113)
 人の名前を4つ並べただけの語なので、まず出題はされないでしょう。
17  橋驢上】   (P.380)
 「」は漢検配当外。なので出題されることはありません。こういう熟語が載っているのが、「漢検 四字熟語辞典」の不思議なところ。

 不思議ついでですが、この中に平成15年以降の本試験で出題されたことのある熟語は一つもありません。単なる偶然だとは思いますが、ちょっとびっくりしました。



(  は島根県立大学e漢字フォント  の漢字フォントを使用しました。)

学び

2014-11-23 16:26:12 | 四字熟語
 11/10の記事でご紹介した「漢字教育サポーター育成講座」ですが、やはり申し込んでみることにしました。募集定員300名で受講可否の審査もあるようなので、実際に受講できるかどうかわかりませんが、さきほど願書を書き終えました。願書の裏面は「志望理由書」になってまして、普通に書くと900字分くらいのスペースでしょうか。余り字数を気にせずに思うところを書いてみたら、たまたまですがほぼスペースぴったり。「これは審査は通るな」と根拠のない「予感」に浸っています。(笑)  審査結果がわかるのが1月下旬とのこと。随分待たされるんだなぁという感じですが、楽しみに待ちたいと思います。


 などという個人的なご報告だけではなんなので、「学び」に関係する四字熟語のおさらいを。


【匡衡壁鑿】   きょうこうへきさく   (「漢検 四字熟語辞典」初版 P.155)
【鑿壁偸光】   さくへきとうこう   (P.218)
【車胤聚蛍】   しゃいんしゅうけい   (P.241)
【断薺画粥】   だんせいかくしゅく   (P.327)
【昼耕夜誦】   ちゅうこうやしょう   (P.333)

 これらはいずれも苦学することですね。

 「勉学に励むこと」的な意味のものとしては、

【鑿窓啓   さくそうけいゆう   (P.218)
【朱墨爛然】   しゅぼくらんぜん   (P.253)
【砥礪切磋】   しれいせっさ   (P.266)
【精励恪勤】   せいれいかっきん   (P.288)
【切磋琢磨】   せっさたくま   (P.292)
【鏃礪括羽】   ぞくれいかつう   (P.313)

といったあたり。

 学問がない、せまい、うわべだけ、といった悪い意味のものも結構あります。

【区聞陬見】   くぶんすうけん   (P.169)
【外題学問】   げだいがくもん   (P.177)  4級配当
【行尸走肉】   こうしそうにく   (P.192)
【口耳四寸】   こうじよんすん   (P.193)  5級配当
【孤陋寡聞】   ころうかぶん   (P.212)
【独学孤陋】   どくがくころう   (P.364)



 【明窓浄几】 (*1) を自宅に備え、【優游涵泳】 (*2) の日々を送れる身分にいつかなりたいものです。

(*1) めいそうじょうき。清潔で快適に勉強できる書斎。 (P.449)
(*2) ゆうゆうかんえい。ゆったりとした気持ちで学問や技芸の深い境地を味わうこと。 (P.458)


(  は島根県立大学e漢字フォント  の漢字フォントを使用しました。)


【忙裡偸閑】

2014-11-15 20:28:02 | 四字熟語
 【忙裡偸閑】   ぼうりとうかん
 
 忙しい中でも、わずかな暇を見出して楽しむこと。


 「漢検 四字熟語辞典」を調べていて、たまたま目に留まった熟語です。【忙中有閑(ぼうちゅうゆうかん)】 の類義語の欄にありました。(P.434)
 「忙裡に閑(ひま)を偸(ぬす)む」 と読み下すようですが、「忙裡に偸(かりそめ)の閑」 と読んでも良いように思いますね。

 言葉で言うほど簡単ではありませんが、忙しくても心の余裕を失わずに過ごしていきたいものです。

【螂】 と 【琅】

2014-10-14 00:25:33 | 四字熟語
 熟字訓に続いて四字熟語問題。

トウロウ 之斧】   ( 「漢検 四字熟語辞典」初版 P.362)
 微弱な者が自分の力をかえりみず強者に立ち向かうたとえ。

リンロウ 珠玉】   (P.474)
 非常に美しい玉。すぐれた人物や美しい詩文のたとえ。


 正解は 【螳(蟷)螂】 と 【琳琅】 。

 四字熟語自体はどちらも取り立ててどうということはありませんが、例によって今更ながら 【螂】 と 【琅】 について新発見。前者は 【螂】 が正字で 【】 が許容字体なのに、後者は逆に 【琅】 が正字で 【瑯】 が許容字体なんですね。なんでだろ??


(  は島根県立大学e漢字フォント  の漢字フォントを使用しました。)