楕円と円 By I.SATO

人生も自転車も下りが最高!
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コロナウイルスと忘却の数学

2020年05月04日 | 日記

新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために「接触機会」の7~8割の削減が専門家会議から言われている。しかし、ニュースの通信会社のGPSデータの「人の流れ」と「接触機会」がどうしても結びつかない。

通信会社データの「人の流れ」の信頼度はどのようなものなのだろうか。「接触機会」は把握出来るものなのだろうか。

東大社会科学研究所の丸川知雄教授(中国経済・産業経済)がNews Week Japan の2020.5.2版で述べている。

「人の流れ」と「接触機会」は異なることを、2人で飲み会をやる場合と10人でやる場合を例に分かりやすく解説している。

2人ならば接触機会は1回だが10人だと45回になる。他の9人も相互に接触するからだ。昔、高校で習った(今は多分、中学か。)組み合わせの数式で10×9÷2で求められる。

このことを普遍的な数式にして計算すると、「接触機会」を8割に削減するには「人の流れ」を55パーセントほど削減すればよいことになる。「人の流れ」を7割削減すれば「接触機会」は9割削減にもなる。

それでも感染の収束は見えない。「人の流れ」と「感染機会」は関係無いのではないかと思うのである。

丸川教授は「接触機会」という概念は理論疫学の計算で使うに留め、国民へは分かりやすいメッセージで十分であると提言しており賛成である。経済活動を再起動する判断に「人の流れ」は意味を成さないのではないか。

専門家会議が使う「実効再生産数Rt」なる指標も良く分からない。感染が拡大に向かっているのか、収束に向かっているのかという文脈で使われるが、「2.0が05~0.7になった。」のであれば緊急事態を続ける必然性が無い。

忘却の数学を想い出していくつかレポートを読むと、難しい計算式も「係数」にどのデータを投入するかによって(例えば中国)数値は変わるし、「感染」と「感染確認」の間に存在する「潜伏期間」は幅のある推測である。

つまり、Rtによって将来の感染の増減がある方向に進むのではなく、あくまでその時点の推定結果論であり、将来を予測、保証するもので無いことが分かる。

これから、安倍首相の会見が予定されている。重要なことは感染規模、入院必要者数、重症患者数。そして休業補償と医療体制整備による国民への信頼感と安心感の提供である。期待するのは無理というものだが。

専門家会議に必要なことは「新しい生活様式」のような抽象的、情緒的なことではなく、厳然たる科学的根拠と国民への分かりやすい説明である。

政治家と科学者が“足並み”を揃えることに不安を覚える。