電子申請の現在と未来(3)、電子申請の更新ラッシュがもたらす機会の続きです。今回は、「なぜ、使われない電子申請が作られたのか」を考えてみたいと思います。
何十億円ものお金をかけたのだから、せめて国民に喜んで使ってもらえれば、電子申請の費用対効果が悪くても、それなりの存在意義はあったことでしょう。
「なぜ、使われない電子申請が作られたのか」は、様々な原因があったと思いますが、作者は「利用者を置き去りしたまま、電子申請を作ることが目的化したから」だと考えています。
●徹底した行政側・提供者理論
電子申請の利用者ニーズは、政府や民間企業等により何度も調査されてきましたが、ニーズがあるのは確かなようです。例えば、「住民票写しや戸籍謄本などをインターネット経由で請求して、2,3日のうちに自宅に届く」といったサービスは、多くの国民が期待していたものです。
ところが、いざ電子申請を作ろうとすると、「徹底した行政側・提供者理論」で作られていくのです。この過程は、ほとんどの電子申請で驚くほど徹底されています。
電子申請を作り上げていく過程で、利用者の利便性はどんどん削除されていきます。
「セキュリティ」や「国民の権利を守る」といったお題目を掲げて、行政の都合の良いように(より無難に、より無責任に)作られた「いびつな電子申請」は、国民の期待するサービスとかけ離れた、見るも無残なシステムとなります。
●誰も止めてくれない
しかし、ここまでは、まだ良いのです。
なぜなら、まだシステムを実際に構築する前の段階である「仕様書」を見れば、「いびつな電子申請」「使われない電子申請」であることがわかるからです。
この段階で、「こんなシステムじゃ、使ってもらえるわけも無い。もっと使いやすくて便利なシステムとするべきだ。それができない理由が行政側にあって変えることもできないなら、システム構築を止めるべきだ。」と誰かが止めてくれれば良いのです。
しかし、ここからが恐ろしいところで、間違いを認める文化が無い行政は「電子申請を作ることが目的化」したまま、「使われない(とわかっている)電子申請」を何十億円ものお金をかけて作ってしまうのです。
ベンダーにしても、システムを作ったり、ICカードを発行したりしてくれないとお金になりませんし、外郭団体も同様です。
かくして、国民を置き去りした電子申請が乱立してしまったのです。
●税金を使って何とか使わせる
しかし、悲劇はまだ終わりません。
「使われない電子申請」を、税金を使って何とか使わせようとして、さらにコストがかかるという悪循環があるのです。
まずくて誰も食べたがらないラーメンを、1000円払って食べてもらうようなものですね。
不動産登記のオンライン申請などは、国民の利便性ではなく、「一部の司法書士の小銭稼ぎ」と言って良いでしょう。
「まずいラーメン作って、ごめんなさい。お店をたたんで。一から出直します。」とすれば、どんなに良いことか。。
●間違いを繰り返さないために
これまでは、(インターネットを使った)電子申請というサービスは、政府にとっても初めてのことだから、失敗も仕方が無いと「言いわけ」ができました。しかし、これからは「言いわけ」は通用しません。
同じ間違いを繰り返さないためには、次の二つが有効と考えます。
1 企画、仕様策定、開発、運用、更新といった各段階で、外部の専門家等(お抱え学者ではダメ)が利用者視点でチェックすること
2 大規模なシステム構築は避け、撤退の基準を事前に決めておくこと
利用者視点のチェックについては、電子政府ユーザビリティガイドラインができたので、こちらを活用してCIO等が予算停止等の判断をできるようにすると良いでしょう。
「撤退の基準」は、電子政府や電子申請のような未知の分野では、必須と言えます。良いものが残り、ダメなものは淘汰される仕組みが大切です。
何より大切なのは、徹底した利用者視点でシステムを作ることです。
作っていく過程で利用者視点を維持できない場合は、構築を中止しましょう。
電子申請が目指すのは、「システムの最適化」ではなく、「サービスの快適化」なのですから。
次回は、「国民や政府は、どのように電子申請に対応すれば良いか」を考えてみたいと思います。
電子申請の現在と未来(5)、電子申請を甘やかさない
何十億円ものお金をかけたのだから、せめて国民に喜んで使ってもらえれば、電子申請の費用対効果が悪くても、それなりの存在意義はあったことでしょう。
「なぜ、使われない電子申請が作られたのか」は、様々な原因があったと思いますが、作者は「利用者を置き去りしたまま、電子申請を作ることが目的化したから」だと考えています。
●徹底した行政側・提供者理論
電子申請の利用者ニーズは、政府や民間企業等により何度も調査されてきましたが、ニーズがあるのは確かなようです。例えば、「住民票写しや戸籍謄本などをインターネット経由で請求して、2,3日のうちに自宅に届く」といったサービスは、多くの国民が期待していたものです。
