ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

SFマガジン2020年12月号

2020年11月17日 | 本を読んだで

 2020年12月号 №742         早川書房

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1位 女童観音            篠たまき
2位 人生              劉慈欣  泊功訳
3位 我らの科幻世界         宝樹   阿井幸作訳
4位 生存実験            王晋康  大久保洋子訳
5位 地下室の富豪          査杉   及川茜訳 
  『万博聖戦』第二章トルエンの雨/1969は未読

連載

小角の城(第62回)          夢枕獏
アグレッサーズ第三話カーリー・マー戦闘妖精雪風第4部  神林長平
マルドゥック・アノニマス(第33回)  冲方丁
空の園丁 廃園の天使Ⅲ(第5回)   飛浩隆
幻視百景(第28回)         酉島伝法

 中国SFの特集である。中国SFをリードしてきた雑誌「科幻世界」と、日本のSFをリードしてきたSFマガジンが提携して企画した特集である。
 さすが現代の世界のSFで最も活発な中国SFである。掲載作4編は、いずれも大変に面白く満足だ。
 SFはその時の国の勢いと比例している。1950年代、アメリカが最も勢いがあった時代はアメリカのSFが、また、1960年から70年代にかけて、日本が希望に満ちあふれていた時代には、日本SF第1第2世代が出てきた。 
 冷戦時代、アメリカと対抗する国としてソ連があった。そのソ連にもSFがあった。エフレーモフ、ストルガツキー兄弟など優れたSF作家もいた。ソ連も中国も社会主義国で共産党1党独裁の国だが、ソ連SFに比べて中国SFの方がはるかにエンタメ性が強く面白い。ソ連は政治も経済も社会主義であったが、中国は政治は社会主義だが、経済は自由主義だ。そのちがいだろうか。
 その面白い中国SFをおさえて、1位になったのは「女童観音」耽美的で少しエロでグロなとこもありホラーっぽくもある。この篠たまきさん、知らない女性作家だが、楽しみな人が出てきた。篠さんの「人喰い観音」も読みたい。