エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

アメリカ政府のグリーンジョブ創出政策

2010-02-05 22:43:19 | Weblog
 アメリカでは11月の失業率が10%を超えるなど厳しい雇用情勢が続いていますが、オバマ大統領は12月8日、雇用対策案を発表しました。
 このうち、グリーンジョブに関するものとしては、①消費者がエネルギー効率化機器を家庭に導入する際の奨励金の創設し、消費を喚起することにより雇用拡大を図ること②2009年米国再生・再投資法(ARRA)で実施していた、エネルギー効率化やクリーンエネルギー関連製造業に対する支援を強化することが盛り込まれています。
 ①は、日本のエコポイント制度と同様の発想に基づくものです。また②は、従来ARRAにおいてクリーンエネルギー支援のためのファンド組成に大掛かりな投資を行ってきましたが、民間投資のテコ入れと雇用の創出を図るため、これらの産業への投資に加えて、税制の優遇を与えるものです。
 また、中小企業が新規に雇用を創出した場合の税控除(雇用減税)の実施が盛り込まれていることが注目されます。
 これは、中小企業が新たに従業員を追加的に雇った場合、生じたコストの15.3%を1年目に、10.2%を2年目に税控除するという内容のものです。控除の対象になるのは、社会保障税の課税対象となる新規雇用者(年収10万6,800ドル未満)です。
 これは、民主党系のシンクタンクである経済政策研究所(EPI)が従来から提案してきたもので、EPIのロス・アイゼンブリー政策ディレクターは「雇用税控除を実施すれば、2年間で300万~500万人の雇用が創出される」と試算しています。
 今後日本がグリーンジョブ創出政策を展開する際の参考となる内容だと思います。

イギリスの低炭素経済地域における新産業創出が本格化

2010-02-05 07:03:17 | Weblog
 イギリス政府は2009年11月、産業戦略の新たな要とする低炭素経済地域(Low Carbon Economic Areas、LCEAs)の1つ、南西イングランドで、海洋エネルギーを利用する波力発電の実証プロジェクトに着手しました。約4,200万ポンド(1ポンド=約147円)を投じ、11年に実証運転を開始する予定です。
 低炭素経済地域とは、イギリス政府が09年7月15日に公表した低炭素産業戦略の中で、国内各地域の地理的、産業的な強みを考慮した上で、国や地方、地域開発公社(RDA)が連携して、低炭素産業や関連技術、関連産業の成長を加速化させるための構想です。イギリス政府はこのLCEAsとして、まず、南西イングランド地域 <こちらをご覧ください> を指定し、海洋エネルギーの研究、開発、実証に集中的に取り組んでいく方針です。
 同地域では、世界に先駆けて海洋エネルギー産業を興すための足掛かりとなる、波力発電実証プロジェクト「ウエーブ・ハブ(Wave Hub)」の建設工事が11月16日に着工されました。波力発電設備の実証実験のため、電力網に各発電機器を接続する大規模なコンセントで、南西イングランド地域開発公社(SWRDA)が開発を進めており、コーンウォール半島の北部沖合10マイル(約16キロ)の海底に設置する予定です。
 この総額4,200万ポンド(このうち、1,250万ポンドはSWRDAから、2,000万ポンドは欧州地域開発基金、950万ポンドは英国政府が負担する)のプロジェクトはすでに建設許認可を取得しており、10年夏に運転を開始し、実際に波力発電設備が接続されるのは11年になる見込みです。ウエーブ・ハブは、当初11キロボルト(kV)の容量で運転を開始、その後33kVに増強し、4本のケーブルによる合計50メガワット(MW)までの機器容量を実証します。ウエーブ・ハブの運営事業者は、エネルギー供給会社などと電力売買契約(PPA)を締結し、実証実験を担当する4社の発電実績に応じて売電収入を分配する予定です。
 実証実験を行う4社のうち、09年3月に事業者指定された波力発電開発事業者オレコン(Orecon)は、MRC(Multi Resonant Chamber)と呼ばれる独自の波力発電技術を02年から開発してきました。最新の試作機では1基の発電機器に3台のMRCを搭載、合計出力1.5MW〔定格出力:550キロワット(kW)×3台〕の年間発電量は3.5ギガワット時と見積もられています。振動水円柱空洞の構造で、波の力が空洞内の空気を圧縮し、海上に設置されている空気タービン(HydroAirTM)を稼働させる仕組みです。空気タービンは波の上下によって空気の流れが変わっても同じ方向に回転するという特徴を持ちます。
 オレコンは今後、日本を含む世界各国のエネルギー企業や政府から、MRCの製造、販売、設置までを一貫して請け負うターンキー契約を受注していきたいとしています。
 イギリス政府は、ほかの地域でも積極的な低炭素産業の育成策を展開しています。7月21日には低炭素自動車の研究開発の中核拠点として北東イングランド地域 <こちらをご覧ください> が、12月3日には原子力開発拠点として北西イングランド地域 <こちらをご覧ください> が、そして12月9日には環境配慮型(エコ)建築の研究・開発による都市再生を目指す地域として大マンチェスター市 <こちらをご覧ください> が、次々と指定されています。