ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

ソース焼きそばの謎

2023年11月19日 | 本を読んだで

塩崎省吾       早川書房

 出してる出版社を見てびっくり。早川である。ワシらSFもんにとって早川は最もつきあいのある出版社だ。SFマガジンの発行元であり、ワシらが読むSFの大きな供給源である。その早川からこんな本が出たことが、これひとつのびっくり。
 昔「探偵ナイトスクープ」で「アホバカ分布図」というのがあった。人をののしる言葉として関東では「バカ」関西では「アホ」その境界はどこかというモノ。そんなこと別に知らんでもええと思うけど、それを大まじめに徹底的に調べる。これがめっぽう面白いのである。
 さて、この本はソース焼きそばだ。麺を炒めてソースで味付けをする。ごく単純な料理である。この単純な料理を徹底的に調査考察したのがこの本である。まず、だいたいが、ソース焼きそばなるもんが、いつごろ、どこでできたか。戦前か戦後か、東京か大阪か。著者は古い文献を探り、古老に取材し探る。文献といってもソース焼きそばなるジャンクな食べ物の記録はあまりない。文人の随筆などを丹念にあたり、それらしい食べ物のことについての記載を発見して、ソース焼きそばのルーツを探る。このあたりの著者の活動は、あたかも考古学者が遺跡を調べるようである。
 ソース焼きそばを作るのに一番欠かせないモノ。麺だ。麺の材料は小麦。その小麦の日本での事情も調べる。国際情勢も大きく関与する。
 全国各地はそれぞれ特徴のあるソース焼きそばがある。それを著者は丹念に食べ歩き感想をのべ、店主に話を聞き、記録していく。わが地元神戸にも「ぼっかけ焼きそば」「そばめし」なるモノもある。それにもちゃんと言及しているのは神戸人としてうれしい。
 巻末の記載してある参考文献のリストは30ページもある。全国各地のソース焼きそばは写真付き紹介されている。その写真も著者が食べ自分で撮影した。ともかくたいへんな労作の本である。ソース焼きそばの興味のない人でも、巻を手に取れば、思わず引き込まれ読まされてしまう。