Manaboo 電子政府・電子申請コラム 

電子政府コンサルタントの牟田学が、電子政府・電子申請、その他もろもろ、気まぐれにコメントしてます。

電子申請の現在と未来(1)、「電子申請の適正化」が加速しオープン化する

2009年12月13日 | 電子政府の評価
最近になって、「電子申請システム」が新聞やテレビなどのメディアで再び注目されているようです。と言っても、「利用が進まない」とか「割高なシステム」とか「廃止や縮小へ」といった否定的な見方が多いのですが。。。

国の電子申請、利用率10%未満が3割 運用コスト割高(朝日新聞)
国への行政手続きを市民がインターネットで行う電子申請について、朝日新聞が64システムすべての利用状況と運用経費について調べたところ、昨年度、総申請数に占める電子申請の割合を示す利用率が10%に満たないシステムは3割あった。利用率1%未満のシステムは2割弱。ほぼすべて電子申請で行われていても、1件あたりの運用コストが1万円以上かかっていた割高なシステムもあった。

事業仕分け最終日 電子申請システムは「廃止」(朝日新聞)
来年度予算要求の無駄を洗い出す行政刷新会議の「事業仕分け」は27日、最終日となる9日目の作業に入った。財務省が所管する独立行政法人・国立印刷局と造幣局は業務の効率化が必要として、「組織の抜本的見直し」を求めた。財務省の事業で利用が低迷している「電子申請システム」は「廃止」を求めた。

電子申請、19府県で休止・縮小 財政難が背景に(朝日新聞)
行政手続きを市民がインターネットで行う電子申請手続きについて、47都道府県の利用状況を朝日新聞が調べたところ、財政難を背景に19府県が手続きの全面休止や縮小を実施、もしくは予定していた。費用がかさむのに利用が増えないためで、システムを安い方式に変えるなどの見直しも含め、2008年度に24億4千万円だった運用経費は10年度、16億1千万円以下に減り、3分の2になる見込みだ。


作者が、電子申請について日経BPのサイト等へ投稿し始めたのは2001年頃から。「使える電子申請を目指して」を連載する機会を頂いたのが2003年。

2009年の現在までに、多くの電子申請システム(電子申告、オンライン申請、FD申請、電子入札など)が構築され、実際にサービスを開始しました。

そして、現在起きているのは、「電子申請の適正化」です。

「使われない電子申請」は廃止・停止され、「使われている電子申請」は更なる改善やコスト削減が行われるという、ごくごく当たり前の作業が行われているのですね。もちろん、この作業は、どんどんやった方が良いのです。

本ブログだけ見ても、

オンライン利用促進のための行動計画(案)への意見(2006年04月13日)
 平成20年度までに利用率が1割を超えないものについては、原則停止して、手続の見直し等を含めた新たな方策を検討することが望まれる。こうした措置が無いと、利用もされずお金ばかりかかるシステムが増え、「電子政府=箱物行政」といった悪いイメージが国民に植え付けられ、電子政府の健全な発展に悪影響を及ぼす恐れがある。

高知県の電子申請が休止、前向きな休止はサービス改善に繋がる(2006年04月20日)
 高知県の電子申請・届出システムが、平成18年3月末より休止となっています。電子政府サービスを休止することは悪いことではありません。むしろ、より良いサービスと健全な発展を目指す中では、必要なことと言えるでしょう。


電子申請も淘汰の時代へ:パスポート電子申請から?(2006年07月05日)

 財務省による予算執行調査(平成18年7月)で、パスポート電子申請が調査の対象となり、「本システムの廃止を含めた見直しを早急に検討すべき」という厳しい判断が下されました。

パスポート電子申請から学ぶ、電子政府サービスの引き際(2006年09月08日)
 外務省から、パスポート電子申請の停止についてが公開されました。これにより、パスポート電子申請は、9月末で申請受付が停止となります。

箱物行政よりヒドイ、使われない電子申請は今すぐ止めるべき(2008年04月24日)
 税金の無駄使いと批判される箱モノ施設だって、年間の利用が5件なんて、あり得ない話しです。しかし、電子政府では、それが許され放置されているのです。

オンライン申請システム停止の意義(1)、何を学び何を生み出すかが問われる(2008年12月12日)
 「システムの停止」は、状況を改善し、目標に近づくための決断と行動です。決して「責任の放棄」ではありません。

オンライン申請システム停止の意義(2)、全部でいくら税金を使ったのか?(2008年12月14日)
 この頃のオンライン申請システムは、「とにかくオンライン化・電子化しなさい」といった政府全体の戦略・方針に従って作られたものです。当然ながら、ニーズがあるかどうかなんてものは考えていないのです。

会計検査院による電子申請等関係システムの検査結果、今後の対応を考える(2009年09月23日)
 オンライン利用拡大行動計画に沿った利用の拡大に向けた諸施策の着実な推進を図るとともに、電子申請率が低迷していてシステムの整備・運用等に係る経費に対してその効果が十分発現していないシステムについては、システムの停止、簡易なシステムへの移行など費用対効果を踏まえた措置を執るよう意見を表示する。

と「電子申請の適正化」が進んできたことがわかります。

これを簡単に整理すると、

・「電子申請の適正化」は、財政が厳しい地方自治体から始まった
・国では「パスポート申請」など外務省が先陣を切った
・会計検査院によるチェックや「電子政府の評価」により、「電子申請の適正化」は国全体へ波及した
・行政は、少しずつ(こっそりと)「電子申請の適正化」を進めようとしたが
・政権交代によって、電子申請を初めとした政府の情報システムへのチェックが厳しくなり
・その流れを受けた会計検査院からの指摘もあって
・マスコミが電子申請を再び取り上げるようになり
・「電子申請の適正化」の加速化とオープン化が進んでいる
・今後は、国でも地方自治体でも、「使われない電子申請」の廃止や縮小が、国民の監視の下で、かなり大胆に実行されることになるだろう

次回からは、もう少し詳しく実態を見ていきながら、国や自治体、そして国民や住民が電子申請とどのように付き合っていけば良いのかを考えてみたいと思います。

電子申請の現在と未来(2)、停止の背景にある低価格化の流れ


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
経団連のパンフレット (イエモリ)
2009-12-15 18:38:30
経団連がパンフレットまで作成して広報しています。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2009/pamphlet200912.pdf
電子行政が創る国民本位の新たな政府の姿

ふーむ。
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ある意味すごい (むた)
2009-12-15 22:40:55
イエモリさん、こんばんは。
いつも情報提供ありがとうございます。

経団連の主張する
「電子行政になると国民の負担が減り、行政サービスが充実します。」

って、ちょっと怖いです。。。

「このツボを買えば、悪霊が退散し、今より幸せになれます。」

と大差が無いような。。。

電子行政や電子政府で確実に幸せになれるのは、ベンダーだけなのですが。。。

電子政府には、コストやリスクが付き物で、成功する可能性は極めて少ないことを、政治家も国民も理解した上で、じっくりと電子政府に取り組んで欲しいものです。
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霊感あらたか (イエモリ)
2009-12-18 09:38:28
>「このツボを買えば、悪霊が退散し、今より幸せになれます。」

 それば、どうもこの霊感が一部専用システムで通用しているようですね。

 化けの皮が剥がれそうで、なかなか剥がれない専用システムです。
 
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