楕円と円 By I.SATO

人生も自転車も下りが最高!
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『キタデミー賞』に思う

2020年05月11日 | 日記

 

2018年2月5日に「北海道150年事業」の機運を盛り上げるためのイベントがニトリ文化ホールで開かれた。『キタデミー賞』と銘打って縁の人々を表彰するものだった。

このことを知ったのは企画・実施に不適切な事務執行があったことを北海道新聞が数回に亘って報道したからだった。道の「キタデミー賞問題報告書」(2020.3.24)を読んでみた。

OBとして信じられない出来事だった。道が事務局の実行委員会の予算額と業務受託した制作会社の事業見積額との間に出だしからあまりに大きな乖離があり、最終的に裁判所の調停にまで問題が持ち込まれたからだ。

2017年11月30日に実行委員会の設立総会があった。普通は事業費をかなり詰めて提示する。でなければ構成団体からの協賛金も設定出来ないからだ。

この時の予算額は総額4,000万円で道費は1,500万円。うちイベント経費は900万円。ところが1週間後に制作会社から提示された見積額は何と5倍以上の4,870万8,000円。順序が逆である上に常識外の乖離である。

総会直前に実行委員会規約に「追加負担を求めない。」ことが追加で明記されたり、東映が実行委員会には参加しなかったのも気になることだ。

何故、こうなったのだろうか。以下、全くの推測である。

そもそも道の団体補助は財政難の折1,000万円が上限だったのではないか。「北海道150年事業」がなかなか盛り上がらず、頭を悩ましていた当時の高橋知事が2017年6月に東映の岡田祐介会長との対話で急遽浮上した〝知事肝いり行事〟にかろうじて500万円が上置きされたと考えるのが自然だ。

実行委員会設立はその半年後。準備時間があまりに短い。事務局は予算の追加も得られず、制作会社と事業費を詰め切れないまま、無理とは分かっていて道費の1,500万円から事務費を除く900万円を制作会社への業務委託費として説明し、スタートしたのが実態ではないか。

事務局は予算と見積との乖離を本体の「北海道150年事業」から予算流用して埋めることにして、業務契約書を結ばないまま、2018年2月5日に『キタデミー賞』授賞式が開催されてしまった。この間、“知事マター”なのにノーチェックだったのも信じ難い。

その後、破天荒な経過整理と善後策が纏まらず、事務局から道担当部長、副知事、知事へのタイムリーな報告を行えないまま、調停に至ってしまったというのが推測である。

結局、根拠不明で支払われた432万円を除いて、実績からの残額6,069万6,000円について、制作会社から支払いを求める民事調停を申し立てられ、2020年1月に道は解決金2,373万6,004円を受け入れた。本当に必要であれば最初からしかるべき予算を組んでおけば何のことは無かったということだ。

決定から実施までの時間も無く、本体の「150年事業」の取り進めに忙殺され、芸能等の慣れない分野であることも重なったにしても、“道庁お前もか”の思いがあり残念極まりない。

突如知事サイドで決まった事業の実施に最初から無理があったように思えてならない。

トップダウンで決まり、予算対応が組織としてきちんと行われていなかったとしたら、今後の道行政推進に当たって懸念される事項だ。

鈴木知事は「高橋道政の膿を出す。」(道新)とまで言ったが、コロナ問題の中に埋もれてしまっている。長期の高橋道政で職員のモチベーションが下がっていると聞いたことがある。

担当部署に責任を押しつけて終わらせるのも何やら中央政府と似ている。第三者による検証と改善策の検討が必要ではないか。鈴木知事には組織のリフレッシュと国依存体質からの脱却に是非取り組んで欲しいと思う。