電子申請の現在と未来(4)、国民不在のまま電子申請を作ることが目的化したの続きです。今回は、「国民や政府は、どのように電子申請に対応すれば良いか」を考えてみたいと思います。
●電子申請との付き合い方:国民の場合
まずは、国民の対応から
国民には、「電子申請の利用者」としての対応と「納税者」としての対応があります。
「電子申請の利用者」としての対応は、次の3つが良いでしょう。
1 使えそうなものがあったら使ってみる
2 便利だったら、他の人にも教えてあげる
3 使えないサービスだったら、利用を止める
同じ税金を払っているなら、使えるサービスであれば、使った方がお得ですね。
便利だったら、他の人にも教えてあげましょう。利用者が増えれば、サービス改善も進みますし、費用対効果も高くなります。
使えないサービスは、利用を止めてください。下手に甘やかすと、税金の無駄遣いが拡大し、行政も勘違いしてしまいます。
次に、より重要な「納税者」としての対応は、次の一つだけをお願いします。
1 政府に対して、電子申請や電子政府にかかる費用や効果の説明を求める
行政の説明責任を追及することで、情報公開が進みます。わからない、わかりにくい、見つけにくい説明や情報開示には、文句を言いましょう。各種メディアを活用しても良いですね。
●電子申請との付き合い方:国の場合
国の対応も、まず結論から言っておきましょう。
1 現状の整理と利用されていない電子申請の廃止
2 社会ビジョンの提示(医療・福祉、雇用、公務員制度、規制改革、経済など)
3 国民への宣言と理解・協力のお願い
4 社会実現のために必要な法制度改正やインフラの整備
5 個々のサービスを民間・地方主導で提供していく
国の電子申請への対応は、最もやっかいです。と言うのも、
・規模が大きく、維持費用も高い
・利用率の数字合わせが横行している
・中途半端に連携しているので、停止してもコスト削減効果が乏しい
・問題の本質は、構造的なもので根っこが深い
からです。
問題の本質から避けている限りは、どうでも良いような小物の電子申請システムは停止が進むものの、「お金がかかる、ずる賢い電子申請システム」は停止措置から逃れて存続することでしょう。
オンライン申請等手続システム評価WG中間報告書を見ても、潰しやすいものから停止して、「ずる賢い電子申請システム」は、検討の対象にすらなっていないことがわかります。
これは、行政(官僚)主導による事後評価の限界でもあるので、解決は非常に困難です。
ところで、オンライン申請等手続システム評価ワーキンググループ(第3回)の議事要旨に、次のような記述があります。
○ 経済産業省が受け付けたデータを環境省や厚生労働省に渡す際は、どのような形でやりとりするのか教えていただきたい。
○経済産業省 書面で渡している。
○ 電子申請されたものを一旦プリントアウトして、紙で渡して、紙で戻ってきて、その審査結果を経産省において入力しているということか。
○経済産業省 そのとおりである。
これを見ると、行政の仕事が紙主体で行われているから、電子データ原則の業務改革や義務付けを行えば良いと考えるかもしれません。
しかし、それでは単なる対処療法です。
電子申請や電子政府に見られる問題の多くは、省庁の縦割りや権益・予算・縄張り争いによるものです。行政手続は、各省庁の権益を象徴するものだからです。
本当にオンライン申請で便利になったり手続の廃止が進んだら、各省庁の裁量権限や仕事が減ってしまいます。本当にワンストップサービスが実現したら、縄張りの線引きがなくなってしまいます。
電子政府でよく言われるように、国の仕事の「やり方」を変えるだけでは、問題の解決は望めません。本当に電子申請を良くしたいのであれば、「国の役割」そのものを見直す必要があります。
ここまで踏み切れるかどうかが、今後の電子申請や電子政府・電子自治体のあり方を決めると言っても良いでしょう。
現時点で、国が電子申請の対応を急ぐ必要は、全くありません。
「現状の整理と無駄なシステムの排除」を粛々と行い、政治からの「社会ビジョンの提示」を待ちましょう。それまでは、少なくとも「億単位の税金を使うような新システムの開発や構築」は止めた方が良いのです。
●電子申請との付き合い方:地方自治体の場合
地方自治体、特に市町村は、国には無い強みがあります。
・住民と距離が近い
・サービス利用の現場を知っている
・財政が厳しく無駄遣いできない
「お金が無い」のは、決して悪いことではありません。
日本のようにインターネットが普及しインフラが整っている状況であれば、様々な情報・技術・サービスへアクセスすることができます。
アイデアと工夫次第で、いくらでも道は開けますし、より良いサービスの提供も可能です。
国のように下手にお金があり過ぎると、優先順位も曖昧なまま、費用対効果が見込めないIT投資が繰り返されてしまうのですね。
作者のオススメは、次の三つ。
1 使われていない電子申請の廃止
2 使われている電子申請の見直し(より安くより便利に)
3 民間サービスの活用
使われていない電子申請は、速やかに廃止しましょう。作った時期にもよりますが、電子申請の低価格化により、使われないシステムを改善するよりは、新しいシステムとした方が安上がりとなるでしょう。
これまでの利用実績を分析して、もし一部の手続で利用が多ければ、より簡素な専用システムを作り、そこで受付ければ良いのです。
使われている電子申請は、より安くより便利にできないかを検討しましょう。
電子申請システムの使い勝手も、当初と比べればかなり良くなっています。ASPやSaaSタイプであれば、運用や保守の負担から解放され、使った分だけの費用で済みます。
最後の「民間サービスの活用」については、次回(最終回)、「住民票写し交付のオンライン申請サービス」を題材として、具体的な方法を提案したいと思います。
