「さよならを待つふたりのために」 ジョン・グリーン 岩波書店 2013.7.25
THE FAULT IN OUR STARS 2012
訳 金原瑞人 竹内茜
感動、の一言。
生と死、知性と勇気と悲しみに満ちている悲劇とも言えるが、
スマートでキリッとしている。
主人公のヘイゼルは、16歳の女の子。
「死ぬほど気がめいる」サポートグループでこう自己紹介する。
「ヘイゼル、十六歳。はじめは甲状腺がんだったけど、今は立派な腫瘍が肺に転移して居座り続けている。」
いやいや参加したのは……
両親を喜ばせなかったから。16歳でがんで死ぬより最悪なのはこの世でたったひとつ。がんで死ぬ子どもを持つことだ……から。
そこで十七歳のオーガスタスと出会い、
肺の腫瘍のため、常に酸素ボンベが手放せないヘイゼルと、骨肉腫で片足を失ったオーガスタスの物語がはじまる。
自分の命がそう長くないことを覚悟しているヘイゼルは、自分が死んだ後、悲しむ人はできるだけ少ないほうがいいと考えている。
一方、オーガスタスは、この世に自分が生きた証を残したいと思っている。
この二人が、リアルに、魅力的に、ユーモラスに描かれていて、
悲しくて切ないけど、ジメッとはしていない。
普段はほとんど思い出さないでいられるけど、ヘイゼルは時々、変えることができない冷酷な事実に直面する。
つまり、ママとパパは私がそばにいてうれしいのかもしれないけど、私はいつもふたりを苦しめている。
ーー私はそれまで生きてきた時間のほとんどを、愛してくれた人たちの前で泣かないようにしてきた。泣いているところを見せたら、自分を愛してくれる人たちを悲しませてしまう。その人たちの記憶に、自分の悲しい思い出しか残らなくなる。悲しくてだけの存在になるのは嫌だ。だから泣かない。そして自分を愛してくれる人に笑顔を向ける。ーー
全身に腫瘍が転移したオーガスタスが先に逝ってしまう。
『ヘイゼルを愛せておれは運がいい。この世界で生きる以上、傷つくかどうかは選べないんです。でも自分を傷つける人を選ぶことはできる。おれはいい選択をした。ヘイゼルもそう思ってるといい』