「あたしが乗った列車は進む」 ポール・モーシャー 鈴木出版 2018.6.29
Train I Ride 訳 代田亜香子
母が亡くなり、おばあちゃんが亡くなり、
あたしは、カリフォルニアからシカゴに行くことになった。
そこでの新しい生活を、だれもがあたしにとってベストだと思ってる。
あたしがどう思ってるかは、一回もきかれてないけど。
普通の12歳なら知らなくてもいいような辛いこと、苦しいことを経験者して、心がちょっと凍りついている……。
数日間を過ごすこの列車のなかで、「あたし」は、優しくておもしろくてステキな人たちに出会い、恋を経験して、13歳の誕生日をむかえる。
居場所を失って少しひねくれた態度をとっていた「あたし」が、列車のなかで出会った人たちを家族だといえるくらいに、心をひらいていく。
さりげない優しさにあったかくなった。
「ある晴れた夏の朝」 小手鞠るい 偕成社 2018.8
出自の違うアメリカの8人の高校生が、
広島と長崎に落とされた原爆の是非について語り合う。
日系アメリカ人のメイは、否定派の一人として演壇に立つことになった。
『(原爆死没者慰霊婢にある)あやまちはくりかえしません』の主語は
私=日本人であり、あなた=アメリカ人であり、世界=人類でもある、
ということ。
この理解をどういうふうに説明すれば、肯定派のメンバーと会場の人々に、
英語を母国語とする人たちに、わかってもらえるのだろう。
小手鞠さんは、アメリカ在住。
この国では、異なる意見を持つ、ということと、友情とは、
はっきり分けてかんがえなくてはならない。
意見だけじゃなくて、感じ方や性格や好みや主義主張、
人種、民族、宗教などをふくめて、人と人とは異なっている。
異なっているからこそ、人間性というのはおもしろいのだし、
わたしたちはその差別を受け入れ、異文化を学び、成長期していかなくてはならない。
と、メイは教わっている。
というところで、トランプ政権が思い浮かんだ。
差別や偏見、思いつきの連続で、
異なる考えを受け入れないどころか、否定し、罵倒すらする。
なのに、狂信的賛同者が多いのは驚くほどだ。
人種差別、女性蔑視などの根っこが深く蔓延っていることを改めて知らされる。
日本も、似たようなものか……。
肯定派だったナオミが、最後に I STILL LOVE THEM という本を紹介する 。
「われわれ人類は一致団結して、われわれの共通の敵、
すなわち、無知や憎悪や偏見と戦わねばならないのだ」