「優しいおとな」 桐野夏生 中央公論新社 2010.9.25
格差が広がり、荒廃した近未来か……。
家族をもたず、信じることを知らない少年イオンは
児童センターを逃げ出して、渋谷あたりで、
どうにか、ひとりで生きている。
児センの前の記憶はない。
おとなは三種類だ。
優しいか、優しくないか、どっちつかずか。
優しいおとなは滅多にいない。
優しくないおとなからは、すぐ逃げろ。
でも、一番僕たちを苦しめるのは、どっちつかずのやつらだ。
しかも、そいつらは数が多い。絶対に信用するな。
自分が支えとしていた記憶が否定されてーー
"今"を生きる意味も意志も混乱してしまう。
近未来とは限らない。
世界のあちこちにストリートチルドレンたちがいる現実がある……。