電子申請の現在と未来(6)、税金を使わない電子政府サービスを考える
●電子申請との付き合い方:国民の場合
まずは、国民の対応から
国民には、「電子申請の利用者」としての対応と「納税者」としての対応があります。
「電子申請の利用者」としての対応は、次の3つが良いでしょう。
1 使えそうなものがあったら使ってみる
2 便利だったら、他の人にも教えてあげる
3 使えないサービスだったら、利用を止める
同じ税金を払っているなら、使えるサービスであれば、使った方がお得ですね。
便利だったら、他の人にも教えてあげましょう。利用者が増えれば、サービス改善も進みますし、費用対効果も高くなります。
使えないサービスは、利用を止めてください。下手に甘やかすと、税金の無駄遣いが拡大し、行政も勘違いしてしまいます。
次に、より重要な「納税者」としての対応は、次の一つだけをお願いします。
1 政府に対して、電子申請や電子政府にかかる費用や効果の説明を求める
行政の説明責任を追及することで、情報公開が進みます。わからない、わかりにくい、見つけにくい説明や情報開示には、文句を言いましょう。各種メディアを活用しても良いですね。
●電子申請との付き合い方:国の場合
国の対応も、まず結論から言っておきましょう。
1 現状の整理と利用されていない電子申請の廃止
2 社会ビジョンの提示(医療・福祉、雇用、公務員制度、規制改革、経済など)
3 国民への宣言と理解・協力のお願い
4 社会実現のために必要な法制度改正やインフラの整備
5 個々のサービスを民間・地方主導で提供していく
国の電子申請への対応は、最もやっかいです。と言うのも、
・規模が大きく、維持費用も高い
・利用率の数字合わせが横行している
・中途半端に連携しているので、停止してもコスト削減効果が乏しい
・問題の本質は、構造的なもので根っこが深い
からです。
問題の本質から避けている限りは、どうでも良いような小物の電子申請システムは停止が進むものの、「お金がかかる、ずる賢い電子申請システム」は停止措置から逃れて存続することでしょう。
オンライン申請等手続システム評価WG中間報告書を見ても、潰しやすいものから停止して、「ずる賢い電子申請システム」は、検討の対象にすらなっていないことがわかります。
これは、行政(官僚)主導による事後評価の限界でもあるので、解決は非常に困難です。
ところで、オンライン申請等手続システム評価ワーキンググループ(第3回)の議事要旨に、次のような記述があります。
○ 経済産業省が受け付けたデータを環境省や厚生労働省に渡す際は、どのような形でやりとりするのか教えていただきたい。
○経済産業省 書面で渡している。
○ 電子申請されたものを一旦プリントアウトして、紙で渡して、紙で戻ってきて、その審査結果を経産省において入力しているということか。
○経済産業省 そのとおりである。
これを見ると、行政の仕事が紙主体で行われているから、電子データ原則の業務改革や義務付けを行えば良いと考えるかもしれません。
しかし、それでは単なる対処療法です。
電子申請や電子政府に見られる問題の多くは、省庁の縦割りや権益・予算・縄張り争いによるものです。行政手続は、各省庁の権益を象徴するものだからです。
本当にオンライン申請で便利になったり手続の廃止が進んだら、各省庁の裁量権限や仕事が減ってしまいます。本当にワンストップサービスが実現したら、縄張りの線引きがなくなってしまいます。
電子政府でよく言われるように、国の仕事の「やり方」を変えるだけでは、問題の解決は望めません。本当に電子申請を良くしたいのであれば、「国の役割」そのものを見直す必要があります。
ここまで踏み切れるかどうかが、今後の電子申請や電子政府・電子自治体のあり方を決めると言っても良いでしょう。
現時点で、国が電子申請の対応を急ぐ必要は、全くありません。
「現状の整理と無駄なシステムの排除」を粛々と行い、政治からの「社会ビジョンの提示」を待ちましょう。それまでは、少なくとも「億単位の税金を使うような新システムの開発や構築」は止めた方が良いのです。
●電子申請との付き合い方:地方自治体の場合
地方自治体、特に市町村は、国には無い強みがあります。
・住民と距離が近い
・サービス利用の現場を知っている
・財政が厳しく無駄遣いできない
「お金が無い」のは、決して悪いことではありません。
日本のようにインターネットが普及しインフラが整っている状況であれば、様々な情報・技術・サービスへアクセスすることができます。
アイデアと工夫次第で、いくらでも道は開けますし、より良いサービスの提供も可能です。
国のように下手にお金があり過ぎると、優先順位も曖昧なまま、費用対効果が見込めないIT投資が繰り返されてしまうのですね。
作者のオススメは、次の三つ。
1 使われていない電子申請の廃止
2 使われている電子申請の見直し(より安くより便利に)
3 民間サービスの活用
使われていない電子申請は、速やかに廃止しましょう。作った時期にもよりますが、電子申請の低価格化により、使われないシステムを改善するよりは、新しいシステムとした方が安上がりとなるでしょう。
これまでの利用実績を分析して、もし一部の手続で利用が多ければ、より簡素な専用システムを作り、そこで受付ければ良いのです。
使われている電子申請は、より安くより便利にできないかを検討しましょう。
電子申請システムの使い勝手も、当初と比べればかなり良くなっています。ASPやSaaSタイプであれば、運用や保守の負担から解放され、使った分だけの費用で済みます。
最後の「民間サービスの活用」については、次回(最終回)、「住民票写し交付のオンライン申請サービス」を題材として、具体的な方法を提案したいと思います。
電子申請の現在と未来(6)、税金を使わない電子政府サービスを考える