ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「二千七百の夏と冬 (上) (下)」

2018-11-22 22:45:22 | 

 

「二千七百の夏と冬 (上) (下)」 荻原浩 双葉社 2014.6.22

 

ダム建設工事の作業中に、縄文人男性と弥生人女性の人骨が発見された。

二体はしっかりと手を重ね、互いに顔を向けあった姿だった。

三千年近く前、この男女に一体どんなドラマがあったのか。

新聞記者の佐藤香揶は次第にこの謎にのめりこんでいく。

 

紀元前七世紀、東日本ーーピナイ(谷の村)に住むウルクは15歳。

野に獣を追い、木の実を集め、天の神に感謝を捧げる日々を送っている。

近頃ピナイは、海渡りたちがもたらした神の実"コーミー"の噂でもちきりだ。

だがそれは「災いをもたらす」と囁かれてもいた。

そんなある日、ウルクはカヒィという名の不思議な少女と出会う。

 

禁断の地に入り、ムラの掟を破ったウルクは村を追い出され、

やがて行き着いたのはカヒィの住むフジミクニだった。

クニではタァでコーミー(米)が栽培され、イー(猪)が飼われていた。

 

 危険を冒さず、苦労もせずに肉を手に入れる方法を考え出したのだから、のんびり暮らせばいいのに、ここの人間は誰もがいつも忙しそうに仕事をしている。

 

 ウルクには、このクニの人間は面倒事が好きで、自分たちで勝手にそれを増やしているふうに見える。一人が何かをし出すと、なんとなくみんながそれに従うところは、囲いの中のイーとさして変わらない。

 

よくぞ考えたと思う言葉がたくさんあった!

ピナイの言葉に添えられたルビが面白い。

 

生肉と焼き肝ーーぜいたく

鳥の巣に卵ーーたぶん

神の決めた日和ーーこんにちは

巣に卵戻スーーすまない

鼻曲がり(シャケ)の卵の数ーーかぞえきれないほど

 

ピナイとフジミクニの言葉も異なる。

 

イー ーー シシ

カァー ーー シシカ

ヌペ ーー ドグリ

ヤム ーー クリ

 

ウルクにフジミクニの言葉「イクサ」の意味を問われたナヅラは、

人間が弓を持っている姿の絵を指し示す

「狩りか?」「喧嘩か?」

ナヅラは首をかしげて言う。

「※※※※ワウ(王)※※※イクサ※※※ピナイ※※※」

人を人が狩ることか?

やはりウルクにはうまく理解できなかった。


定住し、富と権力が集中し、格差が生まれる……

支配した者たちに縛りをかけ、

手にいれた権威や財を身内に継承させようとする……

 

人のサガなのかーー。

 

借りたものの、しばらく放っていたが、

読み出したら一気。

 

 

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ランコウカ? イッチョウイチユウ?

2018-11-22 22:41:07 | 考えたこと

 

言葉はいきものだから、時とともに変化する読み方や使われ方もある。

例えば山積やお手数……

物は山積み(やまづみ)するが、問題は山積(さんせき)、

「おてすう」ではなく、本来は(おてかず)

と、覚えていたものだが、今はどちらでもOKらしい。

 

しかし当然、殆どの言葉は決まった用いられ方なわけで、

読み方が違っていたり、ごく稀だけど本来の意味を取り違えてたり、

誤った言葉遣いを聞くと、アレッと引っ掛かってしまう。

 

もちろん、私の覚え違えもあるから、一応確認する。

その上で、やっぱり……と。

 

わりと最近、耳にしたのが、

乱高下を「ランコウカ」、一朝一夕を「イッチョウイチユウ」……

正しくは「ランコウゲ」「イッチョウイッセキ」だ。

 

若い人になら、やんわりと指摘できる場合もあるけど、

その程度のことを年長者に伝えるのは躊躇う。

 

いちいち気にするようなことじゃない、

ましてや、引きずるほどでのことでもない。

だけど、なんだかなぁ。

 

 

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「なでしこ御用帖」「斬られ権佐」「雪まろげ」

2018-11-21 21:06:47 | 

 

「なでしこ御用帖」 宇江佐真理 集英社 2009.10.10

 

疲れていても読める人情話。

 

医師の父の手助けをしているお紺。

祖父の血をひいているのか、事件に首を突っ込みたくなる。

 

