エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

安井至「電気自動車で日本経済は冷え込む?」について

2009-09-25 02:31:50 | Weblog
安井至さん(東大名誉教授)は、日経エコロミーに掲載された「電気自動車で日本経済は冷え込む?」(こちらをご覧下さい
)において、電気自動車の将来動向に関しても慧眼を披露しています。
 安井さんによると、
 -電気自動車は、蓄電池の価格とその寿命が問題
 -特に蓄電池の寿命が5年程度しか持たないとしたら、蓄電池価格が10分の1
にならない限り、一般的な消費として成立しない
 -となると、実用上の観点からは、短距離、例えば30キロメートル程度以内で
の利用を狙って、搭載する電池を極力減らし、都市内コミューター専用にする
ことが賢い選択である
 -加えて、充電に多少に時間がかかることを考えれば、カーシェアリングやレン
タカーとの組み合わせの合理性が高い
 -ところがこの方式では車の販売数が減少し、自動車メーカーはしばらく経つと
電気自動車の導入躊躇を明確にすることだろう
 -そこに、間隙を縫って海外(特に中国)から安価な電気自動車が輸入される
 -海外での電気自動車の普及は限定的。最大の市場であるアメリカでは、都市内
  の利用でも高速道路対応が必要であり、PHEVはありえてもEVは普及しな
い。欧州も限定的ではないか。
 -日本は自動車産業に代わる輸出産業を見つけ出すことができるのであろうか
 
 皆さんは、どう思われますか?
 ただ、安井さんの指摘は、慧眼ではありつつも、現在の蓄電池の価格とその寿命を前提にした議論であることに注意することが必要です。この前提が代わると電気自動車の未来が変わる可能性があります。
 そこで私が注目しているのが、キャパシタ、特にリチウムイオンキャパシタです。
 このリチウムイオンキャパシタについて、09年1月人工筋肉などの研究開発ベンチャーのイーメックス(大阪府吹田市)は、蓄電部品「リチウムイオンキャパシタ」について蓄電性能は従来の10倍に、エネルギー密度では従来の5倍の性能を実現したと発表しました。
 従来のリチウムイオンキャパシタのエネルギー密度は低く、リチウムイオン電池の約30分の1とされています。しかし、リチウムイオン電池にも技術的な課題があります。蓄電装置内で化学反応を伴うため製品の寿命は約2年と短いうえ、発火する恐れがあるなど安全性を疑問視する声も少なくないのです。
 また、原材料であるリチウムの供給がチリ、アルゼンチンなどの南米に偏在しており、早くも中国などと資源輸入を巡って競合状態が出ています。少なくとも、リチウムの価格は上昇していくでしょう。
 一方、リチウムイオンキャパシタの蓄電は化学反応によるものではないため劣化がほとんどなく、製品寿命は非常に長いのがウリです。さらに「使用する材料費も安いため、生産コストをリチウムイオン電池よりも低く抑えることができる」(瀬和信吾社長)といいます。
 リチウムイオンキャパシタは、電極に炭素を利用するのが一般的ですが、イーメックスは人工筋肉の開発などで培った技術を応用した化学めっきで作られた金属電極を採用しました。これにより、蓄電性能は従来のリチウムイオンキャパシタと比べて10倍と大幅にアップし、エネルギー密度も大幅に向上したということです。