ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

真剣師 小池重明

2021年06月20日 | 本を読んだで
 団鬼六        幻冬舎

 困った天才という人はけっこういる。自由律俳句の大家、種田山頭火や尾崎放哉。壇一雄や坂口安吾といった破滅型作家。中島らもさんもこれかな。また、天才漫才師といわれた横山やすし師匠もそうだ。いずれのご仁も天才にふさわしい才能を持っていて余人に代えがたい業績を残す。しかし、これらの人たちが身内にいたら迷惑このうえなく、できたら彼らの才能だけ満喫して、個人的なおつき合いはご遠慮申し上げたい。
 この本の主人公の小池重明はその最たるご仁だろう。小池は真剣師。賭け将棋で収入を得る将棋さしである。でもプロの棋士ではない。アマチュアである。
 小池は賭け将棋で生計をたてている。賭け将棋といっても、自分自身が賭けるのではなく、競馬馬と同じく、客に自分の勝利に賭けてもらうのだ。ところが小池は強すぎる。今年の阪神と巨人、巨人にお金を賭ける人がはたしているだろうか?いないだろう。小池が強すぎて賭けが成り立たない。
 ともかく強い。飛車落ちとはいえ大山永世名人に勝つ。だったらプロになればいいのでは。プロになろうとしたがなれなかった。なぜか。あまりに素行が悪い。人妻となんども駆け落ちする。恩人の金をくすねて逐電する。飲む打つ買うの男の三大道楽をやりたい放題。大山名人との対局の前夜も飲みすぎて酒場で暴れ留置場から対局の場にご出勤。で、大山名人に勝ってしまう。ともかくめちゃくちゃ将棋が強くめちゃくちゃ素行が悪い。
 無頼の小池重明と優等生の藤井聡太の勝負はどうだろう。なんか小池が勝ちそう。