兄の濡れ衣を晴らしたり、養生所の鼻つまみ者の悪事を明らかにしたりーー

 

 

「斬られ権佐」 宇江佐真理 集英社 2002.5.30

 

お紺の祖父、権佐の話も見つけた。

医師となり独り身を貫くつもりだったあさみを庇い、

88箇所も斬られ、その後、あさみと一緒になった権佐。

 

身体中が不具合でいつ寿命が尽きても不思議ではない体調ながら、

与力の小者を勤め、

拐かされた一人娘・お蘭を助けようとして命を落としたのだった。

 

湿っぽくないし、カラッとしてるわけでもない。

ただただ、あったかい。

 

 

「雪まろげ 古手屋喜十 為事覚え」 宇江佐真理 新潮社 2013.10.20

 

浅草で古着屋を営む喜十。

北町奉行同心の片棒を無理矢理担がされ、今日も誰かのために汗をかく。

 

喜十は、店の前に捨てられていた赤ん坊を養子にする。

健気な兄と捨て鉢になったような母親とーー思い余った上での捨て子だった。

 

大店の大お内儀は言う。

「工夫次第でこの世の中、どうにかなるものでござります」

 

この物語にも、宇江佐さんならではの空気が漂う。

もっとたくさん、書いて欲しかったなぁ。

 

 

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テニス、NITTO ファイナルズ

2018-11-20 21:45:57 | 日記

 

テニスシーズン締めくくりのファイナルズが終わった。

賞金も高く、なにかと贅沢な大会だ。

1970年に第1回大会が東京で開催されたというが、

錦織が出場するまで、この大会の存在すら知らなかった。

 

ナダルとデルポトロの棄権があって出場できた錦織とイズナーはリーグ戦敗退。

日本時間で昨日早朝、ズベレフがジョコビッチに勝って優勝した。

 

テニスについてはともかく、

NITTO が気になった。

そうか、日東電工だったのか。

去年からの4年契約らしい。

 

日東電工のホームページによると、

『さまざまな分野において世界トップを目指すというNittoの事業戦略と、世界中の一流選手が年間を通じて継続的にチャレンジし、トップを目指してベストを尽くす、男子プロテニスの最終戦には共通点があると私たちは考えています。

「Nitto ATPファイナルズ」の協賛活動を通じてグローバル企業としてさらなる飛躍を遂げ、驚きと感動を次々と提供していきます。』

とのことだが、

冠スポンサーに名乗りをあげるには、それなりのポリシーがあったのだろう。


シーズン真っ最中のフィギュアスケートのリンクサイドには

日本企業の名前がズラリと並んでいるし、

ゴルフなど他のスポーツでも、冠大会が多いし、

オリンピックやワールドカップも協賛企業が目白押しだ。


企業がこんなカタチで社会還元してくれること、

スポーツファンとしては有り難い。

 

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「三千円の使いかた」「終の日までの」

2018-11-18 22:28:32 | 

 

「三千円の使いかた」 原田ひ香 中央公論新社 2018.4.25

 

家族小説というジャンルらしい。

 

24歳、社会人2年目の美帆。貯金に目覚める。

29歳、子育て中の専業主婦、真帆。プチ稼ぎに夢中。

55歳、美帆・真帆の母親、智子。体調不良に悩む。

73歳、祖母、琴子。パートを始める。

 

就職、結婚、子育て、入院、離婚、老後……

明るく、賢く、勇ましく生きていくために。

 

お金や節約は、人が幸せになるためのもの。

それが目的になったらいけない。

 

だよね。

 

 

「終の日までの」 森浩美 双葉社 2015.12.20

 

これは、正真正銘「家族小説」シリーズ。

「家族の言い訳」という、シリーズ第1作目からはじまり、

この本が8作目とのこと。短編連作。

 

定年が近づいたとき、余命宣告されたとき、両親が亡くなったとき……

本人はもちろん、周りの人々も、どう前向きになるべきかーー。


末期ガンの床にある徳山の言葉。

「次の時代は次の人間のものだ。(略)下の者に手を掛けすぎても育たない。が、放っておいたら覚えない。人っていうのは、本当に手間のかかる生き物だな」

「人は結果に対して後悔するんじゃないんだ。その過程で、どうしてあっちを選ばなかったかという考えに悔やむ。特にやらなかったことは質が悪い。もっとも、できたかもしれないという言い訳や思い上がりもあるにはあるが……」

 

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