ところが、いざ電子申請を作ろうとすると、「徹底した行政側・提供者理論」で作られていくのです。この過程は、ほとんどの電子申請で驚くほど徹底されています。
電子申請を作り上げていく過程で、利用者の利便性はどんどん削除されていきます。
「セキュリティ」や「国民の権利を守る」といったお題目を掲げて、行政の都合の良いように(より無難に、より無責任に)作られた「いびつな電子申請」は、国民の期待するサービスとかけ離れた、見るも無残なシステムとなります。
●誰も止めてくれない
しかし、ここまでは、まだ良いのです。
なぜなら、まだシステムを実際に構築する前の段階である「仕様書」を見れば、「いびつな電子申請」「使われない電子申請」であることがわかるからです。
この段階で、「こんなシステムじゃ、使ってもらえるわけも無い。もっと使いやすくて便利なシステムとするべきだ。それができない理由が行政側にあって変えることもできないなら、システム構築を止めるべきだ。」と誰かが止めてくれれば良いのです。
しかし、ここからが恐ろしいところで、間違いを認める文化が無い行政は「電子申請を作ることが目的化」したまま、「使われない(とわかっている)電子申請」を何十億円ものお金をかけて作ってしまうのです。
ベンダーにしても、システムを作ったり、ICカードを発行したりしてくれないとお金になりませんし、外郭団体も同様です。
かくして、国民を置き去りした電子申請が乱立してしまったのです。
●税金を使って何とか使わせる
しかし、悲劇はまだ終わりません。
「使われない電子申請」を、税金を使って何とか使わせようとして、さらにコストがかかるという悪循環があるのです。
まずくて誰も食べたがらないラーメンを、1000円払って食べてもらうようなものですね。
不動産登記のオンライン申請などは、国民の利便性ではなく、「一部の司法書士の小銭稼ぎ」と言って良いでしょう。
「まずいラーメン作って、ごめんなさい。お店をたたんで。一から出直します。」とすれば、どんなに良いことか。。
●間違いを繰り返さないために
これまでは、(インターネットを使った)電子申請というサービスは、政府にとっても初めてのことだから、失敗も仕方が無いと「言いわけ」ができました。しかし、これからは「言いわけ」は通用しません。
同じ間違いを繰り返さないためには、次の二つが有効と考えます。
1 企画、仕様策定、開発、運用、更新といった各段階で、外部の専門家等(お抱え学者ではダメ)が利用者視点でチェックすること
2 大規模なシステム構築は避け、撤退の基準を事前に決めておくこと
利用者視点のチェックについては、電子政府ユーザビリティガイドラインができたので、こちらを活用してCIO等が予算停止等の判断をできるようにすると良いでしょう。
「撤退の基準」は、電子政府や電子申請のような未知の分野では、必須と言えます。良いものが残り、ダメなものは淘汰される仕組みが大切です。
何より大切なのは、徹底した利用者視点でシステムを作ることです。
作っていく過程で利用者視点を維持できない場合は、構築を中止しましょう。
電子申請が目指すのは、「システムの最適化」ではなく、「サービスの快適化」なのですから。
次回は、「国民や政府は、どのように電子申請に対応すれば良いか」を考えてみたいと思います。
電子申請の現在と未来(5)、電子申請を甘やかさない
>不動産登記のオンライン申請などは、国民の利便性ではなく、「一部の司法書士の小銭稼ぎ」と言って良いでしょう。
そうなんだよなぁ。一部の司法書士の為にのみオンラインシステムを構築してきたようです。莫大な税金並びに登記特別会計から支出している。それも結果として一部の司法書士の業務に活かせるのみとなっているし。
不動産登記に係る制度を司法書士のみに対応させようとの方向性がそもそも勘違いなのではないか。
今年も、本ブログにコメントを頂きまして、ありがとうございました。
司法書士制度には歴史も価値もあると思いますが、もう少し大きな視点から見て欲しいとは思います。
つまり、
・日本の不動産価値を高める
・取引の安全性を確保しつつ、取引の円滑化や利便性を高める
といった視点が必要と思います。
例えば、
・家屋の価値を高め、市場を活性化したい
・海外からの不動産投資を増やしたい
・高齢化社会に対応した不動産活用法を考えたい(相続を含む)
・一部の司法書士や業者等が関与する不正・不法行為を減らしたい
といった目的・目標があり、その上で「オンライン登記」の必要性や有効性を考えて欲しいのです。
そう考えると、一部の司法書士だけが税減額だけを目的に利用する「オンライン登記」に、いったいどれだけのメリットがあり、国民に還元されるのか?という疑問があります。
いずれにせよ、とりあえず何でも良いから「オンライン化しましょう」「利用率を上げましょう」という時代は終わりました。
そうした認識の下に、オンライン(登記や取引の情報提供、決済、投資・資産活用など)の意義や可能性を考え直す時期と思います。